躁鬱とは何か…双極性障害の基本と症状、治療と生活の向き合い方

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気分が極端に高まって何でもできる気がする時期と、何もできないほど落ち込む時期が繰り返される。

その波に振り回されて仕事や人間関係がうまくいかない、自分でも気分の波がコントロールできないという経験をしていませんか。

こうした状態は躁鬱、正式には双極性障害と呼ばれる疾患である可能性があります。

この記事では、躁鬱とは何か、その症状と種類、治療法と日常生活での向き合い方について解説します。

躁鬱とはどういう疾患か

躁鬱とは双極性障害の通称であり、気分が著しく高まる躁状態と、深く落ち込むうつ状態が繰り返される慢性的な疾患です。

単なる気分の上がり下がりではなく、本人の意志とは無関係に気分が極端な方向に振れる状態が続くことが特徴です。

躁鬱はうつ病と混同されることがありますが、うつ状態だけが続くうつ病とは異なり、躁状態またはその軽い状態である軽躁状態が出現することが双極性障害の本質的な特徴です。

この違いが治療法の選択においても重要な意味を持ちます。

躁鬱は脳の機能に関わる疾患であり、本人の性格や意志の弱さとは全く関係ありません。適切な治療と生活管理によって症状をコントロールしながら生活することが可能な疾患です。

躁状態とはどういう状態か

躁状態は単なる気分の良い状態や活動的な状態とは異なります。以下のような症状が一週間以上続き、日常生活や社会生活に著しい支障をきたす場合に躁状態と診断されます。

気分の著しい高揚や開放感、または強いイライラ感があります。自尊心の肥大や誇大な感覚があり、自分には特別な才能や能力があるという感覚が膨らみます。睡眠の必要性が低下し、数時間しか眠らなくても全く疲れを感じません。

多弁になり話が次々と出てきて止まらなくなります。思考が速くなり頭の中でアイデアが次々と湧いてくる状態になります。

注意が散漫になり次々と別のことに気を取られます。目標に向けた活動が増え精力的に動き続けます。

判断力が低下した状態で衝動的な行動をとることが多く、浪費、性的な逸脱、無謀な投資、突然の重大な決断といった後に後悔することになる行動をとりやすくなります。

躁状態のとき本人は調子が良いと感じることが多く、自分に問題があることを認識しにくいことが治療における大きな困難のひとつです。

軽躁状態とはどういう状態か

軽躁状態は躁状態よりも症状の程度が軽く、入院が必要なほどの深刻な状態にはなりません。本人は調子が良い、仕事がはかどる、アイデアが豊富という感覚で過ごすことが多く、問題として認識されにくいことがあります。

しかし軽躁状態であっても、通常の自分とは明らかに異なる状態であり、睡眠時間の減少、活動量の増加、衝動的な行動の増加といった変化が生じています。周囲の人が変化に気づいても本人は問題と感じないというギャップが生じやすいことが特徴です。

うつ状態とはどういう状態か

躁鬱におけるうつ状態は、うつ病のうつ状態と症状が似ており、以下のような状態が続きます。

強い気分の落ち込みと絶望感が続きます。以前楽しめていたことへの興味や喜びが失われます。疲れやすく体が重く感じられます。集中力や思考力が著しく低下します。自己否定感が強まり自分には価値がないという気持ちが続きます。睡眠の乱れとして過眠または不眠が生じます。食欲の変化があります。死にたいという気持ちや自殺念慮が出現することがあります。

躁鬱のうつ状態は、うつ病のうつ状態と区別がつきにくいため、双極性障害がうつ病として誤診されることがあります。過去に躁状態や軽躁状態があったかどうかを正確に伝えることが、正しい診断のために重要です。

混合状態とはどういう状態か

躁状態とうつ状態の症状が同時にあらわれる混合状態も生じることがあります。気分は落ち込んでいるのに活動性が高まって落ち着きがない、強い焦燥感があって不安が激しいといった状態がこれにあたります。

混合状態は自殺リスクが特に高まることがあるため、この状態があらわれた場合は速やかに医療機関に相談することが重要です。

躁鬱の種類

双極I型障害

一週間以上続く重篤な躁状態のエピソードが一回以上あることが診断の要件です。躁状態が非常に激しく、入院が必要になることがあります。うつ状態を伴うことが多いですが、躁状態のエピソードだけでも診断がつきます。

双極II型障害

躁状態ほど激しくない軽躁状態と、深刻なうつ状態が繰り返される疾患です。軽躁状態を本人が問題と認識しにくいため、うつ病として長期間治療を受けてしまうケースがあります。うつ状態が長く深刻であることが多く、生活への影響が大きい疾患です。

気分循環性障害

双極I型や双極II型の診断基準を満たさないものの、軽い軽躁症状と軽いうつ症状が慢性的に繰り返される状態です。症状の程度は軽くても長期にわたって波が続くことで、生活に影響が生じます。

躁鬱の原因

躁鬱の原因は単一ではなく、複数の要因が複合的に関係していると考えられています。

遺伝的な要因として、双極性障害は遺伝的な影響が比較的大きい疾患とされており、家族に双極性障害の方がいる場合は発症リスクが高まることがあります。

脳内の神経伝達物質のバランスの乱れも関係していると考えられています。ドパミン、セロトニン、ノルアドレナリンといった物質の機能の変化が気分の波に影響していると考えられています。

環境的な要因として、睡眠の乱れ、強いストレス、生活リズムの崩れ、重大なライフイベントといったことが症状の引き金になることがあります。

躁鬱の治療

薬物療法

躁鬱の治療の中心は薬物療法です。気分の波を安定させる気分安定薬が主に使用されます。

炭酸リチウムは双極性障害の治療に長年使用されてきた代表的な気分安定薬です。躁状態とうつ状態の両方の予防に効果があるとされています。有効な血中濃度の範囲が比較的狭いため、定期的な血中濃度の測定が必要です。

バルプロ酸やラモトリギン、カルバマゼピンといった抗てんかん薬も気分安定薬として使用されます。それぞれ躁状態またはうつ状態のどちらにより効果があるかが異なるため、症状のパターンに合わせて選択されます。

非定型抗精神病薬も双極性障害の治療に使用されることがあります。急性期の躁状態への対応や、気分の安定化に効果があるとされています。

抗うつ薬は双極性障害においては単独での使用が推奨されていないことが多く、躁転と呼ばれる躁状態への急激な移行を引き起こすリスクがあるため、使用する場合は気分安定薬と組み合わせて慎重に判断されます。

心理療法

薬物療法と並行して心理療法も重要な役割を果たします。

心理教育では双極性障害の特性、症状の波のパターン、薬の重要性、再発予防のための生活管理について学びます。疾患への理解を深めることが治療への取り組みと再発予防に直接つながります。

認知行動療法では気分の波に関連した思考パターンや行動パターンに気づき、より適応的な対処法を身につけることを目指します。

対人関係社会リズム療法は生活リズムの安定と対人関係の改善を通じて気分の安定を目指す心理療法です。躁鬱の治療において特に有効とされているアプローチのひとつです。

日常生活での管理と再発予防

生活リズムを一定に保つ

躁鬱の管理において生活リズムを規則正しく保つことは非常に重要です。毎日同じ時間に起き、同じ時間に就寝する習慣が気分の安定につながります。

睡眠の乱れは躁状態を引き起こす強力な要因であることが知られています。十分な睡眠を確保することと、睡眠時間が急に減少したときを躁状態の前兆として注意することが再発予防において特に重要です。

気分の変化を記録する

毎日の気分の状態を簡単な日記や気分記録表に記録することで、自分の気分の波のパターンを把握することができます。

気分が高まり始めている、睡眠時間が急に短くなってきた、活動量が増えてきたといった変化に早めに気づくことで、主治医への相談や生活の調整を早期に行うことができます。再発の兆候に気づいて早めに対処することが、重篤な状態への移行を防ぐうえで重要です。

薬を自己判断でやめない

気分が安定しているときでも、薬を自己判断でやめることは再発リスクを大幅に高めます。調子が良くなったから薬は必要ないと感じることは躁鬱の治療においてよくあることですが、症状が安定しているのは薬の効果によることが多いため、自己中断は危険です。

薬の変更や減薬を検討する場合は必ず主治医と相談したうえで判断することが重要です。

飲酒を控える

アルコールは睡眠の質を低下させ、気分の安定を妨げることがあります。また一部の気分安定薬との相互作用があるものもあります。躁鬱のある方にとって飲酒は症状の悪化につながるリスクが高いため、できる限り控えることが推奨されます。

躁状態のときの衝動的な行動を防ぐ

躁状態のときは判断力が低下しながら自信が過剰になるため、後悔するような衝動的な行動をとりやすくなります。

重要な決断は躁状態のときには行わないというルールをあらかじめ設けておくことが助けになります。また信頼できる家族や友人に躁状態のサインを伝えておき、そのような状態になったときに止めてもらえる関係をつくっておくことも重要です。

信頼できる人と疾患について共有する

躁鬱について信頼できる家族や友人に理解してもらうことが、再発の早期発見と対処において非常に重要です。躁状態のときは本人が問題を認識しにくいため、周囲の人が変化に気づいて医師への相談を促せる環境が再発予防において助けになります。

躁鬱と就労

躁鬱のある方が就労を継続するためには、症状の安定期に就労しながら過度な負荷をかけないこと、定期的な通院を継続すること、体調の変化を早めに把握して対処することが重要です。

就労移行支援事業所や就労定着支援といった障害福祉サービスを活用することで、躁鬱の特性に合った就労の形を見つけるサポートを受けることができます。

職場への開示については本人の意思が最も重要ですが、必要な配慮を求めるためには一定の情報共有が助けになることがあります。主治医や支援機関と相談しながら判断することが重要です。

躁鬱に利用できる福祉制度

双極性障害の診断がある場合、精神障害者保健福祉手帳の取得が可能な場合があります。

症状の程度と日常生活への影響によって等級が判断され、手帳を取得することで障害福祉サービスの利用、税制上の優遇、公共交通機関の割引といった支援を受けることができます。

自立支援医療制度を活用することで精神科通院にかかる医療費の自己負担を原則一割に軽減することができます。申請は市区町村の窓口で行うことができます。

就労が困難な状況が続く場合は傷病手当金や障害年金の受給資格についても確認することをおすすめします。

まとめ

躁鬱とは双極性障害の通称であり、躁状態またはその軽い状態とうつ状態が繰り返される慢性的な疾患です。

双極I型、双極II型、気分循環性障害といった種類があり、それぞれ症状の程度と特性が異なります。

気分安定薬を中心とした薬物療法と心理療法を組み合わせた治療を継続しながら、規則正しい生活リズムの維持、気分の記録、薬の継続、信頼できる人との疾患の共有といった日常生活での管理が症状のコントロールと再発予防において重要です。

躁鬱は適切な治療と管理によって症状をコントロールしながら生活することができる疾患です。一人で抱え込まず医療機関や支援機関のサポートを積極的に活用してください。

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