双極性障害の人との話し方・接し方|状態別のコミュニケーションガイド

双極性障害(躁うつ病)のある方とどう接すればいいのか、どんな言葉をかけたらいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。家族、友人、職場の仲間として、適切なサポートをしたいと思っても、状態が変化する病気だからこそ、コミュニケーションの取り方に迷うこともあると思います。この記事では、双極性障害の人との話し方や接し方について、状態別に具体的なポイントを解説していきます。

双極性障害とは?まず理解しておきたいこと

双極性障害は、気分が高揚する「躁状態(そうじょうたい)」と、気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。以前は「躁うつ病」と呼ばれていました。

この病気の特徴は、気分や行動が極端に変化することです。躁状態のときは、異常なまでに元気で活動的になり、眠らなくても平気だったり、次々とアイデアが湧いてきたりします。一方、うつ状態のときは、何もする気が起きず、強い無力感や絶望感に襲われます。

重要なのは、これは「性格の問題」や「気の持ちよう」ではなく、脳の働きに関わる病気だということです。本人の意思だけではコントロールできない状態なので、周囲の理解と適切な対応が必要になります。

双極性障害には、激しい躁状態がある「双極Ⅰ型」と、比較的軽い躁状態(軽躁状態)が現れる「双極Ⅱ型」があります。どちらのタイプでも、適切な治療と周囲のサポートによって、安定した生活を送ることが可能です。

躁状態のときの話し方・接し方

躁状態のときは、本人はとても元気で、むしろ「調子がいい」と感じていることが多いです。しかし、この状態は病気の症状であり、適切な対応が必要です。

躁状態の特徴

躁状態では、気分が異常に高揚し、以下のような症状が見られます。

  • 多弁になり、話が止まらない
  • アイデアが次々と浮かび、話題がころころ変わる
  • 睡眠時間が極端に短くても平気
  • 自信過剰になり、大きなことを言う
  • 衝動的な行動が増える(大きな買い物、ギャンブルなど)
  • 怒りっぽくなり、些細なことでイライラする
  • 周囲の意見を聞かなくなる

躁状態のときの基本的な接し方

1. 冷静に、落ち着いた態度で接する

本人が興奮していても、こちらまで感情的にならないことが大切です。穏やかなトーンで、ゆっくり話すように心がけましょう。

2. 議論や対立を避ける

躁状態のときは判断力が低下しており、論理的な話し合いが難しくなっています。「それは違う」と正面から否定すると、余計に興奮させてしまうことがあります。

3. 危険な行動は静かに止める

大きな買い物や重要な決断をしようとしている場合は、「今は決めなくてもいいんじゃない?」「少し時間を置いてから考えよう」と、やんわりと引き止めましょう。

4. 短時間の会話にとどめる

長時間の会話は本人も周囲も疲れてしまいます。適度なところで切り上げることも大切です。

躁状態のときに避けたい言葉や態度

  • 「落ち着いて」「静かにして」と命令口調で言う
  • 「また始まった」と呆れた態度を取る
  • 本人の話を遮って無理やり黙らせる
  • 「おかしいよ」と病気を指摘して否定する
  • 衝動的な行動を頭ごなしに叱る

躁状態のときにかけたい言葉

  • 「話を聞かせてくれてありがとう。でも今日はこのくらいにしておこう」
  • 「それは面白いアイデアだね。ゆっくり考えてから決めよう」
  • 「少し休憩しない?」
  • 「今は疲れているかもしれないから、後で話そう」

うつ状態のときの話し方・接し方

うつ状態のときは、気分が落ち込み、すべてのことに意欲を失ってしまいます。このときの接し方が、本人にとって大きな支えになります。

うつ状態の特徴

うつ状態では、以下のような症状が見られます。

  • 気分が沈み、何も楽しめない
  • 強い疲労感や無気力
  • 自分を責める気持ちが強くなる
  • 物事を悲観的に考えてしまう
  • 集中力や判断力の低下
  • 食欲不振または過食
  • 眠れない、または眠りすぎる
  • 死にたいという気持ちが出ることも

うつ状態のときの基本的な接し方

1. そばにいることを伝える

「いつでも話を聞くよ」「あなたは一人じゃないよ」という姿勢を示すことが大切です。無理に話させようとせず、静かに寄り添うだけでも十分です。

2. 話を否定せず、受け止める

本人が「自分はダメだ」「何もできない」と言っても、否定したり励ましたりせず、まずは気持ちを受け止めましょう。

3. 小さなことでも認める

「今日は起きられたね」「ご飯が食べられたね」など、当たり前に見えることでも、肯定的に受け止めることが大切です。

4. 無理に励まさない

「頑張って」「気持ちの持ちようだよ」といった言葉は、本人をさらに追い詰めてしまうことがあります。

5. 具体的なサポートを提案する

「一緒に病院に行こうか?」「何か食べたいものある?」など、具体的で小さなサポートを提案しましょう。

うつ状態のときに避けたい言葉や態度

  • 「頑張って」「元気出して」
  • 「気の持ちようだよ」「考えすぎだよ」
  • 「みんな辛いことはあるよ」
  • 「いつまで落ち込んでるの?」
  • 「甘えてるだけじゃない?」
  • 放置したり、距離を置いたりする

うつ状態のときにかけたい言葉

  • 「辛いんだね。話せる範囲で聞かせてくれる?」
  • 「無理しなくていいからね」
  • 「あなたは大切な存在だよ」
  • 「一緒にいるよ」
  • 「今はゆっくり休んでね」
  • 「何か手伝えることがあったら言ってね」

寛解期(調子が安定しているとき)の接し方

寛解期は、躁状態でもうつ状態でもない、比較的安定した時期です。この時期の過ごし方も、再発予防にとって重要です。

寛解期の基本的な接し方

1. 普通に接する

症状が落ち着いているときは、特別扱いせず、普通に接することが大切です。過度に気を使いすぎると、本人も疲れてしまいます。

2. 生活リズムを整える手助け

規則正しい生活は再発予防に効果的です。一緒に散歩に行ったり、食事の時間を合わせたりするなど、自然な形でサポートしましょう。

3. ストレスをためない環境づくり

大きなストレスは再発のきっかけになることがあります。無理をさせず、適度な休息を取れるよう配慮しましょう。

4. 治療を続けることを応援する

調子がいいときこそ、薬を飲み続けることや定期的な通院が大切です。さりげなく「病院の日だね」と声をかけるなど、治療継続をサポートしましょう。

寛解期に避けたい言葉や態度

  • 「もう治ったから薬はいらないんじゃない?」
  • 「そろそろ普通に働けるよね?」
  • 過度に心配しすぎる
  • 病気のことを完全にタブーにする

家族としての接し方

家族として双極性障害の方を支える場合、長期的な視点と適切な距離感が必要です。

家族ができること

1. 病気について正しく理解する

双極性障害がどんな病気なのか、症状や治療について学ぶことが第一歩です。医師から説明を聞いたり、信頼できる情報源から知識を得たりしましょう。

2. 変化に早く気づく

一緒に暮らしていると、症状の前兆に気づきやすくなります。睡眠時間の変化、話し方の変化、行動パターンの変化などに注意を払いましょう。

3. 医療者と連携する

本人の同意を得た上で、主治医やケースワーカーと情報共有することも大切です。気になることがあれば、受診に同行して医師に相談しましょう。

4. 自分自身のケアも忘れない

家族が疲れ切ってしまっては、長期的なサポートができません。自分の時間を持ったり、家族会などに参加したりして、自分自身のケアも大切にしましょう。

家族が陥りやすい落とし穴

  • 本人のすべてをコントロールしようとする
  • 自分を犠牲にしすぎる
  • 病気のことを家族だけで抱え込む
  • 本人の気持ちを無視して決めてしまう
  • 些細な変化にも過敏に反応しすぎる

職場での接し方

職場で双極性障害のある同僚や部下と接する場合、配慮と通常の業務のバランスが重要です。

職場でできる配慮

1. 合理的配慮を検討する

本人の希望と業務内容を考慮し、勤務時間の調整、業務量の配分、静かな作業環境の提供などを検討しましょう。

2. 通院や服薬への配慮

定期的な通院のための時間調整や、服薬のための休憩時間の確保など、治療を続けやすい環境を整えましょう。

3. プレッシャーをかけすぎない

過度なストレスは症状を悪化させる可能性があります。無理なノルマを課したり、過度に責任を負わせたりしないよう注意しましょう。

4. プライバシーを守る

本人の病気のことを、本人の同意なく他の人に話さないことが大切です。

職場で避けたい言葉や態度

  • 「病気を理由に甘えているんじゃない?」
  • 「いつまで配慮が必要なの?」
  • 他の社員の前で病気のことを話題にする
  • 能力を過小評価して、何もさせない

緊急時の対応

時には、緊急の対応が必要な場合もあります。

こんなときはすぐに医療機関へ

  • 自殺をほのめかす発言がある
  • 具体的な自殺の計画を話す
  • 極端に攻撃的になり、暴力の危険がある
  • 全く眠らない状態が数日続いている
  • 妄想や幻覚が見られる
  • 全く食事や水分を取らない
  • 薬を大量に飲もうとする

このような場合は、本人の主治医に連絡するか、救急外来を受診しましょう。夜間や休日の場合は、精神科救急医療センターに相談することもできます。

自殺のリスクが高いと感じたら

  • 一人にしない
  • 危険なものを遠ざける(薬、刃物、紐など)
  • 落ち着いた声で「あなたは大切な存在だ」と伝える
  • すぐに医療機関や相談窓口に連絡する

自分自身を守ることも大切

双極性障害のある方を支える立場の人も、自分自身のメンタルヘルスを守ることが重要です。

支援者が気をつけること

1. 完璧を求めない

すべてを解決しようとせず、できる範囲でサポートすることが大切です。

2. 一人で抱え込まない

医療者、他の家族、支援団体など、複数の人と役割を分担しましょう。

3. 自分の時間を持つ

趣味や友人との時間など、自分自身がリフレッシュできる時間を確保しましょう。

4. 家族会や支援グループを利用する

同じ立場の人と話すことで、孤独感が和らぎ、有益な情報も得られます。

5. カウンセリングを受ける

必要に応じて、自分自身がカウンセリングを受けることも検討しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q: 本人に病気のことを指摘していいの?

A: 症状が出ているときに「あなたは病気だ」と指摘すると、反発を招くことがあります。調子が安定しているときに、心配していることを優しく伝えるのがよいでしょう。

Q: 躁状態のときの約束は守らせるべき?

A: 躁状態のときは判断力が低下しているため、重要な約束や決断は避けるべきです。後で冷静になってから話し合いましょう。

Q: うつ状態のときに無理やり外に連れ出すべき?

A: 無理強いは逆効果です。「一緒に少しだけ外に出ない?」と提案し、本人の意思を尊重しましょう。

Q: 病院に行きたがらないときはどうする?

A: まずは本人の不安や抵抗感を聞きましょう。「一緒に行くから」「一度だけ試してみよう」と寄り添う姿勢が大切です。

Q: どこまで本人の意思を尊重すべき?

A: 基本的には本人の意思を尊重しますが、命に関わる場合や、明らかに判断力が低下している場合は、周囲が介入することも必要です。

まとめ

双極性障害のある方との接し方は、その時々の状態によって変わります。躁状態のときは冷静に対応し危険な行動を防ぐこと、うつ状態のときは寄り添い無理に励まさないこと、そして安定しているときは普通に接しながら治療継続をサポートすることが大切です。

何より重要なのは、これが本人の性格や怠けではなく、病気による症状だと理解することです。適切な治療と周囲の理解があれば、双極性障害のある方も安定した生活を送ることができます。

完璧なサポートを目指す必要はありません。できる範囲で寄り添い、必要なときは専門家の力を借りながら、一緒に歩んでいく姿勢が何よりも大切です。そして、支える側も自分自身を大切にすることを忘れないでください。

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