就労継続支援B型 午前のみ 短時間利用の実態と可能性

はじめに  午前のみの利用は可能なのか

就労継続支援B型事業所の利用を検討している方の中には、「午前中だけ働きたい」「午後は通院や別の予定があるから午前のみがいい」「体力的に午前中しか無理」と考えている方が少なくありません。しかし、「B型事業所は午前のみでも利用できるのだろうか」「短時間だと受け入れてもらえないのではないか」「午前だけだと工賃がほとんどもらえないのではないか」という不安を抱えている方も多いです。

一般企業では、「午前のみ勤務」という働き方は珍しく、フルタイムやせめて半日(4時間程度)は働くことが求められることが多いです。そのため、B型事業所でも同様に「午前のみでは難しい」と思い込んでいる方がいます。また、事業所のホームページやパンフレットには「1日の利用時間」が明記されていないことも多く、実際にどれくらいの短時間から利用できるのか分かりにくいという問題もあります。

しかし、結論から言えば、多くのB型事業所では「午前のみ」の利用が可能です。B型事業所は、利用者一人ひとりの体調や状況に合わせて柔軟に対応することが特徴であり、午前中だけ、あるいは1日2〜3時間だけという短時間利用も珍しくありません。むしろ、最初は短時間から始めて、徐々に時間を延ばしていくことが推奨されることも多いのです。

本記事では、B型事業所における午前のみ利用の実態、午前のみ利用のメリットとデメリット、午前のみ利用が向いている人、事業所選びのポイント、午前のみでも受け入れてくれる事業所の見つけ方、工賃への影響、そして午前のみから徐々にステップアップする方法について、詳しく解説していきます。短時間利用を検討している方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。

B型事業所における「午前のみ利用」の実態

まず、B型事業所で午前のみの利用がどのように扱われているのか、実態を理解しましょう。

午前のみ利用は可能

多くの事業所で受け入れている B型事業所の大きな特徴の一つが「柔軟性」です。雇用契約を結ばないため、勤務時間に厳格な制限はなく、利用者の体調や状況に合わせて、午前のみ、午後のみ、2時間だけ、週1日だけといった柔軟な利用が可能です。

多くの事業所では、「週1日、1日2時間からでもOK」「まずは午前中だけから始めましょう」といった対応をしています。

一般的な午前のみ利用の時間帯

何時から何時までが「午前」か 事業所によって異なりますが、一般的な午前のみ利用の例は以下の通りです。

パターン1  9:00〜12:00(3時間)

  • 最も一般的なパターン
  • 午前中の作業時間を確保できる
  • 昼食前に帰宅できる

パターン2  10:00〜12:00(2時間)

  • より短時間の利用
  • 朝ゆっくり準備できる
  • 体力的負担が少ない

パターン3  9:00〜11:00(2時間)

  • 通院などで午後に予定がある場合
  • 早めに帰宅できる

パターン4  9:30〜12:30(3時間)

  • 通勤ラッシュを避けられる
  • 昼食を事業所で食べて帰宅

事業所によっては、さらに細かく時間を調整できることもあります。「10:30〜11:30の1時間だけ」といった超短時間も、体調次第では可能です。

午前のみ利用の頻度

週何日利用するか 午前のみ利用の場合、週何日利用するかも柔軟に設定できます。

  • 週1日、午前のみ  最も負担が少ない。まず外出の習慣をつけたい方向け
  • 週2〜3日、午前のみ  生活リズムを整えつつ、無理しない
  • 週5日、午前のみ  毎日通所したいが、午後は休みたい方向け

体調や目標に応じて、自由に設定できます。

午前のみから始めて徐々に延ばす

ステップアップの推奨 多くの事業所では、「最初は午前のみから始めて、慣れたら徐々に時間を延ばしていきましょう」というアプローチを推奨しています。

典型的なステップアップの例  

  1. 最初の1〜2ヶ月  週2日、午前のみ(2〜3時間)
  2. 3〜4ヶ月目  週3日、午前のみ
  3. 5〜6ヶ月目  週3日、午前+昼食まで(4時間)
  4. 7ヶ月目以降  週4日、1日5時間

このように段階的に増やすことで、無理なく体力や生活リズムを整えられます。

午前のみでも個別支援計画は作成される

短時間でもサービス利用者 午前のみであっても、正式な利用者として個別支援計画が作成され、適切な支援を受けられます。「短時間だから支援が受けられない」ということはありません。

午前のみ利用のメリット

午前のみの利用には、多くのメリットがあります。

体力的負担が少ない

疲れすぎない 1日フルで働くと疲れ果ててしまう方でも、午前中だけなら無理なく続けられます。特に、慢性疲労症候群、線維筋痛症、精神障害などで体力が低下している方にとって、短時間利用は大きなメリットです。

帰宅後に休息する時間を十分に確保でき、翌日に疲れを持ち越さずに済みます。

生活リズムを整えやすい

朝起きる習慣がつく 午前中に通所することで、自然と「朝決まった時間に起きる」習慣がつきます。長期間の引きこもりや療養で生活リズムが崩れていた方にとって、午前のみの通所は生活リズムを立て直す良い方法です。

午後の時間を自由に使える

通院、家事、趣味など 午後の時間を、通院、買い物、家事、趣味、休息などに使えます。特に、定期的な通院が必要な方にとって、午後に通院できることは大きなメリットです。

また、介護や育児などの家庭の事情がある方も、午前のみの利用なら両立しやすくなります。

継続しやすい

無理がないから続く フルタイムで働こうとして挫折するより、午前のみで無理なく続ける方が、長期的には良い結果につながることが多いです。

「続けられる」ことは、自己肯定感の向上にもつながります。

通勤ラッシュを避けられる

時間をずらせる 事業所によっては、10時や10時半開始も可能で、朝のラッシュ時を避けて通勤できます。満員電車が苦手な方、パニック障害のある方にとって、これは大きなメリットです。

昼食の心配が不要

お金と準備の負担が減る 午前のみなら、昼食を事業所で食べる必要がないため、昼食代がかからず、弁当を準備する手間もありません。

精神的なプレッシャーが少ない

「午前中だけ頑張ればいい」 「1日中働かなければ」というプレッシャーがなく、「午前中だけ頑張ればいい」と思えることで、精神的な負担が軽減されます。

まずは小さく始められる

ハードルを下げる 「週5日フルタイム」はハードルが高くても、「週1日、午前のみ」ならチャレンジしやすいです。小さく始めることで、一歩を踏み出しやすくなります。

午前のみ利用のデメリットと注意点

一方で、午前のみ利用にはデメリットや注意すべき点もあります。

工賃が少ない

作業時間が短いため 当然ながら、作業時間が短い分、工賃も少なくなります。フルタイムで月額2万円の事業所でも、午前のみ週3日なら月額5千円〜8千円程度になることもあります。

ただし、B型の工賃はもともと低いため、「生活費を稼ぐ」ことが目的でなければ、大きな問題ではありません。

作業の区切りが難しいことも

中途半端な時間に帰る 午前のみだと、作業がちょうど良いところで終わらず、中途半端になることがあります。ただし、多くの事業所では、短時間利用者向けに区切りの良い作業を用意しています。

昼食を共にできない

交流の機会を逃す 昼食時は利用者同士が交流する重要な時間ですが、午前のみだとその機会を逃します。人とのつながりを重視する方には、デメリットに感じられるかもしれません。

午後のプログラムに参加できない

選択肢が限られる 事業所によっては、午後に特別なプログラム(レクリエーション、研修、ミーティングなど)がある場合、それに参加できません。

「もっと頑張れるのでは」という葛藤

自己否定につながることも 「午前のみでいいのだろうか」「もっと頑張るべきでは」という葛藤を感じる方もいます。ただし、これは「今の自分に合った働き方を選ぶことが大切」と理解することで解消できます。

事業所によっては難しい場合も

最低利用時間の設定 一部の事業所では、「最低でも1日4時間」などの条件がある場合もあります。ただし、多くの事業所は柔軟に対応してくれます。

午前のみ利用が向いている人

どのような方が午前のみ利用に向いているのでしょうか。

体力・体調面

  • 体力が低下している方  長時間の活動が困難
  • 疲れやすい方  慢性疲労症候群、線維筋痛症など
  • 午後に体調が悪化しやすい方  午前中は調子が良いが、午後になると悪化
  • 服薬の影響で午後は眠くなる方  薬の副作用で午後は活動困難

生活状況

  • 午後に通院が必要な方  定期的な通院があり、午後は通院に充てたい
  • 介護や育児がある方  午後は家族の世話が必要
  • 他のサービスと併用する方  午後は別の福祉サービスやデイケアを利用
  • リハビリがある方  午後はリハビリの時間

目標・段階

  • まずは外出の習慣をつけたい方  長期間引きこもっていて、まずは午前だけ外出したい
  • 生活リズムを整えたい方  朝起きる習慣をつけることが第一目標
  • ゆっくりステップアップしたい方  焦らず、徐々に時間を延ばしていきたい
  • 高齢の方  年齢的に長時間の活動は難しい

心理的要因

  • 長時間の活動にプレッシャーを感じる方  「1日中働く」ことへの不安が強い
  • 少しずつ自信をつけたい方  まずは短時間で成功体験を積みたい
  • 完璧主義の傾向がある方  「フルタイムで完璧にやらなければ」と思いがちで、午前のみなら気楽

午前のみでも受け入れてくれる事業所の見つけ方

午前のみ利用を受け入れてくれる事業所を見つけるための方法です。

相談支援事業所に相談する

専門家に聞く 相談支援事業所の相談支援専門員に、「午前のみの利用を希望している」と伝えましょう。地域の事業所の中で、短時間利用に柔軟な事業所を紹介してもらえます。

事業所に直接問い合わせる

電話やメールで確認 興味のある事業所に、「午前のみの利用は可能ですか」と直接問い合わせましょう。ほとんどの事業所は「可能です」と答えるはずです。

問い合わせ例   「体力的に午前中しか働けないのですが、午前のみの利用は可能でしょうか。例えば、週2〜3日、9時から12時までといった形での利用は受け入れていただけますか」

ホームページで確認する

柔軟性を謳っている事業所 「利用者のペースに合わせます」「短時間からOK」「週1日、1日2時間からでも大丈夫」といった記載がある事業所は、午前のみ利用も歓迎してくれます。

見学時に確認する

具体的に聞く 見学の際に、「午前のみの利用者さんはいますか」「午前のみでも問題ないですか」と具体的に聞きましょう。実際に午前のみで利用している方がいれば、安心です。

小規模な事業所を探す

柔軟性が高い傾向 小規模な事業所(利用者10〜20人程度)は、大規模な事業所に比べて個別のニーズに柔軟に対応してくれる傾向があります。

精神障害・発達障害に特化した事業所

理解がある 精神障害や発達障害のある方を主に受け入れている事業所は、体調の波や個別のニーズへの理解があり、短時間利用にも柔軟です。

午前のみ利用時の工賃の実態

午前のみ利用の場合、工賃はどれくらいになるのでしょうか。

工賃の計算方法

時間給制の場合 時給100円の事業所で、午前3時間(9時〜12時)、週3日利用した場合  

  • 1日の工賃  100円 × 3時間 = 300円
  • 週の工賃  300円 × 3日 = 900円
  • 月の工賃  900円 × 4週 = 3,600円

出来高制の場合 作業量に応じて工賃が決まる場合、午前のみでも集中して作業すれば、それなりの工賃になることもあります。

現実的な金額

午前のみ週3日の場合  月額3千円〜8千円程度 事業所や作業内容によって異なりますが、午前のみ週3日の場合、月額3千円〜8千円程度が一般的です。

午前のみ週5日の場合  月額6千円〜1万5千円程度 毎日午前中通う場合でも、月額1万円前後になることが多いです。

工賃以外の価値

お金だけではない 午前のみ利用の目的は、「稼ぐ」ことよりも、「生活リズムを整える」「社会参加する」「居場所を持つ」「成長する」ことにあります。工賃の額だけで判断しないことが大切です。

午前のみから徐々にステップアップする方法

午前のみから始めて、徐々に時間を延ばしていく方法です。

無理のないペースで

焦らない 「早く1日フルで働けるようにならなければ」と焦る必要はありません。自分のペースで、体調と相談しながら徐々に延ばしていきましょう。

小刻みに延ばす

いきなり倍にしない 午前3時間から、いきなり1日6時間にするのではなく、まずは+30分、+1時間と小刻みに延ばしていきます。

ステップアップの例  

  1. 午前2時間(10時〜12時)
  2. 午前2.5時間(10時〜12時半)
  3. 午前3時間(9時〜12時)
  4. 午前+昼食(9時〜13時)
  5. 半日(9時〜14時)
  6. 1日(9時〜16時)

体調を記録する

疲労度をチェック 時間を延ばした時に、体調がどう変化するか記録しましょう。疲れすぎていないか、翌日に影響が出ていないか、確認します。

無理をしているサインが出たら、一度時間を戻すことも必要です。

スタッフと相談しながら

サポートを受ける 時間を延ばすタイミングや方法について、スタッフと相談しながら進めましょう。個別支援計画の中で、ステップアップの目標を設定することもできます。

「延ばさない」選択肢もある

午前のみで安定することも正解 必ずしも「フルタイム」を目指す必要はありません。午前のみで安定して長く続けることも、立派な選択です。自分に合ったペースを大切にしましょう。

まとめ  午前のみでも堂々と

就労継続支援B型事業所における「午前のみ利用」は、多くの事業所で可能であり、決して特殊なことではありません。午前2〜3時間、週1〜5日といった柔軟な利用が認められており、体調や生活状況に合わせて自由に設定できます。

午前のみ利用のメリットは、体力的負担が少ない、生活リズムを整えやすい、午後の時間を自由に使える、継続しやすい、通勤ラッシュを避けられる、精神的プレッシャーが少ないことです。一方、デメリットは、工賃が少ない、昼食を共にできない、午後のプログラムに参加できないことです。

午前のみ利用は、体力が低下している方、午後に通院が必要な方、介護や育児がある方、まずは外出の習慣をつけたい方、生活リズムを整えたい方、高齢の方、長時間の活動にプレッシャーを感じる方に向いています。

午前のみでも受け入れてくれる事業所を見つけるには、相談支援事業所に相談する、事業所に直接問い合わせる、見学時に確認するなどの方法があります。工賃は月額3千円〜1万円程度になることが多いですが、お金以外の価値(生活リズム、社会参加、居場所、成長)が重要です。

午前のみから始めて、無理のないペースで徐々に時間を延ばしていくこともできますし、午前のみで安定して長く続けることも正解です。自分に合ったペースを見つけることが大切です。

「午前のみでは申し訳ない」「もっと頑張るべき」と思う必要はありません。今のあなたに合った働き方を選ぶことが、最も重要です。午前のみでも、あなたは立派に社会参加し、成長し、貢献しています。

自信を持って、午前のみ利用にチャレンジしてください。そこから、あなたの新しい人生が始まるかもしれません。応援しています。

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