1. 診断書は取得できる、遠慮せず医師に相談を
職場でパワハラを受け、心身に不調をきたしている
そんなとき、「診断書をもらいたいけれど、どうすればいいかわからない」「医師に言いづらい」「もらえるのか不安」と感じていませんか。
パワハラが原因で心身の不調がある場合、診断書を取得することは可能です。診断書は、休職、労災申請、損害賠償請求、職場への配置転換の相談など、さまざまな場面で必要になる重要な書類です。
重要なのは、診断書をもらうことは正当な権利であり、遠慮する必要はないということです。医師に正直に状況を伝え、症状を説明すれば、適切な診断書を作成してもらえます。我慢せず、まずは医療機関を受診し、自分の心身を守ることを最優先にしてください。
2. パワハラによる心身の不調
パワハラは、精神的にも身体的にも大きな影響を及ぼします。
パワハラとは
パワーハラスメント(パワハラ)とは、職場において、優越的な関係を背景とした言動により、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、労働者の就業環境が害されることです。
具体例
- 暴言、侮辱、脅迫
- 無視、仲間外れ
- 過大な要求(達成不可能なノルマなど)
- 過小な要求(能力に見合わない簡単な仕事しか与えない)
- プライバシーの侵害
- 身体的な攻撃
パワハラによる症状
パワハラを受けると、以下のような症状が現れます。
精神的症状
- 抑うつ気分、気分の落ち込み
- 不安、恐怖、緊張
- イライラ、怒り
- 集中力の低下
- 意欲の低下
- 自己肯定感の低下
- 自殺念慮
身体的症状
- 不眠、悪夢
- 食欲不振、または過食
- 頭痛、めまい
- 動悸、息苦しさ
- 胃痛、腹痛、下痢
- 肩こり、腰痛
- 疲労感、倦怠感
行動面の変化
- 出勤困難
- 遅刻、欠勤の増加
- 仕事のパフォーマンス低下
- 人との関わりを避ける
- アルコールや薬物への依存
診断名
パワハラによる心身の不調は、以下のような診断名がつくことがあります。
適応障害 特定のストレス要因(パワハラ)に対する反応として、抑うつや不安などの症状が現れる。
うつ病(大うつ病性障害) 抑うつ気分、興味・喜びの喪失が2週間以上続く。
不安障害
- パニック障害
- 全般性不安障害
- 社会不安障害
急性ストレス障害(ASD) トラウマ的な出来事(激しいパワハラなど)の後、1ヶ月以内に症状が現れる。
心的外傷後ストレス障害(PTSD) トラウマ的な出来事の後、1ヶ月以上経過しても、フラッシュバック、悪夢、回避行動などが続く。
自律神経失調症 ストレスにより、自律神経のバランスが崩れ、身体症状が現れる。
診断名は、症状の種類や程度、持続期間によって医師が判断します。
3. 診断書をもらう目的
診断書は、さまざまな場面で必要になります。
休職するため
会社に休職を申し出る際、診断書の提出を求められることが一般的です。診断書があれば、正当な理由で休むことができます。
労災申請のため
パワハラが原因で精神疾患を発症した場合、労災(労働災害)として認定される可能性があります。労災申請には、医師の診断書が必要です。
傷病手当金の申請のため
休職中、健康保険から傷病手当金(給与の約3分の2)を受給する際、診断書が必要です。
損害賠償請求のため
パワハラを行った加害者や会社に対して、損害賠償を請求する際、診断書が重要な証拠となります。
職場への配置転換・業務調整の相談
診断書を提出することで、配置転換、業務量の軽減、時短勤務などの配慮を求めやすくなります。
退職・解雇の回避
体調不良を理由に退職勧奨を受けている場合、診断書により、病気が原因であることを証明できます。
自分の状態を客観的に把握する
医師の診断により、自分の状態を客観的に理解し、適切な治療を受けられます。
4. 診断書をもらうまでの流れ
診断書を取得する手順を説明します。
ステップ1 医療機関を受診する
どこを受診するか 精神科、心療内科、メンタルクリニックを受診します。
初診の場合、予約が必要なことが多いので、事前に電話で確認しましょう。
持参するもの
- 健康保険証
- お薬手帳(服用中の薬がある場合)
- パワハラの記録(メール、録音、日記など、あれば)
ステップ2 医師に状況を説明する
診察で、以下のことを正直に伝えます。
パワハラの内容
- いつ頃から、誰から、どのようなパワハラを受けているか
- 具体的な言動(暴言の内容、無視、過大な要求など)
- パワハラの頻度
症状
- いつ頃から、どのような症状があるか
- 睡眠、食欲、気分、体調など
- 日常生活や仕事への影響
診断書が必要な理由
- 「休職したい」「労災申請したい」「損害賠償請求に使いたい」など、目的を伝えます。
重要なポイント
- 遠慮せず、正直に話す
- 症状を過小評価しない
- 「我慢できる」「大丈夫」と言わない
- 実際の辛さを伝える
ステップ3 医師の診察・診断
医師が、症状や状況を総合的に判断し、診断を下します。
必要に応じて、心理検査が行われることもあります。
ステップ4 診断書の作成を依頼する
診察の最後に、「診断書をお願いしたいのですが」と伝えます。
伝えること
- 診断書の使用目的(休職用、労災申請用など)
- 必要な記載内容(病名、治療期間、就労の可否など)
- 提出先(会社、労働基準監督署など)
医師が、目的に応じた診断書を作成してくれます。
ステップ5 診断書を受け取る
診断書は、通常、数日から1週間程度で完成します。
窓口で受け取るか、郵送してもらいます。
費用 診断書の作成には、数千円から1万円程度の費用がかかります(保険適用外)。医療機関によって金額が異なります。
5. 診断書に記載される内容
診断書には、以下のような内容が記載されます。
基本情報
- 患者氏名、生年月日、住所
- 診断日
- 医療機関名、医師名
病名(診断名)
- 適応障害
- うつ病
- 不安障害
- PTSD
- 自律神経失調症 など
「パワハラ」という言葉は書かれるか? 診断書には、通常、病名(診断名)が記載されますが、「パワハラが原因」とは書かれないことが多いです。
ただし、労災申請用や損害賠償請求用の場合、「業務上のストレスにより」「職場での対人関係のストレスにより」など、原因を示唆する記載をしてもらえることがあります。
医師に、「パワハラが原因であることを記載してほしい」と依頼すれば、対応してくれる場合もあります。
症状
主な症状が記載されます。
- 抑うつ気分、不安、不眠、食欲不振など
治療内容
- 投薬治療、精神療法など
就労の可否・療養期間
休職が必要な場合
- 「療養のため、○月○日から○月○日まで休養を要する」
- 「就労困難につき、○週間の休養を要する」
復職可能な場合
- 「就労可能」
- 「軽作業であれば就労可能」
- 「短時間勤務であれば就労可能」
その他
必要に応じて、以下のような内容が記載されることがあります。
- 配置転換が望ましい
- 業務量の軽減が必要
- ストレス要因の除去が必要
6. 診断書の使い方
取得した診断書を、どのように使うかを説明します。
会社に提出する(休職・配置転換など)
提出先 人事部門、または直属の上司
提出方法
- 手渡し、または郵送
- コピーを取っておく(原本は返却されないことが多い)
伝えること
- 「体調不良により、休職したい」
- 「医師から休養が必要と言われた」
- 「配置転換をお願いしたい」
注意点
- パワハラの加害者に直接提出する必要はありません
- 信頼できる人(人事部門、コンプライアンス窓口など)に提出しましょう
労災申請に使う
パワハラが原因で精神疾患を発症した場合、労災申請ができます。
申請先 労働基準監督署
必要書類
- 労災保険給付請求書
- 医師の診断書
- その他、パワハラの証拠(メール、録音、証言など)
流れ
- 労働基準監督署で相談
- 必要書類を揃える
- 申請書を提出
- 調査(会社、本人、医師への聞き取りなど)
- 認定・不認定の決定
労災が認定されれば、治療費が全額支給され、休業補償(給与の約8割)が受けられます。
損害賠償請求に使う
パワハラにより精神的・経済的損害を受けた場合、加害者や会社に対して損害賠償を請求できます。
弁護士に相談 損害賠償請求は法的手続きが必要なため、弁護士に相談しましょう。
診断書は、損害を証明する重要な証拠となります。
傷病手当金の申請に使う
休職中、健康保険から傷病手当金を受給する際、診断書が必要です。
申請方法 会社の人事部門、または加入している健康保険に問い合わせ、申請書を入手します。
診断書を添付して提出します。
7. 診断書に関する注意点
診断書を取得・使用する際の注意点です。
費用は自己負担
診断書の作成費用(数千円〜1万円程度)は、保険適用外で、自己負担です。
診断書の有効期限
診断書には明確な有効期限はありませんが、古すぎる診断書は使えないことがあります。
休職の診断書は、通常、数週間から数ヶ月の期間が記載されます。期間が終了したら、再度診断書を取得する必要があります。
会社に提出した診断書は返却されない
会社に提出した診断書は、通常、返却されません。必要に応じて、事前にコピーを取っておきましょう。
プライバシーへの配慮
診断書には、病名や症状など、個人情報が含まれます。提出先に、プライバシーの保護を求めることができます。
診断書だけでは解決しない
診断書は、状況を証明する書類ですが、それだけでパワハラ問題が解決するわけではありません。
並行して、以下の対応も検討しましょう。
- 社内のコンプライアンス窓口、ハラスメント相談窓口に相談
- 労働組合に相談
- 労働基準監督署に相談
- 弁護士に相談
二次被害に注意
診断書を提出したことで、さらにハラスメントを受けたり、退職を強要されたりすることがあります(二次被害)。
これは違法ですので、記録を取り、専門家に相談しましょう。
8. パワハラの証拠を残す
診断書と併せて、パワハラの証拠を残すことが重要です。
証拠の種類
メール、チャット、SNS 暴言やハラスメントの内容が記録されたメール、チャット、SNSのメッセージを保存します。スクリーンショットを取る、メールを転送するなど。
録音 パワハラの現場を録音します。スマートフォンのボイスレコーダーアプリが便利です。
ただし、録音は法的にグレーゾーンであるため、慎重に行いましょう。
日記・記録 いつ、誰から、どのようなパワハラを受けたか、日時、場所、内容、目撃者を記録します。
目撃者の証言 同僚など、パワハラを目撃した人がいれば、証言を得ます。
業務指示書、ノルマの記録 過大な要求、過小な要求の証拠となる書類を保存します。
医師の診断書 心身の不調の証拠となります。
証拠の保管
証拠は、自宅や個人のクラウドストレージに保管します。会社のパソコンやメールアドレスだけに保存すると、退職時に失う可能性があります。
9. 相談窓口
パワハラで悩んでいる場合、以下の窓口に相談できます。
社内の相談窓口
人事部門 信頼できる人事担当者に相談します。
コンプライアンス窓口、ハラスメント相談窓口 多くの企業に設置されています。匿名での相談も可能な場合があります。
労働組合 労働組合がある場合、相談・支援を受けられます。
社外の相談窓口
労働基準監督署 パワハラ、労働問題全般について相談できます。労災申請もここで行います。
総合労働相談コーナー 各都道府県労働局に設置されています。無料で相談できます。
法テラス 弁護士による無料法律相談が受けられます(条件あり)。
こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 精神的な悩みについて、電話相談ができます。
よりそいホットライン 0120-279-338 24時間、無料で相談できます。
弁護士 損害賠償請求、労働問題に詳しい弁護士に相談します。初回相談無料の法律事務所も多いです。
10. よくある質問(FAQ)
Q 初診でも診断書はもらえますか? A 医師が診断を下せる状態であれば、初診でも診断書を作成してもらえます。ただし、症状や状況を正確に伝えることが重要です。
Q 診断書に「パワハラが原因」と書いてもらえますか? A 通常の診断書には、病名のみが記載されますが、労災申請用や損害賠償請求用の場合、「業務上のストレスにより」などの記載をしてもらえることがあります。医師に依頼してみましょう。
Q 診断書の費用はいくらですか? A 医療機関によって異なりますが、数千円から1万円程度です。保険適用外のため、全額自己負担です。
Q 診断書をもらうと、会社に何を言われるか不安です。 A 診断書は、医学的に病気であることを証明する書類です。会社は、診断書を尊重し、適切な対応(休職、配置転換など)をする義務があります。もし不当な扱いを受けた場合、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
Q 休職期間は、診断書に何ヶ月と書いてもらえばいいですか? A 医師が、あなたの症状に基づいて判断します。一般的には、数週間から数ヶ月です。必要に応じて、診断書を更新できます。
Q パワハラの証拠がなくても、診断書はもらえますか? A はい、もらえます。診断書は、あなたの心身の状態を証明するものであり、パワハラの証拠は必須ではありません。ただし、労災申請や損害賠償請求をする場合は、パワハラの証拠も別途必要です。
Q 診断書をもらったら、必ず休職しなければいけませんか? A いいえ。診断書は、医師の意見を示すものですが、最終的な判断はあなたと会社が行います。働き続けることも、休職することも選択できます。
Q 診断書を会社に提出したら、パワハラがひどくなりました。 A それは二次被害であり、違法です。記録を取り、労働基準監督署、弁護士に相談してください。
まとめ
パワハラにより心身の不調をきたしている場合、診断書を取得することは正当な権利です。我慢せず、まずは医療機関を受診し、自分の心身を守ることを最優先にしてください。診断書は、休職、労災申請、損害賠償請求など、さまざまな場面であなたを守る重要なツールとなります。一人で抱え込まず、医師や専門家のサポートを受けながら、適切な対応をしていきましょう。あなたには、健康で安全に働く権利があります。

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