はじめに
就労継続支援B型事業所は、障害のある方が自分のペースで働ける場として、多くの方に利用されています。しかし、「工賃が少ないから意味がない」「A型の方がいいのでは?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
本記事では、就労継続支援B型のメリットとデメリット、どんな人に向いているのか、そして最大限活用するためのポイントについて詳しく解説します。
就労継続支援B型とは(基本のおさらい)
基本的な仕組み
就労継続支援B型は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つで、一般企業での就労が困難な方に、働く場を提供するサービスです。
主な特徴
- 雇用契約を結ばない
- 工賃として報酬を受け取る(月平均約1.6万円)
- 体調や能力に合わせた柔軟な働き方が可能
- 年齢制限は原則18歳以上
A型との違い
| 項目 | B型 | A型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | なし | あり |
| 給料 | 工賃(月平均1.6万円) | 最低賃金以上(月平均8万円) |
| 労働時間 | 柔軟(週数時間〜) | 週20〜30時間程度 |
| 出勤の義務 | 緩やか | 比較的厳しい |
| 対象者 | 幅広い | 比較的就労能力が高い方 |
就労継続支援B型のメリット
1. 柔軟な働き方ができる
最大のメリット 体調や能力に合わせて、無理なく働けることです。
具体的な柔軟性
通所日数
- 週1日〜週5日まで調整可能
- 「今週は調子が悪いから週2日」といった変更もOK
- 体調の波に合わせられる
通所時間
- 1日1〜2時間からでもOK
- 午前だけ、午後だけも可能
- 徐々に時間を増やすこともできる
遅刻・早退・欠席
- 体調不良での急な休みも認められやすい
- 遅刻しても大きな問題にならない
- 通院日に合わせた調整が可能
メリットを受けられる人
- 精神障害で体調の波がある方
- 疲れやすい方
- 長時間の就労が難しい方
- リハビリ段階の方
2. プレッシャーが少ない
雇用契約がないメリット 雇用契約がないため、A型や一般就労と比べて心理的負担が軽くなります。
具体的な点
- 解雇の心配がない
- ノルマがない、または緩い
- 遅刻・欠勤への罰則がない
- 「働かなければ」というプレッシャーが少ない
- 失敗しても温かく見守ってもらえる
メリットを受けられる人
- プレッシャーに弱い方
- 失敗体験が多く自信を失っている方
- 不安が強い方
- 完璧主義で自分を追い込みやすい方
3. 社会とのつながりを持てる
社会参加の意義 家に引きこもるのではなく、外に出て人と関わることで、多くのメリットがあります。
具体的な効果
孤立の防止
- 同じ立場の仲間ができる
- スタッフとの関わり
- 居場所ができる
- 話し相手ができる
生活リズムの確立
- 決まった時間に起きる
- 外出する習慣
- 規則正しい生活
- 昼夜逆転の防止
社会性の維持・向上
- あいさつ、報告・連絡・相談
- 人との適切な距離感
- 協調性
- コミュニケーションスキル
メリットを受けられる人
- 引きこもりがちな方
- 生活リズムが乱れている方
- 人間関係が苦手だが、少しずつ慣れたい方
4. スキル・能力の向上
様々なスキルが身につく 作業を通じて、仕事に必要なスキルを学べます。
身につくスキルの例
作業スキル
- パソコン操作
- 軽作業(組み立て、検品など)
- 調理、接客
- 清掃技術
- データ入力
- 農作業
就労スキル
- 時間を守る
- 報告・連絡・相談
- 指示の理解と実行
- 集中力、持続力
- 体力、忍耐力
ビジネスマナー
- あいさつ
- 言葉遣い
- 身だしなみ
- 電話対応
メリットを受けられる人
- 将来的に一般就労を目指す方
- 新しいスキルを身につけたい方
- 就労経験が少ない方
5. 自己肯定感の向上
「できる」体験の積み重ね 小さな成功体験を積み重ねることで、自信を回復できます。
具体的な効果
- 作業ができた達成感
- 工賃をもらえる喜び
- スタッフや仲間からの承認
- 「役に立っている」という実感
- 「自分にもできることがある」という自信
メリットを受けられる人
- 失敗体験が多く、自信を失っている方
- 自己肯定感が低い方
- 存在価値を感じられない方
6. 収入が得られる
工賃の意義 金額は少なくても、自分で働いて得たお金は大きな意味を持ちます。
工賃の活用
- 趣味や楽しみに使える
- 家族への感謝の気持ちを形にできる
- 小遣いとして自由に使える
- 貯金ができる
- 「稼いでいる」という実感
障害年金との併給 障害年金と工賃は両方受け取れます。合わせることで生活がより安定します。
平均工賃
- 全国平均:月額約16,000円
- 地域や事業所により差がある(数千円〜3万円以上)
メリットを受けられる人
- 少しでも収入を得たい方
- 働いて稼ぐ経験をしたい方
- 障害年金だけでは生活が厳しい方
7. 専門的な支援が受けられる
支援体制 B型事業所には、就労支援の専門スタッフがいます。
受けられる支援
個別支援計画
- 一人ひとりの目標設定
- 定期的な面談
- 進捗の確認と計画の見直し
生活面の相談
- 体調管理
- 金銭管理
- 対人関係の悩み
- 家族との関係
就労支援
- 一般就労へのステップアップ支援
- 履歴書の書き方
- 面接練習
- 職場定着支援
関係機関との連携
- 医療機関
- 相談支援事業所
- ハローワーク
- 行政機関
メリットを受けられる人
- 一人では就労が難しい方
- 生活面でもサポートが必要な方
- 将来的に一般就労を目指す方
8. 利用期間に制限がない
長期利用が可能 就労移行支援(原則2年)と異なり、B型には利用期間の制限がありません。
メリット
- 焦らず、自分のペースで
- 長期的に安定した居場所
- 年齢を重ねても利用できる
- 一般就労が難しくても、働き続けられる
メリットを受けられる人
- 長期的に安定した場所を求める方
- 一般就労が困難で、生涯B型で働きたい方
- 高齢になっても働き続けたい方
9. 送迎サービスがある(事業所による)
通所の負担軽減 多くのB型事業所で送迎サービスを提供しています。
メリット
- 一人で通うのが不安な方も安心
- 交通費の節約
- 公共交通機関が苦手でも通える
- 悪天候でも通いやすい
メリットを受けられる人
- 一人で外出するのが不安な方
- 公共交通機関が苦手な方
- 遠方から通う方
10. 多様な事業所から選べる
選択肢の豊富さ 全国に約1万以上のB型事業所があり、様々な作業内容、雰囲気の事業所があります。
選べる幅
- IT、農業、飲食、軽作業など多様な作業
- 小規模でアットホームな事業所
- 大規模で設備が充実した事業所
- 専門的なスキルが学べる事業所
メリットを受けられる人
- 自分に合った作業内容を探したい方
- 雰囲気を重視する方
- 特定のスキルを学びたい方
就労継続支援B型のデメリット
1. 工賃が少ない
最大のデメリット 平均月額1〜2万円程度と、生活費としては不十分です。
影響
- 経済的自立は難しい
- 家族の支援や障害年金が必要
- A型や一般就労と比べて収入が少ない
対策
- 工賃の高い事業所を選ぶ
- 障害年金を併用する
- 将来的にA型や一般就労を目指す
2. 社会保険に加入できない
保障の不足 雇用契約がないため、社会保険(健康保険、厚生年金)に加入できません。
影響
- 国民健康保険、国民年金に自分で加入が必要
- 将来の年金額が少なくなる可能性
- 傷病手当金などの保障がない
対策
- 国民年金の免除制度や付加年金を検討
- 障害年金の受給
- 家族の扶養に入る(条件を満たす場合)
3. 雇用保険がない
失業時の保障なし B型を辞めても、失業保険は受けられません。
影響
- 次の仕事が見つかるまでの収入がない
- 転職時の不安
対策
- 貯金をする
- 次の進路を決めてから辞める
- 相談支援事業所のサポートを受ける
4. キャリアアップが限定的
成長の限界 同じ作業を繰り返すことが多く、大きなキャリアアップは期待しにくい。
影響
- スキルの伸びに限界がある
- 一般就労への移行が難しい場合もある
- モチベーションの維持が難しいことも
対策
- 一般就労を目指す場合は、就労移行支援も検討
- 事業所内で新しい作業に挑戦
- 資格取得などを並行して行う
5. 周囲の理解が得にくい場合がある
社会的認知の低さ B型で働いていることを、周囲が理解してくれないことがあります。
影響
- 「働いていない」と誤解される
- 「もっと頑張れるのでは?」と言われる
- 自分自身も「これでいいのか」と悩む
対策
- 自分の状況を理解してくれる人を大切にする
- B型は立派な社会参加であると認識する
- 必要なら周囲に説明する
6. 事業所による質の差
サービスの質のばらつき 事業所によって、支援の質、工賃、雰囲気などに大きな差があります。
影響
- 合わない事業所に通うストレス
- 期待と現実のギャップ
- 工賃や支援の質への不満
対策
- 複数の事業所を見学・体験する
- 合わない場合は変更を検討
- 相談支援専門員に相談
7. 利用料がかかる場合がある
自己負担の可能性 所得に応じて、利用料の自己負担が発生することがあります。
負担上限月額
- 生活保護世帯:0円
- 低所得世帯:0円
- 一般所得世帯Ⅰ:9,300円
- 一般所得世帯Ⅱ:37,200円
影響 多くの方は自己負担0円ですが、世帯所得が高い場合は負担が発生します。
対策
- 事前に自己負担額を確認
- 工賃と利用料のバランスを考慮
B型が向いている人
こんな人におすすめ
体調の波がある人
- 精神障害で調子に波がある
- 疲れやすく、長時間働けない
- 一定のペースで働き続けるのが難しい
プレッシャーに弱い人
- 失敗が怖い
- 完璧主義で自分を追い込みやすい
- 不安が強い
就労経験が少ない人
- 働いた経験がほとんどない
- ブランクが長い
- 社会に出ることに不安がある
社会参加の第一歩として
- 引きこもりから抜け出したい
- 生活リズムを整えたい
- 人との関わりを少しずつ増やしたい
長期的に安定した場所を求める人
- 一般就労は難しいが、働き続けたい
- 年齢を重ねても働きたい
- 居場所がほしい
B型を最大限活用するポイント
1. 自分に合った事業所を選ぶ
見学・体験を必ず行う 複数の事業所を比較し、自分に合った場所を見つけましょう。
重視すべき点
- 作業内容
- 雰囲気
- スタッフの対応
- 通いやすさ
- 工賃
2. 目標を持つ
短期目標と長期目標
- 短期:週3日通う、1日4時間働く
- 長期:一般就労を目指す、新しいスキルを身につける
目標がモチベーションになる 目標があることで、通所の意味が明確になります。
3. スタッフと良好な関係を築く
相談しやすい関係 困ったことや悩みがあれば、早めにスタッフに相談しましょう。
定期面談を活用 個別支援計画の面談で、目標や課題を共有します。
4. 無理をしすぎない
自分のペースを守る 調子が悪い時は休む、無理に長時間働かない。
「できること」を少しずつ増やす 焦らず、段階的にステップアップしましょう。
5. 仲間との交流を楽しむ
孤立しない 同じ立場の仲間との交流は、大きな支えになります。
情報交換 困ったことや工夫していることを共有し合いましょう。
6. 将来を見据える
ステップアップの可能性
- B型から一般就労へ
- B型からA型へ
- 長期的にB型で働き続ける
どの選択も正解 自分の状況や希望に合わせて、柔軟に考えましょう。
まとめ
就労継続支援B型には、多くのメリットがあります。
主なメリット
- 柔軟な働き方ができる
- プレッシャーが少ない
- 社会とのつながりを持てる
- スキル・能力の向上
- 自己肯定感の向上
- 収入が得られる
- 専門的な支援が受けられる
- 利用期間に制限がない
主なデメリット
- 工賃が少ない
- 社会保険に加入できない
- キャリアアップが限定的
- 事業所による質の差
B型が向いている人
- 体調の波がある人
- プレッシャーに弱い人
- 就労経験が少ない人
- 社会参加の第一歩として
- 長期的に安定した場所を求める人
大切なこと B型は「一般就労ができない人のための妥協の場」ではありません。自分のペースで働きながら、社会とつながり、スキルを磨き、自信を回復できる大切な場です。
工賃が少ないからといって価値がないわけではなく、働く経験そのものに大きな意義があります。自分に合った事業所を見つけ、無理なく、自分らしく働くことで、充実した日々を送ることができます。
B型の利用を検討している方は、まず見学や相談から始めてみてください。自分に合った事業所が見つかれば、新しい一歩を踏み出すことができるでしょう。

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