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仕事を続けながら、親や家族の介護を担う「ビジネスケアラー」が増えています。介護は、誰にとっても突然始まる可能性があり、仕事との両立は決して他人事ではありません。
介護による離職が増えれば、本人の生活だけでなく、企業にとっても人材の損失につながります。そのため、従業員が仕事と介護を両立できる環境づくりは、企業にとって重要な経営課題となっています。
こうした支援を後押しする手段として注目されているのが、デジタル技術を活用して業務や仕組みを変える「DX」です。
この記事では、ビジネスケアラーが増加する背景や企業に求められる支援、DXを活用した両立支援の可能性について解説します。
ビジネスケアラーとはどのような人を指すのか
ビジネスケアラーとは、働きながら家族の介護を担っている人のことです。
経済産業省の資料によると、2020年時点のビジネスケアラーは約262万人。2030年には約318万人に増加すると予測されています。
少子高齢化や晩婚化が進むなか、親の介護が必要になる時期と、子ども世代が働き盛りを迎える時期が重なりやすくなっています。そのため、仕事と介護の両立は、今後さらに多くの人が直面する課題になると考えられています。
また、総務省の調査では、介護や看護を理由に離職する人が年間約10万人以上に上っています。
介護離職は、本人の収入やキャリアに影響するだけでなく、企業にとっても貴重な人材を失うことにつながります。 仕事を辞めずに介護を続けられる環境づくりが求められています。
法改正により義務化された企業の対応
ビジネスケアラーへの支援は、企業の自主的な取り組みだけに委ねられるものではなくなっています。
改正育児・介護休業法により、企業には従業員の介護離職を防ぐための雇用環境の整備が義務づけられました。
具体的には、介護休業制度などについて相談できる窓口の設置や、制度に関する情報提供など、定められた措置のいずれかを講じる必要があります。
さらに、従業員から介護に直面したことの申し出があった場合には、介護休業制度などについて個別に周知し、利用の意向を確認することも求められています。
介護に直面する前の早い段階で情報を提供することも義務化されており、従業員が事前に備えられる環境づくりが重要です。
また、介護のためのテレワークを選択できるようにすることも、企業の努力義務として位置づけられています。
経済産業省によるガイドラインの策定
経済産業省は、企業が仕事と介護の両立支援に取り組むための「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」を策定しています。
このガイドラインでは、なぜ企業が両立支援に取り組む必要があるのか、どのように支援を進めればよいのかといった考え方や具体的な取り組みがまとめられています。
介護と仕事の両立が難しくなると、従業員の負担が増え、仕事の効率が低下することがあります。さらに、介護離職が増えれば、企業は人材やノウハウを失うことにもなります。
両立支援は、従業員の生活を守るだけでなく、企業が人材を確保し、事業を継続していくためにも欠かせない取り組みです。
DXが介護と仕事の両立支援に果たす役割
仕事と介護の両立を支える手段として、デジタル技術を活用したDXへの期待が高まっています。
たとえば、介護に関する情報をまとめて確認できるツールや、自分に合った介護サービスを探せるポータルサイトなど、従業員の状況に応じた情報提供を支援する仕組みが登場しています。
介護に直面した人は、仕事を続けながら介護サービスや利用できる制度を調べなければならず、情報収集だけでも大きな負担になることがあります。必要な情報にスムーズにアクセスできれば、こうした負担の軽減につながります。
また、介護や福祉の現場でも、紙で行っていた記録や事務作業をデジタル化する取り組みが進んでいます。
記録業務などの負担が減れば、介護職員が利用者と向き合う時間を確保しやすくなります。
介護現場のDXは、家族が介護サービスを利用しやすくなったり、必要な情報を得やすくなったりすることにもつながります。企業の支援と介護現場のDXが連携することで、仕事と介護を両立しやすい環境づくりが期待されています。
企業に求められる具体的な支援策
ビジネスケアラーを支えるためには、従業員が介護について安心して相談できる環境を整えることが大切です。
相談窓口を設け、介護に直面した従業員が一人で悩みを抱え込まないようにすることが、支援の第一歩となります。
また、テレワークやフレックスタイム制度などを活用し、介護の状況に応じて柔軟に働ける仕組みを整えることも重要です。
介護が始まる前から制度や相談先について情報を提供しておけば、従業員は必要なときに慌てずに対応しやすくなります。
さらに、福利厚生の一環として、介護サービスの紹介や費用補助などを行う企業もあります。こうした支援は、従業員の負担を軽減し、安心して働き続けられる環境づくりにつながります。
大切なのは、制度を用意するだけでなく、従業員が実際に利用しやすい職場にすることです。
見えにくい隠れ介護者への配慮
介護をしていても、そのことを職場に伝えていない従業員がいます。こうした人は「隠れ介護者」と呼ばれることがあります。
介護は突然始まることも多く、本人も仕事と介護の両立に追われるうちに、自分が支援を必要としていることに気づかない場合があります。
職場に介護のことを伝えられず、一人で仕事と介護を抱え込んでしまう人がいることにも目を向ける必要があります。
そのため、企業側から制度や相談先について積極的に情報を提供し、誰もが気兼ねなく相談できる雰囲気をつくることが大切です。
また、介護による疲労や不安が心身の負担につながることもあります。働き方の調整だけでなく、心の健康にも配慮した支援体制を整えることが求められています。
まとめ
ビジネスケアラーは今後も増加が見込まれており、仕事と介護の両立支援は、企業にとって避けて通れない課題となっています。
法改正によって、介護に関する相談体制の整備や情報提供などが義務づけられ、企業には従業員が安心して働き続けられる環境づくりが求められています。
さらに、DXを活用すれば、必要な情報を届けやすくなり、介護現場の業務負担を減らすことにもつながります。
介護は、誰もがいつか直面する可能性のある身近な問題です。 介護を理由に仕事や生活を諦めなくて済むようにするためには、企業の制度整備だけでなく、相談しやすい職場づくりや介護サービスの利用環境の充実も欠かせません。
働く人が介護を担うことになっても、自分らしい生活と仕事を続けられる社会をどうつくるか。ビジネスケアラーへの支援は、企業だけでなく、私たち一人ひとりにも関わるテーマです。

