就労継続支援B型と高齢者 年齢を重ねても働ける場所

はじめに

「もう60歳を過ぎているけど、B型事業所を利用できるのだろうか」「高齢になっても働く場所はあるのだろうか」「介護保険との違いは何だろう」高齢の障害者の方やそのご家族から、このような疑問の声を聞くことがあります。

高齢化社会が進む中、障害のある高齢者の方々が、生きがいを持ち、社会とのつながりを保ちながら生活していくことの重要性が増しています。就労継続支援B型は、年齢を重ねても、自分のペースで働き、社会参加を続けられる場として、高齢の障害者の方々にも大きな意味を持っています。

本記事では、高齢者の方がB型事業所を利用する際の制度、メリット、注意点、介護保険サービスとの関係など、詳しく解説していきます。

高齢者とB型事業所 基本的な理解

年齢と利用資格

基本的に年齢上限はない 就労継続支援B型には、原則として年齢の上限はありません。障害福祉サービスとして、高齢になっても利用を続けることができます。

ただし65歳が一つの節目 65歳になると、介護保険制度が優先適用されるため、状況によっては利用が制限される場合があります。

65歳問題とは

介護保険優先の原則 65歳以上の方は、介護保険サービスが優先されます。これは「介護保険優先の原則」と呼ばれています。

具体的には

  • 65歳になると、まず介護保険サービスの利用を検討する
  • 介護保険で同様のサービスがある場合は、原則として介護保険を利用
  • ただし、例外的にB型の継続利用が認められる場合もある

65歳以降もB型を利用できるケース

1. 65歳前からB型を利用している場合 65歳になる前からB型事業所を利用していた方は、継続して利用できることが多くあります。

2. 介護保険サービスでは適切な支援が受けられない場合 介護保険のデイサービスなどでは、本人のニーズに合った支援が提供できない場合、B型の利用が認められます。

具体例

  • 専門的な作業訓練が必要
  • 就労を通じた社会参加を希望している
  • 介護保険サービスの内容が合わない

3. 市町村が特に必要と認めた場合 個別の状況を考慮し、市町村がB型の利用が適切と判断した場合に認められます。

判断のポイント

  • 本人の心身の状態
  • 生活状況
  • これまでの利用実績
  • 介護保険サービスとの比較

高齢者がB型を利用するメリット

1. 生きがいと社会参加

働くことの意味 高齢になっても働くことは、単なる収入以上の意味があります。

得られるもの

  • 社会とのつながり
  • 自分の役割
  • 達成感
  • 自己肯定感
  • 生活の張り合い

孤立の防止 家に閉じこもりがちになることを防ぎ、社会との接点を持ち続けられます。

2. 認知症予防

脳の活性化 作業を通じて脳を使うことで、認知機能の維持・向上が期待できます。

効果的な活動

  • 手先を使う作業
  • 考えながら行う作業
  • コミュニケーション
  • 規則正しい生活

研究結果 社会参加や就労活動が、認知症予防に効果があることが研究で示されています。

3. 身体機能の維持

適度な活動 週に数日、数時間の活動は、身体機能の維持に役立ちます。

期待できる効果

  • 体力の維持
  • 筋力の低下防止
  • 転倒予防
  • 生活リズムの維持

無理のない範囲で 高齢者のペースに合わせた作業ができます。

4. 人との交流

孤独感の軽減 同世代や異世代の人との交流が、孤独感を軽減します。

コミュニケーション

  • 日常会話
  • 作業を通じた協力
  • 休憩時間の交流
  • イベントへの参加

友人ができる可能性 長年通所することで、仲間や友人ができることもあります。

5. 経済的な意味

工賃収入 少額でも、自分で稼いだお金は生活の足しになります。

平均工賃 全国平均で月額約16,000円程度ですが、高齢で利用日数が少ない場合は、それより少なくなることもあります。

使い道

  • 趣味や娯楽
  • 孫へのプレゼント
  • 貯蓄
  • 生活費の補助

6. 家族の負担軽減

介護者の休息 本人が通所している間、家族は休息を取ることができます。

レスパイトケア 介護する家族の心身の負担を軽減する効果があります。

家族関係の改善 本人に居場所があることで、家族関係が良好に保たれることもあります。

7. 介護保険サービスとの違い

「働く」という意識 デイサービスは「通所介護」ですが、B型は「働く場」です。この違いが、本人の意識や意欲に大きく影響します。

より自立的 介護されるのではなく、働いて工賃を得るという自立的な立場を保てます。

専門的な作業 介護保険のデイサービスにはない、専門的な作業訓練や就労支援があります。

高齢者に適したB型事業所の特徴

1. 体力的に無理のない作業

高齢者向けの作業例

軽作業

  • 箱折り、袋詰め(座ってできる)
  • 簡単な組立作業
  • シール貼り
  • 検品作業

手工芸

  • 小物作り
  • 刺繍
  • 編み物
  • アクセサリー製作

パソコン作業

  • データ入力
  • 文字起こし
  • 簡単な文書作成

農作業

  • 野菜の収穫(軽いもの)
  • 水やり
  • 草取り(座ってできる範囲)

2. 柔軟な利用時間

短時間利用が可能

  • 1日2〜3時間
  • 午前のみ、午後のみ
  • 体調に合わせた調整

休憩時間の確保

  • 頻繁な休憩
  • 休憩スペースの充実
  • 横になれる場所

3. バリアフリー環境

設備面

  • スロープ、手すり
  • エレベーター
  • 広いトイレ
  • 段差のない構造

安全面

  • 滑りにくい床
  • 明るい照明
  • 緊急時の対応体制

4. 医療・健康面のサポート

看護師の配置 看護師がいる事業所は、健康面で安心です。

健康管理

  • 血圧測定
  • 体調チェック
  • 服薬管理
  • 緊急時の対応

医療機関との連携 近隣の医療機関と連携している事業所は、緊急時に安心です。

5. 送迎サービス

高齢者にとって重要 送迎サービスがあると、通所の負担が大幅に軽減されます。

送迎の内容

  • 自宅まで迎えに来てくれる
  • 車椅子対応車両
  • 複数のルート
  • 柔軟な時間設定

6. 同世代の利用者

世代間交流も良いが 同世代の利用者がいると、話が合いやすく、居心地が良くなります。

多世代交流の価値 一方で、若い世代との交流も刺激になります。

7. 介護保険サービスとの併用に理解がある

両方を利用する場合 B型と介護保険サービス(デイサービスなど)を併用する場合、理解のある事業所を選びましょう。

介護保険サービスとの関係

介護保険とは

65歳以上の方が対象 65歳になると、自動的に介護保険の第1号被保険者になります。

要介護認定 介護が必要な状態にある場合、要介護認定を受けることができます。

認定区分

  • 要支援1・2
  • 要介護1〜5

B型と介護保険サービスの違い

項目就労継続支援B型介護保険デイサービス
目的就労訓練・社会参加介護・機能訓練
位置づけ働く場介護を受ける場
工賃ありなし
作業内容専門的な作業訓練レクリエーション中心
利用者の意識働いている介護されている
年齢層幅広い高齢者中心

併用は可能か

原則として併用可能 B型と介護保険サービスを併用することは可能です。

併用の例

  • 週2日 B型事業所
  • 週2日 デイサービス
  • 週1日 訪問介護

調整が必要 ケアマネージャーと相談支援専門員が連携して、サービス計画を調整します。

65歳を超えてB型を継続利用するには

ステップ1 相談支援専門員に相談 65歳になる前に、継続利用の希望を伝えましょう。

ステップ2 市町村に申請 継続利用の必要性を説明し、申請します。

申請時のポイント

  • B型利用の経緯と実績
  • 本人の希望と理由
  • 介護保険サービスでは代替できない理由
  • 継続利用の必要性

ステップ3 審査 市町村が個別に判断します。

認められやすいケース

  • 長年B型を利用してきた実績がある
  • 専門的な作業訓練が必要
  • 本人の強い希望がある
  • 介護保険サービスでは適切な支援が受けられない

高齢者がB型を利用する際の注意点

1. 体調管理

無理をしない 高齢になると体力が低下します。無理のないペースで利用しましょう。

こまめな休憩 疲れを感じたら、すぐに休憩を取ることが大切です。

水分補給 特に夏場は、こまめな水分補給を心がけましょう。

体調の変化に注意 体調に変化があれば、すぐに支援員に伝えましょう。

2. 転倒・事故のリスク

高齢者は転倒リスクが高い 足腰が弱くなると、転倒しやすくなります。

予防策

  • 滑りにくい靴を履く
  • 手すりを使う
  • 急がない
  • 整理整頓された環境を選ぶ

事業所の安全対策を確認 見学時に、安全対策がしっかりしているか確認しましょう。

3. 持病の管理

服薬管理 薬を飲み忘れないよう、事業所と情報を共有しましょう。

医療機関との連携 かかりつけ医に、B型を利用していることを伝えましょう。

緊急連絡先 事業所に、緊急連絡先を正確に伝えておきます。

4. 認知症の進行

認知症がある場合 軽度の認知症であれば、B型を利用できます。

作業内容の調整 認知機能に合わせて、作業内容を調整してもらいましょう。

見守りの強化 認知症の進行に応じて、支援員の見守りを強化してもらいます。

介護保険への移行 認知症が進行した場合、介護保険サービスへの移行を検討することもあります。

5. 家族・ケアマネージャーとの連携

情報共有 家族、ケアマネージャー、相談支援専門員、B型事業所の支援員が連携することが大切です。

定期的な見直し 心身の状態に応じて、利用内容を定期的に見直しましょう。

6. 終了のタイミング

いつまで利用するか 体力や認知機能の低下により、利用が難しくなる時期が来るかもしれません。

移行先の検討

  • 介護保険のデイサービス
  • 地域活動支援センター
  • 在宅サービス

本人の意思を尊重 可能な限り、本人の希望を尊重して決めましょう。

高齢者のB型利用事例

Aさん(68歳男性)のケース

背景 精神障害があり、55歳からB型事業所を利用。65歳になっても継続利用が認められました。

現在の利用状況

  • 週3日、1日4時間
  • 軽作業(箱折り、袋詰め)
  • 月額約10,000円の工賃

継続利用が認められた理由

  • 長年の利用実績
  • 本人の強い希望
  • 介護保険のデイサービスでは就労訓練ができない
  • 精神状態の安定に寄与している

Aさんの言葉 「ここに来ることが生活の張り合いです。働いて工賃をもらえることが嬉しい。デイサービスは『介護される』感じがして抵抗がありました」

Bさん(72歳女性)のケース

背景 知的障害があり、40代からB型事業所を利用。現在も継続中。

現在の利用状況

  • 週2日、1日3時間
  • 手工芸(小物作り)
  • 月額約6,000円の工賃
  • 介護保険のデイサービスも週1日利用

併用の理由 体力が落ちてきたため、B型は週2日に減らし、介護保険のデイサービスも利用開始。

Bさんの言葉 「B型では自分の好きな小物作りができて楽しい。デイサービスは体操やお風呂で体をケアできる。両方あって良かった」

Cさん(70歳男性)のケース

背景 身体障害(車椅子使用)があり、60歳からB型事業所を利用。

現在の利用状況

  • 週3日、1日4時間
  • パソコン作業(データ入力)
  • 月額約15,000円の工賃
  • 事業所の送迎サービスを利用

工夫 車椅子対応の事業所を選択。バリアフリー環境で快適に作業。

Cさんの言葉 「定年退職後、家にいるだけでは退屈でした。ここでパソコン作業をすることで、社会とつながっている実感があります」

Dさん(67歳女性)のケース

背景 発達障害(診断は60歳を過ぎてから)。診断後、B型事業所の利用を開始。

現在の利用状況

  • 週2日、1日3時間
  • 農作業(野菜の収穫、水やり)
  • 月額約8,000円の工賃

遅い診断でも大丈夫 高齢になってから発達障害の診断を受けても、B型を利用できます。

Dさんの言葉 「長年生きづらさを感じていましたが、診断を受けて納得しました。今は自分のペースで農作業をして、とても充実しています」

高齢の家族がいる方へ 家族ができること

1. 情報提供

B型の存在を教える 高齢の親や家族が、B型事業所の存在を知らない場合があります。情報を提供しましょう。

一緒に調べる インターネットで検索したり、パンフレットを取り寄せたりして、一緒に情報を集めましょう。

2. 見学・体験の同行

一緒に見学 一人で見学に行くのが不安な場合、家族が同行しましょう。

複数の事業所を見る 2〜3ヶ所を見学して、比較検討することが大切です。

3. 手続きのサポート

書類の準備 受給者証の申請など、書類の準備をサポートしましょう。

同行 市町村の窓口や相談支援事業所への訪問に同行します。

4. 通所のサポート

送迎 事業所の送迎サービスがない場合、家族が送迎することもできます。

持ち物の準備 忘れ物がないよう、一緒に準備しましょう。

5. 体調管理

日々の観察 通所後の様子、疲労度などを観察しましょう。

無理をさせない 疲れている様子があれば、休むことを勧めます。

6. コミュニケーション

事業所での様子を聞く 「今日はどうだった?」と声をかけ、話を聞きましょう。

褒める 「よく頑張ったね」「楽しそうで良かった」と肯定的な言葉をかけます。

7. 連携

ケアマネージャーとの連携 介護保険サービスも利用している場合、ケアマネージャーと情報共有しましょう。

相談支援専門員との連携 B型の利用状況について、相談支援専門員と定期的に話し合います。

よくある質問(FAQ)

Q1  何歳までB型を利用できますか?

A  原則として年齢の上限はありません。ただし、65歳以降は介護保険サービスが優先されるため、継続利用には市町村の判断が必要になります。体力や認知機能が維持できている限り、70代、80代でも利用している方はいます。

Q2  65歳になったら、自動的にB型が使えなくなりますか?

A  いいえ、自動的に使えなくなるわけではありません。65歳前からB型を利用していた場合、継続利用が認められることが多くあります。市町村に継続利用の申請をしましょう。

Q3  B型と介護保険のデイサービスを両方使うことはできますか?

A  できます。例えば週2日はB型、週2日はデイサービスという併用も可能です。ケアマネージャーと相談支援専門員が連携して、サービス計画を調整します。

Q4  高齢で体力がないのですが、B型を利用できますか?

A  利用できます。週1日、1〜2時間からでも大丈夫です。体力に合わせて、無理のないペースで利用しましょう。作業内容も、座ってできる軽作業など、体力に合わせたものを選べます。

Q5  認知症があってもB型を利用できますか?

A  軽度の認知症であれば利用できます。認知機能に合わせた作業内容や支援を受けられます。ただし、認知症が進行して支援が難しくなった場合は、介護保険サービスへの移行を検討することもあります。

Q6  車椅子でも通えるB型事業所はありますか?

A  あります。バリアフリー対応の事業所を選びましょう。見学時に、スロープ、エレベーター、広いトイレなどの設備を確認してください。車椅子対応の送迎車両がある事業所もあります。

Q7  高齢になって初めてB型を利用することはできますか?

A  できます。60代、70代から初めて利用を始める方もいます。ただし、65歳以上の場合は介護保険サービスが優先されるため、市町村と相談が必要です。

Q8  工賃は年金に影響しますか?

A  B型の工賃は「工賃」であり「給与」ではないため、基本的に年金には影響しません。ただし、金額によっては税金や社会保険に影響する場合があるので、詳しくは市町村や年金事務所に確認しましょう。

Q9  通院が多いのですが、B型を利用できますか?

A  利用できます。通院の日は休み、体調の良い日だけ通所するという柔軟な利用が可能です。事業所に通院のスケジュールを伝え、理解を得ましょう。

Q10  家族が高齢でB型を利用していますが、体力的に心配です

A  定期的に事業所の支援員、相談支援専門員、ケアマネージャー(利用している場合)と話し合い、本人の状態に合わせて利用内容を調整しましょう。無理のない範囲での利用が大切です。

まとめ 年齢を重ねても社会とつながり続ける

高齢になっても、働くこと、社会とつながることは、生きがいや健康維持において非常に重要です。就労継続支援B型は、年齢を重ねた障害者の方々が、自分のペースで社会参加を続けられる貴重な場所です。

大切なポイント

  1. 年齢は障壁ではない 65歳を超えても、B型を利用し続けることは可能です。
  2. 介護保険との併用も可能 B型と介護保険サービスを併用することで、より充実した生活を送れます。
  3. 無理のないペースで 週1日、短時間からでも大丈夫。体力に合わせて調整しましょう。
  4. 「働く」ことの意味 単なる収入ではなく、生きがい、社会とのつながり、自己肯定感が得られます。
  5. 認知症予防・健康維持 社会参加や適度な活動は、認知症予防や身体機能の維持に役立ちます。
  6. 家族のサポート 家族の理解とサポートが、高齢者のB型利用を支えます。
  7. 柔軟に見直す 心身の状態に応じて、利用内容や他のサービスへの移行を柔軟に検討しましょう。

相談窓口

  • 市区町村の障害福祉課
  • 地域包括支援センター
  • 相談支援事業所
  • ケアマネージャー(介護保険利用の場合)

年齢を重ねても、「働く」「社会とつながる」という選択肢があることを、ぜひ知っていただきたいと思います。高齢の障害者の方々が、生きがいを持ち、充実した日々を送れるよう、B型事業所が大きな役割を果たしています。

あなた、またはあなたの大切な家族が、年齢を重ねても社会とつながり続け、生き生きとした毎日を送れることを心から願っています。

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