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「障害のある子どもがいるけれど、遺言書は必要なのか」「何を書けばいいのか」「きょうだいとトラブルにならないか」「遺言書がないとどうなるのか」。障害のある家族がいる場合、遺言書の必要性はより高まります。
遺言書がないと、法定相続分で分けることになり、障害のある子どもが困窮する、きょうだい間でトラブルになる、相続手続きが複雑になるなどの問題が起こる可能性があります。本記事では、障害者がいる家庭で遺言書が必要な理由、遺言書に書くべきこと、書き方、注意点、遺言書以外の準備について詳しく解説します。
遺言書とは
基本的な理解
自分の財産をどう分けるか意思表示
遺言書とは、自分が亡くなった後、自分の財産をどのように分けるかを記した文書です。
法的効力
正しく作成された遺言書には、法的効力があります。
遺言書がない場合
遺言書がない場合、民法で定められた法定相続分で財産を分けることになります。
法定相続分
遺言書がない場合の分け方
遺言書がない場合、以下の法定相続分で分けます。
配偶者と子どもがいる場合
- 配偶者:1/2
- 子ども:1/2を子どもの人数で均等に分ける
例:父が亡くなり、母、障害のある子A、健常者の子Bが残った場合
- 母:1/2
- 子A:1/4
- 子B:1/4
配偶者がおらず、子どもだけの場合
- 子ども:全財産を子どもの人数で均等に分ける
例:母が亡くなり、障害のある子A、健常者の子Bが残った場合
- 子A:1/2
- 子B:1/2
障害者がいる家庭で遺言書が必要な理由
障害のある家族がいる場合、遺言書の必要性はより高まります。
1. 障害のある子どもを経済的に守るため
より多くの財産を残したい
障害のある子どもは、親亡き後も生活費、医療費、介護費などがかかります。法定相続分より多くの財産を残したい場合、遺言書が必要です。
例
法定相続分では、障害のある子Aと健常者の子Bが1/2ずつですが、遺言書で「Aに2/3、Bに1/3」と指定できます。
2. きょうだい間のトラブルを防ぐため
親の意思を明確にする
遺言書がないと、きょうだい間で「誰がどれだけ相続するか」「誰が障害のある子の面倒を見るか」でトラブルになる可能性があります。
親の意思を明確にすることで
- きょうだいが納得しやすい
- 争いを防げる
3. 相続手続きをスムーズにするため
遺産分割協議が不要
遺言書があれば、遺産分割協議(相続人全員で話し合って財産を分ける手続き)が不要になり、手続きがスムーズです。
障害のある子どもが判断能力不十分な場合
判断能力が不十分な場合、遺産分割協議に参加できず、成年後見人を選任する必要があります。遺言書があれば、この手続きを省略できる場合があります。
4. 信託など特別な仕組みを指定するため
特定贈与信託、家族信託
遺言書で、特定贈与信託や家族信託を指定できます。これにより、親亡き後も計画的に財産を管理できます。
5. 後見人の希望を伝えるため
後見人候補者の指定
遺言書で、成年後見人の候補者を指定できます(法的拘束力はありませんが、家庭裁判所が参考にします)。
6. 付言事項で思いを伝えるため
家族へのメッセージ
遺言書の付言事項(法的効力はないが、家族へのメッセージを書ける部分)で、障害のある子への思い、きょうだいへのお願いを伝えられます。
7. 不動産の扱いを明確にするため
実家をどうするか
実家に障害のある子が住み続ける場合、不動産の扱いを明確にする必要があります。
選択肢
- 障害のある子に相続させる
- きょうだいに相続させ、障害のある子に居住権を与える
- 信託を活用する
遺言書がないとどうなるか
遺言書がない場合、以下の問題が起こる可能性があります。
1. 法定相続分で分けられる
親の意思が反映されない
障害のある子により多くの財産を残したくても、法定相続分で均等に分けられます。
2. きょうだい間でトラブル
遺産分割協議が難航
「障害のある子Aにもっと残すべきだ」「いや、平等に分けるべきだ」「私が面倒を見るから、私がもっともらうべきだ」など、トラブルになる可能性があります。
3. 相続手続きが複雑
遺産分割協議が必要
相続人全員で遺産分割協議をする必要があり、時間と手間がかかります。
障害のある子が判断能力不十分な場合
成年後見人を選任する必要があり、さらに複雑になります。
4. 実家に住めなくなる可能性
不動産の共有
遺言書がないと、実家が相続人全員の共有になります。きょうだいが「売却したい」と言った場合、障害のある子が住めなくなる可能性があります。
5. 親の思いが伝わらない
メッセージがない
親の思いや希望が、家族に伝わりません。
遺言書に書くべきこと
障害者がいる家庭で、遺言書に書くべきことを説明します。
1. 財産の分け方
誰に何を相続させるか
具体的に指定します。
例
「長男Aに自宅不動産を相続させる」 「長女Bに○○銀行の預金を相続させる」 「次男C(障害者)に○○銀行の預金、○○証券の株式を相続させる」
障害のある子に多く残す場合
「次男C(障害者)に全財産の1/2を相続させる」 「長男Aと長女Bに、それぞれ全財産の1/4ずつを相続させる」
注意点:遺留分
遺留分(法定相続人が最低限受け取れる財産の割合)に注意しましょう。遺留分を侵害すると、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。
遺留分の割合
- 配偶者と子どもがいる場合:配偶者1/4、子ども全体で1/4
- 子どもだけの場合:子ども全体で1/2
例:母が亡くなり、財産3,000万円、子A(障害者)、子Bがいる場合
- 遺留分:子A 750万円、子B 750万円
- 遺言書で「Aに2,000万円、Bに1,000万円」と指定しても、Bの遺留分(750万円)は確保される
2. 遺言執行者の指定
遺言の内容を実行する人
遺言執行者を指定しておくと、手続きがスムーズです。
遺言執行者の候補
- きょうだい
- 親族
- 弁護士、司法書士などの専門家
記載例
「遺言執行者として、長男Aを指定する」 「遺言執行者として、弁護士○○を指定する」
3. 成年後見人の希望
後見人候補者の指定
成年後見人の候補者を記載できます(法的拘束力はありませんが、家庭裁判所が参考にします)。
記載例
「次男C(障害者)の成年後見人として、長男Aを推薦する」
4. 信託の指定
特定贈与信託、家族信託
信託を指定できます。
記載例
「次男C(障害者)のために、○○銀行の預金1,000万円を特定贈与信託とする」 「次男C(障害者)のために、長男Aを受託者とする家族信託を設定する」
5. 付言事項
家族へのメッセージ
法的効力はありませんが、家族へのメッセージを書けます。
書くべき内容
- 障害のある子への思い
- きょうだいへのお願い
- 財産を分けた理由
- 感謝の言葉
記載例
「次男C(障害者)は、私が亡くなった後も生活費や医療費がかかります。そのため、Cに多くの財産を残しました。長男A、長女Bには申し訳なく思いますが、Cのことをよろしくお願いします。AとBには、これまで十分な教育を受けさせることができ、自立してもらえたことに感謝しています。」
6. 葬儀や埋葬の希望
葬儀の方法
葬儀や埋葬の希望を書けます(法的効力は弱いですが、家族が尊重することが多いです)。
遺言書の種類と書き方
遺言書には、主に3つの種類があります。
1. 自筆証書遺言
自分で書く
自分で全文を手書きで作成する遺言書です。
メリット
- 費用がかからない
- 一人で作成できる
- いつでも書き換えられる
デメリット
- 形式不備で無効になるリスク
- 紛失、改ざんのリスク
- 発見されないリスク
書き方の要件
- 全文を自筆で書く(パソコン不可。ただし、財産目録はパソコン可)
- 日付を書く(○年○月○日)
- 署名する
- 押印する(認印可)
自筆証書遺言保管制度
2020年7月から、法務局で自筆証書遺言を保管してもらえる制度が始まりました。
メリット
- 紛失、改ざんのリスクがない
- 検認手続きが不要
- 費用が安い(保管料3,900円)
手続き
- 法務局に予約
- 本人が法務局に出向く
- 遺言書を提出
2. 公正証書遺言(おすすめ)
公証人が作成
公証役場で、公証人が作成する遺言書です。
メリット
- 形式不備の心配がない
- 原本が公証役場に保管されるため、紛失、改ざんのリスクがない
- 検認手続きが不要
- 公証人がアドバイスしてくれる
デメリット
- 費用がかかる(数万円~十数万円)
- 証人2人が必要
- 公証役場に行く手間
費用
財産額によって異なります。
例
- 財産3,000万円の場合:約5万円~10万円
手続き
- 公証役場に連絡
- 必要書類を準備
- 公証人と打ち合わせ
- 証人2人を手配(親族以外、弁護士や司法書士に依頼可)
- 公証役場で遺言書作成
- 遺言書に署名・押印
必要書類
- 本人の印鑑証明書
- 本人の戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 不動産の登記簿謄本、固定資産評価証明書
- 預貯金の残高証明書
- その他、財産を証明する書類
障害者がいる家庭には公正証書遺言がおすすめ
確実性が高く、後のトラブルを防げるため、障害者がいる家庭には公正証書遺言がおすすめです。
3. 秘密証書遺言
内容を秘密にする
内容を秘密にしたまま、存在だけを公証人に証明してもらう遺言書です。
メリット
- 内容を秘密にできる
- パソコンで作成可能
デメリット
- 形式不備のリスク
- 費用がかかる
- ほとんど使われていない
おすすめしない
秘密証書遺言は、メリットが少なく、ほとんど使われていません。
遺言書作成の注意点
遺言書を作成する際の注意点を説明します。
1. 遺留分に配慮する
トラブルを防ぐ
遺留分を大きく侵害すると、他の相続人から遺留分侵害額請求をされる可能性があります。できるだけ遺留分に配慮しましょう。
対策
付言事項で、財産を多く残す理由を説明し、理解を求めます。
2. きょうだいと話し合う
事前の理解
可能であれば、きょうだいと事前に話し合い、理解を得ておきましょう。
話し合うこと
- 障害のある子の将来
- 財産の分け方
- きょうだいの役割
3. 定期的に見直す
状況の変化
財産の状況、家族の状況が変わった場合、遺言書を見直しましょう。
見直しのタイミング
- 財産が大きく変わった
- きょうだいが結婚した、子どもができた
- 障害のある子の状態が変わった
4. 専門家に相談する
確実な遺言書
弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相談内容
- 遺言書の内容
- 遺留分の計算
- 税金の対策
- 信託の活用
5. 遺言書の存在を伝える
見つけてもらう
遺言書を作成したことを、信頼できる人(きょうだい、遺言執行者など)に伝えておきましょう。
伝える内容
- 遺言書の存在
- 保管場所(公正証書遺言の場合、公証役場名)
6. エンディングノートと併用
詳細な情報
遺言書には法的効力がある内容だけを書き、詳細な情報(銀行口座、保険、葬儀の希望など)はエンディングノートに書きましょう。
遺言書以外の準備
遺言書と併せて、以下の準備もしておきましょう。
1. 障害者扶養共済制度への加入
終身年金
親が掛金を払い、親亡き後に障害のある子に終身年金が支給される制度です。
金額
- 月額2万円または4万円(1口または2口)
加入要件
- 親が65歳未満
申請方法
- 都道府県・指定都市の障害福祉課
2. 特定贈与信託、家族信託
計画的な財産管理
信託を活用することで、親亡き後も計画的に財産を管理できます。
3. 成年後見制度の検討
任意後見契約
親が元気なうちに、将来の後見人を決めておく任意後見契約を結ぶことも選択肢です。
4. エンディングノート、ライフプランノートの作成
詳細な情報
障害のある子の詳細な情報をまとめておきます。
5. きょうだいとの話し合い
役割分担
親亡き後の役割分担を話し合っておきます。
6. 相談支援専門員との関係構築
継続的な相談相手
相談支援事業所を利用し、相談支援専門員と関係を築いておきます。
よくある質問
Q1: 遺言書は何歳から作るべきですか?
A: 早ければ早いほどいいです。
特に、親が60代になったら作成を検討しましょう。突然の病気や事故に備えるため、早めに作成することをおすすめします。
Q2: 自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがいいですか?
A: 公正証書遺言をおすすめします。
確実性が高く、後のトラブルを防げます。費用はかかりますが、安心感が違います。
Q3: 障害のある子に全財産を残すことはできますか?
A: できますが、遺留分に注意が必要です。
他の相続人(きょうだい)の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求をされる可能性があります。遺留分を考慮しつつ、できるだけ多く残す方法を専門家に相談しましょう。
Q4: 遺言書を書いたことを、きょうだいに伝えるべきですか?
A: 伝えた方がいいです。
事前に理解を得ておくことで、親亡き後のトラブルを防げます。ただし、内容を詳しく話すかどうかは、家族の関係性によります。
Q5: 遺言書は一度作ったら変更できませんか?
A: いつでも変更できます。
遺言書は、いつでも新しいものに書き換えられます。状況が変わったら、見直しましょう。
Q6: 遺言書がないと、障害のある子はどうなりますか?
A: 法定相続分で相続します。
遺言書がない場合、法定相続分で均等に相続します。ただし、きょうだいとの話し合いで、障害のある子に多く分けることもできます(全員の合意が必要)。
Q7: 遺言書に書いていないことは、どうなりますか?
A: 遺産分割協議で決めます。
遺言書に書いていない財産は、相続人全員で遺産分割協議をして分けます。
まとめ
障害者がいる家庭では、遺言書の必要性はより高まります。遺言書が必要な理由は、障害のある子どもを経済的に守る、きょうだい間のトラブルを防ぐ、相続手続きをスムーズにする、信託など特別な仕組みを指定する、後見人の希望を伝える、付言事項で思いを伝える、不動産の扱いを明確にするためです。
遺言書がないと、法定相続分で分けられる、きょうだい間でトラブル、相続手続きが複雑、実家に住めなくなる可能性、親の思いが伝わらないなどの問題が起こる可能性があります。
遺言書に書くべきことは、財産の分け方、遺言執行者の指定、成年後見人の希望、信託の指定、付言事項、葬儀や埋葬の希望です。
遺言書の種類は、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つですが、障害者がいる家庭には公正証書遺言がおすすめです。
注意点は、遺留分に配慮する、きょうだいと話し合う、定期的に見直す、専門家に相談する、遺言書の存在を伝える、エンディングノートと併用することです。
遺言書以外の準備として、障害者扶養共済制度への加入、信託、成年後見制度の検討、エンディングノートの作成、きょうだいとの話し合い、相談支援専門員との関係構築も重要です。
親が元気なうちに、遺言書を作成し、親亡き後への準備を進めましょう。弁護士、司法書士、税理士などの専門家に相談しながら、最善の方法を見つけることをおすすめします。
主な相談窓口
弁護士、司法書士
- 遺言書の作成、相続の相談
税理士
- 相続税の相談
公証役場
- 公正証書遺言の作成
一人で悩まず、必ず専門家に相談してください。

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