お子さんの将来を考え、B型施設を探している保護者の方へ
障害のあるお子さんに合った選択をするために、まず知っておきたい基本ガイド
初めての方は、基礎知識と不安解消をセットで押さえると安心です。
まず読むべき基礎知識5記事
施設選びでつまずきやすいポイント5記事
「自分が亡くなった後、この子はどうなるのか」。障害のある子どもを持つ親にとって、親亡き後の不安は非常に大きなものです。しかし、日本には親亡き後の生活を支える様々な制度や仕組みがあります。
適切な準備と制度の活用により、親亡き後も障害のある人が安心して生活できる環境を作ることができます。本記事では、親亡き後に利用できる住まい、経済的支援、権利擁護、日常生活支援などの制度について、網羅的かつ詳しく解説します。
親亡き後に必要な支援の全体像
親亡き後、障害のある人が生活するために必要な支援は、以下の4つの柱があります。
1. 住まいの確保
- どこで暮らすのか
- グループホーム、入所施設、一人暮らしなど
2. 経済的な支援
- 生活費をどうするか
- 障害年金、生活保護など
3. 権利擁護
- 誰が財産を管理するか
- 誰が契約などの法律行為をするか
- 成年後見制度など
4. 日常生活の支援
- 誰が日常生活を支えるか
- 福祉サービス、相談支援など
住まいに関する制度
親亡き後の住まいの選択肢と、それを支える制度を紹介します。
1. グループホーム(共同生活援助)
地域での共同生活
グループホームは、最も一般的な親亡き後の住まいです。
制度の概要
- 法的根拠:障害者総合支援法
- 実施主体:市区町村
- 運営:社会福祉法人、NPO法人など
内容
- 数人~十数人で共同生活
- 世話人や生活支援員が24時間体制で支援
- 食事、入浴、排泄などの支援
- 日中は仕事や作業所に通う
- 地域で暮らせる
対象者
- 障害支援区分1以上(障害の程度による)
- 一人暮らしは困難だが、グループでなら生活できる人
費用
- 家賃:3万円~7万円程度
- 食費:3万円~4万円程度
- 光熱費:1万円~2万円程度
- その他:日用品など
- 合計:月7万円~13万円程度
- 障害基礎年金1級(月額約8万円)と工賃で概ね賄える
利用者負担軽減制度
家賃の補助制度があります。
- 特定障害者特別給付費(家賃補助):月額最大1万円
- 自治体独自の家賃補助:市区町村による
申請方法
- 市区町村の障害福祉課に相談
- 相談支援事業所に相談
- グループホームを見学・体験
- 障害福祉サービス受給者証の申請
- 利用契約
探し方
- 市区町村の障害福祉課
- 相談支援事業所
- インターネット検索
- WAM NET(ワムネット)
注意点
- 空きがない場合がある
- 待機期間が長い場合がある
- 見学や体験利用を必ず行う
2. 入所施設(障害者支援施設)
24時間の支援
入所施設は、24時間体制で支援が受けられる施設です。
制度の概要
- 法的根拠:障害者総合支援法
- 実施主体:市区町村
- 運営:社会福祉法人など
内容
- 24時間の支援体制
- 食事、入浴、排泄、医療的ケアなど
- 日中活動も施設内
- 重度の障害にも対応
対象者
- 障害支援区分4以上(50歳以上は区分3以上)
- 常時介護を必要とする人
- グループホームでの生活が困難な人
費用
- 月額:0円~9万円程度(所得に応じて)
- 障害基礎年金の範囲内で収まることが多い
申請方法
- 市区町村の障害福祉課に相談
- 相談支援事業所に相談
- 施設を見学・体験
- 障害福祉サービス受給者証の申請
- 入所申し込み
注意点
- 空きが非常に少ない
- 待機期間が数年に及ぶ場合がある
- 早めに申し込みを
3. 一人暮らし(居宅での生活)
自立生活
支援を受けながら、一人で暮らすことも可能です。
利用できる支援
居宅介護(ホームヘルプ)
- 身体介護、家事援助
- 申請:市区町村の障害福祉課
重度訪問介護
- 長時間の介助(1日8時間以上など)
- 対象:重度の障害がある人
- 申請:市区町村の障害福祉課
訪問看護
- 医療的なケア
- 申請:医療機関
配食サービス
- 食事の配達
- 申請:市区町村の福祉課、民間業者
見守りサービス
- 定期的な訪問、安否確認
- 申請:市区町村の福祉課
緊急通報システム
- 緊急時にボタンで通報
- 申請:市区町村の福祉課
適している人
- 身の回りのことがある程度できる
- コミュニケーションが取れる
- 緊急時に助けを求められる
課題
- 孤立のリスク
- 緊急時の対応
- 悪質な業者のリスク
4. 公営住宅の優先入居
住宅の確保
障害者は公営住宅に優先的に入居できる場合があります。
制度
- 都道府県営住宅、市区町村営住宅
- 障害者向けの優先枠
- 家賃が安い
申請方法
- 都道府県、市区町村の住宅課
経済的支援に関する制度
親亡き後の経済的な支援制度を紹介します。
1. 障害基礎年金
国の年金制度
障害基礎年金は、障害のある人が受け取れる年金です。
制度の概要
- 法的根拠:国民年金法
- 実施主体:日本年金機構
金額(2024年度)
- 1級:月額約81,000円(年額約97万円)
- 2級:月額約65,000円(年額約78万円)
受給要件
- 20歳以上
- 国民年金に加入している
- 障害の状態が1級または2級に該当
申請方法
- 市区町村の年金窓口
- 年金事務所
親亡き後も継続
親が亡くなっても、障害基礎年金は本人が受け取り続けます。
2. 障害厚生年金
厚生年金加入者
厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金も受け取れます。
金額
- 障害基礎年金 + 障害厚生年金
- 金額は加入期間や給与による
3. 特別障害者手当
重度の障害
常時特別の介護を必要とする重度の障害がある場合。
制度の概要
- 法的根拠:特別児童扶養手当等の支給に関する法律
- 実施主体:市区町村
金額
- 月額約27,000円
受給要件
- 20歳以上
- 重度の障害
- 常時特別の介護が必要
- 施設入所していない
- 入院していない(3か月以上の入院は対象外)
申請方法
- 市区町村の障害福祉課
親亡き後の注意点
施設入所した場合、受給できなくなります。
4. 生活保護
最後のセーフティネット
収入が最低生活費に満たない場合、生活保護を受けられます。
制度の概要
- 法的根拠:生活保護法
- 実施主体:市区町村(福祉事務所)
内容
- 生活扶助(食費、光熱費など)
- 住宅扶助(家賃)
- 医療扶助(医療費)
- その他
受給要件
- 収入が最低生活費に満たない
- 資産がない(預貯金、不動産など)
- 働けない、または働いても収入が不足
申請方法
- 市区町村の福祉事務所
親亡き後
親が亡くなり、収入が障害年金だけになった場合、生活保護を受けられる可能性があります。
5. 障害者扶養共済制度
親が掛け金を払う保険
親が掛け金を払い、親が亡くなった後、障害のある子どもに終身年金が支給される制度です。
制度の概要
- 法的根拠:心身障害者扶養保険事業の実施について(通知)
- 実施主体:都道府県、指定都市
内容
- 掛金:月額9,300円~23,300円(親の加入時の年齢による)
- 年金:月額2万円(1口)
- 2口まで加入可能(月額4万円)
- 親が亡くなった後、子どもに終身年金
加入要件
- 親が65歳未満
- 障害のある子どもが将来独立自活することが困難
メリット
- 親亡き後の経済的保障
- 掛金は所得控除の対象(生命保険料控除)
デメリット
- 掛金を払い続ける必要がある
- 親が早期に亡くなった場合、掛金総額より受取年金総額が多いが、長生きした場合は逆転する可能性
申請方法
- 都道府県・指定都市の障害福祉課
重要性
親亡き後の経済的な柱の一つとして、非常に重要な制度です。親が元気なうちに加入しましょう。
6. 遺産相続
親の財産
親の遺産を相続することで、経済的な基盤を作れます。
準備すべきこと
- 遺言書の作成
- 特定贈与信託、家族信託の活用
- きょうだいとの公平性の考慮
詳細は後述します。
7. 各種手当・減免制度
その他の経済的支援
医療費助成
- 心身障害者医療費助成(自治体による)
- 自立支援医療(精神通院医療):1割負担
交通費助成
- 福祉特別乗車券(市営地下鉄・バス無料など)
- 福祉タクシー利用券
- JR、私鉄の運賃割引
税金の控除
- 障害者控除
- 特別障害者控除
- 相続税の障害者控除
公共料金の減免
- NHK受信料の免除
- 携帯電話料金の割引
申請方法
- 各制度により異なる
- 市区町村の障害福祉課に確認
権利擁護に関する制度
親亡き後、誰が財産管理や契約などの法律行為をするのか、権利擁護の制度を紹介します。
1. 成年後見制度
法的な保護
成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利を守る制度です。
制度の概要
- 法的根拠:民法、任意後見契約に関する法律
- 実施主体:家庭裁判所
種類
法定後見
3つの類型
本人の判断能力の程度により、3つの類型があります。
後見
- 判断能力がほとんどない
- 後見人が代理して契約などを行う
保佐
- 判断能力が著しく不十分
- 重要な契約などに保佐人の同意が必要
補助
- 判断能力が不十分
- 特定の行為に補助人の同意が必要
後見人等ができること
- 財産管理(預貯金の管理、不動産の管理など)
- 身上監護(介護サービスの契約、施設入所の契約、医療契約など)
- 本人に代わって契約などの法律行為
後見人等の選任
- 家庭裁判所が選任
- 親族、弁護士、司法書士、社会福祉士など
- 希望通りにならないこともある
費用
- 申立費用:数万円
- 後見人への報酬:月額2~6万円程度(財産額による)
- 報酬は本人の財産から支払う
- 親族が後見人の場合、報酬なしも可能
申立方法
- 家庭裁判所に申立
- 必要書類を提出
- 調査、面接
- 審判
- 後見人の選任
親亡き後
親が元気なうちに申立をして、親が後見人になる場合もありますが、親亡くなった後は、別の後見人が選任されます。
任意後見
本人が事前に決める
本人が判断能力があるうちに、将来の後見人を選んでおく制度です。
方法
- 本人が判断能力があるうちに
- 将来の後見人を決める
- 公正証書で任意後見契約を結ぶ
- 判断能力が不十分になったら
- 家庭裁判所に申立
- 任意後見監督人が選任され、任意後見が開始
メリット
- 信頼できる人を後見人にできる
デメリット
- 本人の判断能力が必要
- 費用がかかる
親亡き後の準備
親が元気なうちに、本人(障害のある人)の判断能力があれば、任意後見契約を結んでおくことも選択肢です。
2. 日常生活自立支援事業
軽度の支援
判断能力が不十分だが、成年後見制度を利用するほどではない場合に利用できます。
制度の概要
- 法的根拠:社会福祉法
- 実施主体:都道府県・指定都市社会福祉協議会
内容
- 福祉サービスの利用援助
- 日常的な金銭管理(預貯金の出し入れ、公共料金の支払いなど)
- 書類等の預かり
対象
- 判断能力が不十分な人
- 本人との契約による
費用
- 1回1,000円~2,000円程度(地域による)
申請方法
- 市区町村社会福祉協議会
成年後見制度との違い
- より軽度の支援
- 契約による(家庭裁判所の関与なし)
- 費用が安い
- 代理権はない(本人に代わって契約はできない)
3. 法人後見
法人が後見人
社会福祉法人やNPO法人が後見人になる制度です。
メリット
- 後見人が亡くなっても、法人が継続
- 安定的な支援
- 専門性
実施団体
- 社会福祉協議会
- 障害者団体
- NPO法人
費用
- 月額2~3万円程度
4. 市民後見人
市民が後見人
特別な資格を持たない市民が、研修を受けて後見人になる制度です。
メリット
- 身近な地域の人が後見人
- 費用が安い場合がある
実施
- 市区町村による
日常生活支援に関する制度
親亡き後の日常生活を支える制度を紹介します。
1. 相談支援事業所
継続的な相談相手
相談支援事業所は、親亡き後も継続的に相談に乗り、支援します。
制度の概要
- 法的根拠:障害者総合支援法
- 実施主体:市区町村
- 運営:社会福祉法人、NPO法人など
内容
- 生活全般の相談
- サービス等利用計画の作成
- サービス事業所との調整
- 定期的なモニタリング(月1回程度)
- 緊急時の対応
費用
- 無料
重要性
親亡き後、相談支援専門員は非常に重要な存在です。親が元気なうちから関係を築いておくことが大切です。
探し方
- 市区町村の障害福祉課
2. 地域生活支援拠点
緊急時の対応
地域生活支援拠点は、緊急時に対応する拠点です。
制度の概要
- 法的根拠:障害者総合支援法
- 実施主体:市区町村
機能
- 相談(24時間対応)
- 緊急時の受け入れ(短期入所など)
- 体験の機会の提供
- 専門的人材の確保・養成
- 地域の体制づくり
設置状況
- 市区町村や圏域に設置
- 設置方法は地域により異なる(多機能拠点型、面的整備型など)
親亡き後
親が亡くなった後の緊急時(病気、事故など)に対応してくれます。
3. 民生委員・児童委員
地域の見守り
民生委員は、地域で見守り活動をしている人たちです。
役割
- 地域住民の見守り
- 相談相手
- 福祉サービスの情報提供
- 関係機関への橋渡し
親亡き後
一人暮らしやグループホームで暮らす場合、民生委員が見守ってくれることがあります。
4. 地域包括支援センター
高齢者の総合相談窓口
65歳以上の高齢者の相談窓口です。
親亡き後
障害のある人が65歳以上になると、障害福祉サービスから介護保険サービスへ移行する場合があります。その際、地域包括支援センターが相談窓口になります。
財産管理に関する制度
親亡き後の財産管理に関する制度を紹介します。
1. 遺言書
親の意思を明確にする
遺言書を作成することで、親の意思を明確にできます。
遺言書の種類
自筆証書遺言
- 自分で書く
- 費用が安い
- 形式不備のリスク
公正証書遺言(おすすめ)
- 公証役場で作成
- 公証人が作成するので確実
- 費用がかかる(数万円)
- 原本が公証役場に保管される
遺言書で決めること
- 財産の分け方
- 遺言執行者の指定
- 後見人の希望(参考にされる)
注意点
- きょうだいとの公平性を考慮
- 遺留分に注意
- 専門家(弁護士、司法書士)に相談
2. 特定贈与信託
親が障害のある子どものために財産を信託
特定贈与信託は、親が障害のある子どものために財産を信託し、金融機関が管理する制度です。
制度の概要
- 信託銀行が提供
内容
- 親が障害のある子どものために財産を信託
- 金融機関が管理
- 定期的に給付(例:月10万円)
税制優遇
- 贈与税の非課税枠:最大6,000万円
メリット
- 親亡き後も計画的に給付
- 金融機関が管理するので安心
- 贈与税の優遇
デメリット
- 信託できる財産に制限(主に金銭)
- 信託報酬がかかる
- 柔軟性が低い
取扱機関
- 信託銀行
3. 家族信託(民事信託)
家族が受託者となって財産を管理
家族信託は、家族が受託者となって財産を管理する制度です。
内容
- 親(委託者)が家族(受託者)に財産を託す
- 受託者が財産を管理
- 障害のある子ども(受益者)のために使う
メリット
- 柔軟な設計が可能
- 成年後見制度より自由度が高い
- 親の認知症対策にもなる
デメリット
- 専門家のサポートが必要
- 費用がかかる(設計費用など)
- 受託者の負担
相談先
- 弁護士、司法書士
- 信託銀行
親が元気なうちに準備すべきこと
親亡き後に向けて、親が元気なうちに準備すべきことをまとめます。
1. 情報をまとめる
ライフプランノート(エンディングノート)の作成
子どもの情報をまとめておきましょう。
2. 相談支援専門員との関係構築
相談支援事業所を利用し、相談支援専門員と関係を築いておきましょう。
3. 福祉サービスの利用開始
親が元気なうちから、福祉サービス(デイサービス、短期入所など)を利用し、慣れておきましょう。
4. グループホームや施設の見学・体験
将来の住まいの選択肢を見学し、体験利用しておきましょう。
5. 障害者扶養共済制度への加入
親が65歳未満なら、早めに加入しましょう。
6. 遺言書の作成
公正証書遺言を作成しましょう。
7. 成年後見制度の検討
必要に応じて、任意後見契約を検討しましょう。
8. 信託の検討
特定贈与信託や家族信託を検討しましょう。
9. きょうだいとの話し合い
きょうだいと、親亡き後のことを話し合っておきましょう。
10. 地域との繋がり
民生委員や地域の人と顔見知りになっておきましょう。
相談窓口
親亡き後の制度について相談したい場合、以下の窓口に相談しましょう。
市区町村の障害福祉課
- 制度全般の説明
相談支援事業所
- 生活全般の相談、継続的なサポート
社会福祉協議会
- 日常生活自立支援事業、成年後見制度
弁護士、司法書士
- 成年後見制度、遺言書、信託
ファイナンシャルプランナー
- 経済計画、保険
障害者団体、家族会
- ピアサポート、情報交換
まとめ
親亡き後に利用できる制度は多岐にわたります。住まいではグループホーム、入所施設、一人暮らし支援があり、経済的には障害基礎年金、特別障害者手当、生活保護、障害者扶養共済制度、遺産相続などがあります。権利擁護には成年後見制度、日常生活自立支援事業があり、日常生活は相談支援事業所、地域生活支援拠点、民生委員などが支えます。財産管理には遺言書、特定贈与信託、家族信託があります。
親が元気なうちに、情報をまとめ、相談支援専門員との関係を築き、福祉サービスを利用開始し、グループホームを見学し、障害者扶養共済制度に加入し、遺言書を作成し、成年後見制度や信託を検討し、きょうだいと話し合い、地域との繋がりを作っておくことが大切です。
一人で抱え込まず、市区町村の障害福祉課や相談支援事業所、専門家に相談しながら、準備を進めましょう。
主な相談窓口
市区町村の障害福祉課
- 制度全般の説明
相談支援事業所
- 生活全般の相談、継続的なサポート
社会福祉協議会
- 日常生活自立支援事業、成年後見制度
一人で悩まず、必ず相談してください。

コメント