はじめに:「きつい」という感覚は当然の反応
就労継続支援B型事業所を利用している方の中には、「作業がきつい」「想像以上に大変」「体力的についていけない」「精神的に疲れる」と感じている方が少なくありません。B型事業所は「障がいのある方が無理なく働ける場所」「自分のペースで働ける」というイメージがあるため、「きつい」と感じることに罪悪感を抱いたり、「自分の能力が低すぎるのではないか」と自信を失ったりする方もいます。
「こんなに簡単な作業なのに、自分にはきつく感じる」「他の人は楽々やっているのに、自分だけ遅れている」「毎日の通所だけで精一杯で、作業まで手が回らない」「帰宅すると疲れ果てて何もできない」「体調を崩すようになった」など、様々な形で「きつさ」を体験しています。
しかし、B型事業所の作業が「きつい」と感じることは、決して恥ずかしいことでも、あなたの能力が低いということでもありません。作業の内容、量、ペース、環境、自分の体調、障がいの特性など、様々な要因が複合的に作用して、「きつさ」は生まれます。同じ作業でも、ある人には楽々できることが、別の人にはとてもきついということは、よくあることなのです。
大切なのは、「きつい」という感覚を我慢して無理を続けることではなく、なぜきついと感じるのか原因を理解し、適切に対処することです。我慢を続けると、体調を崩したり、精神的に追い詰められたり、結局退所せざるを得なくなったりします。
本記事では、B型事業所の作業がきついと感じる理由、きつさの種類、体力的にきつい場合の対処法、精神的にきつい場合の対処法、スタッフに相談する方法、作業を変更してもらう方法、そして「きつい」と感じる自分を責めないための考え方について、詳しく解説していきます。作業がきついと感じている方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
B型事業所の作業が「きつい」と感じる主な理由
まず、なぜB型事業所の作業がきついと感じるのか、理由を理解しましょう。
体力的な理由
長時間の立ち仕事
体力的負担が大きい 軽作業の中には、長時間立ちっぱなしで作業するものがあります。脚の痛み、腰痛、全身の疲労が蓄積します。
- 商品の梱包作業
- 検品作業
- 組み立て作業
- 清掃作業
体力が低下している方、足腰に問題がある方、長時間立っていることに慣れていない方には、大きな負担です。
重いものを持つ作業
身体的負担 段ボールの運搬、製品の移動など、重いものを持つ作業は、筋力が必要で、腰痛や肩こりの原因になります。
細かい手作業
手や目の疲労 シール貼り、部品の組み立て、検品など、細かい手作業は、手や指、目の疲労が激しいです。
- 手指の痛み、腱鞘炎
- 眼精疲労、頭痛
- 肩こり、首の痛み
特に、視力が弱い方、手先が不器用な方、関節に問題がある方には、きつく感じられます。
同じ姿勢を続ける
筋肉の硬直 座りっぱなし、立ちっぱなし、同じ姿勢を続けることで、筋肉が硬直し、血行が悪くなり、痛みや疲労が生じます。
作業の繰り返し
単調な動作の反復 同じ動作を何時間も繰り返すことで、特定の筋肉や関節に負担が集中し、痛みや疲労が生じます。
通所自体の負担
作業以前の疲労 作業がきついというより、通所すること自体が体力的に大きな負担になっている場合もあります。
- 長い通勤時間
- 満員電車
- 早起き
- 慣れない環境への適応
通所だけで疲れ果てて、作業をする余力がないという状態です。
精神的な理由
プレッシャーとノルマ
心理的負担 B型事業所でも、一定の生産性が求められることがあります。「1日○個完成させなければ」「みんなに遅れないようにしなければ」というプレッシャーが、精神的にきつく感じられます。
ミスへの不安
完璧主義の影響 「間違えてはいけない」「スタッフに迷惑をかけてはいけない」という不安が、精神的な負担になります。
特に、完璧主義の傾向がある方、過去にミスで叱責された経験がある方は、この不安が強くなります。
対人関係のストレス
人間関係の疲労 作業そのものよりも、スタッフや他の利用者との関係がストレスになっている場合があります。
- スタッフの態度が冷たい、厳しい
- 他の利用者との関係がうまくいかない
- 孤立している感じがする
- 監視されている感じがする
集中力の持続が困難
認知的負担 ADHDや発達障害のある方は、長時間の集中が困難で、それが大きな精神的負担になります。
- すぐに気が散る
- ミスが多くなる
- 疲れやすい
- イライラする
環境刺激への過敏性
感覚過敏 感覚過敏がある方は、作業場の環境刺激(騒音、光、匂い、人の気配など)が精神的な負担になります。
- 機械の音が耐えられない
- 蛍光灯の光がまぶしい
- 他の利用者の話し声が気になる
- 作業に伴う匂いが不快
作業内容の問題
興味・関心がない作業
モチベーションの欠如 興味のない作業、つまらないと感じる作業は、精神的にきつく感じられます。
- 単調すぎる
- やりがいを感じられない
- 何のためにやっているか分からない
能力に合っていない作業
難しすぎる、または簡単すぎる
- 難しすぎる作業:できない焦り、劣等感
- 簡単すぎる作業:退屈、能力を活かせないもどかしさ
どちらもストレスになります。
苦手な作業
特性と合わない 自分の障がいの特性や苦手な部分と、作業内容が合っていない場合、非常にきつく感じられます。
- 手先が不器用なのに細かい作業
- 対人不安があるのに接客作業
- 体力がないのに重労働
- 騒音が苦手なのに騒がしい環境での作業
体調・健康面の問題
症状の悪化
持病の影響 精神症状、身体症状が悪化していると、どんな作業もきつく感じられます。
- うつ状態で何もする気力がない
- 不安が強くて集中できない
- 痛みがあって作業に集中できない
- 薬の副作用で眠い、だるい
睡眠不足
疲労の蓄積 夜眠れない、睡眠が浅い、早朝に目が覚めるなど、睡眠の問題があると、日中の作業がきつくなります。
栄養不足
エネルギー不足 食事が十分に取れていない、栄養バランスが悪いと、体力や集中力が低下します。
期待と現実のギャップ
「軽作業」のイメージとの違い
想像より大変 「軽作業」「簡単な作業」と聞いて、もっと楽だと思っていたのに、実際にやってみると想像以上に大変だったということがあります。
B型のイメージとの違い
「自分のペース」ではない B型は「自分のペースで働ける」と聞いていたのに、実際にはノルマがあったり、急かされたりして、期待とのギャップを感じることがあります。
比較による劣等感
他の利用者との比較
自己否定 他の利用者が楽々作業しているのを見て、「自分だけができない」「自分はダメだ」と劣等感を感じ、それが精神的負担になります。
慣れていない
新しい環境への適応
初期の大変さ 利用開始直後は、新しい環境、新しい作業、新しい人間関係に適応することだけで、大きな負担です。慣れるまでの期間は、特にきつく感じられます。
「きつさ」の種類を理解する
「きつい」には、いくつかの種類があります。種類を理解することで、対処法も見えてきます。
身体的なきつさ
体の痛み、疲労
- 筋肉痛、関節痛
- 腰痛、肩こり
- 全身の疲労感
- 眼精疲労
対処: 休憩、姿勢の改善、作業の変更、通所日数・時間の調整
精神的なきつさ
心の疲れ、ストレス
- 不安、緊張
- プレッシャー
- 孤独感
- 劣等感
対処: カウンセリング、環境調整、人間関係の改善、作業の変更
認知的なきつさ
頭の疲れ、集中力の限界
- 集中が続かない
- 覚えられない
- ミスが増える
- 頭が働かない
対処: 休憩の頻度を増やす、作業の単純化、メモやマニュアルの活用
感覚的なきつさ
刺激への過敏性
- 騒音が耐えられない
- 光がまぶしい
- 匂いが不快
- 触覚刺激が不快
対処: 環境調整(イヤホン、サングラス、マスク)、作業場所の変更
モチベーション的なきつさ
やる気の問題
- つまらない
- やりがいがない
- 何のためにやっているか分からない
対処: 作業の変更、目標の再設定、意義の再確認
体力的にきつい場合の対処法
体力的にきつい場合、どう対処すればよいでしょうか。
休憩を増やす
こまめに休む 「休憩してもいいですか」と遠慮せずに言いましょう。通常の休憩時間以外にも、疲れたら短時間の休憩を取ることが大切です。
座って作業させてもらう
立ち仕事がきつい場合 立ち仕事がきつい場合、「座って作業させてもらえませんか」とお願いしてみましょう。多くの事業所は配慮してくれます。
作業の負担を軽減してもらう
量や時間を調整
- 1日の作業量を減らしてもらう
- 作業時間を短くしてもらう
- 重いものを持つ作業を別の人に代わってもらう
- 補助具や道具を使わせてもらう
通所日数・時間を減らす
無理をしない 週5日がきついなら週3日に、フルタイムがきついなら午前のみに、調整してもらいましょう。
作業内容を変更してもらう
体に合った作業
- 立ち仕事から座り仕事へ
- 重労働から軽作業へ
- 長時間集中が必要な作業から、短時間で区切れる作業へ
通所方法を見直す
通所の負担を減らす
- 送迎サービスを利用する
- 通勤時間帯をずらす
- 自転車や車での通所に変更する
体力をつける
長期的な対策
- 適度な運動習慣をつける(散歩、ストレッチなど)
- 栄養バランスの良い食事
- 十分な睡眠
- 主治医に相談して薬を調整してもらう
ただし、無理な運動は逆効果です。主治医と相談しながら進めましょう。
精神的にきつい場合の対処法
精神的にきつい場合の対処法です。
スタッフに相談する
一人で抱え込まない 「精神的にきつい」「プレッシャーを感じる」「不安が強い」など、正直に伝えましょう。
プレッシャーを減らしてもらう
ノルマの調整 「ノルマがプレッシャーになっている」と伝え、調整してもらいましょう。B型では、本来プレッシャーをかけるべきではありません。
人間関係のトラブルを解決する
仲裁を求める 他の利用者とのトラブル、スタッフとの関係がストレスになっている場合、サービス管理責任者などに相談して、仲裁や環境調整をしてもらいましょう。
作業環境を調整してもらう
感覚過敏への配慮
- 騒音が苦手 → 静かな場所で作業させてもらう、イヤホンの使用許可
- 光が苦手 → 照明の調整、サングラスの使用許可
- 人の気配が苦手 → 少し離れた場所で作業させてもらう
カウンセリングを受ける
専門的サポート 精神的な負担が大きい場合、カウンセリングを受けることも有効です。事業所に臨床心理士などがいる場合は相談しましょう。
主治医に相談する
薬の調整 不安が強い、うつ症状がある場合、主治医に相談して薬を調整してもらうことも検討しましょう。
リラクゼーション法を学ぶ
自分でできる対処法
- 深呼吸
- 筋弛緩法
- マインドフルネス
- 好きな音楽を聴く
休憩時間にリラックスする方法を身につけましょう。
目標を再確認する
意義を見出す 「何のためにここに通っているのか」を再確認することで、モチベーションが回復することがあります。
スタッフに「きつい」と伝える方法
「きつい」とスタッフに伝えることに、抵抗を感じる方も多いでしょう。上手に伝える方法です。
正直に、具体的に伝える
遠慮しない 「作業がきついです」と正直に伝えましょう。具体的に何がきついのかも伝えます。
伝え方の例:
- 「立ち仕事が体力的にきついです。座って作業させてもらえませんか」
- 「この作業は細かすぎて、目と手が疲れてきついです。別の作業に変えてもらえませんか」
- 「ノルマがプレッシャーになっていて、精神的にきついです」
タイミングを選ぶ
忙しくない時に スタッフが忙しくない時間帯を選んで、落ち着いて話しましょう。休憩時間、作業開始前、終了後などが良いでしょう。
我慢の限界になる前に
早めに相談 我慢して限界まで耐えるのではなく、「ちょっときついな」と感じた段階で相談しましょう。早めに対処すれば、大きな問題にならずに済みます。
「できない自分が悪い」と思わない
配慮を求めることは正当 「こんなことで相談するのは甘えだ」「自分の努力不足だ」と思う必要はありません。配慮を求めることは、あなたの権利です。
書面で伝えることも可能
口頭が難しい場合 直接言うのが難しい場合、メモや手紙で伝えることもできます。
作業を変更してもらう方法
作業内容が合わない場合、変更してもらうことは可能です。
変更を申し出る
遠慮せず伝える 「この作業は自分に合わないので、別の作業に変えてもらえませんか」と申し出ましょう。
理由を説明する
なぜ合わないのか
- 体力的に無理
- 細かい作業が苦手
- 興味が持てない
- 感覚過敏で耐えられない
理由を説明すると、スタッフも理解しやすくなります。
やりたい作業を提案する
代替案を出す 「この作業の代わりに、○○の作業をやらせてもらえませんか」と、具体的な代替案を提案すると、調整しやすくなります。
個別支援計画の見直し
正式な変更 作業内容の変更を、個別支援計画に反映してもらいましょう。そうすることで、スタッフ全員が配慮してくれます。
試しにやってみる
体験してから決める 別の作業を試しにやってみて、自分に合うか確認してから、正式に変更を決めることもできます。
「きつい」と感じる自分を責めないために
「きつい」と感じることに罪悪感を抱いている方へ、伝えたいことがあります。
「きつい」は正常な反応
体からのサイン 「きつい」と感じることは、「これ以上無理をすると体を壊す」という体からの大切なサインです。このサインを無視することの方が問題です。
他の人と比較しない
人それぞれ 他の人が楽々やっていても、あなたがきついと感じるのは当然です。体力、障がいの特性、体調、経験など、すべてが人それぞれ違います。
「軽作業」でもきついことがある
「軽」の意味 「軽作業」の「軽」は、「誰にでも簡単」という意味ではなく、「専門的なスキルが不要」という意味です。軽作業でも、体力的・精神的にきついことは十分あります。
無理をすることが「頑張る」ではない
本当の頑張り 無理を続けて体を壊すことは、「頑張っている」のではなく、「無謀」です。本当の頑張りとは、自分の限界を知り、適切に休み、長く続けることです。
配慮を求めることは甘えではない
合理的配慮 障がいのある方が配慮を求めることは、「甘え」ではなく、「権利」です。自分に合った環境で働くことは、当然のことです。
B型は「無理なく働く場所」
本来の目的 B型事業所は、「無理をしてでも生産性を上げる場所」ではなく、「一人ひとりのペースで、無理なく働く場所」です。きついと感じたら、調整してもらうのが当然です。
まとめ:きつさを我慢せず、適切に対処しよう
就労継続支援B型事業所の作業が「きつい」と感じる理由には、長時間の立ち仕事、重いものを持つ作業、細かい手作業、同じ姿勢を続ける、通所自体の負担などの体力的理由、プレッシャーとノルマ、ミスへの不安、対人関係のストレス、集中力の持続困難、感覚過敏などの精神的理由、興味のない作業、能力に合わない作業、苦手な作業などの作業内容の問題、症状の悪化、睡眠不足、栄養不足などの体調・健康面の問題があります。
「きつさ」には、身体的、精神的、認知的、感覚的、モチベーション的な種類があり、それぞれに適した対処法があります。
体力的にきつい場合は、休憩を増やす、座って作業する、作業の負担を軽減する、通所日数・時間を減らす、作業内容を変更する、通所方法を見直す、体力をつけるなどの対処法があります。
精神的にきつい場合は、スタッフに相談する、プレッシャーを減らす、人間関係のトラブルを解決する、作業環境を調整する、カウンセリングを受ける、主治医に相談する、リラクゼーション法を学ぶ、目標を再確認するなどの対処法があります。
スタッフに「きつい」と伝える際は、正直に具体的に、タイミングを選んで、我慢の限界になる前に、「できない自分が悪い」と思わずに伝えましょう。作業の変更も遠慮なく申し出てください。
そして何より、「きつい」と感じる自分を責めないでください。「きつい」は正常な体からのサイン、他の人と比較する必要はなく、「軽作業」でもきついことはあり、無理をすることが頑張ることではなく、配慮を求めることは甘えではありません。
B型事業所は、「無理なく働く場所」です。きつさを我慢せず、適切に対処し、スタッフと協力しながら、自分に合った働き方を見つけてください。そうすることで、長く安定して通い続けることができます。応援しています。

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