メニエール病とは?症状・原因・治療法を徹底解説

1. メニエール病の基本的理解

メニエール病は、内耳の異常によって引き起こされる病気で、激しい回転性のめまい、難聴、耳鳴り、耳閉感を主な症状とします。フランスの医師プロスペール・メニエールによって1861年に報告されたことから、この名前がつけられました。

メニエール病の特徴は、これらの症状が繰り返し発作的に起こることです。発作は突然始まり、数十分から数時間続きます。発作の頻度や重症度は人によって異なり、数日おき、数週間おき、数か月おきなど様々です。

メニエール病は、30代から50代に多く発症しますが、若年者や高齢者にも見られます。男女比はほぼ同じか、やや女性に多いとされています。日本では、人口10万人あたり約15人から20人の患者がいると推定されています。

この記事では、メニエール病の症状、原因、診断方法、治療法、そして日常生活での注意点について、詳しく解説していきます。

2. メニエール病の主な症状

メニエール病には、4つの主要な症状があります。これらがセットで現れることが、診断の重要なポイントです。

回転性めまい

メニエール病の最も特徴的な症状が、激しい回転性めまいです。

回転性めまいとは、自分や周囲がぐるぐると回っているように感じるめまいです。天井や壁がグルグル回る、自分の体が回転している感覚など、非常に激しいめまいが突然起こります。

発作中は、立っていることも座っていることも困難になり、多くの場合、横にならざるを得ません。目を開けているのも辛く、少しの頭の動きでもめまいが悪化します。

めまいの持続時間は、通常10分から数時間です。短くて数十分、長い場合は6時間から12時間続くこともあります。ただし、丸一日以上続くことは稀です。

めまいに伴って、吐き気や嘔吐が強く現れることも多くあります。冷や汗が出る、顔面蒼白になるなどの自律神経症状も伴います。

難聴(聴力低下)

メニエール病では、めまいとともに難聴が現れます。

初期には、低音域の聴力が低下します。「ボーッとした感じで音が聞こえにくい」「音がこもって聞こえる」といった症状です。

発作を繰り返すうちに、徐々に高音域の聴力も低下していきます。発作初期は発作後に聴力が回復しますが、発作を繰り返すと聴力の回復が不完全になり、徐々に聴力が低下していきます。

通常、片側の耳のみに起こりますが、進行すると両耳に及ぶこともあります。発症時は約85%が片側性ですが、長期経過の中で約30%から40%が両側性になるとされています。

耳鳴り

多くの患者が耳鳴りを経験します。

耳鳴りの音は人によって異なりますが、「ジー」「ザー」「ブーン」といった低音の耳鳴りが多く報告されています。高音の「キーン」という耳鳴りが起こることもあります。

耳鳴りは、めまい発作の前兆として現れることもあります。「耳鳴りが強くなると、間もなくめまい発作が来る」と気づく患者も多くいます。

耳閉感(耳の詰まった感じ)

耳が詰まったような感覚、耳に膜が張ったような感覚、耳が圧迫されているような感覚などを感じます。

飛行機に乗ったときやトンネルに入ったときのような、圧がかかった感じと表現されることもあります。

耳閉感も、めまい発作の前に強くなることがあります。

発作のパターン

メニエール病の発作は、以下のようなパターンで起こります。

前兆期として、発作の数時間前から数日前に、耳鳴りの増強、耳閉感の悪化、聴力の低下などの前兆が現れることがあります。

発作期では、突然激しい回転性めまいが始まり、難聴、耳鳴り、耳閉感が同時に強くなります。吐き気や嘔吐も伴います。

回復期には、数時間後、めまいは徐々に軽減します。しかし、ふらつき感や体のだるさは数日間続くことがあります。

発作の間隔は不規則で、予測困難です。数日から数週間、あるいは数か月に1回という場合もあります。

3. メニエール病の原因

メニエール病の根本的な原因は、「内リンパ水腫」という状態です。

内リンパ水腫とは

内耳には、音を感じる蝸牛と、体のバランスを感じる前庭(三半規管と耳石器)があります。これらの内部には、内リンパ液という液体が満たされています。

内リンパ水腫とは、この内リンパ液が過剰に貯まり、内耳が腫れた状態です。内リンパ液が増えすぎると、内耳の膜が膨らみ、聴覚やバランス感覚に異常が生じます。

内リンパ水腫がなぜ起こるのか、その原因は完全には解明されていません。内リンパ液の産生と吸収のバランスが崩れることが関係していると考えられています。

内リンパ水腫を引き起こす要因

内リンパ水腫を引き起こす要因として、以下のようなものが考えられています。

内リンパ嚢の機能不全が関係します。内リンパ液を吸収する役割を持つ内リンパ嚢の機能が低下すると、内リンパ液が過剰に貯まります。

内耳の血流障害も要因の一つです。内耳への血流が悪くなると、内リンパ液の代謝に異常が生じます。

ウイルス感染が関与している可能性も指摘されています。

免疫異常アレルギーが関係しているという説もあります。

遺伝的要因も考えられています。メニエール病の家族歴がある場合、発症リスクが高まります。

発作を誘発する要因

メニエール病の発作は、以下のような要因で誘発されることがあります。

ストレスは、最も重要な誘発要因の一つです。精神的ストレス、過労、睡眠不足などが発作を引き起こしやすくします。

気圧の変化も影響します。台風や低気圧の接近時に発作が起こりやすいという患者が多くいます。

塩分の過剰摂取は、体内の水分バランスを崩し、内リンパ水腫を悪化させる可能性があります。

カフェインやアルコールの過剰摂取も、発作の引き金になることがあります。

喫煙は、血流を悪化させるため、症状を悪化させる可能性があります。

4. メニエール病の診断

メニエール病の診断は、症状の経過と検査結果に基づいて行われます。

診断基準

日本めまい平衡医学会とアメリカ耳鼻咽喉科学会が定めた診断基準があります。

確実なメニエール病の診断には、以下の条件を満たす必要があります。

繰り返すめまい発作があること(20分以上続く)、聴力検査で難聴が確認されること、耳鳴りまたは耳閉感があること、他の疾患が除外されることです。

2回以上の発作を経験し、そのうち少なくとも1回は検査で難聴が確認されている必要があります。

疑い例としては、1回のめまい発作と、難聴、耳鳴り、耳閉感があれば、メニエール病疑いと診断されることがあります。

必要な検査

メニエール病の診断には、以下のような検査が行われます。

聴力検査(純音聴力検査)では、どの音域の聴力が低下しているかを調べます。メニエール病では、初期に低音域の聴力低下が特徴的です。

平衡機能検査では、眼振検査(目の動きを観察)、体平衡検査(体のバランスを調べる)、温度刺激検査(耳に水や空気を入れて反応を見る)などが行われます。

グリセロール試験は、メニエール病に特徴的な検査です。グリセロールという薬を飲んだ後に聴力検査を行い、聴力が改善すれば、内リンパ水腫の存在が示唆されます。

MRI検査では、内リンパ水腫を画像で確認できる特殊なMRI(造影MRI)が開発されています。また、他の病気(脳腫瘍など)を除外するためにも行われます。

血液検査では、他の病気(甲状腺機能異常、梅毒など)を除外するために行われることがあります。

鑑別診断

メニエール病と似た症状を示す他の病気を除外することも重要です。

突発性難聴は、突然片側の難聴が起こる病気ですが、めまいは軽度で、繰り返すことは稀です。

良性発作性頭位めまい症は、頭を動かしたときに短時間のめまいが起こる病気で、難聴は伴いません。

前庭神経炎は、激しいめまいが数日続く病気ですが、難聴は伴いません。

聴神経腫瘍は、徐々に進行する片側の難聴とめまいを起こします。MRIで診断できます。

5. メニエール病の治療

メニエール病の治療には、発作時の治療と、発作を予防するための治療があります。

発作時の治療

めまい発作が起きたときは、以下のような対応と治療が行われます。

安静が最も重要です。横になって安静にし、頭を動かさないようにします。暗く静かな部屋で休むと良いでしょう。

制吐薬を使用します。吐き気や嘔吐を抑える薬を服用または注射します。

抗めまい薬も使用されます。めまいを軽減する薬を服用します。

抗不安薬が処方されることもあります。不安を和らげ、症状を軽減します。

重症の場合は、点滴治療が行われることもあります。

予防的治療(薬物療法)

発作を予防し、症状の進行を抑えるための治療が重要です。

利尿薬は、メニエール病の基本的な治療薬です。体内の余分な水分を排出し、内リンパ水腫を軽減します。イソソルビドという薬が最もよく使われます。

循環改善薬は、内耳の血流を改善し、内耳の機能を保ちます。

ビタミン剤として、ビタミンB12などが処方されることがあります。

ステロイド薬が使用されることもあります。炎症を抑え、症状を改善します。

これらの薬は、長期間継続して服用することが重要です。自己判断で中止せず、医師の指示に従いましょう。

生活指導

薬物療法と並んで、生活習慣の改善も重要です。

減塩療法は、最も重要な生活指導です。1日の塩分摂取量を6グラム以下に制限します。塩分を控えることで、体内の水分バランスが改善され、内リンパ水腫が軽減されます。

ストレス管理も大切です。ストレスは発作の誘因となるため、十分な休息、適度な運動、リラクゼーション技法などでストレスを軽減しましょう。

規則正しい生活を心がけます。十分な睡眠、規則正しい食事、過労を避けることが重要です。

水分摂取の調整として、適度な水分摂取を心がけます。脱水も過剰摂取も避けましょう。

カフェイン、アルコール、タバコを控えることも推奨されます。

手術療法

薬物療法や生活指導で効果が得られない場合、手術が検討されることがあります。

内リンパ嚢開放術は、内リンパ嚢を切開して内リンパ液の流れを改善する手術です。比較的侵襲が少なく、聴力を保存できます。

前庭神経切断術は、バランスを司る前庭神経を切断する手術です。めまいは完全に止まりますが、聴力は保たれます。

迷路破壊術は、内耳の機能を完全に失わせる手術です。聴力は失われますが、めまいは確実に止まります。聴力がほとんどない場合に選択されます。

中耳加圧療法という、鼓膜の内側から圧力をかけて内リンパ水腫を軽減する治療法もあります。

手術は、保存的治療で効果が得られず、生活に著しい支障がある場合に検討されます。

心理的サポート

メニエール病は、いつ発作が起こるか分からないという不安から、精神的なストレスが大きくなります。

カウンセリングや認知行動療法が、不安の軽減に役立つことがあります。患者会に参加して、同じ悩みを持つ人々と交流することも有効です。

6. メニエール病の経過と予後

メニエール病の経過は、人によって大きく異なります。

典型的な経過

多くの場合、以下のような経過をたどります。

初期には、めまい発作が繰り返し起こりますが、発作後は症状が完全に回復します。聴力も元に戻ります。

中期になると、発作を繰り返すうちに、聴力の回復が不完全になります。徐々に難聴が進行していきます。

後期では、めまい発作の頻度は減少しますが、難聴が固定化します。平衡機能も低下し、ふらつきが続くこともあります。

ただし、これはあくまで典型例で、実際には様々なパターンがあります。

予後

メニエール病の予後は、比較的良好とされています。

約70%から80%の患者は、薬物療法や生活指導で症状がコントロールできます。発作の頻度が減少し、日常生活に支障がなくなります。

発症から数年から10年程度経過すると、自然に発作が起こらなくなることもあります。これは、内耳の機能が完全に失われたため、めまいが起こらなくなった状態です(burnout現象)。

ただし、約20%から30%の患者では、両側性に進行したり、難聴が高度になったりすることがあります。

早期に適切な治療を開始し、継続することが、良好な予後につながります。

7. メニエール病との付き合い方

メニエール病は、長期的な管理が必要な病気です。上手に付き合っていくためのポイントをご紹介します。

発作の予兆を知る

多くの患者は、発作の前兆を感じ取れるようになります。耳鳴りの増強、耳閉感の悪化、聴力の低下などが前兆として現れます。

前兆を感じたら、早めに薬を服用し、安静にすることで、発作を軽減できることがあります。

生活の工夫

塩分を控える食事を心がけましょう。加工食品、インスタント食品、外食は塩分が多いので注意が必要です。

ストレス管理として、自分なりのリラックス方法を見つけましょう。趣味、運動、瞑想など、ストレスを発散する時間を持つことが大切です。

十分な睡眠を確保します。睡眠不足は発作の誘因となります。

規則正しい生活を送ることで、体調を安定させます。

発作への備え

外出時の準備として、いつでも横になれる場所を確認しておく、制吐薬を携帯する、家族や職場に病気について説明しておくなどの準備をしましょう。

運転については、発作が頻繁にある時期は、運転を控えることが望ましいです。運転中の発作は、重大な事故につながる危険があります。

高所作業や危険な作業は、発作のリスクがある間は避けるべきです。

周囲の理解を得る

メニエール病は外見からは分かりにくい病気です。職場や家族に病気について説明し、理解を得ることが大切です。

発作時には安静が必要であること、ストレスや疲労が発作の誘因となることなどを伝えましょう。

定期的な受診

症状が安定していても、定期的に耳鼻咽喉科を受診し、聴力検査などを受けることが重要です。

薬の効果や副作用を確認し、必要に応じて治療を調整します。

8. よくある質問

メニエール病は完治する?

メニエール病を完全に治す方法は、現時点ではありません。しかし、適切な治療と生活管理により、発作をコントロールし、日常生活を問題なく送ることは十分に可能です。

めまいが起きたら、メニエール病?

めまいの原因は多様で、メニエール病以外にも多くの病気があります。メニエール病は、めまいに加えて難聴、耳鳴り、耳閉感を伴い、それが繰り返すことが特徴です。めまいがあったら、まず耳鼻咽喉科を受診しましょう。

遺伝する?

メニエール病には遺伝的要因があると考えられていますが、必ず遺伝するわけではありません。家族にメニエール病の人がいても、発症しない人の方が多数です。

仕事は続けられる?

多くの患者は、適切な治療により仕事を続けられます。ただし、発作の頻度や重症度によっては、職種や勤務形態の調整が必要になることもあります。

ストレスが原因?

ストレスは、メニエール病の発作を誘発する要因の一つですが、根本的な原因ではありません。ストレス管理は重要ですが、それだけで治るものではなく、医学的治療も必要です。

9. メニエール病と類似する病気

メニエール病と症状が似ている病気があります。

遅発性内リンパ水腫

過去に片側の耳が聞こえなくなった後、数年から数十年経ってから、メニエール病のようなめまい発作が起こる病気です。内リンパ水腫が原因ですが、繰り返す難聴はありません。

前庭型メニエール病

めまい発作を繰り返しますが、難聴を伴わないタイプです。将来的に難聴が出現する可能性があります。

蝸牛型メニエール病

難聴、耳鳴り、耳閉感を繰り返しますが、めまいを伴わないタイプです。将来的にめまいが出現する可能性があります。

これらも内リンパ水腫が原因と考えられており、治療法はメニエール病に準じます。

10. まとめ:メニエール病と上手に付き合う

メニエール病は、内耳の内リンパ水腫により、激しい回転性めまい、難聴、耳鳴り、耳閉感を繰り返す病気です。30代から50代に多く発症し、ストレスや塩分過多などが発作の誘因となります。

診断には、症状の経過と聴力検査、平衡機能検査などが重要です。治療は、利尿薬を中心とした薬物療法と、減塩などの生活指導が基本となります。

メニエール病は完治が難しい病気ですが、適切な治療と生活管理により、発作をコントロールし、日常生活を送ることは十分に可能です。約70%から80%の患者は、保存的治療で症状がコントロールできます。

重要なのは、早期に診断を受け、継続的に治療を受けることです。めまいに難聴、耳鳴り、耳閉感を伴う場合は、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。

メニエール病は、長期的な管理が必要な病気です。焦らず、医師と相談しながら、自分に合った治療法と生活スタイルを見つけていきましょう。適切な対応により、メニエール病と上手に付き合いながら、充実した生活を送ることができます。

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