はじめに 変化する障害者支援制度を理解する
障害者支援制度は、法改正、報酬改定、新制度の導入などにより、常に変化しています。2024年から2025年にかけても、障害者雇用促進法の改正による法定雇用率の引き上げ、障害福祉サービス等報酬改定、精神障害者の雇用義務化の完全施行、障害者総合支援法の見直しなど、重要な変更が相次いでいます。これらの変更は、障害のある方の生活、就労、医療、福祉サービスの利用に大きな影響を与えます。
しかし、制度の変更は専門用語が多く、「何がどう変わったのか」「自分にどう影響するのか」がわかりにくいという声をよく聞きます。また、新しい制度ができても、それを知らずに利用できていない方も少なくありません。制度を知らなければ、受けられるはずの支援を逃してしまいます。情報は、権利を守り、より良い生活を実現するための武器です。
本記事では、2024年から2025年にかけての障害者支援制度の最新情報を、できる限りわかりやすく解説します。障害者雇用、障害福祉サービス、医療、手当・年金、法改正の動向、そして今後の見通しまで、実践的かつ最新の情報を提供します。この記事を読むことで、制度の変更点を理解し、あなたやあなたの大切な人が、利用できる支援を最大限に活用できるよう、心から願っています。
注意 本記事は2024年12月時点の情報に基づいています。最新の情報は、厚生労働省のウェブサイト、各自治体の窓口で確認してください。
2024年の主要な変更点
2024年に実施された、または実施予定の主要な変更点を見ていきましょう。
1. 障害者雇用促進法 法定雇用率の引き上げ(2024年4月〜)
企業の障害者雇用義務が拡大
変更内容
民間企業の法定雇用率
- 2024年4月〜 2.5%(従来 2.3%)
- 2026年7月〜 2.7%(予定)
国・地方公共団体
- 2024年4月〜 2.8%(従来 2.6%)
- 2026年7月〜 3.0%(予定)
都道府県等の教育委員会
- 2024年4月〜 2.7%(従来 2.5%)
- 2026年7月〜 2.9%(予定)
影響
障害者にとって
- 求人が増える可能性
- 就職のチャンスが拡大
企業にとって
- より多くの障害者を雇用する必要
- 雇用しない場合、納付金の負担が増加
対象企業の拡大
従業員40人以上の企業
障害者を1人以上雇用する義務(2024年4月〜)
従来
従業員43.5人以上
2. 障害福祉サービス等報酬改定(2024年4月)
3年に1度の報酬改定
改定率
全体で+1.12%
主な改定内容
就労系サービスの強化
- 就労移行支援 一般就労への移行をより促進するため、成果に応じた報酬体系を強化
- 就労継続支援A型 生産活動の収益向上を評価する加算の新設
- 就労継続支援B型 平均工賃の向上を評価する加算の拡充
重度障害者への支援強化
- 重度訪問介護、同行援護などの報酬引き上げ
- 医療的ケアが必要な重度障害者への支援を評価する加算の拡充
グループホームの充実
- 重度障害者に対応するグループホームへの報酬加算
- 一人暮らし等への移行支援を評価する加算の新設
相談支援の強化
- 基本報酬の引き上げ
- 地域移行・地域定着支援の評価向上
処遇改善
- 福祉・介護職員等処遇改善加算の拡充
- 職員の賃金改善を促進
影響
利用者にとって
- サービスの質の向上が期待される
- 一部、利用者負担が増える可能性(1割負担の場合)
事業所にとって
- 収入が増える部分と減る部分がある
- より質の高いサービスの提供が求められる
3. 障害者差別解消法の改正(2024年4月施行)
民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化
改正内容
従来
- 国・地方公共団体 合理的配慮の提供は義務
- 民間事業者 合理的配慮の提供は努力義務
2024年4月以降
- 民間事業者も義務化
合理的配慮とは
障害のある方が、障害のない方と同じようにサービスを受けられるよう、過度な負担にならない範囲で調整すること
具体例
- 車椅子利用者のために、スロープを設置する
- 筆談、読み上げなどでコミュニケーションをとる
- 書類にルビを振る、わかりやすい表現にする
影響
障害者にとって
- 様々な場面で配慮を求めやすくなる
- 社会参加がしやすくなる
民間事業者にとって
- 合理的配慮の提供が法的義務となる
- 対応しない場合、行政指導の対象となる可能性
4. 精神障害者の雇用義務化(2018年4月〜、完全施行)
精神障害者も法定雇用率の対象
経緯
- 2018年4月 精神障害者も法定雇用率の算定対象に加わる
- 2023年まで 経過措置(精神障害者の雇用義務は事実上の努力義務)
- 2024年以降 完全施行(精神障害者も他の障害者と同様に雇用義務の対象)
影響
精神障害者にとって
- 求人が増加
- 就職の機会が拡大
企業にとって
- 精神障害者の雇用がより重要に
5. 障害年金の改正動向
2024年時点での主な動き
障害年金の診断書様式の改正(2023年1月〜)
- より詳細な情報を記載できるように改正
- 精神障害の診断書 日常生活能力の程度をより細かく評価
障害年金の不支給・等級変更に対する不服申立ての簡素化
- 審査請求の手続きが一部簡素化
今後の動向
- 障害年金の認定基準の見直しが議論されている
- より公平で透明性の高い認定を目指す
2025年に予定されている変更
2025年に予定されている、または検討されている主な変更を見ていきましょう。
1. 障害者総合支援法の見直し(2025年予定)
3年に1度の法改正
検討されている主な内容
地域生活支援の拡充
- グループホームの一人暮らしへの移行支援の強化
- 地域移行・地域定着支援のさらなる充実
就労支援の強化
- 一般就労への移行促進
- 就労継続支援事業所の工賃向上
障害児支援の充実
- 児童発達支援、放課後等デイサービスの質の向上
- 医療的ケア児への支援強化
相談支援の強化
- 基幹相談支援センターの機能強化
- 相談支援専門員の育成・確保
精神障害者の地域移行
- 長期入院患者の地域移行をさらに促進
影響
障害者にとって
- より充実した支援が受けられる可能性
- 地域で自分らしく暮らしやすくなる
自治体・事業所にとって
- 新しい制度への対応が必要
2. 医療的ケア児支援法の本格実施
2021年9月施行、2025年に向けてさらに充実
内容
- 医療的ケア児(人工呼吸器、胃ろうなどが必要な子ども)への支援を国・自治体の責務として明確化
- 保育所、学校での受け入れ体制の整備
2025年に向けた動き
- 支援体制のさらなる充実
- 医療的ケア児コーディネーターの配置拡大
3. こども家庭庁による障害児支援の再編(段階的に実施)
2023年4月こども家庭庁設立
影響
- 障害児支援の一部がこども家庭庁に移管
- 障害児支援と児童福祉の一体的な推進
2025年に向けた動き
- 障害児支援のさらなる充実
- 切れ目のない支援体制の構築
分野別の最新動向
各分野の最新動向を見ていきましょう。
就労支援
ハローワークの機能強化
- 障害者専門窓口のさらなる充実
- オンライン相談の拡大
障害者雇用の質の向上
- 定着支援の強化
- 職場での合理的配慮の促進
テレワーク・在宅勤務の拡大
- コロナ禍をきっかけに、障害者のテレワークが増加
- 通勤が難しい障害者にとって、新しい働き方の選択肢
農福連携の推進
- 農業分野での障害者雇用を促進
- 農業と福祉の連携による新しい就労の形
医療
オンライン診療の拡大
- コロナ禍をきっかけに、オンライン診療が普及
- 通院が難しい障害者にとって、利便性が向上
自立支援医療の見直し
- 利用しやすい制度への改善が検討されている
難病対策
- 指定難病の追加(順次追加されている)
- 難病患者への支援の充実
教育
インクルーシブ教育の推進
- 障害のある子どもと障害のない子どもが共に学ぶ環境の整備
特別支援教育の充実
- 通級指導、特別支援学級、特別支援学校の充実
医療的ケア児の受け入れ
- 学校での看護師配置の拡大
住まい
グループホームの充実
- 地域移行を促進するため、グループホームの整備が進む
- 一人暮らしへの移行支援
バリアフリー住宅の促進
- 住宅改修費の助成
- バリアフリー賃貸住宅の増加
移動・交通
公共交通のバリアフリー化
- 駅のエレベーター設置
- ノンステップバスの導入
移動支援サービス
- 同行援護、行動援護などの充実
タクシー券、ガソリン代助成
- 自治体による助成の継続・拡充
デジタル化
マイナンバーカードの活用
- 障害者手帳のデジタル化(一部自治体で試験的に実施)
- 行政手続きのオンライン化
支援技術(アシスティブ・テクノロジー)
- AIによる意思疎通支援
- スマートフォンアプリの活用
注目の新制度・取り組み
最近注目されている新しい制度や取り組みを紹介します。
1. 「親亡き後」問題への対応
障害のある子どもを持つ親の高齢化
課題
親が亡くなった後、障害のある子どもの生活をどう支えるか
対策
成年後見制度の利用促進
- 判断能力が不十分な方の財産管理、契約などをサポート
地域生活支援拠点の整備
- 緊急時の対応、相談、体験の機会の提供など、地域全体で支える体制
グループホームの充実
- 親と離れて暮らす選択肢
2. 強度行動障害への支援強化
強度行動障害 激しい自傷、他害、破壊などの行動
課題
対応できる事業所が少ない、専門的な支援が必要
対策
- 専門的な支援者の育成
- 報酬加算の拡充
- 支援手法の開発・普及
3. 医療的ケア児への支援
前述の通り、支援法が施行され、体制整備が進む
主な取り組み
- 医療的ケア児コーディネーターの配置
- 保育所、学校での受け入れ
- 短期入所(レスパイトケア)の充実
4. 発達障害者支援の充実
発達障害への理解が進み、支援が拡充
主な取り組み
- 発達障害者支援センターの全国展開
- 早期発見・早期支援
- 就労支援の強化
5. ピアサポートの推進
障害のある当事者による支援
内容
- 同じ障害のある仲間が、経験を共有し、支え合う
- 障害福祉サービスの一部として、ピアサポーターの活用が進む
6. 農福連携の推進
農業と福祉の連携
内容
- 農業分野で障害者が働く
- 障害者の就労機会の拡大
- 農業の担い手不足の解消
メリット
- 障害者 自然の中で働ける、やりがい
- 農家 人手の確保
地域別の最新情報
主要な自治体の最新動向を紹介します。
東京都
障害者への医療費助成の拡充(一部区市町村)
- 精神障害者保健福祉手帳2級・3級も対象に(自治体により異なる)
都営交通の無料化継続
- 障害者手帳所持者とその介護者1名
テレワーク促進助成金
- 障害者のテレワーク導入企業への助成
大阪府
大阪府障がい者雇用促進センターの機能強化
- 企業と障害者のマッチング支援
医療費助成の充実
神奈川県
「ともに生きる社会かながわ憲章」に基づく施策
- 障害者の地域生活支援、就労支援の強化
その他の自治体
各自治体で独自の取り組みが進んでいます
探し方
「〇〇県(市) 障害者 支援 最新」で検索
今後の見通し
今後の障害者支援制度の見通しを見ていきましょう。
1. さらなる地域移行の推進
施設・病院から地域へ
方向性
- グループホーム、一人暮らし支援の拡充
- 精神科病院の長期入院患者の地域移行
2. インクルーシブ社会の実現
障害の有無に関わらず、共に生きる社会
方向性
- インクルーシブ教育の推進
- 障害者差別の解消
- ユニバーサルデザインの普及
3. デジタル技術の活用
AIやIoTを活用した支援
例
- AI通訳(手話、文字起こし)
- 見守りセンサー
- オンライン診療、オンライン就労支援
4. 働き方の多様化
障害者の働き方の選択肢が拡大
方向性
- テレワーク、在宅勤務
- 短時間勤務
- 副業・兼業
5. 財源の課題
支援の拡充には財源が必要
課題
- 少子高齢化により、社会保障費が増大
- 障害者支援にどこまで財源を割けるか
見通し
- 効率的な支援の模索
- 公費と保険料のバランス
情報の集め方
最新情報を得るための方法を紹介します。
1. 厚生労働省のウェブサイト
最も信頼できる情報源
URL
https //www.mhlw.go.jp
見るべきページ
- 「障害者支援」のページ
- 「報道発表資料」 最新のニュース
- 「審議会・研究会等」 制度改正の議論
2. 市区町村のウェブサイト・広報誌
地域の情報
確認方法
「〇〇市 障害福祉」で検索
3. 障害者団体の情報
当事者の視点からの情報
主な団体
- 日本障害者協議会(JD)
- 各種障害者団体(日本視覚障害者団体連合、全日本ろうあ連盟など)
4. 新聞・ニュースサイト
社会の動きを知る
おすすめ
- 福祉新聞
- 一般紙の福祉・社会面
5. SNS
リアルタイムの情報
注意
信頼できる発信元(厚生労働省、自治体、専門家)をフォロー
6. 相談窓口で聞く
直接聞くのが確実
窓口
- 市区町村の障害福祉課
- 相談支援事業所
- 障害者団体
よくある質問
Q1 法定雇用率が上がると、何が変わりますか?
A 企業が雇用すべき障害者の数が増えるため、求人が増える可能性があります
就職のチャンスが拡大します。
Q2 2024年の報酬改定で、利用者負担は増えますか?
A 1割負担の方は、報酬が上がった分、わずかに増える可能性があります
ただし、多くの方は所得が低く、上限額0円のため、実質負担なしです。
Q3 合理的配慮の義務化で、何が変わりますか?
A 民間事業者(お店、会社など)でも、合理的配慮を求めやすくなります
ただし、「過度な負担」にならない範囲です。
Q4 障害者手帳のデジタル化はいつですか?
A 一部自治体で試験的に始まっていますが、全国展開の時期は未定です
今後、段階的に導入される見込みです。
Q5 2025年の法改正で、何が変わりますか?
A 詳細はまだ検討中ですが、地域生活支援、就労支援、障害児支援などの充実が予定されています
厚生労働省の審議会で議論されています。
Q6 最新情報はどこで確認できますか?
A 厚生労働省のウェブサイト、市区町村の障害福祉課が確実です
定期的にチェックすることをおすすめします。
Q7 精神障害者の雇用義務化で、就職しやすくなりますか?
A 求人は増えていますが、就職しやすくなるかは個人の状況によります
就労支援機関を活用して、準備をすることが大切です。
Q8 農福連携とは何ですか?
A 農業分野で障害者が働く取り組みです
自然の中で働くことができ、新しい就労の選択肢として注目されています。
Q9 「親亡き後」問題への対策はありますか?
A 成年後見制度、地域生活支援拠点、グループホームなどの整備が進んでいます
早めに相談窓口で相談することをおすすめします。
Q10 今後、障害者支援は充実しますか?
A 方向性としては充実する見込みですが、財源の制約もあります
効率的で質の高い支援が求められています。
まとめ 変化を味方につけて、より良い生活を
2024年から2025年にかけて、障害者支援制度は大きく変化しています。主な変更点は、障害者雇用促進法の法定雇用率の引き上げ(民間企業2.5%、2026年に2.7%へ)、障害福祉サービス等報酬改定(+1.12%)、障害者差別解消法の改正による民間事業者への合理的配慮の義務化、精神障害者の雇用義務化の完全施行、そして2025年に予定されている障害者総合支援法の見直しなどです。
これらの変更は、障害者の就労機会の拡大、福祉サービスの質の向上、社会参加の促進、地域生活の支援強化など、障害者の生活を改善する方向に向いています。また、医療的ケア児支援法の本格実施、「親亡き後」問題への対応、強度行動障害への支援強化、発達障害者支援の充実、ピアサポートの推進、農福連携の推進など、新しい取り組みも注目されています。
最も重要なのは、これらの変化を知り、自分の生活に活かすことです。情報は、厚生労働省のウェブサイト、市区町村の障害福祉課、障害者団体、新聞・ニュース、SNSなどで入手できます。定期的にチェックし、わからないことは窓口で相談しましょう。制度は常に変化しています。変化を味方につけて、利用できる支援を最大限に活用し、より良い生活を実現してください。あなたには、支援を受ける権利があります。

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