傷病手当金 病気やケガで働けないときの生活保障

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傷病手当金は、病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される生活保障の給付金です。

入院や自宅療養で仕事を休み、給料が支払われない期間、標準報酬日額の約3分の2が最長1年6ヶ月間支給されます。

がん、うつ病、骨折など、あらゆる病気やケガが対象となります。

会社員や公務員など健康保険や共済組合に加入している人が利用できる制度です。

病気で働けず収入が途絶えても、この制度により当面の生活を支えることができます。知らない人も多いですが、非常に重要なセーフティネットです。

この記事では傷病手当金の概要、受給条件、申請方法、支給額、注意点など詳しく解説します。

目次

傷病手当金とは

定義

傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気やケガのために働けなくなり、給料が支払われない場合に、本人と家族の生活を保障するために支給される給付金です。健康保険法に基づく制度です。

目的

病気やケガで働けない期間の収入減少を補い、安心して療養に専念できるようにすることが目的です。

支給期間

支給開始日から通算して1年6ヶ月間が限度です(2022年1月の法改正により、暦日ではなく通算に変更)。

支給額

1日あたり標準報酬日額の3分の2(約67パーセント)が支給されます。

対象者

健康保険(協会けんぽ、組合健保)または共済組合に加入している被保険者本人が対象です。国民健康保険には傷病手当金制度はありません(ただしコロナ特例で一部自治体が実施)。

雇用保険の傷病手当との違い

傷病手当金(健康保険)
働いている人が病気やケガで働けなくなったときの給付。健康保険から支給。

傷病手当(雇用保険)
失業中の人が病気やケガで求職活動ができないときの給付。ハローワークから支給。失業給付(基本手当)の受給期間延長措置。

名前は似ていますが全く別の制度です。この記事では健康保険の傷病手当金について解説します。

傷病手当金の受給条件

傷病手当金を受給するには、以下の4つの条件すべてを満たす必要があります。

1. 業務外の病気やケガで療養中であること

対象となる病気やケガ
あらゆる病気やケガが対象です。がん、心疾患、脳血管疾患、うつ病、適応障害、骨折、手術後の療養など。病名は問いません。

業務外であること
業務上の病気やケガ(労災)は対象外です。労災保険の休業補償給付の対象となります。通勤災害も労災保険の対象です。

療養中であること
医師の診断と治療を受けていることが必要です。自己判断だけでは認められません。

2. 仕事に就くことができないこと

労務不能
病気やケガのために、今まで従事していた仕事ができない状態であること。医師が労務不能と判断することが必要です。

客観的判断
医師の意見書、療養の状況、従事する業務の内容などから総合的に判断されます。

軽作業はできる場合
今までの仕事はできないが軽作業はできる、という場合は労務不能と認められることもあります。ただし実際に軽作業をして報酬を得た場合は支給停止または減額されます。

3. 連続する3日間の待期期間を満たしていること

待期期間
傷病手当金の支給を受けるには、最初に連続して3日間仕事を休む必要があります。この3日間を待期期間といいます。

連続3日間
有給休暇、土日祝日を含めて連続3日間休めば成立します。会社の休業日でも構いません。

待期期間は不支給
待期期間の3日間は傷病手当金は支給されません。4日目から支給対象となります。

待期期間の完成
一度待期期間が完成すれば、その後同じ病気やケガで断続的に休んでも、再度待期期間を満たす必要はありません。

4. 給料の支払いがないこと

無給であること
休業期間中に給料が支払われていないことが条件です。

一部支給の場合
給料が一部支給されている場合、その額が傷病手当金の額より少なければ、差額が支給されます。

有給休暇の場合
有給休暇を使用した日は給料が支払われるため、傷病手当金は支給されません。ただし有給休暇も待期期間にカウントされます。

給与と傷病手当金の調整
給料が支払われた場合、傷病手当金との調整が行われます。給料が傷病手当金より多ければ支給なし、少なければ差額支給、同額なら支給なしとなります。

傷病手当金の支給額

計算方法

基本的な計算式
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2

支給開始日
傷病手当金が初めて支給された日(待期期間完成後の最初の日)を指します。

標準報酬月額
給料を一定の幅で区分した額。健康保険料や厚生年金保険料の計算に使われる額です。毎年9月に決定されます。

計算例

例1: 標準報酬月額が30万円の場合
30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円/日

月額に換算すると約20万円(6,667円 × 30日)

例2: 標準報酬月額が40万円の場合
40万円 ÷ 30日 × 2/3 = 約8,889円/日

月額に換算すると約26万7千円(8,889円 × 30日)

支給額の約67パーセント

給料の約67パーセント(3分の2)が支給されます。100パーセント補償ではありません。約33パーセント減収となります。

12ヶ月に満たない場合

被保険者期間が12ヶ月に満たない場合は、以下のいずれか低い額を使用します。

  • 被保険者期間の各月の標準報酬月額の平均
  • 加入している健康保険の全被保険者の平均標準報酬月額(協会けんぽの場合は令和6年度で約30万円)

非課税

傷病手当金は非課税です。所得税、住民税はかかりません。確定申告も不要です。

社会保険料は免除されない

傷病手当金を受給していても、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料などの社会保険料は免除されません。会社が立て替えている場合は後日精算が必要です。ただし育児休業中は社会保険料が免除されます。

傷病手当金の支給期間

通算1年6ヶ月

2022年1月の法改正により、支給期間が「支給開始日から暦日で1年6ヶ月」から「通算して1年6ヶ月」に変更されました。

改正前(2021年12月31日まで)
支給開始日から暦日で1年6ヶ月。途中で復職して働いた期間があっても、1年6ヶ月経過すると支給終了。

改正後(2022年1月1日以降)
実際に傷病手当金を受給した期間を通算して1年6ヶ月。途中で復職した期間は含まれないため、より柔軟に利用可能。

具体例

例: がん治療で断続的に休む場合

  • 手術で3ヶ月休業 → 傷病手当金受給
  • 復職して6ヶ月勤務 → 受給なし
  • 抗がん剤治療で4ヶ月休業 → 傷病手当金受給
  • 復職して3ヶ月勤務 → 受給なし
  • 再発治療で5ヶ月休業 → 傷病手当金受給
  • 復職して2ヶ月勤務 → 受給なし
  • 再々発で休業 → 残り4ヶ月分(18ヶ月 – 3 – 4 – 5 – 2 = 4)受給可能

通算して1年6ヶ月分(18ヶ月分)受給できます。

同一傷病

同じ病気やケガについての通算期間です。全く別の病気やケガの場合は、新たに待期期間から始まり、別途1年6ヶ月分受給できます。

再発の場合

一度治癒して傷病手当金の受給が終了した後、同じ病気が再発した場合、通算1年6ヶ月の残り期間分のみ受給できます。完全に新たな1年6ヶ月分は受給できません。

傷病手当金の申請方法

申請の流れ

1. 医師の診断
病気やケガで働けない状態であることを医師に診断してもらいます。

2. 会社への連絡
病気やケガで休むことを会社に連絡します。傷病手当金を申請したい旨を伝えます。

3. 申請書の入手
傷病手当金支給申請書を入手します。会社の人事・総務部門、または加入している健康保険(協会けんぽ、健保組合)から入手できます。協会けんぽのホームページからダウンロードも可能です。

4. 申請書の記入
申請書は4枚構成です。

  • 1枚目: 被保険者(本人)が記入
  • 2枚目: 事業主(会社)が記入
  • 3-4枚目: 療養担当者(医師)が記入

5. 医師の意見書
療養担当者意見書欄に医師から記入してもらいます。労務不能期間、傷病名などが記載されます。医療機関で文書料がかかることがあります(数千円程度)。

6. 会社の証明
事業主記入欄に会社から記入してもらいます。勤務状況、給与支払い状況などが記載されます。

7. 健康保険への提出
完成した申請書を健康保険(協会けんぽ、健保組合)に提出します。会社経由で提出する場合と、本人が直接提出する場合があります。

8. 審査・支給
健康保険で審査されます。通常2週間から1ヶ月程度で支給決定され、指定口座に振り込まれます。

申請のタイミング

1ヶ月ごとに申請
通常、1ヶ月分をまとめて申請します。休業した翌月に前月分を申請する形です。

まとめて申請も可能
数ヶ月分をまとめて申請することも可能です。ただし時効(2年)に注意。

早めの申請
復職や退職のタイミングで忘れずに申請しましょう。

必要書類

基本

  • 傷病手当金支給申請書(被保険者記入用、事業主記入用、療養担当者意見書)
  • 本人確認書類(初回)
  • 振込先口座情報(初回)

場合により必要

  • 出勤簿、賃金台帳のコピー
  • 退職証明書(退職後の申請の場合)

申請の注意点

会社が非協力的な場合
会社が記入を拒否する場合、本人が直接健康保険に申請できます。ただし出勤簿や賃金台帳のコピーなど証明書類が必要になることがあります。

医師の意見書
労務不能と明確に記載してもらうことが重要です。曖昧な記載では不支給になることがあります。

初診日に注意
初診日が被保険者資格取得前の場合、原則として支給されません。

傷病手当金と他の給付との調整

障害厚生年金・障害手当金

障害厚生年金や障害手当金を受給している場合、傷病手当金は支給されません(年金が優先)。ただし年金額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。

老齢年金

老齢厚生年金を受給している場合も同様に調整されます。

出産手当金

出産手当金と傷病手当金の両方の受給要件を満たす場合、出産手当金が優先されます。出産手当金の額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。

労災保険

業務上の病気やケガは労災保険の対象です。傷病手当金は支給されません。労災保険の休業補償給付(平均賃金の約80パーセント)が支給されます。

雇用保険(失業給付)

失業給付と傷病手当金は同時に受給できません。傷病手当金を受給中は失業給付の受給期間延長手続きができます。

給与

給与が支払われた場合は調整されます。給与が傷病手当金より多ければ支給なし、少なければ差額支給です。

退職後の傷病手当金

継続給付の条件

退職後も傷病手当金を受給し続けることができる場合があります(継続給付)。以下の条件を満たす必要があります。

1. 被保険者期間が継続して1年以上
退職日までに健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。転職で健康保険が変わっている場合、継続していないため対象外です。

2. 退職日に傷病手当金を受けているか受けられる状態
退職日時点で、すでに傷病手当金を受給しているか、受給要件を満たしている(労務不能で待期期間を完成している)こと。

3. 退職日に出勤しない
退職日に出勤すると労務不能とみなされず、継続給付の対象外となります。有給休暇や欠勤扱いにする必要があります。これは非常に重要なポイントです。

退職後の受給期間

退職前から通算して1年6ヶ月まで受給できます。退職したからといって1年6ヶ月が新たに始まるわけではありません。

退職後の受給額

退職時点の標準報酬月額に基づいて計算されます。退職後に変動することはありません。

退職後の注意点

再就職した場合
再就職して新たに被保険者となった場合、継続給付は打ち切られます。

失業給付との関係
退職後、傷病手当金を受給している間は失業給付を受けられません。傷病手当金の受給が終了してから失業給付を受けることができます(受給期間延長手続きをしておく)。

国民健康保険に加入
退職後は国民健康保険または任意継続被保険者制度に加入する必要があります。継続給付は受けられますが、新たな病気での傷病手当金は国民健康保険にはありません。

よくある質問

Q1: 自営業者やフリーランスは受給できますか

A: 国民健康保険には傷病手当金制度がないため、基本的に受給できません。ただし一部の国民健康保険組合(例: 医師国保、建設国保など)では独自に制度を設けている場合があります。

Q2: パートやアルバイトでも受給できますか

A: 健康保険に加入していれば受給できます。週20時間以上勤務などの条件で社会保険に加入している場合は対象です。

Q3: 精神疾患(うつ病など)でも受給できますか

A: はい、受給できます。医師が労務不能と判断すれば、病名に関係なく受給できます。うつ病、適応障害、パニック障害なども対象です。

Q4: 待期期間は有給休暇でも良いですか

A: はい、待期期間は有給休暇でも構いません。ただし有給休暇使用日は給与が支払われるため傷病手当金は支給されませんが、待期期間にはカウントされます。

Q5: 土日を含めて連続3日間ですか

A: はい、土日祝日を含めて連続3日間休めば待期期間が成立します。

Q6: 会社を休んでいますが出勤扱いにされています

A: 事実と異なる記載をするよう会社に求められても応じないでください。正確な勤務状況を申請書に記載し、証拠となる書類(メール、診断書など)を保管しておきましょう。労働基準監督署や社会保険労務士に相談することもできます。

Q7: 申請が遅れたらどうなりますか

A: 傷病手当金の請求権の時効は2年です。2年以内であればさかのぼって申請できます。ただし早めの申請が推奨されます。

Q8: 一度復職してまた休んだ場合は

A: 同じ病気であれば、通算1年6ヶ月の範囲内で再度受給できます。新たな待期期間は不要です。

Q9: 退職予定ですが傷病手当金は受給できますか

A: 被保険者期間1年以上、退職日に労務不能、退職日に出勤しないという条件を満たせば退職後も継続給付を受けられます。

Q10: 傷病手当金を受給すると会社に迷惑がかかりますか

A: いいえ。傷病手当金は健康保険から支給されるため、会社の負担はありません。健康保険料が上がることもありません。安心して受給してください。

傷病手当金受給中の注意点

会社との連絡

定期的に療養状況を報告しましょう。復職の見通し、診断書の提出などについて相談します。

社会保険料の支払い

休業中も健康保険料、厚生年金保険料などは発生します。会社が立て替えている場合、復職後に精算が必要です。支払い方法を会社と相談しておきましょう。

住民税の支払い

前年の所得に対する住民税は休業中も発生します。支払い方法を確認しておきましょう。

生活費の管理

傷病手当金は給料の約67パーセントです。収入減に備えて支出を見直しましょう。

復職に向けた準備

主治医と相談しながら、復職に向けた準備を進めましょう。リワークプログラムの利用も検討できます。

他の支援制度の利用

必要に応じて、高額療養費制度、傷病手当金、医療費控除、障害年金などの制度も検討しましょう。

まとめ

傷病手当金は病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される生活保障の給付金です。標準報酬日額の約3分の2が通算1年6ヶ月間支給されます。

受給条件は(1)業務外の病気やケガで療養中、(2)仕事に就くことができない、(3)連続3日間の待期期間を満たす、(4)給料の支払いがない、の4つです。

会社員や公務員など健康保険や共済組合に加入している人が対象です。国民健康保険には原則として傷病手当金制度はありません。

申請は傷病手当金支給申請書に本人、会社、医師がそれぞれ記入し、健康保険に提出します。通常1ヶ月ごとに申請します。

2022年の法改正により、支給期間が通算1年6ヶ月となり、復職期間を挟んでも柔軟に利用できるようになりました。

退職後も条件を満たせば継続給付を受けられます。被保険者期間1年以上、退職日に労務不能、退職日に出勤しないことが条件です。

傷病手当金は非課税ですが、社会保険料は免除されません。障害年金や出産手当金との調整があります。

病気やケガで働けなくなっても、傷病手当金により当面の生活を支えることができます。

多くの人が知らない制度ですが、いざというときの重要なセーフティネットです。対象となる方は遠慮なく申請してください。安心して療養に専念し、一日も早い回復を目指しましょう。

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