就労継続支援B型 利用 断念 諦めざるを得なかった理由と次のステップ

はじめに:「断念」という選択をした方へ

就労継続支援B型事業所の利用を始めようと思っていたのに、様々な理由で断念せざるを得なかった。あるいは、実際に利用を始めたものの、続けることができずに利用を断念した。このような経験をされた方は、決して少なくありません。そして、その選択は決して「失敗」ではありません。

「せっかく勇気を出して申し込んだのに」「期待していたのに」「家族にも心配をかけてしまった」「また続かなかった」「自分はダメな人間だ」と、自分を責めている方もいるかもしれません。しかし、断念という選択をせざるを得なかったことには、必ず理由があります。それは、あなたの努力不足や能力不足ではなく、様々な事情や環境的な要因、事業所との相性、タイミングの問題など、複合的な理由によるものです。

B型事業所の利用を断念することは、決して恥ずかしいことでも、人生の終わりでもありません。むしろ、「自分に合わなかった」「今は時期ではなかった」という重要な気づきを得た、貴重な経験です。この経験から学び、次のステップに進むことができます。

本記事では、B型事業所の利用を断念する主な理由、断念せざるを得なかった時の心の整理の仕方、自分を責めないための考え方、そして断念後の選択肢と次のステップについて、詳しく解説していきます。現在、利用の断念で悩んでいる方、すでに断念して落ち込んでいる方、ご家族や支援者の方々にとって、前を向くための実践的な情報となれば幸いです。

B型事業所の利用を断念する主な理由

まず、なぜ多くの方が利用を断念せざるを得ないのか、その主な理由を理解しましょう。あなただけではありません。

利用開始前の断念

受給者証が取得できなかった

行政の審査で認められなかった B型事業所を利用するには、障害福祉サービス受給者証が必要です。しかし、市区町村の審査で、「B型の対象ではない」と判断されることがあります。

特に、「就労移行支援を先に利用すべき」「A型事業所の方が適切」「一般就労が可能と判断される」などの理由で、B型の利用が認められないケースがあります。また、障害者手帳を持っていない場合、診断書だけでは認められないこともあります。

必要書類が揃わなかった 医師の診断書が必要ですが、主治医が診断書作成に協力的でない、診断書の作成に時間がかかりすぎる、診断書の費用が払えないなどの理由で、申請を断念することもあります。

定員がいっぱいで受け入れてもらえなかった

希望する事業所が定員に達しており、空きが出るまで待つ必要がある場合、その間に状況が変わったり、意欲が失われたりして、断念することがあります。

特に人気のある事業所、評判の良い事業所は、待機期間が数ヶ月に及ぶこともあります。

見学や体験利用で合わないと感じた

実際に見学や体験利用をしてみて、「雰囲気が合わない」「作業内容が想像と違った」「スタッフの対応が冷たい」「他の利用者との相性が悪そう」などの理由で、利用を断念することがあります。

これは、むしろ賢明な判断です。無理に合わない場所に通い続けても、苦痛なだけです。

通所が困難と判断した

距離が遠すぎる 自宅から事業所までの距離が遠く、毎日の通所が負担になると判断して断念することがあります。特に、公共交通機関が不便な地域や、体力的に長時間の移動が難しい方にとって、通所距離は大きな問題です。

交通手段がない 送迎サービスがなく、自分で通所する必要がある場合、運転免許がない、公共交通機関が利用できない(パニック障害、広場恐怖症など)などの理由で、通所が不可能と判断されることがあります。

経済的な理由

利用料や交通費が払えない 所得によっては利用料が発生する場合があります。また、交通費や昼食代は自己負担です。これらの費用を工賃で賄えず、持ち出しになることが分かり、断念することがあります。

特に、年金や手当だけで生活している方にとって、毎日の交通費は大きな負担です。

家族の反対

家族が理解してくれない 「障害福祉サービスなんか使わなくても」「そんなところに行かせたくない」「恥ずかしい」などの理由で、家族が利用に反対し、断念せざるを得ないこともあります。

特に同居家族の反対が強い場合、利用継続が困難になります。

他の選択肢を選んだ

一般就労が決まった B型事業所の利用を検討している間に、一般企業への就職が決まったため、B型の利用を断念するケースもあります。これは、喜ばしい理由での断念です。

就労移行支援を選んだ B型よりも就労移行支援事業所の方が自分に合っていると判断し、そちらを選択することもあります。

利用開始後の断念

体調の悪化

通所が身体的・精神的に負担になった 実際に通所を始めてみると、思った以上に疲れる、体調を崩しやすくなる、精神的に不安定になるなど、通所自体が大きな負担になることがあります。

特に精神障害のある方は、環境の変化や人間関係のストレスが症状の悪化につながりやすく、通所を続けることで状態が悪化することもあります。

症状の悪化で通所不可能に 持病の悪化、精神症状の悪化、新たな病気の発症などにより、物理的に通所が不可能になることもあります。

人間関係のトラブル

他の利用者とのトラブル 利用者同士の相性が合わない、いじめや嫌がらせを受けた、価値観の違いで衝突したなどの理由で、通所が苦痛になり断念することがあります。

スタッフとの関係がうまくいかない スタッフの対応に不満がある、相談しても取り合ってもらえない、パワハラと感じる言動があったなどの理由で、信頼関係が築けず断念することもあります。

作業内容が合わなかった

単調すぎる・つまらない 実際の作業が想像以上に単調で、やりがいを感じられず、モチベーションが維持できなくなることがあります。

難しすぎる・できない 逆に、求められる作業が自分の能力を超えており、できないことがストレスになって断念することもあります。

身体的に合わない 立ち仕事が多すぎる、重いものを持つ作業が多い、細かい手作業が視力的に困難などの理由で、作業を続けられなくなることもあります。

期待とのギャップ

支援が不十分だった 「支援してもらえる」と期待していたのに、実際には放置されている感じがする、相談できる雰囲気ではない、個別支援が形だけなどの理由で、失望して断念することがあります。

工賃が低すぎた 工賃である程度の収入を期待していたのに、実際には月数千円程度で、交通費や昼食代を差し引くとほとんど残らず、「働く意味がない」と感じて断念することもあります。

生活状況の変化

家庭の事情 家族の介護が必要になった、引っ越しをすることになった、家庭内で大きな問題が発生したなどの理由で、通所を続けられなくなることがあります。

経済的な事情 生活保護の受給状況が変わった、家計が苦しくなったなどの理由で、交通費や昼食代が払えなくなり、断念することもあります。

より良い選択肢が見つかった

別の事業所に移った 通所している間に、より自分に合った別の事業所を見つけ、そちらに移るために現在の事業所を辞めることもあります。これは、ポジティブな理由での断念です。

A型や一般就労にステップアップ B型での経験を経て、A型事業所や一般就労の機会を得て、ステップアップするために断念することもあります。これも、喜ばしい理由です。

精神的な限界

通所自体がストレスになった 通所することへのプレッシャー、「休んではいけない」という強迫観念、「もっと頑張らなければ」という自責の念などが積み重なり、精神的に限界を迎えることがあります。

自信を失った 「自分は何をやってもダメだ」「ここでもうまくいかなかった」という思いが強くなり、通所を続ける気力を失うこともあります。

断念した時の心の整理の仕方

B型事業所の利用を断念した時、どのように心を整理すればよいのでしょうか。

自分を責めない

最も重要:「失敗」ではない まず、断念したことは「失敗」ではありません。「合わなかった」「タイミングが悪かった」「環境が整っていなかった」というだけです。

あなたの努力不足でも、能力不足でもありません。様々な要因が複合的に作用した結果です。

「挑戦した自分」を認める

勇気を出したことは素晴らしい 申し込もうと思ったこと、実際に行動したこと、見学に行ったこと、利用を始めたことなど、あなたは大きな勇気を出して挑戦しました。その勇気は、素晴らしいことです。

結果がどうであれ、挑戦したことは誇りに思っていいのです。

学びがあったと捉える

無駄ではなかった たとえ断念したとしても、その経験から学んだことは必ずあります。

  • 自分に合う環境、合わない環境が分かった
  • 自分の限界や課題が明確になった
  • 次に選ぶべき選択肢のヒントが得られた
  • 自分の本当の気持ちや希望が分かった

これらの学びは、次のステップに活かせます。

感情を吐き出す

溜め込まない 悔しい、悲しい、情けない、怒り、失望など、様々な感情が湧いてくるでしょう。それらの感情を無理に抑え込まず、吐き出すことが大切です。

信頼できる人に話す、日記に書く、泣くなど、自分なりの方法で感情を表現しましょう。

休息を取る

焦らない 断念した直後は、心身ともに疲れています。すぐに次の行動を起こそうとせず、まずはゆっくり休むことが大切です。

焦って次の選択をすると、また同じことを繰り返す可能性があります。

第三者の視点を得る

客観的に振り返る 相談支援専門員、主治医、カウンセラー、信頼できる家族や友人などに、状況を話して、客観的な意見を聞いてみましょう。

自分では「自分が悪かった」と思っていても、第三者から見れば「事業所に問題があった」「タイミングが悪かっただけ」と見えることもあります。

「今は時期ではなかった」と考える

タイミングの問題 すべてのタイミングで、すべての選択肢がうまくいくわけではありません。今は時期ではなかっただけで、別のタイミングなら、うまくいくかもしれません。

「今じゃなかった」と考えることで、気持ちが楽になります。

小さな成功を認める

できたことに目を向ける 「続かなかった」という失敗ではなく、「○日間通えた」「見学に行けた」「申し込めた」という小さな成功に目を向けましょう。

ゼロから何かを始めることは、それ自体が大きな成功です。

断念後の選択肢と次のステップ

断念した後、どのような選択肢があるのでしょうか。人生は、そこで終わりではありません。

別のB型事業所を探す

すべての事業所が同じではない 一つの事業所が合わなかったからといって、すべてのB型事業所が合わないわけではありません。事業所によって、雰囲気、作業内容、スタッフの質、支援の手厚さなどは大きく異なります。

別の事業所を探してみることで、自分に合った場所が見つかるかもしれません。

前回の経験を活かす 前回の経験から、「次は○○な事業所を選ぼう」「○○は避けよう」という基準が明確になっているはずです。その基準に基づいて選べば、より良い選択ができます。

就労移行支援を利用する

A型や一般就労を目指す B型ではなく、就労移行支援事業所を利用して、A型事業所や一般就労を目指すという道もあります。

就労移行支援では、ビジネスマナー、パソコンスキル、面接対策など、より実践的な訓練が受けられます。

就労継続支援A型を検討する

雇用契約で働く B型ではなく、最初からA型事業所を利用するという選択肢もあります。A型は雇用契約を結び、最低賃金以上の給与が保証されますが、その分勤務条件は厳しくなります。

体調が安定している、一定の能力がある方には、A型の方が合っている場合もあります。

地域活動支援センターを利用する

より柔軟な通所 地域活動支援センターは、B型よりもさらに自由度が高く、通所のハードルが低い施設です。レクリエーション活動や趣味活動が中心で、「働く」というプレッシャーが少ないです。

まずは外出の習慣をつけたい、人とのつながりを作りたいという方に適しています。

デイケア・訪問看護を利用する

医療的なサポートを受ける 精神科デイケアや訪問看護などの医療サービスを利用して、まずは症状の安定を図るという選択もあります。

体調が安定してから、改めて就労支援を考えるという段階的なアプローチです。

在宅就労・在宅ワークを検討する

通所しない働き方 通所自体が大きな負担になる場合、在宅での仕事を検討するのも一つの方法です。在宅就労支援、クラウドソーシング、内職などの選択肢があります。

収入は少ないかもしれませんが、自分のペースで働けるメリットがあります。

ピアサポート活動に参加する

同じ経験を持つ仲間と 当事者会、家族会、ピアサポートグループなどに参加して、同じような経験を持つ仲間とつながることも有意義です。

「働く」ことではありませんが、居場所ができ、情報交換ができ、孤立を防げます。

趣味や興味のある活動を始める

まずは楽しむことから 無理に「働く」ことにこだわらず、趣味や興味のある活動を始めることも大切です。絵を描く、音楽を聴く、ゲームをする、散歩をする、読書をするなど、自分が楽しめることをすることで、心の余裕が生まれます。

楽しい活動を通じて、新しい出会いや機会が生まれることもあります。

ボランティア活動に参加する

無理のない社会参加 報酬を求めず、自分のペースでできるボランティア活動に参加するのも一つの方法です。地域の清掃活動、動物保護、図書館のボランティアなど、様々な選択肢があります。

社会参加の実感を得ながら、自分の得意なことや興味を発見できることもあります。

しばらく休む

何もしない期間も必要 無理に次のステップを急がず、しばらく何もしない期間を持つことも大切です。心身を休め、エネルギーを蓄え、自分と向き合う時間を持つことで、本当に自分がやりたいことが見えてくることもあります。

「休む」ことも、立派な選択です。

生活訓練を利用する

日常生活のスキルから 働く前に、まずは日常生活のスキルを身につけることが必要な場合、生活訓練(生活自立訓練)を利用するという選択肢もあります。

規則正しい生活リズム、金銭管理、家事スキルなどを学ぶことで、その後の就労がスムーズになります。

家族・支援者ができること

断念した本人だけでなく、周りの家族や支援者にもできることがあります。

責めない、批判しない

最も重要:本人を責めない 「どうして続けられなかったの」「もっと頑張れば良かったのに」「また続かなかった」などの言葉は、本人を深く傷つけます。

本人が最も自分を責めています。周りの人まで責める必要はありません。

話を聞く

判断せず、ただ聞く 本人が話したいことを、判断せず、アドバイスせず、ただ聞くことが大切です。「そうだったんだね」「辛かったね」と共感するだけで、本人は救われます。

挑戦したことを認める

努力を評価する 「よく頑張ったね」「挑戦したことは素晴らしいよ」と、本人の努力を認めることが大切です。

次のステップを一緒に考える

押し付けず、一緒に 「次はこうしなさい」と押し付けるのではなく、「次はどうしたい?」「何か手伝えることある?」と、本人の意思を尊重しながら一緒に考えましょう。

専門家につなぐ

一人で抱え込まない 必要に応じて、相談支援専門員、主治医、カウンセラーなどの専門家につなぎ、適切なサポートを受けられるようにしましょう。

家族だけで抱え込むと、共倒れになることもあります。

焦らない・急かさない

本人のペースを尊重する 「早く次を見つけなさい」「いつまでも休んでいないで」などと急かさず、本人のペースを尊重することが大切です。

相談できる機関

断念後、一人で悩まず、相談できる機関があります。

相談支援事業所

状況を理解し、次のステップを一緒に考えてくれます。

市区町村の障がい福祉担当窓口

他の選択肢や利用できるサービスについて情報提供してくれます。

主治医・医療機関

体調面や精神面の相談、診断書の作成などをサポートしてくれます。

障害者就業・生活支援センター

就労に関する総合的な相談ができます。

ピアサポート団体

同じ経験を持つ仲間が、共感とアドバイスをくれます。

まとめ:断念は終わりではなく、新しい始まり

就労継続支援B型事業所の利用を断念することは、決して「失敗」でも「終わり」でもありません。様々な理由で断念せざるを得なかったこと、それは単に「合わなかった」「タイミングが悪かった」というだけです。

受給者証が取得できなかった、定員がいっぱいだった、見学で合わないと感じた、通所が困難、経済的な理由、家族の反対、体調の悪化、人間関係のトラブル、作業内容が合わなかった、期待とのギャップ、生活状況の変化など、断念の理由は様々です。どの理由も、あなたの努力不足や能力不足ではありません。

断念した時は、自分を責めず、挑戦した自分を認め、学びがあったと捉え、感情を吐き出し、休息を取り、第三者の視点を得て、心を整理することが大切です。

そして、断念後には様々な選択肢があります。別のB型事業所を探す、就労移行支援を利用する、A型を検討する、地域活動支援センターを利用する、在宅就労を検討する、ピアサポート活動に参加する、趣味を始める、ボランティアをする、しばらく休む、生活訓練を利用するなど、多くの道があります。

一つの道が閉ざされても、他の道があります。一つの方法がうまくいかなくても、他の方法があります。人生は、一つの選択で決まるものではありません。

断念という経験から学び、自分をより深く理解し、次のステップに進むことができます。今回の経験は、決して無駄ではありません。むしろ、あなたが本当に必要としているもの、本当に自分に合った場所を見つけるための、貴重なプロセスです。

焦らず、自分を責めず、自分のペースで、次の一歩を考えてください。そして、一人で抱え込まず、相談支援専門員、主治医、家族、友人など、周りの人に助けを求めてください。あなたは一人ではありません。

断念は終わりではなく、新しい始まりです。この経験を糧に、あなたらしい生き方、あなたに合った場所を見つけていけることを、心から願っています。

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