はじめに
「B型事業所に通っているけれど、いつかは一般企業で働きたい」「B型から就職した人はいるのか」——そんな疑問や希望を持っている方は少なくありません。
結論から言えば、B型から一般就労への移行は可能です。ただし、B型の本来の目的、移行率の実態、成功のための準備など、知っておくべきことがあります。本記事では、B型から就職するための道筋、成功のポイント、そして実際の事例まで詳しく解説します。
B型の本来の目的
制度上の位置づけ
就労継続支援B型の定義 一般企業等での就労が困難な方に、働く場を提供するとともに、就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練を行うサービス。
重要なポイント
- 「一般就労が困難な方」が対象
- しかし「就労に必要な知識・能力の向上」も目的の一つ
- つまり、一般就労を完全に諦めたわけではない
B型と就労移行支援の違い
| 項目 | B型 | 就労移行支援 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 働く場の提供 | 一般就労への移行 |
| 利用期間 | 制限なし | 原則2年 |
| 工賃 | あり(平均1.6万円) | なし(交通費等は支給される場合も) |
| 就労支援 | 事業所により差がある | 就職支援が中心 |
| 対象者 | 就労困難な方 | 一般就労を目指す方 |
どちらを選ぶべきか
- 一般就労を明確に目指す:就労移行支援
- まずは働くことに慣れたい、体調が不安定:B型
- B型で準備してから就労移行支援へ:段階的アプローチ
B型からの一般就労移行の実態
移行率のデータ
令和4年度の実績
- B型から一般就労への移行者数:約5,400人
- B型の全利用者数:約30万人
- 移行率:約1.8%
比較:就労移行支援の移行率
- 就労移行支援の就職率:約50〜60%
データからわかること B型から直接一般就労へ移行する人は少数派です。ただし、これにはいくつかの理由があります。
移行率が低い理由
1. 対象者の違い B型は「一般就労が困難な方」が対象であり、もともと一般就労を目指していない方も多い。
2. 年齢層の高さ B型利用者には高齢の方も多く、一般就労を目指さない方もいる。
3. 長期利用者が多い 利用期間に制限がないため、同じ事業所に何年も通う方が多い。
4. 事業所の支援体制 すべてのB型事業所が一般就労支援に力を入れているわけではない。
5. 本人の希望 一般就労よりも、B型での安定した生活を望む方も多い。
それでも就職は可能
移行率は低いですが、毎年5,400人以上がB型から一般就労へ移行しています。適切な準備と支援があれば、就職は十分可能です。
B型から就職できる人の特徴
1. 体調が安定している
重要な要件 一般就労では、ある程度安定した出勤が求められます。
目安
- 週5日(または最低週4日)通所できる
- 1日4〜6時間以上働ける
- 欠勤・遅刻が少ない
- 服薬や生活リズムが安定している
2. 基本的な就労スキルがある
求められるスキル
作業スキル
- 指示された作業ができる
- 一定の作業スピード
- 正確性
- 持続力・集中力
ビジネスマナー
- あいさつ、返事
- 報告・連絡・相談
- 時間を守る
- 身だしなみ
- 言葉遣い
コミュニケーション
- 必要なコミュニケーションが取れる
- 質問ができる
- 周囲と協調できる
3. 働く意欲がある
本人の希望
- 一般企業で働きたいという明確な意思
- 収入を増やしたい
- キャリアアップしたい
- 社会の一員として活躍したい
意欲の持続 就職活動は時間がかかることもあります。粘り強く取り組む意欲が必要です。
4. 自己理解ができている
障害の理解
- 自分の障害特性を理解している
- できること・できないことがわかっている
- 必要な配慮を説明できる
対処法を持っている
- ストレス対処法
- 体調管理の方法
- 困った時の対応方法
5. サポート体制がある
周囲の支援
- 家族の理解と協力
- 医療機関との連携
- 相談できる支援者
就労支援の利用
- B型事業所の支援
- 就労移行支援の利用
- ハローワーク、障害者就業・生活支援センターの活用
B型から就職するための道筋
ルート1:B型から直接一般就労へ
流れ
- B型で働きながらスキルを磨く
- 体調を安定させる
- 事業所スタッフやハローワークと相談
- 求人を探す
- 応募・面接
- 採用・就職
メリット
- 工賃を得ながら就職活動ができる
- 慣れた環境で準備できる
- 時間をかけられる
デメリット
- 就職支援が手厚くない場合がある
- 就職活動のノウハウが不足することも
- 時間がかかることがある
向いている人
- すでに一定のスキルがある
- 体調が安定している
- 明確な就職先のイメージがある
ルート2:B型→就労移行支援→一般就労
流れ
- B型で基礎的なスキルを身につける
- 体調を安定させる
- 就労移行支援へ移行
- 就職に特化した訓練を受ける
- 求職活動のサポートを受ける
- 採用・就職
メリット
- 就職に特化した訓練が受けられる
- 求人開拓、面接練習など手厚い支援
- 職場実習の機会が多い
- 就職率が高い(50〜60%)
デメリット
- 就労移行支援中は工賃がない(事業所により交通費等の支給あり)
- 原則2年の利用期間制限
- B型を辞める必要がある
向いている人
- 就職を本気で目指したい
- 集中的に訓練したい
- 経済的に就労移行支援期間を乗り切れる
ルート3:B型→A型→一般就労
流れ
- B型でスキルを磨く
- A型へ移行
- より実践的な就労経験を積む
- 一般就労へステップアップ
メリット
- 段階的にステップアップできる
- A型で最低賃金以上の収入を得られる
- 雇用契約を結ぶ経験ができる
デメリット
- 時間がかかる
- A型の利用条件を満たす必要がある
- A型で安定して一般就労を目指さない場合も
向いている人
- 段階的にステップアップしたい
- 収入を得ながら準備したい
- A型の利用条件を満たせる
ルート4:B型と就労移行支援の併用
流れ
- B型に通いながら、就労移行支援も並行利用
- 両方のメリットを活かす
注意点
- 原則として併用は認められない
- 自治体や状況により例外的に認められる場合がある
- 相談支援専門員や市区町村に確認が必要
就職準備のステップ
ステップ1:自己理解を深める
自分の特性を知る
- 得意なこと・不得意なこと
- 体力、集中力の持続時間
- ストレス要因
- 必要な配慮
方法
- B型での作業を通じて自己分析
- スタッフとの面談
- 心理検査(WAIS等)の活用
ステップ2:基本的なスキルを身につける
就労スキル
- 時間を守る
- 報告・連絡・相談
- 指示の理解と実行
- 持続力、集中力
作業スキル
- B型での作業を確実にこなす
- スピードと正確性を上げる
- 新しい作業にチャレンジ
ビジネスマナー
- あいさつ、言葉遣い
- 身だしなみ
- 電話対応、メール
- 名刺交換
ステップ3:体調を安定させる
生活リズム
- 毎日決まった時間に起床
- 規則正しい食事
- 十分な睡眠
- 適度な運動
服薬管理
- 医師の指示通りに服薬
- 定期的な通院
- 自己判断で中断しない
ストレス管理
- ストレス対処法を身につける
- リラクゼーション
- 相談できる人を持つ
ステップ4:就職先を検討する
職種の検討
- B型での作業経験を活かせる仕事
- 興味・関心がある分野
- 体力的に続けられる仕事
- 必要な配慮が得られそうな職場
雇用形態の検討
- 一般雇用(オープン/クローズ)
- 障害者雇用
- パート・アルバイト
- 正社員
ステップ5:就職活動の準備
履歴書・職務経歴書
- B型での経験も記載
- 得意なこと、できることをアピール
- 障害への配慮事項(障害者雇用の場合)
面接練習
- 自己PR
- 志望動機
- 質問への回答
- 障害の説明(必要な場合)
職場実習
- 実習の機会があれば積極的に参加
- 実際の職場を体験
- 自分に合うか確認
ステップ6:支援機関の活用
ハローワーク(障害者窓口)
- 求人情報の提供
- 職業相談
- 障害者向け求人
- トライアル雇用の紹介
障害者就業・生活支援センター
- 就職準備から職場定着まで一貫した支援
- 職業相談
- 実習・職場体験のあっせん
- 職場定着支援
就労移行支援事業所
- 就職に特化した訓練
- 求人開拓
- 面接同行
- 職場定着支援
B型事業所のスタッフ
- 就労支援
- 履歴書作成のサポート
- 面接練習
- 情報提供
就職後の定着支援
職場定着が重要
せっかく就職しても、早期に離職してしまっては意味がありません。
離職率のデータ 障害者の1年後の職場定着率は約70〜80%(障害種別により差がある)。つまり、20〜30%は1年以内に離職しています。
定着支援の内容
就労定着支援サービス 就労移行支援等を利用して一般就労した方が、就労に伴う環境変化に対応できるよう、事業所・家族との連絡調整等の支援を行うサービス。
サポート内容
- 定期的な企業訪問
- 本人との面談
- 企業との調整
- 生活面の相談
- 医療機関との連携
利用期間 就職後最長3年間
自分でできる定着のための工夫
無理をしない
- 体調管理を最優先
- 疲れたら休む
- 休日はしっかり休息
相談する
- 困ったことは早めに相談
- 職場の上司、同僚
- 支援機関のスタッフ
- 家族、友人
ストレス管理
- ストレスサインに気づく
- 対処法を実践
- 趣味や楽しみを持つ
生活リズムを保つ
- 規則正しい生活
- 十分な睡眠
- バランスの良い食事
成功事例
事例1:Aさん(30代男性、精神障害)
背景 うつ病で休職後、B型を利用開始。
B型での経験
- データ入力作業を担当
- 週3日、1日4時間から開始
- 徐々に週5日、1日6時間まで増やす
- パソコンスキルが向上
就職への道
- B型で2年間スキルを磨く
- 就労移行支援へ移行
- 1年間の訓練と就職活動
- IT企業に障害者雇用で就職(事務職)
現在 就職後3年、安定して勤務中。
事例2:Bさん(20代女性、発達障害)
背景 特別支援学校卒業後、一般就労に失敗。B型を利用。
B型での経験
- カフェ運営の事業所で接客・製造を担当
- 丁寧な作業が評価される
- コミュニケーションスキルが向上
就職への道
- B型で3年間経験を積む
- ハローワークの障害者窓口で求人を探す
- カフェでのアルバイト求人に応募
- 面接で障害特性と必要な配慮を説明
- 採用(週4日、1日5時間のパート)
現在 就職後1年半、職場定着支援を受けながら継続勤務中。
事例3:Cさん(40代男性、身体障害)
背景 事故で身体障害。B型で軽作業を担当。
B型での経験
- 検品、梱包作業
- 正確で丁寧な作業
- 後輩の指導も担当
就職への道
- B型で5年間働く
- 企業から「障害者雇用で採用したい」とスカウト
- 職場実習を経て採用
- 製造業の検品担当として正社員採用
現在 就職後2年、安定して勤務。B型時代の3倍以上の収入。
よくある質問
Q1. B型に何年通えば就職できますか?
A. 決まった期間はありません。体調の安定度、スキルの習得度、本人の準備状況により異なります。早い人は1年程度、長い人は5年以上かかることもあります。焦らず、自分のペースで準備することが大切です。
Q2. 年齢が高くても就職できますか?
A. 可能ですが、若い方に比べると難しくなる傾向があります。ただし、スキルや経験があれば、40代、50代でも就職している方はいます。障害者雇用を活用することで、可能性が広がります。
Q3. 障害をオープンにすべきですか、クローズで就職すべきですか?
A. それぞれメリット・デメリットがあります。オープン(障害者雇用)は配慮が得られやすく定着しやすい一方、職種が限られることもあります。クローズ(一般雇用)は職種の選択肢が広い一方、配慮が得られず定着が難しいこともあります。自分の状況に合わせて選択しましょう。
Q4. B型と就労移行支援、どちらを選ぶべきですか?
A. 一般就労を明確に目指すなら就労移行支援です。ただし、まだ体調が不安定、就労スキルが不足している場合は、まずB型で準備してから就労移行支援へ移行する段階的アプローチもお勧めです。
Q5. B型を辞めずに就職活動はできますか?
A. はい、できます。B型に通いながら、ハローワークで求人を探したり、面接を受けたりすることは可能です。ただし、面接日等は事業所と調整が必要です。
Q6. 就職後、またB型に戻ることはできますか?
A. 一般就労後に体調を崩すなどして離職した場合、再度B型を利用することは可能です。一度就職したからといって、B型が使えなくなるわけではありません。
Q7. B型での経験は履歴書に書けますか?
A. はい、書けます。「就労継続支援B型事業所〇〇にて、データ入力業務に従事」などと記載できます。具体的な作業内容や身につけたスキルをアピールしましょう。
まとめ
B型から就職することは可能ですが、適切な準備と支援が必要です。
重要なポイント
- B型からの一般就労移行率は約1.8%だが、毎年5,400人以上が就職している
- 体調の安定、スキルの習得、働く意欲が重要
- 複数のルートがある(直接就職、就労移行支援経由、A型経由など)
- 就職準備は段階的に進める
- 就職後の定着支援も重要
就職できる人の特徴
- 体調が安定している
- 基本的な就労スキルがある
- 働く意欲がある
- 自己理解ができている
- サポート体制がある
就職への道筋
- B型で基礎を固める
- 就労移行支援で集中的に訓練
- または段階的にA型へ
- 支援機関を活用する
- 焦らず、自分のペースで
大切なこと 就職がすべてではありません。B型で長く働き続けることも立派な選択です。自分の体調、能力、希望に合わせて、最適な働き方を選びましょう。
就職を目指す方は、まずB型のスタッフや相談支援専門員に相談してください。あなたに合った道筋を一緒に考え、サポートしてくれるはずです。一歩ずつ、着実に準備を進めていきましょう。

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