「B型事業所に通いたいけど勇気が出ない」「見学の予約すらできない」「申し込んだのに行く直前になると怖くなる」就労継続支援B型の利用を検討しているものの、一歩が踏み出せずに悩んでいる方は少なくありません。長いブランク、人間関係への不安、失敗への恐怖、自信のなさ、「こんな自分が行っていいのか」という思い。様々な不安や恐怖が重なり、前に進めない状態は、非常に苦しいものです。しかし、その不安は決して異常なことではなく、多くの人が同じように感じています。本記事では、B型に通う勇気が出ない理由とその心理、不安の正体を理解する方法、勇気を育てる考え方、小さな一歩を踏み出すための具体的な方法、そして実際に通い始めた人たちの経験について詳しく解説していきます。
B型に通う勇気が出ない理由
なぜB型に通う勇気が出ないのか、その理由を整理しましょう。多くの場合、複数の理由が重なっています。
1. 長期のブランクへの不安
社会から離れていた期間の長さ
数ヶ月、数年、場合によっては10年以上、働いていない、外出もほとんどしていない。この長いブランクが、大きな心理的ハードルになります。
- 「こんなに長く働いていないのに大丈夫か」
- 「社会に適応できるのか」
- 「働く感覚を忘れてしまった」
- 「もう無理なのではないか」
2. 人間関係への恐怖
他人と関わることへの不安
過去のトラウマ、社交不安、対人恐怖などにより、人と関わることが怖いと感じます。
- 「どんな人がいるのか怖い」
- 「人とうまく話せないかもしれない」
- 「いじめられないか」
- 「変な人だと思われないか」
- 「職員に怒られないか」
- 「孤立してしまうのではないか」
3. 失敗への恐怖
また失敗するのではないかという不安
過去に仕事や学校で失敗した経験、挫折した経験が、トラウマになっています。
- 「またうまくいかないのではないか」
- 「続かないのではないか」
- 「迷惑をかけるのではないか」
- 「期待を裏切ってしまうのではないか」
4. 自信のなさ
「自分には無理」という思い込み
自己肯定感の低さから、「自分には何もできない」と思い込んでいます。
- 「自分には能力がない」
- 「作業についていけないのではないか」
- 「役に立たないのではないか」
- 「足を引っ張るだけではないか」
5. 変化への恐怖
現状を変えることへの抵抗
今の生活(引きこもり、無職など)が苦しくても、それに慣れてしまっています。変化することへの恐怖があります。
- 「今の生活が変わるのが怖い」
- 「新しい環境が怖い」
- 「失敗するくらいなら現状維持の方がマシ」
- 「期待してまた裏切られるのが怖い」
6. 「B型に通う自分」への抵抗感
スティグマと劣等感
「B型=障害者の作業所」というイメージから、劣等感や恥の感情を感じます。
- 「B型に通うなんて恥ずかしい」
- 「一般企業で働けない自分はダメだ」
- 「友人に言えない」
- 「こんなところに通う人生でいいのか」
7. 完璧主義
完璧に準備できないと動けない
「完璧に準備ができてから」と思い、いつまでも準備が整いません。
- 「もっと体調が良くなってから」
- 「もっと自信がついてから」
- 「もっとスキルを身につけてから」
しかし、完璧な状態は永遠に来ません。
8. 過去のトラウマ
過去の辛い経験がフラッシュバック
過去の職場でのパワハラ、いじめ、失敗などのトラウマが、新しい場所に行くことを困難にします。
9. 家族や周囲の目
周囲の反応が怖い
家族や知人に「B型に通う」と言えない、知られたくないという思いがあります。
10. 朝起きる不安
生活リズムの乱れ
夜型生活、不規則な睡眠リズムのため、「朝決まった時間に起きられるか」という不安があります。
11. 通所自体への負担
外出すること自体が困難
長期間引きこもっていると、外出すること自体が大きな負担になります。
- 「電車に乗れるか」
- 「人混みが怖い」
- 「迷わずたどり着けるか」
- 「体力がもつか」
12. 経済的な不安
工賃の低さ
B型の工賃は月額平均16,000円程度と低く、「これで意味があるのか」と疑問を感じます。
不安の正体を理解する
不安は、実態よりも大きく感じられることが多いです。不安の正体を理解することで、少し楽になります。
不安は想像の産物
実際に起こっていないことへの心配
不安の大部分は、「もしかしたら〇〇が起こるかもしれない」という想像です。実際には起こらないことがほとんどです。
心理学の研究では、心配事の約85%は実際には起こらず、起こった15%のうち79%は自分で対処できたという結果があります。
最悪のシナリオは起こりにくい
破局化思考
不安が強いと、最悪のシナリオばかり想像してしまいます(破局化)。しかし、実際には最悪のケースが起こる確率は非常に低いです。
不安は行動することで減る
回避すると不安は増大する
不安だから避ける→ますます不安になる、という悪循環に陥ります。逆に、小さく行動することで、不安は減っていきます。
完璧でなくていい
60点でも大丈夫
B型は、完璧を求める場所ではありません。できることから、少しずつで良いのです。
失敗しても大丈夫
失敗は終わりではない
もし合わなくても、辞めればいいだけです。命を取られるわけではありません。
勇気を育てる考え方
勇気が出ない状態から、少しずつ勇気を育てる考え方を紹介します。
1. 「完璧に準備できてから」を捨てる
準備は永遠に終わらない
「もっと準備ができてから」と思っていると、永遠に動けません。不完全でも、今できる範囲で動くことが大切です。
「準備ができてから行動する」ではなく、「行動しながら準備する」
2. 小さく始める
いきなり通所しなくていい
いきなりフルで通所する必要はありません。小さなステップから始めます。
ステップの例
- パンフレットを見る、Webサイトを見る
- 電話で問い合わせる
- 見学の予約をする
- 見学に行く(家族と一緒でもいい)
- 体験利用を1日だけ
- 週1日から通所開始
- 徐々に日数を増やす
3. 「勇気がなくても行動できる」
勇気が湧いてから動くのではない
「勇気が出たら行動する」と思っていると、永遠に動けません。
逆です。「行動することで勇気が出る」のです。
不安を抱えたまま、震えながらでも、小さく動くことで、勇気は後からついてきます。
4. 「失敗してもいい」を許可する
失敗は終わりではない
もし通ってみて合わなかったら、辞めればいいだけです。それは失敗ではなく、「合わなかった」という情報を得たことです。
5. 「自分のペース」を大切にする
他人と比べない
「他の人はもっと早く動けている」と比較する必要はありません。あなたのペースで進めばいいのです。
6. 「試しに」という気持ち
コミットしすぎない
「絶対に続けなければ」と思うと、プレッシャーが大きくなります。
「とりあえず試しに見学だけ」「体験だけしてみる」という軽い気持ちで始める方が楽です。
7. サポートを借りる
一人で頑張らない
- 家族や友人に付き添ってもらう
- 相談支援専門員に助けを求める
- 医師やカウンセラーに背中を押してもらう
一人で全部やる必要はありません。
8. 「今」に集中する
先のことを考えすぎない
「これから何年も通い続けられるか」「将来どうなるか」と先のことを考えすぎると、圧倒されます。
「今日見学に行く」「今週1回だけ行く」という「今」だけに集中します。
9. 自分に優しく
セルフコンパッション
「勇気が出ない自分はダメだ」と責めるのではなく、「不安なのは当然だよね」「よく頑張ってるよ」と自分に優しく声をかけます。
10. 「最悪のシナリオ」を現実的に考える
具体的に考えると恐怖が減る
漠然とした不安は大きく感じられますが、具体的に考えると、実は対処可能だと分かります。
例
- 不安 「人間関係がうまくいかない」
- 最悪のシナリオ 誰とも話せず孤立する
- 実際の対処 職員に相談する、別の事業所を探す、辞める
- 結論 最悪でも対処できる
小さな一歩を踏み出す具体的な方法
実際に一歩を踏み出すための、具体的で実践的な方法を紹介します。
ステップ1 情報収集から始める
まずは調べるだけ
- インターネットでB型事業所を検索する
- 地域の事業所のWebサイトを見る
- パンフレットを取り寄せる
「行動」ではなく、「情報を集めるだけ」という気持ちで始めます。
ステップ2 相談支援専門員に相談する
専門家に頼る
市区町村の障害福祉課、相談支援事業所に連絡し、相談支援専門員と面談します。
「B型に興味があるけど不安」と正直に伝えます。専門員が、あなたに合った事業所を提案してくれます。
ステップ3 電話での問い合わせ
まず電話で雰囲気を確かめる
いきなり見学ではなく、まず電話で問い合わせます。
電話で聞くこと
- 見学は可能か
- どんな作業をしているか
- 利用者の年齢層
- 雰囲気
電話での職員の対応で、ある程度雰囲気が分かります。
ステップ4 見学の予約
「見学するだけ」という気持ち
見学は、「利用する」という約束ではありません。「見るだけ」という気持ちで予約します。
ポイント
- 家族や支援者に付き添ってもらってもいい
- 複数の事業所を見学する予定にする(一つだけだとプレッシャー)
ステップ5 見学当日の準備
不安を軽減する準備
- 経路を事前に確認 Google Mapなどで確認、可能なら下見
- 時間に余裕を持つ 遅刻の不安を減らす
- 質問リストを用意 聞きたいことをメモしておく
- リラックス法 深呼吸、リラックスできる音楽を聴く
ステップ6 見学に行く
観察するだけでいい
見学では、以下を観察します。
- 職員の対応は丁寧か
- 雰囲気は穏やかか
- 作業内容は自分にもできそうか
- 清潔か
- 他の利用者の様子
その場で決めなくていい 「検討します」でOK
ステップ7 体験利用の検討
見学して「悪くないかも」と思ったら
体験利用を申し込みます。多くの事業所で、数日〜数週間の体験が可能です。
ポイント
- 「とりあえず1日だけ」でもいい
- 「合わなければ辞めればいい」という気持ちで
ステップ8 体験初日
最初はみんな緊張する
初日は誰でも緊張します。それは普通のことです。
初日のポイント
- 挨拶をする(「よろしくお願いします」だけでOK)
- 分からないことは聞く
- 無理をしない(疲れたら伝える)
- 完璧を目指さない
ステップ9 振り返りと判断
体験後に冷静に判断
体験後、以下を振り返ります。
- 思ったより良かった点
- 不安だった点
- 続けられそうか
- 他の事業所も見たいか
ステップ10 利用開始または別の選択
合えば利用開始、合わなければ別の場所
- 合うと思えば、利用契約を結ぶ
- 合わないと思えば、別の事業所を探すか、他の選択肢を検討
不安を和らげる具体的なテクニック
不安が強いときに使える、心理的テクニックを紹介します。
深呼吸法
4-7-8呼吸法
- 4秒かけて鼻から息を吸う
- 7秒息を止める
- 8秒かけて口から吐く
- これを4回繰り返す
不安や緊張が和らぎます。
グラウンディング
5-4-3-2-1法
不安で頭がいっぱいになったとき、現実に意識を戻します。
- 見えるものを5つ言う
- 触れるものを4つ感じる
- 聞こえる音を3つ言う
- 匂いを2つ感じる
- 味を1つ感じる
心配事を書き出す
外在化する
不安を紙に書き出します。頭の中でぐるぐる回っている不安を、外に出すことで、少し客観的に見られます。
「今できること」リスト
行動可能なことに焦点を当てる
不安は、「どうしようもないこと」に焦点が当たっています。
「今できること」をリストアップし、一つずつ実行します。
応援者を思い浮かべる
心の支え
自分を応援してくれる人(実在でも架空でも)を思い浮かべ、「大丈夫だよ」と声をかけてもらうイメージをします。
アファメーション
肯定的な言葉を自分にかける
- 「私は一歩ずつ進んでいる」
- 「不安でも行動できる」
- 「失敗しても大丈夫」
- 「私は頑張っている」
実際に通い始めた人の経験
実際にB型に通い始めた人たちの経験を知ることで、勇気が湧くかもしれません。
よくあるパターン1 「思ったより大丈夫だった」
不安は予想より小さかった
多くの人が、「実際に行ってみたら、思ったより大丈夫だった」と言います。
- 職員が優しかった
- 作業は思ったより簡単だった
- 他の利用者も同じように不安を抱えていた
- 無理なく自分のペースでできた
よくあるパターン2 「最初はきつかったが慣れた」
適応には時間がかかる
最初の数週間〜数ヶ月はきつかったが、徐々に慣れてきたという人も多いです。
- 最初は週1日から始めた
- 徐々に日数を増やした
- 3ヶ月くらいで慣れてきた
よくあるパターン3 「合わなくて別の場所に変えた」
一つ目がダメでも大丈夫
最初の事業所が合わず、別の事業所に変えたら良かったという人もいます。
- 一つ目は雰囲気が合わなかった
- 二つ目の事業所は自分に合っていた
- 諦めずに探して良かった
よくあるパターン4 「居場所ができた」
人とのつながりができた
B型で、久しぶりに「居場所」を感じられたという人もいます。
- 友人ができた
- 職員が理解してくれた
- 一人じゃないと感じられた
専門家のサポートを活用する
一人で抱え込まず、専門家のサポートを活用しましょう。
相談支援専門員
伴走者
相談支援専門員は、あなたの状況を理解し、一緒に考えてくれます。
- 不安を伝える
- 一緒に事業所を探す
- 見学に付き添ってもらう
医師・カウンセラー
心理的サポート
主治医やカウンセラーに、不安を相談します。
- 不安への対処法を学ぶ
- 薬の調整(必要な場合)
- 背中を押してもらう
ピアサポーター
同じ経験をした人
同じようにB型を利用している、またはしていた人の話を聞くことも有益です。
- 地域の当事者会
- オンラインコミュニティ
まとめ
就労継続支援B型に通う勇気が出ないことは、決して珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません。長期のブランク、人間関係への不安、失敗への恐怖、自信のなさ、変化への抵抗など、様々な理由が重なり、一歩が踏み出せない状態になります。
しかし、不安の多くは想像の産物であり、実際には起こらないことがほとんどです。また、完璧に準備ができてから動く必要はなく、不完全でも、小さく始めることが重要です。
勇気が湧いてから行動するのではなく、行動することで勇気が湧いてきます。情報収集、相談、見学、体験という小さなステップを、一つずつ進めていきましょう。
もし合わなければ、別の場所を探せばいいだけです。失敗は終わりではなく、「合わなかった」という情報を得たことです。
一人で抱え込まず、相談支援専門員、医師、カウンセラー、家族、友人など、周囲のサポートを借りながら、自分のペースで進んでください。
あなたには、一歩を踏み出す力があります。その一歩は、完璧でなくていいのです。震えながらでも、不安を抱えたままでも、小さく動くことで、道は開けます。
焦らず、自分に優しく、一歩ずつ。あなたのペースで、前に進んでいってください。

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