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障害年金は、病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった人が受給できる公的年金制度です。しかし申請すれば誰でももらえるわけではありません。
「障害があるのに障害年金がもらえなかった」「申請したが不支給だった」というケースは少なくありません。
障害年金には厳格な要件があり、それらを満たさない場合は受給できません。
主な理由として、初診日が証明できない、保険料納付要件を満たしていない、障害の程度が基準に達していない、初診日から1年6ヶ月経過していない、などがあります。また診断書の書き方、申請書類の不備、医師とのコミュニケーション不足なども不支給につながります。
しかし不支給になった場合でも、審査請求、再申請、状態悪化後の申請など、対応策はあります。
この記事では障害年金がもらえない主な理由、不支給を防ぐための対策、不支給になった場合の対応について詳しく解説します。
障害年金の基本
障害年金とは
障害年金は、病気やけがで生活や仕事が制限されるようになった人に支給される公的年金です。20歳から64歳までの現役世代も対象です。
種類
障害基礎年金
国民年金加入者、20歳前の病気・けが、または60歳以上65歳未満で日本在住の人が対象。1級と2級。
障害厚生年金
厚生年金加入者が対象。1級、2級、3級と障害手当金(一時金)。
支給額(令和6年度)
障害基礎年金
- 1級: 年額約102万円(月額約8.5万円)
- 2級: 年額約81.6万円(月額約6.8万円)
- 子の加算あり
障害厚生年金
- 基礎年金額に加えて、報酬比例の年金額が加算
- 配偶者加給年金あり(1級、2級)
- 3級: 最低保障額約61.2万円
受給要件(3つすべて満たす必要)
1. 初診日要件
障害の原因となった病気・けがで初めて医療機関を受診した日(初診日)に、国民年金または厚生年金に加入していること。または20歳前、または60歳以上65歳未満で日本在住。
2. 保険料納付要件
初診日の前日において、以下のいずれかを満たすこと。
- 原則: 初診日の属する月の前々月までの被保険者期間のうち、保険料納付済期間と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上
- 特例: 初診日が令和8年4月1日前で、初診日に65歳未満の場合、初診日の属する月の前々月までの1年間に保険料の未納がない
3. 障害状態要件
障害認定日(原則として初診日から1年6ヶ月経過した日)に、障害等級(1級、2級、3級)に該当する障害の状態にあること。
障害年金がもらえない主な理由
1. 初診日が証明できない
最も多い不支給理由の一つ
初診日とは
障害の原因となった病気・けがで初めて医療機関を受診した日。
なぜ重要か
初診日により、どの年金制度(国民年金、厚生年金)に加入していたか、保険料納付要件を満たしているかが決まります。
証明できない理由
- カルテが廃棄されている(法定保存期間5年)
- 初診の病院が廃院している
- 何十年も前で記憶が曖昧
- 複数の病院を転々としていて、どこが初診か不明
- 精神疾患で、最初は内科を受診していたなど、病名が違う
対策
- 受診状況等証明書: 初診の医療機関に作成を依頼(カルテが残っていれば)
- カルテがない場合: 2番目以降の医療機関の受診状況等証明書で初診日を推定
- 参考資料: 診察券、領収書、お薬手帳、健康保険の給付記録、障害者手帳の申請時期、会社の健康診断記録、家族や同僚の証言など
- 社会保険労務士に相談
2. 保険料納付要件を満たしていない
若い時の未納が問題に
原則の要件
初診日の前日において、被保険者期間の3分の2以上、保険料を納付または免除されていること。
特例の要件
初診日の前々月までの1年間に未納がないこと。
満たせない例
- 20代の時、国民年金保険料を払っていなかった(未納)
- 学生納付特例や免除の手続きをしていなかった
- 厚生年金加入前の国民年金期間に未納がある
- 初診日直前の1年間に未納期間がある
納付要件を満たせないとどうなるか
障害基礎年金も障害厚生年金も受給できません。
例外: 20歳前の傷病
20歳前に初診日がある場合、納付要件は問われません。ただし所得制限があります。
対策
- 過去の納付記録を確認(ねんきん定期便、年金事務所で照会)
- 学生時代: 学生納付特例を申請していたか確認
- 免除: 免除の記録があれば納付期間にカウントされる
- 後納制度: 現在は利用できないが、過去に利用していれば有効
- 初診日の特定: 納付要件を満たしている時期に初診日があったことを証明できれば受給可能
3. 障害の程度が基準に達していない
最も多い不支給理由
障害等級
- 1級: 他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない程度
- 2級: 必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度
- 3級(厚生年金のみ): 労働が著しい制限を受ける、または制限を加えることを必要とする程度
認定基準
疾患ごとに詳細な認定基準があります。精神疾患、心臓疾患、腎臓疾患、肢体の障害など。
基準に達しない例
- 働いている: 特に常勤で就労していると、2級以上の認定が難しい(ただし絶対ではない)
- 日常生活にそれほど支障がない: 自立して生活できている
- 症状が軽い: 服薬でコントロールされている、通院頻度が少ない
- 検査データが基準を満たさない: 透析をしていない腎臓病、心臓の検査値が基準に達しないなど
グレーゾーン
2級と3級の境界、3級と不該当の境界は判断が難しく、審査する医師により判断が分かれることがあります。
対策
- 診断書の内容が重要: 医師に現状を正確に伝える(後述)
- 日常生活の困難を具体的に記載してもらう
- 病歴・就労状況等申立書で補足説明
- 社会保険労務士に相談
4. 障害認定日の要件を満たしていない
障害認定日
原則として初診日から1年6ヶ月経過した日。
満たさない例
- 初診日から1年6ヶ月経過していない時点で申請
- 症状が固定していない(まだ治療により改善する可能性がある段階)
例外(認定日の特例)
以下の場合、1年6ヶ月を待たずに認定されます。
- 人工透析開始から3ヶ月経過
- 人工骨頭・人工関節挿入置換
- 心臓ペースメーカー、ICD、CRT植込み
- 人工弁置換
- 人工肛門造設、尿路変更術から6ヶ月経過
- 新膀胱造設
- 切断または離断による肢体の障害
- 咽頭全摘出
- 在宅酸素療法開始
など
対策
- 1年6ヶ月経過を待つ
- 特例に該当する場合は早期に申請可能
5. 因果関係が認められない
前の病気と今の障害の因果関係
例
- 以前に別の病気で受診歴がある
- その病気と現在の障害に医学的因果関係があるか
問題
因果関係があると判断されると、以前の受診日が初診日となり、保険料納付要件を満たさない可能性。
例: うつ病と統合失調症
最初にうつ病と診断され、後に統合失調症と診断変更。両者に因果関係があると判断されれば、うつ病の初診日が初診日。
対策
- 医師に診断書で「前の病気とは別の病気」と明記してもらう(医学的に妥当な場合)
- 社会保険労務士に相談
6. 診断書の内容が不十分
診断書は最重要書類
問題のある診断書
- 記載が簡潔すぎる、具体性がない
- 日常生活の困難が伝わらない
- 検査データのみで、症状の記載が少ない
- 「就労している」と記載され、それ以上の説明がない
- 医師が障害年金の認定基準を理解していない
対策
- 医師に現状を詳しく伝える(後述)
- 診断書を確認させてもらう(コピーを取る)
- 不十分な場合、追加の書類や訂正を依頼
- 障害年金に詳しい医師に依頼(または転院)
- 社会保険労務士が医師と連携
7. 病歴・就労状況等申立書の内容が不十分
申立書とは
本人または家族が作成する、発病から現在までの経過、日常生活の状況、就労状況を記載した書類。
不十分な申立書
- 記載が簡潔すぎる
- 日常生活の困難が伝わらない
- 医師の診断書と矛盾する内容
対策
- 具体的に、詳しく記載
- 日常生活でできないこと、困っていることを詳細に
- 発病から現在までの経過を時系列で
- 就労している場合、どのような配慮を受けているか、業務内容の制限などを記載
- 社会保険労務士に相談・作成依頼
8. 所得制限(20歳前障害の場合)
20歳前に初診日がある障害基礎年金
本人の所得が一定額以上の場合、全額または半額が支給停止されます。
所得制限額(令和6年度)
- 2人世帯の場合: 約462万円で全額支給停止、約360万円で半額支給停止
- 扶養親族の数により変動
高所得の場合
働いて高収入を得ている場合、支給停止されます。
9. 他の公的年金との併給調整
老齢年金を受給している場合
65歳以降、障害年金と老齢年金の両方の受給権がある場合、どちらか一方を選択します(両方はもらえない)。
遺族年金を受給している場合
障害年金と遺族年金の併給調整。
10. 書類の不備
提出書類に不備がある
- 必要書類が揃っていない
- 記入漏れ、記入ミス
- 添付書類(戸籍、住民票など)が古い
対策
- 提出前に十分確認
- 年金事務所の窓口で確認してもらう
- 社会保険労務士に依頼
不支給を防ぐための対策
事前準備が重要
1. 初診日の確認と証明の準備
- できるだけ早く初診の病院に受診状況等証明書を依頼
- カルテの保存期間(5年)を過ぎる前に
- 診察券、領収書、お薬手帳などを保管
- 初診日が曖昧な場合、可能な限り資料を集める
2. 保険料納付状況の確認
- ねんきん定期便を確認
- 年金事務所で納付記録を照会
- 未納期間がある場合、学生納付特例や免除の記録がないか確認
- 今後のために、未納を作らない(免除・猶予の申請)
3. 医師とのコミュニケーション
現状を正確に伝える
- 日常生活でできないこと、困っていることを具体的に伝える
- 「できる」と答えるのではなく、「できるが非常に時間がかかる」「できるが疲れる」など詳細に
- 良い日と悪い日がある場合、悪い日の状態を伝える
- 就労している場合、どれだけ配慮を受けているか、業務の制限などを伝える
障害年金の診断書であることを伝える
医師に「障害年金用の診断書」であることを明確に伝える。通常の診断書とは記載内容が異なります。
診断書を確認させてもらう
完成した診断書のコピーを見せてもらい、内容を確認。不十分な点があれば、追記や訂正を依頼。
4. 病歴・就労状況等申立書を丁寧に作成
- 発病から現在までを時系列で詳しく
- 日常生活の困難を具体的に
- 就労状況(配慮の内容、業務の制限)
- 診断書と矛盾しないように
- 社会保険労務士に相談・作成依頼
5. 社会保険労務士への相談
障害年金専門の社会保険労務士
障害年金は複雑な制度です。専門家のサポートを受けることで認定率が大幅に向上します。
サービス内容
- 受給可能性の診断
- 初診日の特定、証明資料の収集
- 医師への診断書依頼のサポート
- 病歴・就労状況等申立書の作成
- 書類のチェック、提出代行
- 不支給の場合の審査請求代理
費用
着手金(無料から数万円)と成功報酬(年金額の2ヶ月分程度が相場)。
6. 認定基準を理解する
日本年金機構のウェブサイトで「障害認定基準」を確認できます。自分の疾患の認定基準を理解しておくことが重要です。
不支給になった場合の対応
1. 不支給の理由を確認
不支給決定通知書
不支給の理由が記載されています。どの要件を満たしていないのか確認します。
年金事務所で説明を受ける
詳しい理由を聞くことができます。
2. 審査請求(不服申し立て)
手続き
不支給決定を受けた日の翌日から3ヶ月以内に、地方厚生局の社会保険審査官に審査請求できます。
審査
提出された書類を再審査。必要に応じて追加資料の提出。
結果
認容(不支給決定が取り消され、受給権が認められる)、または棄却(不支給が維持される)。
審査請求の認容率
約10パーセント程度と低いですが、追加資料や詳細な説明により覆ることもあります。
再審査請求
審査請求が棄却された場合、さらに社会保険審査会に再審査請求できます(審査請求の決定を受けた日の翌日から2ヶ月以内)。
社会保険労務士への依頼
審査請求は専門的な手続きなので、社会保険労務士に依頼することを強く推奨します。
3. 再申請(障害の程度が基準に達していない場合)
状態が悪化した場合
不支給後、障害の状態が悪化した場合、再度申請できます。
新たな診断書
現在の状態を反映した診断書を取得し、再申請。
時期
いつでも可能ですが、前回申請から状態が明らかに悪化していることが必要。
事後重症請求
障害認定日には基準に達していなかったが、その後悪化して基準に達した場合。請求した翌月分から支給。
4. 遡及請求(初診日が証明できた場合)
初診日の証明ができた場合
初診日が証明できなかったために不支給だった場合、後に証明資料が見つかれば再申請。
遡及
障害認定日まで遡って受給権が認められ、最大5年分が一括支給されます。
5. 別の制度の活用
障害年金がもらえない場合の他の制度
障害者手帳
障害年金と別の制度です。障害年金がもらえなくても、障害者手帳は取得できる可能性があります。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳(知的障害)
手帳により税制優遇、公共交通機関の割引、障害者雇用などの支援を受けられます。
生活保護
収入が少なく生活が困窮している場合、生活保護を申請できます。
傷病手当金(健康保険)
会社員の場合、病気で働けない期間、給与の約3分の2が最長1年6ヶ月支給されます。
労災保険の障害給付
業務上の病気・けがの場合。
自治体の福祉制度
医療費助成、福祉手当など、自治体独自の制度があります。
よくある誤解
誤解1: 障害者手帳があれば障害年金がもらえる
事実
別の制度です。障害者手帳を持っていても、障害年金の要件を満たさなければもらえません。逆に、障害年金を受給していても手帳を持っていない人もいます。
誤解2: 働いていると障害年金はもらえない
事実
働いていても、障害の程度が基準に達していれば受給できます。ただし常勤でフルタイム勤務している場合、2級以上の認定は難しくなります。3級(厚生年金)や、配慮を受けながらの勤務であれば可能性があります。
誤解3: 精神疾患では障害年金はもらえない
事実
精神疾患(統合失調症、うつ病、双極性障害、発達障害、知的障害など)も障害年金の対象です。認定基準を満たせば受給できます。
誤解4: 初診日から1年6ヶ月待たないと申請できない
事実
原則は1年6ヶ月ですが、人工透析、人工関節、ペースメーカーなど特例があります。これらの場合、1年6ヶ月を待たずに申請できます。
誤解5: 保険料を払っていないと絶対もらえない
事実
原則として納付要件を満たす必要がありますが、20歳前に初診日がある場合は納付要件が問われません。また学生納付特例や免除を受けていた期間は納付期間としてカウントされます。
誤解6: 一度不支給になったらもう申請できない
事実
審査請求、再申請ができます。状態が悪化した場合、新たな資料が見つかった場合など、再チャレンジ可能です。
特殊なケース
若年性アルツハイマー病、若年性パーキンソン病
若年発症の難病も対象です。初診日、納付要件を満たせば受給できます。
がん
がんも対象です。治療の副作用で日常生活に制限がある、人工肛門を造設した、など。
糖尿病
糖尿病そのものではなく、合併症(腎症で透析、網膜症で視覚障害、神経障害など)が対象。
発達障害(自閉スペクトラム症、ADHD)
社会生活や就労に著しい制限がある場合、対象です。初診日が20歳前であることが多く、その場合は納付要件が問われません。
知的障害
療育手帳と障害年金は別制度ですが、知的障害も障害年金の対象です。多くは20歳前発症で納付要件なし。
難病(指定難病)
難病も対象です。パーキンソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛症など。
まとめ
障害年金がもらえない主な理由は、初診日が証明できない、保険料納付要件を満たしていない、障害の程度が基準に達していない、障害認定日の要件を満たしていない、診断書や申立書の内容が不十分、書類の不備などです。
初診日の証明は最も重要で、カルテが廃棄される前に早めに受診状況等証明書を取得することが大切です。
保険料納付要件は、若い時の未納が問題になることが多く、学生納付特例や免除の手続きの重要性が分かります。
障害の程度が基準に達しているかは、診断書の内容が決定的に重要です。
医師に現状を正確に、詳しく伝え、日常生活の困難を具体的に記載してもらうことが必要です。病歴・就労状況等申立書も丁寧に作成し、診断書を補完します。
不支給を防ぐためには、事前準備が重要です。
初診日の証明準備、保険料納付状況の確認、医師との十分なコミュニケーション、申立書の丁寧な作成、そして障害年金専門の社会保険労務士への相談が効果的です。
不支給になった場合でも、審査請求(不服申し立て)、状態悪化後の再申請、初診日証明ができた場合の遡及請求など、対応策があります。
また障害年金がもらえなくても、障害者手帳、生活保護、傷病手当金など他の制度を活用できます。
障害年金は複雑な制度で、専門知識が必要です。
社会保険労務士に相談することで、認定率が大幅に向上します。費用はかかりますが、将来にわたって受給できる年金額を考えれば、十分に価値があります。
障害があっても障害年金を受給できずに困っている人は多くいます。
諦めずに、専門家のサポートを受けながら、受給の可能性を追求してください。障害年金は、障害のある人が経済的に自立し、尊厳ある生活を送るための重要な制度です。

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