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コミュニケーション障害は、言葉を話す、聞いて理解する、読む、書く、あるいは非言語的な方法で他者と意思疎通を図ることに困難を抱える状態の総称です。
発達段階で現れる発達性のものと、病気や事故により後天的に生じるものがあります。
子どもの言葉の遅れ、発音の問題、吃音、声の異常、読み書きの困難、自閉スペクトラム症による社会的コミュニケーションの障害など、その現れ方は多様です。また成人では脳卒中による失語症、声帯の病気による音声障害なども含まれます。
コミュニケーションは人間関係や社会生活の基盤であり、障害があると学業、仕事、対人関係に深刻な影響が出ます。しかし早期発見と適切な支援により、多くの場合改善が期待できます。
この記事ではコミュニケーション障害の種類、原因、診断、支援方法について詳しく解説します。
コミュニケーション障害とは
定義
コミュニケーション障害は、言語、発話(話すこと)、コミュニケーション(意思疎通)に関する発達または機能の障害を指します。話す、理解する、読む、書く、聞く、社会的にやりとりするなどの能力に困難が生じます。
コミュニケーションの要素
コミュニケーションには以下の要素が含まれます。
言語
言葉の理解と使用。語彙、文法、意味の理解。
発話(構音)
音声を作り出す身体的プロセス。明瞭な発音。
音声
声の質、高さ、大きさ。
流暢性
スムーズに途切れずに話す能力。
社会的コミュニケーション(語用)
状況に応じた適切なコミュニケーション。会話のルール、文脈の理解。
これらのいずれか、または複数に困難があるとコミュニケーション障害となります。
有病率
コミュニケーション障害は比較的一般的です。子どもの約5から10パーセントに何らかのコミュニケーション障害があると推定されています。
影響
コミュニケーション障害は学業成績、社会的関係、情緒的発達、職業的成功に大きな影響を与えます。早期発見と介入が重要です。
コミュニケーション障害の分類
DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、コミュニケーション障害群として以下が分類されています。
1. 言語障害(言語症)
言語の獲得と使用に困難があります。語彙、文法、談話(まとまった話)の能力が年齢に比して著しく低い状態です。
主な症状
- 語彙が少ない: 知っている言葉が少ない
- 文法の誤り: 「てにをは」がおかしい、文の構造が単純
- 文章の構成が困難: まとまった話ができない
- 言葉の理解が困難: 指示が理解できない、質問に答えられない
- 表出言語の問題: 自分の考えを言葉で表現できない
- 受容言語の問題: 他人の言葉を理解できない
タイプ
- 表出性言語障害: 話すことが主に困難
- 受容性言語障害: 理解することが主に困難
- 混合型: 両方が困難
発症年齢
乳幼児期早期。言葉の発達が遅れる、または不十分。
経過
個人差が大きい。早期介入により改善する子もいれば、学童期以降も困難が続く子もいます。
2. 語音障害(音韻障害、構音障害)
音声を正しく作り出すことが困難です。特定の音を省略する、置き換える、歪めるなど、発音が不明瞭になります。
主な症状
- 特定の音が言えない: 「さかな」が「たかな」、「らっぱ」が「だっぱ」
- 音の省略: 「えんぴつ」が「えんぴ」
- 音の置き換え(置換): 「か行」が「た行」になるなど
- 音の歪み: 不明瞭な発音
- 全体的に聞き取りにくい
発症年齢
幼児期。年齢相応の発音の発達が見られない。
経過
多くの子どもは成長とともに、または言語療法により改善します。しかし放置すると学童期以降も残ることがあります。
3. 小児期発症流暢症(吃音症)
話す時の流暢性とリズムが障害されます。言葉の繰り返し、引き伸ばし、ブロック(言葉が出ない)などが特徴です。
主な症状
- 音や音節の繰り返し: 「ぼ、ぼ、ぼくは」
- 音の引き伸ばし: 「ぼーーくは」
- ブロック: 言葉が詰まって出ない、沈黙
- 挿入: 不要な音や言葉を挿入「あのー、えーと」を過度に使う
- 随伴症状: まばたき、顔をしかめる、体を動かすなど、吃音を回避しようとする行動
発症年齢
2歳から7歳、特に2から4歳頃に多い。
経過
約75から80パーセントの子どもは自然に改善します(特に女児)。しかし約20から25パーセントは成人まで持続します。早期介入が重要。
心理的影響
話すことへの不安、恐怖、回避。自尊心の低下。いじめの対象になることも。
4. 社会的(語用論的)コミュニケーション症
社会的な文脈に応じた言語使用に困難があります。会話のルール、非言語的コミュニケーション、文脈の理解などに問題があります。
主な症状
- 会話のやりとりが困難: 順番を守れない、相手の話を聞かない
- 文脈に合わない言葉遣い: 丁寧語を使うべき場面で使わない
- 非言語的手がかりの理解が困難: 表情、ジェスチャー、声のトーンが理解できない
- 推論が困難: 言外の意味、比喩、冗談、皮肉が理解できない
- 状況に応じた調整が困難: 教室と遊び場で同じ話し方
- 物語を話すことが困難: 順序立てて説明できない
発症年齢
幼児期早期。
自閉スペクトラム症との関係
症状は自閉スペクトラム症と重なりますが、社会的コミュニケーション症では反復的・限定的な行動や興味はありません。
5. 特定不能のコミュニケーション症
上記のいずれにも完全には当てはまらないが、コミュニケーションに明らかな困難がある場合。
その他のコミュニケーションに関連する障害
DSM-5のコミュニケーション障害群には含まれませんが、コミュニケーションに影響する障害があります。
自閉スペクトラム症(ASD)
社会的コミュニケーションと対人的相互反応の困難、限定的・反復的な行動パターンを特徴とする発達障害です。
コミュニケーション面の特徴
- 視線が合わない、または不自然
- ジェスチャー、表情が乏しい、または不適切
- 会話のキャッチボールが困難
- 一方的に話す
- エコラリア(他人の言葉をそのまま繰り返す)
- 言葉の遅れ(ある場合とない場合がある)
- 独特の言い回し
- 字義通りの理解(冗談、皮肉、比喩が理解できない)
知的発達症(知的障害)
全般的な知的機能が平均より有意に低く、適応行動に制限がある状態です。
コミュニケーション面の特徴
知的水準に応じて、言語発達全般が遅れます。語彙、文法、理解、表現すべてに困難。程度は知的障害の重症度により異なります。
学習障害(限局性学習症)
読み、書き、算数などの学習技能の習得に困難がある状態です。
読字障害(ディスレクシア)
読むことに著しい困難。文字の認識、音韻の処理、読解などに問題。コミュニケーション面では読むことに関わる困難。
書字障害(ディスグラフィア)
書くことに困難。綴り、文法、文章構成などに問題。
聴覚障害
聴力の障害により、音声言語の理解と発達に困難が生じます。
影響
- 話し言葉の理解困難
- 発音が不明瞭
- 語彙や文法の発達の遅れ
- 補聴器、人工内耳、手話などの支援が必要
後天性のコミュニケーション障害
失語症
脳卒中、頭部外傷などにより脳の言語中枢が損傷され、言語機能が障害される。成人に多い。
構音障害(ディスアースリア)
脳や神経、筋肉の障害により、発声・発語器官の運動が障害され、発音が不明瞭になる。
失声症
声帯の麻痺や病気により、声が出なくなる。
音声障害
声帯の病気(ポリープ、結節など)、誤った発声法により、声がかすれる、嗄声。
これらは発達性ではなく、病気や事故により生じます。
コミュニケーション障害の原因
コミュニケーション障害の原因は多様で、複数の要因が組み合わさっていることが多いです。
発達性コミュニケーション障害の原因
1. 遺伝的要因
家族内に言語障害や学習障害がある場合、発症リスクが高まります。特定の遺伝子との関連も研究されています。
2. 脳の発達の違い
言語を司る脳領域の発達や機能に違いがあると考えられています。神経画像研究で構造的・機能的な違いが報告されています。
3. 神経学的要因
脳性麻痺、てんかん、その他の神経疾患がある場合、コミュニケーション障害を伴うことがあります。
4. 聴覚障害
聴力に問題があると、言語の獲得に影響します。
5. 環境要因
言語刺激が不足する環境(会話が少ない、テレビばかり見せられる)、ネグレクト、不適切な養育。
6. 早産・低出生体重
早産や低出生体重で生まれた子は、発達障害のリスクが高まります。
7. 原因不明
多くの場合、明確な原因は特定できません。
吃音の原因
多因子性
遺伝、脳の機能(言語処理、運動制御)、気質、環境などが複雑に関与すると考えられています。単一の原因ではありません。
遺伝
家族内発症が多く、遺伝的要因が強く関与します。
脳の機能
脳の言語処理や運動制御に関わる領域の機能的な違いが報告されています。
発達的要因
言語能力が急速に発達する時期(2から5歳)に、言語能力と運動能力のバランスが崩れることが関与する可能性。
心理的要因は原因ではない
かつては心理的問題(母親の愛情不足など)が原因とされましたが、現在では否定されています。ただし心理的ストレスは悪化要因にはなります。
後天性の原因
脳卒中
脳梗塞、脳出血により言語中枢が損傷。
頭部外傷
交通事故、転落などによる脳損傷。
脳腫瘍
脳の言語領域の腫瘍。
声帯の病気
ポリープ、結節、麻痺、がんなど。
神経疾患
パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)など。
コミュニケーション障害の診断
早期発見の重要性
コミュニケーション障害は早期に発見し、早期に介入することで予後が大きく改善します。
乳幼児健診
1歳6ヶ月健診、3歳児健診などで言語発達のチェックが行われます。発達の遅れや異常が疑われる場合、専門機関に紹介されます。
言語発達のマイルストーン
正常な言語発達の目安
- 6ヶ月: 喃語(なんご)「ばぶばぶ」
- 1歳: 初語「ママ」「パパ」など意味のある単語
- 1歳6ヶ月: 語彙が増える、簡単な指示が理解できる
- 2歳: 二語文「ママ、いた」「ワンワン、きた」
- 3歳: 三語文以上、会話が成立する
- 4歳: 複雑な文、ほぼすべての音が正しく発音できる
これらの発達段階が著しく遅れている場合、コミュニケーション障害の可能性があります。
専門家による評価
言語聴覚士(ST: Speech-Language-Hearing Therapist)
コミュニケーション障害の評価と治療の専門家。
評価内容
- 言語理解(受容言語): 言葉の理解力
- 言語表出(表出言語): 語彙、文法、話す能力
- 構音: 発音の明瞭さ
- 流暢性: 吃音の有無と程度
- 音声: 声の質
- 社会的コミュニケーション: 会話能力、語用論
標準化された検査
- 新版K式発達検査
- 絵画語い発達検査(PVT-R)
- S-S法(言語発達遅滞検査)
- LCSA(学齢版言語・コミュニケーション発達スケール)など
観察
自由遊び場面での観察、保護者からの聞き取り。
他の専門家
小児科医、児童精神科医
全般的な発達の評価、他の発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD、知的障害)の有無を確認。
心理士
知能検査、発達検査。
聴覚検査
聴力に問題がないか確認。
鑑別診断
正常な個人差
言語発達には個人差があります。少し遅いだけで障害ではない場合もあります。経過観察が重要。
一過性の問題
環境の変化、ストレスにより一時的に言葉が出にくくなることもあります。
他の発達障害との区別
自閉スペクトラム症、知的障害、聴覚障害などとの区別、あるいは併存の確認。
コミュニケーション障害の支援と治療
コミュニケーション障害の支援の中心は言語療法(言語聴覚療法)です。
言語聴覚療法(ST: Speech-Language Therapy)
原則
- 早期開始: できるだけ早く開始
- 個別性: 子どもの発達段階、障害の種類と程度に応じた個別プログラム
- 系統性: 段階的に難易度を上げる
- 遊びを通じて: 特に幼児は遊びの中で学ぶ
- 家族の協力: 家庭での取り組みが重要
1. 言語障害への支援
語彙の拡大
絵カード、実物を使って語彙を増やす。日常生活の中で言葉を教える。
文法の指導
簡単な文型から複雑な文型へ。文の構造を教える。
言語理解の促進
指示理解、質問への応答、物語の理解など。
表現力の向上
自分の考えや経験を言葉で表現する練習。
読み書きの支援
学齢期には読み書きの支援も含まれます。
2. 語音障害(構音障害)への支援
構音訓練
正しい音の出し方を教える。舌、口、唇の位置や動きを視覚的・触覚的に教える。
段階的練習
- 音の単独練習: 「さ」単独で
- 音節での練習: 「さ」「し」「す」「せ」「そ」
- 単語での練習: 「さかな」「さる」
- 文での練習: 「さかなが泳いでいる」
- 会話での練習: 日常会話で正しく発音
聴覚的フィードバック
自分の発音を録音して聞く。
家庭での練習
毎日の短時間の練習が効果的。
3. 吃音への支援
幼児期(就学前)
間接的アプローチ
環境調整が中心。
- ゆっくり話す(親が)
- 子どもの話を最後まで聞く
- 急かさない
- 流暢に話せた時を褒める
- 吃音を指摘しない、訂正させない
- ストレスを減らす
直接的アプローチ
症状が重い場合、ゆっくり話す練習など。
学齢期以降
流暢性形成法
ゆっくり滑らかに話す技法を学ぶ。
吃音緩和法(吃音修正法)
吃音を軽く楽に行う技法。
認知行動療法
吃音への不安、恐怖を軽減。
セルフヘルプグループ
同じ悩みを持つ人との交流。
環境調整
学校での理解と配慮。発表の免除ではなく、準備時間を与える、文章を読ませるなどの工夫。
4. 社会的コミュニケーション症への支援
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
会話のルール、順番を守る、相手の話を聞く、適切な距離感などを明示的に教える。
ロールプレイ
様々な場面を想定した練習。
ビデオモデリング
適切なコミュニケーションの動画を見せる。
ピアグループ
同年代の子どもとの小集団での練習。
視覚的支援
会話のルールを絵や文字で示す。
5. 補助的・代替的コミュニケーション(AAC)
重度のコミュニケーション障害がある場合、話し言葉以外のコミュニケーション手段を活用します。
絵カード・シンボル
PECS(絵カード交換式コミュニケーションシステム)など。
コミュニケーションボード
絵や文字が配置されたボード。指差しで意思表示。
音声出力装置(VOCA)
ボタンを押すと音声が出る装置。
タブレット端末のアプリ
コミュニケーション支援アプリが多数あります。
手話
聴覚障害、または言語障害がある場合。
教育的支援
通常学級での配慮
- 指示は短く、明確に
- 視覚的支援(板書、プリント)
- 理解の確認
- 発表の機会の調整
- いじめの防止
通級指導教室
週に数時間、通常学級から通って個別指導を受ける。
特別支援学級
少人数で個別のニーズに応じた指導。
特別支援学校
重度の場合。
個別の教育支援計画
子どものニーズに応じた支援計画を作成。
家族支援
心理教育
障害について学ぶ。
ペアレントトレーニング
子どもへの適切な関わり方を学ぶ。
カウンセリング
家族の心理的サポート。
家族会
同じ悩みを持つ家族との交流。
薬物療法
コミュニケーション障害自体を治す薬はありません。ただし併存する障害(ADHD、不安障害など)に対して薬物療法が行われることがあります。
家族ができること
早期発見
言語発達のマイルストーンを知り、気になることがあれば早めに専門家に相談します。
言語刺激の提供
たくさん話しかける
日常生活の中で豊かな言葉のシャワーを浴びせます。
絵本の読み聞かせ
語彙を増やし、言語への興味を育てます。
歌、手遊び
楽しみながら言葉を学びます。
会話
子どもの話を聞き、応答します。会話のキャッチボール。
圧力をかけない
急かさない
言葉が出てくるまで待ちます。
訂正しすぎない
間違いを厳しく指摘すると委縮します。正しい形でさりげなく言い直す(リキャスト)。
例: 子「ワンワン、いた」→ 親「そうね、犬がいたね」
比較しない
他の子と比較しない。その子のペースを尊重。
ポジティブな関わり
できたことを褒める
小さな進歩も認め、励まします。
楽しい雰囲気
コミュニケーションは楽しいものだと感じられるように。
興味に寄り添う
子どもの興味のあることを一緒に楽しむ。
専門家と協力
言語療法に協力
家庭での課題に取り組みます。
定期的に相談
困ったことがあれば言語聴覚士や医師に相談。
学校との連携
情報共有
子どもの状態を学校と共有。
配慮の依頼
必要な配慮を具体的に依頼。
定期的な面談
担任、特別支援コーディネーターと定期的に話し合い。
いじめ対策
コミュニケーション障害のある子はいじめの対象になりやすいです。学校と協力して予防と早期発見に努めます。
予後
早期介入の効果
早期に適切な支援を受けることで、多くの子どもが改善します。
個人差
予後は個人により大きく異なります。軽度の構音障害は完全に改善することが多い一方、重度の言語障害は長期的な支援が必要なことがあります。
言語障害
早期介入により改善する子もいれば、学習障害として持続する子もいます。成人後も読み書きに困難が残ることがあります。
構音障害
多くは言語療法により改善します。適切な時期に介入すれば、就学前に正常化することも多いです。
吃音
幼児期発症の約75から80パーセントは自然回復します。しかし約20から25パーセントは成人まで持続します。早期の流暢性訓練が効果的です。完全に消失しなくても、上手に付き合う方法を学べます。
社会的コミュニケーション症
ソーシャルスキルトレーニングにより改善が期待できますが、長期的な支援が必要なことが多いです。
長期的展望
コミュニケーション障害があっても、適切な支援により学業、職業、社会生活で成功している人は多くいます。障害を理解し、適切な支援を受け、自分の強みを活かすことが重要です。
まとめ
コミュニケーション障害は、言語や発話、社会的やり取りに関する発達や機能の障害で、言語障害や吃音、社会的コミュニケーション症などが含まれます。
語彙や発音、会話理解の困難など症状は多様で、子どもの約5から10パーセントに見られます。
原因は遺伝や脳の発達などが関与し、診断には専門的評価が必要です。支援の中心は言語聴覚療法で、早期介入により改善が期待できます。適切な支援があれば、社会生活で力を発揮することも可能です。

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