学生時代は順調だったのに、社会人になってから引きこもってしまった。仕事を辞めて、そのまま外に出られなくなった。数ヶ月、数年と時間が過ぎ、焦りと絶望が深まる。社会人の引きこもりは、学生時代の引きこもりとは異なる特有の苦しみがあります。本記事では、なぜ社会人が引きこもるのか、その原因を理解し、引きこもりから抜け出すための具体的なステップ、利用できる支援制度、そして社会復帰への道筋について詳しく解説します。
社会人の引きこもりとは
まず、この状態を正しく理解しましょう。
定義と現状
引きこもりとは、仕事や学校に行かず、家族以外との交流をほとんど持たず、6ヶ月以上自宅にとどまり続けている状態を指します。
内閣府の調査によると、40歳から64歳の引きこもりは推計61万人以上おり、若年層だけの問題ではありません。社会人になってから引きこもる、または再び引きこもるケースも多いです。
よくあるパターン
新卒で入社したが、仕事や職場環境に適応できず、退職後引きこもった。転職に失敗し、次の仕事を探す気力がなくなり、そのまま引きこもった。
職場でパワハラやいじめを受け、心が折れて退職し、外に出られなくなった。過労やストレスでうつ病になり、退職後、回復できずに引きこもり状態が続いている。
数ヶ月のつもりが、気づけば数年経っていた。就職活動をしようと思っても、空白期間への不安で一歩が踏み出せない。
社会人の引きこもりの特徴
学生時代の引きこもりと異なり、社会人の引きこもりには以下の特徴があります。
一度は社会に出た経験があるため、「できていたのにできなくなった」という喪失感が大きい。年齢が上がるほど、社会復帰のハードルが高く感じられる。
経済的な問題が深刻で、親の年金や貯蓄に頼っている場合、将来への不安が大きい。周囲からの「いつまで家にいるのか」というプレッシャーが強い。
社会人が引きこもる原因
なぜ社会人が引きこもるのでしょうか。
職場でのトラウマ
パワハラ、いじめ、セクハラなどのハラスメントを受けた経験。過重労働で心身が壊れた経験。人間関係のトラブルで深く傷ついた経験。
こうしたトラウマが、「もう働きたくない」「社会が怖い」という恐怖を生み、引きこもりにつながります。
うつ病や精神疾患
うつ病、適応障害、パニック障害、社交不安障害などの精神疾患が、引きこもりの原因または結果となっています。
精神疾患があると、外に出る気力がない、人と会うのが怖い、将来への希望が持てないという状態になります。
発達障害
ADHD、自閉スペクトラム症などの発達障害が、社会人になってから顕在化することがあります。
学生時代は何とかやり過ごせたが、社会人になって求められる能力が変わり、適応できなくなった。発達障害と気づかず、「自分は無能だ」と自己否定に陥り、引きこもることもあります。
就職活動の失敗
何十社も受けて、すべて不採用だった。面接で何度も否定され、自己肯定感が底をついた。
就職活動の失敗が、「自分には価値がない」「社会に必要とされていない」という絶望感を生み、引きこもりにつながります。
経済的な問題
親の経済的サポートがあるため、生活には困らない。そのため、無理に働く必要を感じず、引きこもり状態が長期化します。
逆に、経済的に困窮しているが、それでも外に出られないという場合もあります。
完璧主義と理想の高さ
「こんな仕事ではダメだ」「もっと良い仕事があるはず」という理想の高さが、行動を妨げることがあります。
完璧主義で、失敗を極度に恐れるため、挑戦できなくなります。
社会とのつながりの喪失
仕事を辞めると同時に、職場での人間関係も失われます。友人も疎遠になり、社会とのつながりが断たれます。
孤立が深まると、ますます外に出ることが難しくなります。
羞恥心とプライド
「引きこもっている自分」を恥じる気持ち、周囲にどう思われているかという恐怖、プライドが邪魔をして助けを求められないなど。
羞恥心が、社会復帰を妨げることがあります。
引きこもりの苦しみ
引きこもり状態は、深い苦しみを伴います。
時間の喪失感
毎日が同じで、時間だけが過ぎていく。「何もしていない」という焦りと罪悪感。気づけば何年も経っている恐怖。
自己否定と無価値感
「自分は何もできない」「価値がない」「存在する意味がない」という強い自己否定。社会の役に立っていないという無価値感。
将来への絶望
「このままでは将来どうなるのか」という不安。親が亡くなったらどうするのか、老後はどうするのかという恐怖。
孤独
誰とも話さない日々、社会から取り残されている感覚。孤独が、精神状態をさらに悪化させます。
家族との関係
家族からのプレッシャー、失望、怒り。または、家族も諦めて何も言わなくなる。どちらも辛いです。
引きこもりから抜け出すための第一歩
引きこもりから抜け出すには、小さな一歩から始めることが大切です。
自分を責めない
まず、引きこもっている自分を過度に責めないことが重要です。引きこもりになったのは、あなたが弱いからではなく、さまざまな要因が重なった結果です。
自己否定をやめ、「今の自分」を受け入れることから始めましょう。
医療機関を受診する
うつ病や精神疾患が疑われる場合、医療機関を受診しましょう。心療内科や精神科で診断を受けることで、自分の状態を理解でき、適切な治療を受けられます。
薬物療法やカウンセリングにより、症状が改善することがあります。
生活リズムを整える
引きこもり状態では、昼夜逆転などで生活リズムが乱れがちです。まずは、規則正しい生活リズムを取り戻しましょう。
毎日同じ時間に起きる、日光を浴びる、三食きちんと食べる、軽い運動をするなど。生活リズムが整うと、心身の状態も改善します。
家の中でできることから始める
いきなり外に出る必要はありません。家の中でできることから始めましょう。
部屋を片付ける、簡単な料理をする、読書をする、オンライン講座で勉強する、ブログを書くなど。小さな達成感を積み重ねることが大切です。
少しずつ外に出る
家の中に慣れたら、少しずつ外に出る練習をしましょう。まずは、玄関先に出る、庭に出る、近所のコンビニに行く、散歩をするなど。
無理をせず、できる範囲で少しずつ広げていきます。
人との接点を作る
完全に孤立していると、社会復帰が難しくなります。少しずつ、人との接点を作りましょう。
家族と話す、オンラインでコミュニティに参加する、支援機関に相談するなど。人と話すことで、孤独感が和らぎます。
利用できる支援制度
引きこもりからの脱出を支援する制度があります。
ひきこもり地域支援センター
全国の都道府県や政令指定都市に設置されている、ひきこもり専門の相談窓口です。無料で相談でき、電話、メール、訪問などの方法があります。
本人だけでなく、家族も相談できます。
生活困窮者自立支援制度
経済的に困窮している場合、生活困窮者自立支援制度を利用できます。自治体の相談窓口で、就労支援、家計相談、住居確保などの支援を受けられます。
障害者手帳と障害者雇用
精神疾患や発達障害の診断がある場合、障害者手帳を取得できます。手帳があれば、障害者雇用枠で就職できる、さまざまな福祉サービスを利用できるなどのメリットがあります。
就労移行支援
障害者手帳を持っている人、または取得見込みの人が利用できる、一般就労を目指すための訓練施設です。ビジネススキル、コミュニケーションスキル、職場体験などの訓練を受けられます。
最長2年間利用でき、就職後の定着支援も受けられます。
就労継続支援A型やB型
一般就労が難しい場合、就労継続支援A型雇用契約あり、最低賃金保障またはB型雇用契約なし、低工賃で働く選択肢があります。
特にB型は、柔軟な働き方ができ、社会復帰の第一歩として利用する人も多いです。
サポステ
地域若者サポートステーションサポステは、15歳から49歳までの働くことに悩みを抱える人を支援する機関です。
キャリア相談、コミュニケーション訓練、職場体験などのプログラムがあります。
NPOや民間支援団体
引きこもり支援を専門とするNPOや民間団体もあります。居場所づくり、訪問支援、家族会などのサービスを提供しています。
社会復帰へのステップ
社会復帰には、段階的なアプローチが有効です。
ステップ1:自宅での生活を安定させる
まずは、自宅での生活を安定させることが最優先です。規則正しい生活、心身の健康管理、家事への参加など。
ステップ2:外出の習慣をつける
散歩、買い物、図書館など、外出の習慣をつけます。人混みが苦手なら、早朝や平日の空いている時間帯を選びましょう。
ステップ3:社会的な接点を増やす
支援機関、ボランティア、趣味のサークル、オンラインコミュニティなど、社会的な接点を増やします。
ステップ4:職業訓練や勉強
就労移行支援、職業訓練校、オンライン講座などで、スキルを身につけます。資格取得も、自信につながります。
ステップ5:アルバイトや短時間勤務
いきなりフルタイムで働くのではなく、アルバイトや短時間勤務から始めます。週2日、1日3時間など、無理のない範囲で。
ステップ6:徐々に労働時間を増やす
慣れてきたら、徐々に労働時間を増やしていきます。焦らず、自分のペースで進めることが大切です。
ステップ7:正規雇用を目指す
準備ができたら、正規雇用や安定した仕事を目指します。ただし、正規雇用が唯一の正解ではありません。自分に合った働き方を選びましょう。
空白期間の説明
長期の引きこもり期間がある場合、就職活動で空白期間をどう説明するかが課題です。
正直に話す
病気療養、家族の介護など、事実を正直に話すことも一つの方法です。ただし、詳細を話す必要はありません。
前向きに説明する
「休養期間を経て、今は働く準備ができています」「この期間に自己分析をし、自分に合った仕事を見つけました」など、前向きに説明します。
スキルアップを強調する
空白期間中に、資格を取得した、勉強した、ボランティアをしたなど、何かしらの活動をしていたことを強調します。
障害者雇用を利用する
障害者手帳がある場合、障害者雇用枠を利用することで、空白期間への理解が得られやすくなります。
再発を防ぐために
社会復帰した後、再び引きこもらないための対策が必要です。
無理をしない
完璧を求めず、自分のペースを大切にしましょう。無理をすると、また心身を壊します。
サポートを受け続ける
就職後も、支援機関、医療機関、カウンセリングなどのサポートを受け続けることが大切です。
早めのSOSを出す
「ちょっと辛い」という段階で、早めに助けを求めましょう。限界まで我慢しないことが重要です。
自分に合った働き方を見つける
フルタイムが難しければ、パート、在宅勤務、フリーランスなど、自分に合った働き方を選びましょう。
まとめ
社会人の引きこもりは、決して珍しいことではなく、さまざまな要因が重なった結果です。職場でのトラウマ、精神疾患、発達障害、就職活動の失敗など、原因はさまざまです。
引きこもりから抜け出すには、自分を責めず、小さな一歩から始めることが大切です。生活リズムを整え、少しずつ外に出て、人との接点を作りましょう。
ひきこもり地域支援センター、就労移行支援、サポステなど、利用できる支援制度があります。一人で抱え込まず、専門家の助けを借りましょう。
社会復帰は、段階的に進めます。焦らず、自分のペースで、一歩ずつ前に進んでいけば大丈夫です。
あなたには、社会復帰する力があります。過去の失敗や空白期間は、あなたの価値を決めるものではありません。今から始めれば、未来は変えられます。
どうか、希望を失わないでください。あなたは一人ではありません。支援してくれる人、同じ経験をした人がたくさんいます。勇気を出して、一歩を踏み出してください。

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