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閉所恐怖症は、閉ざされた狭い空間や逃げ場のない場所に対して、強い恐怖や不安を感じる不安障害の一種です。エレベーター、満員電車、飛行機、トンネル、MRI検査室、窓のない部屋などで、強いパニックや息苦しさを感じます。
単なる苦手意識とは異なり、日常生活に支障をきたすレベルの恐怖で、その場面を避けるために行動が制限されます。閉所恐怖症は特定恐怖症の一種に分類され、約10人に1人が何らかの特定恐怖症を持つとされ、閉所恐怖症もその中で比較的多く見られます。
過去のトラウマ体験、遺伝的要因、学習による獲得などが原因として考えられています。
適切な治療により改善が可能で、認知行動療法、特に曝露療法が効果的です。本記事では閉所恐怖症の症状や原因、診断方法、治療法、日常生活での対処法、そして周囲ができるサポートについて詳しく見ていきます。
閉所恐怖症の症状
閉所恐怖症の主な症状は、閉ざされた空間や狭い場所に対する強い恐怖です。
エレベーター、満員電車、地下鉄、飛行機の座席、MRI検査室、トンネル、窓のない会議室、人混み、狭い廊下などで、耐えがたい不安や恐怖を感じます。
身体症状も顕著に現れます。動悸、息苦しさ、過呼吸、発汗、震え、めまい、吐き気、胸の圧迫感、喉が詰まる感じ、手足のしびれなどです。これらはパニック発作の症状と似ています。
また認知的な症状として、窒息するのではないか、閉じ込められて出られなくなるのではないか、このまま死んでしまうのではないかという恐怖の思考が頭を支配します。
回避行動も特徴的です。恐怖を感じる場所を避けるため、階段を使う、電車は各駅停車しか乗らない、飛行機に乗らない、MRI検査を拒否するなどの行動を取ります。
予期不安も強く、その場面に遭遇する前から、何日も前から不安や恐怖を感じます。エレベーターに乗る予定があると、前日から眠れないこともあります。
重症の場合、外出そのものが困難になり、社会生活に大きな支障をきたします。
閉所恐怖症の原因
閉所恐怖症の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。まず過去のトラウマ体験が挙げられます。子どもの頃にエレベーターに閉じ込められた、狭い場所に閉じ込められて怖い思いをした、MRI検査で強い不安を感じたなどの経験が、恐怖の記憶として残ります。
学習による獲得も原因の一つです。親や身近な人が閉所を恐れる姿を見て、自分も恐怖を学習することがあります。また閉所に関する怖い話や映像を見ることで、恐怖が形成されることもあります。
遺伝的要因も関係しており、家族に不安障害や恐怖症の人がいると、発症リスクがやや高くなります。ただし遺伝だけで決まるわけではありません。
脳の扁桃体恐怖や不安を処理する部位の過活動も指摘されています。閉所という刺激に対して、扁桃体が過剰に反応し、強い恐怖反応を引き起こします。
また不安になりやすい性格傾向、神経質、心配性なども、閉所恐怖症の発症に関与する可能性があります。
ストレスや生活上の変化がきっかけで発症することもあります。特定の出来事をきっかけに、突然閉所恐怖症が現れることもあります。
診断方法
閉所恐怖症の診断は、精神科医や心療内科医による詳細な問診に基づいて行われます。どのような場面で恐怖を感じるか、症状の内容と強さ、持続期間、日常生活への影響などを詳しく聞きます。
診断基準として、特定の対象や状況閉所に対して著しい恐怖や不安があり、その対象や状況がほとんど常に恐怖や不安を引き起こし、恐怖や不安が実際の危険や社会文化的文脈に不釣り合いであることが求められます。
また恐怖を引き起こす対象や状況を回避するか、強い恐怖や不安を感じながら耐え、これらの症状が6ヶ月以上続き、著しい苦痛や生活上の支障をきたしていることが診断の条件です。
他の精神疾患との鑑別も重要です。パニック障害、広場恐怖症、社交不安障害、PTSDなどと症状が重なることがあり、慎重な評価が必要です。
パニック障害では、特定の場所に限らず、様々な状況でパニック発作が起こります。広場恐怖症では、逃げ場のない状況全般に対する恐怖があります。閉所恐怖症は、閉ざされた空間に特化した恐怖です。
また身体疾患による症状でないことも確認します。心臓病、呼吸器疾患などが隠れていないかを評価します。
診断により、適切な治療計画を立てることができます。
認知行動療法
閉所恐怖症の治療において、認知行動療法CBTは最も効果的な方法とされています。特に曝露療法が中心的な治療法です。
曝露療法は、恐れている状況に段階的に身を置き、恐怖に慣れていく方法です。まず恐怖のヒエラルキー恐怖の階層表を作成します。最も恐怖が低い状況から最も高い状況まで、10段階程度にリストアップします。
例えば、1広い部屋のドアを閉める、2小さい部屋のドアを閉める、3エレベーターの前に立つ、4エレベーターに乗るがすぐに降りる、5エレベーターで1階だけ乗る、6エレベーターで数階乗る、7満員電車の入口付近に立つ、8満員電車の中央に立つ、9MRI検査室を見学する、10MRI検査を受けるといった具合です。
最も恐怖が低い状況から始め、十分に慣れたら次の段階に進みます。各段階で、恐怖が自然に低下するまで、その状況に留まります。最初は不安が高まりますが、時間とともに不安は低下していくことを体験します。
認知再構成も重要です。窒息する、閉じ込められるという恐怖の思い込みを、現実的で合理的な考え方に修正します。実際には窒息する危険はない、エレベーターは安全な乗り物だという認識を深めます。
リラクゼーション技法も併用されます。深呼吸、漸進的筋弛緩法などにより、不安時の身体の緊張を和らげます。
バーチャルリアリティ曝露療法
近年、バーチャルリアリティVRを用いた曝露療法も開発されています。VRゴーグルを装着し、仮想空間でエレベーターや狭い部屋などの閉所環境を体験します。
VR曝露療法のメリットは、安全で制御された環境で練習できることです。実際の場所に行く必要がなく、治療室で行えます。また繰り返し練習できること、恐怖の程度を段階的に調整しやすいことも利点です。
VRでの体験は、脳にとって実際の体験と同様に処理されるため、治療効果があることが研究で示されています。VR曝露療法と従来の実際の曝露療法は、同等の効果があるとされています。
特に閉所恐怖症では、MRI検査室や飛行機の座席など、練習が難しい環境もVRで再現できるため、有用性が高いです。
ただしVR曝露療法を提供している医療機関はまだ限られています。また最終的には実際の環境での練習も必要になることが多いです。
VRは補助的な手段として、従来の曝露療法と組み合わせて使用されることもあります。
VR技術の発展により、今後さらに普及していく可能性があります。
薬物療法
閉所恐怖症に対する薬物療法は、補助的な役割です。恐怖症そのものを治す薬はありませんが、不安症状を軽減し、曝露療法を受けやすくする目的で使用されることがあります。
SSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬は、不安障害全般に効果があり、閉所恐怖症にも使用されることがあります。脳内のセロトニンの働きを高め、不安を軽減します。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は、即効性があり、強い不安を素早く抑えます。ただし依存性のリスクがあるため、長期使用は避けられます。特定の状況例えばMRI検査の前などの頓服として使用されることがあります。
β遮断薬は、動悸や震えなどの身体症状を抑える効果があります。心臓の拍動を落ち着かせることで、不安の悪循環を防ぎます。
ただし薬物療法だけでは、根本的な解決にはなりません。薬を飲んでいる間は症状が軽減しても、薬をやめると再発することが多いです。
薬物療法は、認知行動療法と組み合わせることで、より効果的です。薬で不安を軽減しながら曝露療法を行い、恐怖を克服していくというアプローチです。
薬の使用については、医師とよく相談し、適切に管理することが重要です。
日常生活での対処法
閉所恐怖症と診断された、または症状に悩んでいる場合、日常生活で以下のような対処法が役立ちます。まず呼吸法を身につけることです。不安が高まったときに、ゆっくりと深呼吸をすることで、自律神経を落ち着かせることができます。
4秒かけて鼻から息を吸い、7秒息を止め、8秒かけて口から息を吐くという4-7-8呼吸法が効果的です。
また現実検証を行うことも有用です。恐怖の思考が浮かんだら、それが現実的かどうかを確認します。エレベーターで窒息する確率は実際にはほぼゼロです、と自分に言い聞かせます。
段階的な自己曝露も効果的です。専門家の指導のもとで行うのが理想ですが、自分でも少しずつ挑戦できます。無理のない範囲で、恐怖の低い状況から始めましょう。
また逃避の選択肢を確保することで、不安が軽減されることがあります。エレベーターに乗るときは、ボタンの近くに立つ、満員電車ではドア付近に立つなど、いつでも出られる位置を選びます。
リラックスできる物を持ち歩くことも助けになります。お守り、好きな香りのハンカチ、安心できる写真などです。
ただし完全な回避は避けましょう。回避を続けると、恐怖はさらに強まります。少しずつでも、恐怖に向き合うことが回復への道です。
MRI検査と閉所恐怖症
閉所恐怖症の人にとって、MRI検査は特に困難な状況です。狭いトンネル状の空間に横たわり、長時間動けない状態は、強い恐怖を引き起こします。そのため検査を受けられず、必要な医療を受けられないという問題が生じます。
MRI検査を受けやすくするための対処法があります。まず医療スタッフに閉所恐怖症であることを事前に伝えましょう。理解を得ることで、配慮してもらえます。
オープン型MRI広い空間のMRIを選択できる場合もあります。通常のMRIより空間が広く、圧迫感が少ないです。ただし画像の質がやや劣る場合があります。
検査前に抗不安薬を服用することも選択肢です。医師に相談し、処方してもらいましょう。検査の1時間ほど前に服用することで、不安を軽減できます。
検査中に目を閉じる、リラックスできる音楽を聞く、呼吸法を実践するなども効果的です。また家族や友人に付き添ってもらい、検査室の外で待っていてもらうことも安心につながります。
事前に検査室を見学し、機械を確認することで、未知への不安を軽減できることもあります。
鎮静剤を使用した検査も可能です。意識を低下させた状態で検査を行うため、恐怖を感じません。ただし回復に時間がかかり、当日の運転などはできません。
どうしても困難な場合は、CTなど代替の検査方法を検討することもあります。
飛行機恐怖症との関連
閉所恐怖症は、飛行機恐怖症と重なることが多いです。飛行機は閉ざされた空間で、長時間逃げ場がなく、閉所恐怖症の人にとって非常に困難な状況です。
飛行機に乗りやすくするための対処法があります。まず通路側の座席を選ぶことで、閉塞感が軽減されます。窓側よりも開放感があり、トイレにも行きやすいです。
また短距離のフライトから始め、徐々に慣れていくことも効果的です。いきなり長時間フライトに挑戦するのではなく、1時間程度のフライトから練習します。
航空会社によっては、搭乗前に機内を見学させてもらえることもあります。事前に空間を確認することで、不安が軽減されます。
呼吸法、リラクゼーション、気を紛らわせる活動映画を見る、音楽を聞く、本を読むなども有用です。
また航空会社の恐怖症克服プログラムを利用することもできます。一部の航空会社が、専門家の指導のもと、飛行機恐怖症を克服するプログラムを提供しています。
必要に応じて抗不安薬を使用することも選択肢ですが、アルコールとの併用は避けましょう。
認知行動療法により、飛行機への恐怖を根本的に改善することが最も効果的です。
子どもの閉所恐怖症
子どもも閉所恐怖症を発症することがあります。エレベーターを怖がる、狭い場所に入りたがらない、暗い場所を極度に嫌がるなどの症状が見られます。
子どもの場合、恐怖を言葉でうまく表現できないため、泣く、かんしゃくを起こす、身体症状腹痛、頭痛として現れることがあります。
親や周囲の大人の対応が重要です。まず子どもの恐怖を否定せず、受け止めることが大切です。怖がることはおかしくない、大丈夫だよと安心させます。
無理に閉所に入れることは避けましょう。トラウマになり、恐怖が悪化することがあります。段階的に、子どものペースで慣れさせていくことが効果的です。
遊びを通じて練習することも有用です。かくれんぼ、トンネルくぐりなど、楽しみながら閉所に慣れていきます。
また絵本やおもちゃを使って、閉所について学ぶことも効果的です。エレベーターの仕組みを理解することで、恐怖が軽減されることもあります。
子どもの閉所恐怖症も、認知行動療法が効果的です。年齢に応じた方法で、遊びや絵を使った曝露療法が行われます。
症状が重く、日常生活に支障をきたす場合は、児童精神科や小児心療内科を受診しましょう。
早期に適切な対応をすることで、多くの子どもは改善します。
予後と回復
閉所恐怖症は、適切な治療により改善が期待できます。認知行動療法、特に曝露療法を受けることで、多くの患者さんで症状が大幅に軽減します。
治療には時間がかかり、数ヶ月から1年程度の継続的な取り組みが必要です。最初は不安が高く、辛く感じることもありますが、根気強く続けることで、徐々に恐怖は低下していきます。
完全に恐怖がなくなることは少ないですが、日常生活に支障がないレベルまで改善することは十分可能です。エレベーターに乗れるようになる、MRI検査を受けられるようになる、飛行機で旅行できるようになるなど、具体的な目標を達成できます。
再発のリスクもあるため、症状が改善した後も、学んだスキルを実践し続けることが大切です。たまに閉所に身を置く機会を持ち、慣れを維持しましょう。
ストレスが高まったときには症状が再燃することもありますが、早めに対処することで悪化を防げます。
また完全に治さなくても、症状と上手に付き合いながら生活する方法もあります。回避しすぎず、必要に応じて助けを求め、自分のペースで生活することが大切です。
早期に治療を受けることで、予後は良好です。一人で悩まず、専門家に相談しましょう。
まとめ
閉所恐怖症は、エレベーターや満員電車、飛行機などの狭く逃げ場のない空間に強い恐怖や不安を感じる不安障害です。
動悸や息苦しさ、めまいなどの身体症状が現れ、回避行動につながります。原因にはトラウマや不安傾向、脳機能の影響が関与します。治療の中心は認知行動療法、特に曝露療法で、薬物療法は補助的に用いられます。
適切な治療により症状は大きく改善し、日常生活を取り戻すことが可能です。

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