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体重が増えることへの強い恐怖、食べることへの強い抵抗感、痩せているにもかかわらず太っているという歪んだ体のイメージが続く。こうした状態は神経性やせ症と呼ばれる疾患である可能性があります。神経性やせ症は身体的にも精神的にも深刻な影響をもたらす疾患であり、適切な治療と支援によって回復することができます。この記事では、神経性やせ症の症状と原因、治療と回復への向き合い方について解説します。
神経性やせ症とはどういう疾患か
神経性やせ症は神経性無食欲症または拒食症とも呼ばれ、体重増加への強い恐怖と歪んだ体のイメージによって、著しい低体重状態を維持しようとする摂食障害の一種です。英語ではAnorexia NervosaといいANと略されます。
神経性やせ症は精神疾患のなかで最も死亡率が高い疾患のひとつとされており、栄養失調による身体的な合併症と自殺のリスクが高いことが知られています。そのため早期の発見と適切な治療が非常に重要です。
神経性やせ症は若い女性に多く見られますが、男性や中高年にも発症することがあります。特に思春期から若年成人にかけての発症が多いとされています。
神経性やせ症の主な症状
著しい低体重
体重が年齢、身長、性別から見て明らかに低い状態であることが特徴です。BMIという体重と身長から算出される指数が著しく低い状態が続きます。しかし本人は自分が痩せすぎているという認識を持てないことが多くあります。
体重増加への強い恐怖
体重が増えることへの強い恐怖があり、実際に低体重であっても体重が増えることを極度に恐れます。この恐怖は体重増加を防ぐための様々な行動として現れます。
歪んだ体のイメージ
著しく痩せているにもかかわらず、自分は太っていると感じたり、特定の体の部位が太って見えるという歪んだ体のイメージを持ちます。鏡を見ても実際の体の状態を正確に認識することができない状態です。
食事への強い制限
食べる量を極端に制限する、特定の食べ物を完全に排除する、カロリーを細かく計算して管理する、食事を抜くといった行動が続きます。食べることへの強い抵抗感と罪悪感が伴います。
排出行動または過剰な運動
制限型と排出型という二つのサブタイプがあります。制限型は食事の制限と過剰な運動によって体重を管理するタイプです。排出型は食事制限に加えて、食べた後に嘔吐する、下剤や利尿剤を使用するといった排出行動が見られるタイプです。
食べることへの過剰な執着
逆説的ですが、食べることを制限しながらも食べ物への過剰な執着が生じることがあります。料理の本を読む、他の人のために料理をする、食べ物の写真を集めるといった行動として現れることがあります。
体重と体型への過剰なこだわり
体重や体型が自己評価の全てを決めるという歪んだ認知が中心にあります。体重が少し増えただけで極度の不安と自己否定が生じます。
低体重に伴う身体症状
著しい低体重状態が続くと、様々な身体的な症状が生じます。月経の停止または不規則化、低体温、低血圧、心拍数の低下、骨密度の低下による骨粗鬆症のリスク増加、貧血、体中の産毛が増えるラヌゴと呼ばれる症状、脱毛、爪や皮膚の変化、慢性的な疲労と筋力の低下といった症状が現れます。
これらの身体的な合併症は放置すると生命に関わる深刻な状態に発展することがあります。
神経性やせ症の原因
神経性やせ症の原因は単一ではなく複数の要因が複合的に関係していると考えられています。
生物学的な要因として遺伝的な影響があることが知られており、家族に摂食障害の方がいる場合は発症リスクが高まることがあります。セロトニン等の神経伝達物質の機能異常も関係していると考えられています。
心理的な要因として、完璧主義的な傾向、低い自己肯定感、感情の調節の困難さ、コントロール欲求の強さといった特性が神経性やせ症の発症と関連していることが知られています。食べることを制限することが自分をコントロールできているという感覚を生み出し、それが維持される要因になることがあります。
社会文化的な要因として、痩せていることを美しさや成功と結びつける社会的な価値観、メディアによる痩せたボディイメージの美化、外見への過剰な評価といった文化的な影響が発症に関係しています。
環境的な要因として、家族関係の問題、いじめや体型に関する否定的な言動、スポーツや芸術活動において体型管理が求められる環境、重大なライフイベント等が発症のきっかけになることがあります。
神経性やせ症の診断
神経性やせ症の診断はDSM-5の診断基準に基づいて精神科または心療内科で行われます。主な診断要件として著しい低体重、体重増加への強い恐怖または体重増加を妨げる行動の持続、体重や体型の体験の仕方の歪みが必要です。
身体的な検査として血液検査、心電図、骨密度検査等が行われることがあります。栄養失調による身体的な合併症の程度を評価することが治療方針の決定に重要です。
神経性やせ症は他の摂食障害、特に神経性過食症との鑑別も重要です。専門家による丁寧な評価が必要です。
神経性やせ症の治療
神経性やせ症の治療は身体的な回復と心理的な回復の両方を並行して進めることが基本となります。
身体的な治療の優先
深刻な低体重や医学的な合併症がある場合は身体的な安全の確保が最優先となります。著しい低体重や電解質異常等の生命に関わる状態では入院治療が必要になることがあります。
入院中は栄養補給、体重の回復、身体的な合併症の治療が行われます。経口摂取が困難な場合は経管栄養が行われることがあります。
栄養療法と食事の回復
体重を適切な範囲まで回復させるための栄養療法が治療の中心のひとつとなります。管理栄養士と連携しながら段階的に食事の量を増やし、バランスのとれた食事パターンを取り戻すことを目指します。
食事の回復は身体的な側面だけでなく、食べることへの恐怖や罪悪感といった心理的な側面との戦いでもあります。
心理療法
認知行動療法は神経性やせ症の治療において効果が示されている心理療法のひとつです。体重や体型に関する歪んだ認知パターンに気づき、より現実的でバランスのとれた認知に変えていくことを目指します。
家族療法は特に思春期の患者に有効とされています。家族全体が疾患を理解し、回復を支援するための関わり方を身につけることを目指します。
弁証法的行動療法は感情のコントロール、対人関係のスキル、苦痛耐性を高めることを目標とし、神経性やせ症の治療にも活用されます。
対人関係療法は対人関係上の問題が症状の維持に関係している場合に有効とされています。
薬物療法
神経性やせ症そのものに対して承認された薬はありませんが、うつ症状、強迫的な思考、不安症状等の関連症状を軽減するために薬が使用されることがあります。ただし薬物療法は心理療法と栄養療法の補助として位置づけられます。
多職種チームによるアプローチ
神経性やせ症の治療は精神科医または心療内科医、管理栄養士、心理士、看護師等の多職種チームが連携して行うことが効果的です。身体的な管理と心理的な支援を同時に行うためには専門的なチームによるアプローチが重要です。
回復への向き合い方
回復には時間がかかることを理解する
神経性やせ症からの回復は長期的なプロセスであり、一直線に回復するのではなく波がありながら少しずつ回復していくことが多くあります。回復の過程で症状が再燃することもありますが、それを失敗とではなく回復のプロセスの一部として受け止めることが重要です。
回復には平均的に数年単位の時間がかかることが多いとされています。焦らず一歩ずつ進むという姿勢が回復を助けます。
体重回復が回復の入り口であることを理解する
体重を回復させることへの強い抵抗感がある場合でも、適切な栄養状態を取り戻すことが心理的な症状の回復にも不可欠です。栄養不足の状態では脳の機能も低下しており、心理療法の効果が十分に得られにくくなります。
体重の回復は終着点ではなく、心理的な回復を進めるための土台づくりとして理解することが重要です。
自分を責めない
神経性やせ症は意志の弱さや虚栄心の問題ではありません。様々な要因が複合的に関係して生じる疾患です。回復の過程で食べられなかったこと、体重が思うように増えないことを自分の失敗として責めることは回復を妨げることがあります。
今日できたことに目を向け、小さな一歩を認めることが回復への積み重ねになります。
回復を支えるサポーター
家族や信頼できる人の理解と支援が回復において非常に重要な役割を果たします。ただし家族が食事を強制したり体型についてコメントしたりすることは症状を悪化させることがあります。専門家の指導のもとで家族が適切な関わり方を学ぶことが重要です。
家族や周囲の人ができること
神経性やせ症のある方の家族や友人にとって、適切な関わり方を知っておくことが重要です。
体型や体重についてのコメントを避けることが重要です。痩せてきれい、少し太ったといった体型に関する発言は症状を悪化させることがあります。
食事を強制することは食べることへの恐怖をさらに高めることがあります。専門家のアドバイスを受けながら適切な関わり方を学ぶことが大切です。
回復の意欲を引き出すために、体型以外の面でのその人の価値や強みを認め、支持的に関わることが重要です。
家族自身も精神的な負担が大きくなることがあります。家族会や専門家への相談を通じて家族自身のサポートを受けることも重要です。
摂食障害の相談窓口
神経性やせ症の症状が疑われる場合や、摂食障害について相談したい場合は以下の窓口を活用してください。
摂食障害の専門治療を行っている医療機関への受診が最も重要です。精神科または心療内科への相談から始めることが一般的な入り口となります。
全国の摂食障害支援相談窓口として、摂食障害支援拠点病院が各地に設置されており、相談と治療につなぐ役割を担っています。
一般社団法人日本摂食障害協会では摂食障害に関する情報提供と相談支援が行われています。
なお、以前はNEDA日本版が相談窓口として紹介されることがありましたが、現在は全国摂食障害支援相談窓口または各都道府県の摂食障害支援拠点病院への相談が推奨されています。
まとめ
神経性やせ症は著しい低体重、体重増加への強い恐怖、歪んだ体のイメージを特徴とする摂食障害であり、精神疾患のなかで最も死亡率が高い疾患のひとつです。生物学的、心理的、社会文化的、環境的な要因が複合的に関係して発症します。身体的な回復を最優先にしながら、認知行動療法等の心理療法と栄養療法を組み合わせた多職種チームによる治療が効果的です。回復は長期的なプロセスであり、自分を責めずに小さな一歩を積み重ねることが大切です。症状が疑われる場合は早めに専門家に相談することが、回復への確実な道になります。


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