障害者の親亡き後、どうなる 制度と準備すべきこと

お子さんの将来を考え、B型施設を探している保護者の方へ
障害のあるお子さんに合った選択をするために、まず知っておきたい基本ガイド

初めての方は、基礎知識と不安解消をセットで押さえると安心です。

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「自分が亡くなった後、この子はどうなるのか」「親がいなくなったら、誰が面倒を見てくれるのか」。障害のある子どもを持つ親にとって、「親亡き後」の不安は非常に大きなものです。

また、障害のある本人にとっても、親の高齢化や親との別れは、人生の大きな転換点です。しかし、適切な準備と制度の活用により、親亡き後も安心して生活できる道筋を作ることができます。本記事では、親亡き後に利用できる制度、住まいの選択肢、経済的な支援、準備すべきこと、そして相談窓口について詳しく解説します。

親亡き後の主な不安

まず、親亡き後にどのような不安があるか整理しましょう。

1. 住まいの不安

どこで暮らすのか

  • 一人で暮らせるか
  • グループホームに入れるか
  • 施設に入れるか
  • きょうだいと暮らせるか
  • 住む場所が見つかるか

2. 経済的な不安

生活費をどうするか

  • 収入はあるか(障害年金、工賃など)
  • 貯金は足りるか
  • 誰が財産を管理するか
  • 借金や詐欺のリスク

3. 日常生活の不安

誰が支えてくれるか

  • 身の回りの世話は誰がするか
  • 健康管理は誰がするか
  • 緊急時はどうするか
  • 孤立しないか

4. 就労・日中活動の不安

どこに通うか

  • 仕事を続けられるか
  • 日中の居場所はあるか
  • 生きがいを持てるか

5. 権利擁護の不安

誰が守ってくれるか

  • 契約などの法律行為は誰がするか
  • 財産管理は誰がするか
  • 悪質な業者から守ってくれるか
  • 虐待や搾取のリスク

親亡き後に利用できる制度

親亡き後も、さまざまな制度やサービスを利用できます。

1. 住まいの選択肢

グループホーム(共同生活援助)

地域での共同生活

グループホームは、障害のある人が地域で共同生活を送る住まいです。

特徴

  • 数人~十数人で共同生活
  • 世話人や生活支援員が支援
  • 食事、入浴、排泄などの支援
  • 日中は仕事や作業所に通う
  • 地域で暮らせる
  • 個室または相部屋

費用

  • 家賃:3万円~7万円程度
  • 食費:3万円~4万円程度
  • 光熱費:1万円~2万円程度
  • その他:日用品など
  • 合計:月7万円~13万円程度
  • 障害年金と工賃でおおむね賄える

メリット

  • 地域で暮らせる
  • 支援を受けながら生活できる
  • 比較的自由な生活
  • 孤立しない

デメリット

  • 空きがない場合がある
  • 待機期間が長い
  • 共同生活のルールがある
  • 場所によって質が異なる

探し方

  • 市区町村の障害福祉課
  • 相談支援事業所
  • 地域活動支援センター
  • インターネット検索

入所施設(障害者支援施設)

24時間の支援

入所施設は、24時間の支援が受けられる施設です。

特徴

  • 24時間の支援体制
  • 食事、入浴、排泄、医療的ケアなど
  • 日中活動も施設内
  • 重度の障害にも対応

費用

  • 月額:0円~9万円程度(所得に応じて)
  • 障害基礎年金の範囲内で収まることが多い

メリット

  • 24時間の支援
  • 医療的ケアが受けられる
  • 安心感がある

デメリット

  • 地域から離れる
  • 自由度が低い
  • 空きが少ない
  • 待機期間が長い

一人暮らし(居宅での生活)

自立生活

支援を受けながら、一人で暮らすことも可能です。

利用できる支援

  • 居宅介護(ヘルパー)
  • 訪問看護
  • 配食サービス
  • 見守りサービス
  • 緊急通報システム

適している人

  • 身の回りのことがある程度できる
  • コミュニケーションが取れる
  • 緊急時の対応ができる

課題

  • 孤立のリスク
  • 緊急時の対応
  • 悪質な業者のリスク

きょうだいや親族との同居

家族での支援

きょうだいや親族と同居する選択肢もあります。

注意点

  • きょうだいの人生への配慮
  • 経済的負担
  • 支援の限界
  • 福祉サービスとの併用が重要

2. 経済的な支援制度

障害基礎年金

国の年金制度

障害基礎年金は、障害のある人が受け取れる年金です。

金額(2024年度)

  • 1級:月額約8万1千円(年額約97万円)
  • 2級:月額約6万5千円(年額約78万円)

受給要件

  • 20歳以上
  • 国民年金に加入している
  • 障害の状態が1級または2級に該当

申請方法

  • 市区町村の年金窓口
  • 年金事務所

障害厚生年金

厚生年金加入者

厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金も受け取れます。

金額

  • 障害基礎年金 + 障害厚生年金
  • 金額は加入期間や給与による

特別障害者手当

重度の障害

常時特別の介護を必要とする重度の障害がある場合。

金額

  • 月額約2万7千円

受給要件

  • 20歳以上
  • 重度の障害
  • 常時特別の介護が必要
  • 施設入所していない
  • 入院していない

生活保護

最後のセーフティネット

収入が最低生活費に満たない場合、生活保護を受けられます。

内容

  • 生活扶助
  • 住宅扶助
  • 医療扶助
  • その他

受給方法

  • 市区町村の福祉事務所

親の遺産

相続

親の遺産を相続することで、経済的な基盤を作れます。

注意点

  • 遺言書の作成(後述)
  • 相続税
  • 財産管理の方法
  • きょうだいとの公平性

障害者扶養共済制度

親が掛け金を払う保険

親が掛け金を払い、親が亡くなった後、障害のある子どもに終身年金が支給される制度です。

内容

  • 掛金:月額9,300円~23,300円(親の年齢による)
  • 年金:月額2万円(1口)
  • 2口まで加入可能(月額4万円)

加入要件

  • 親が65歳未満
  • 障害のある子どもが将来独立自活することが困難

メリット

  • 親亡き後の経済的保障
  • 掛金は所得控除の対象

申請方法

  • 都道府県・指定都市の障害福祉課

3. 権利擁護の制度

成年後見制度

法的な保護

成年後見制度は、判断能力が不十分な人の権利を守る制度です。

種類

法定後見

  • 後見、保佐、補助の3類型
  • 家庭裁判所が後見人等を選任
  • 本人の判断能力の程度による

任意後見

  • 本人が判断能力があるうちに、将来の後見人を選んでおく
  • 公正証書で契約

後見人ができること

  • 財産管理(預貯金の管理、不動産の管理など)
  • 身上監護(介護サービスの契約、施設入所の契約など)
  • 本人に代わって契約などの法律行為

費用

  • 申立費用:数万円
  • 後見人への報酬:月額2~6万円程度(財産額による)
  • 報酬は本人の財産から支払う
  • 親族が後見人の場合、報酬なしも可能

注意点

  • 後見人は家庭裁判所が選任(希望通りにならないこともある)
  • 専門職(弁護士、司法書士など)が選任されることが多い
  • 後見人への報酬が発生する
  • 一度開始すると、本人が亡くなるまで続く

申請方法

  • 家庭裁判所

日常生活自立支援事業

軽度の支援

判断能力が不十分だが、成年後見制度を利用するほどではない場合に利用できます。

内容

  • 福祉サービスの利用援助
  • 日常的な金銭管理
  • 書類等の預かり

対象

  • 判断能力が不十分な人
  • 本人との契約による

費用

  • 1回1,000円~2,000円程度(地域による)

申請方法

  • 市区町村社会福祉協議会

4. 日常生活の支援

相談支援事業所

継続的な相談相手

相談支援専門員が、継続的に相談に乗り、支援計画を作成します。

役割

  • 生活全般の相談
  • サービス等利用計画の作成
  • サービス事業所との調整
  • 定期的なモニタリング

費用

  • 無料

探し方

  • 市区町村の障害福祉課

地域生活支援拠点

緊急時の対応

緊急時に対応する拠点です。

機能

  • 相談
  • 緊急時の受け入れ
  • 体験の機会の提供
  • 地域の体制づくり

設置状況

  • 市区町村や圏域に設置
  • 設置方法は地域により異なる

民生委員・児童委員

地域の見守り

地域で見守り活動をしている人たちです。

役割

  • 地域住民の見守り
  • 相談相手
  • 福祉サービスの情報提供

親が準備すべきこと

親が元気なうちに、準備しておくべきことがあります。

1. 情報をまとめる

ライフプランノート(エンディングノート)の作成

障害のある子どもの情報をまとめておきましょう。

記載内容

  • 基本情報(氏名、生年月日、住所、障害者手帳番号など)
  • 障害の状態、特性
  • 病歴、服薬、アレルギー
  • 好きなこと、嫌いなこと
  • コミュニケーション方法
  • 日常生活の様子
  • 利用している福祉サービス
  • 相談支援事業所の連絡先
  • 主治医、病院の連絡先
  • 通っている事業所の連絡先
  • 経済状況(収入、支出、貯金、保険など)
  • 親族、きょうだいの連絡先
  • 親亡き後の希望(住まい、生活など)

保管場所

  • きょうだい、親族、相談支援専門員などに伝えておく

2. 遺言書の作成

財産の分け方を明確に

遺言書を作成することで、親の意思を明確にできます。

遺言書で決めること

  • 財産の分け方
  • 遺言執行者の指定
  • 後見人の希望(参考にされる)

遺言書の種類

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言(おすすめ)

注意点

  • きょうだいとの公平性を考慮する
  • 遺留分に注意
  • 専門家(弁護士、司法書士)に相談

3. 信託の活用

親亡き後の財産管理

信託を活用することで、親亡き後も財産を適切に管理できます。

特定贈与信託

  • 親が障害のある子どものために財産を信託
  • 金融機関が管理
  • 定期的に給付
  • 贈与税の非課税枠がある(最大6,000万円)

家族信託(民事信託)

  • 家族が受託者となって財産を管理
  • 柔軟な設計が可能

相談先

  • 弁護士、司法書士
  • 信託銀行

4. 障害者扶養共済制度への加入

終身年金の確保

前述の通り、親が掛け金を払い、親亡き後に年金が支給される制度です。早めに加入することをおすすめします。

5. 相談支援専門員との関係構築

継続的な相談相手

相談支援専門員と関係を築いておくことで、親亡き後も継続的な支援が受けられます。

方法

  • サービス等利用計画の作成を依頼する
  • 定期的に相談する
  • 信頼関係を築く

6. きょうだいとの話し合い

家族で共有する

きょうだいがいる場合は、早めに話し合っておくことが大切です。

話し合うこと

  • 親亡き後の住まい
  • きょうだいの関わり方
  • 財産の分け方
  • 後見人について

注意点

  • きょうだいの人生を尊重する
  • きょうだいだけに負担をかけない
  • 福祉サービスを活用する前提で考える

7. 地域との繋がり

孤立を防ぐ

地域との繋がりを作っておくことで、孤立を防げます。

方法

  • 障害者団体や家族会に参加する
  • 地域のイベントに参加する
  • 民生委員に挨拶しておく
  • 近所の人と顔見知りになる

8. 体験利用

住まいの選択肢を体験

グループホームや入所施設の体験利用をしておくことで、本人も親も安心できます。

方法

  • 市区町村の障害福祉課に相談
  • 相談支援事業所に相談
  • 見学や短期入所(ショートステイ)を利用

9. 本人への説明

本人の理解と準備

本人の理解力に応じて、親亡き後のことを説明しておくことも大切です。

方法

  • わかりやすい言葉で説明する
  • 不安を和らげる
  • 一緒に準備する

相談窓口

親亡き後の不安や準備について、以下の窓口に相談しましょう。

行政窓口

市区町村の障害福祉課

  • 制度の説明
  • サービスの紹介
  • 相談支援事業所の紹介

社会福祉協議会

  • 日常生活自立支援事業
  • 成年後見制度の相談
  • 地域の福祉情報

専門機関

相談支援事業所

  • 生活全般の相談
  • サービスの調整
  • 継続的なサポート

地域生活支援センター

  • 生活の相談
  • 権利擁護
  • ピアサポート

障害者就業・生活支援センター

  • 就労と生活の両面支援

専門職

弁護士、司法書士

  • 成年後見制度
  • 遺言書の作成
  • 信託の設計

ファイナンシャルプランナー

  • 経済計画
  • 保険の見直し

社会保険労務士

  • 障害年金の申請

当事者団体

障害者団体、家族会

  • 同じ悩みを持つ仲間との交流
  • 情報交換
  • ピアサポート

親の会

  • 親亡き後の不安を共有
  • 先輩家族の経験を聞く

まとめ

障害者の親亡き後、利用できる制度やサービスは多くあります。住まいはグループホーム、入所施設、一人暮らしなどの選択肢があり、経済的には障害基礎年金、特別障害者手当、障害者扶養共済制度、生活保護などで支えられます。権利擁護には成年後見制度や日常生活自立支援事業があり、日常生活は相談支援事業所、地域生活支援拠点、民生委員などが支えます。

親が元気なうちに、情報をまとめる、遺言書を作成する、信託を活用する、障害者扶養共済制度に加入する、相談支援専門員との関係を築く、きょうだいと話し合う、地域との繋がりを作る、体験利用をする、本人に説明するなど、準備しておくことが大切です。

親亡き後の不安は大きいですが、適切な準備と制度の活用により、安心して生活できる道筋を作ることができます。一人で抱え込まず、相談支援事業所や市区町村の障害福祉課、専門家に相談しながら、準備を進めましょう。


主な相談窓口

市区町村の障害福祉課

  • 制度の説明、サービスの紹介

相談支援事業所

  • 生活全般の相談、継続的なサポート

社会福祉協議会

  • 日常生活自立支援事業、成年後見制度の相談

一人で抱え込まず、必ず相談してください。

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