「毎日のように何かを忘れてしまう」「家の鍵や財布をしょっちゅう探している」「約束や予定を忘れて人に迷惑をかけてしまう」大人になっても忘れ物が多いことに悩んでいる方は少なくありません。子どもの頃なら「うっかりさん」で済まされても、大人になると「だらしない」「信頼できない」と評価され、仕事や人間関係に深刻な影響を及ぼします。何度注意されても改善できず、自己嫌悪に陥る方も多いでしょう。しかし、忘れ物が多い背景には、単なる注意力不足だけでなく、脳の働き方の特性、ワーキングメモリの問題、ストレス、生活習慣など、様々な要因があります。本記事では、忘れ物が多い原因を多角的に分析し、発達特性との関連、具体的な対策方法、忘れ物を減らすライフハック、そして自分を責めずに向き合う方法について詳しく解説していきます。
忘れ物が多い大人に共通する特徴
まず、忘れ物が多い人に共通する特徴を理解しましょう。自分がどのパターンに当てはまるか確認してみてください。
物をなくす・探し物が多い
日常的によくなくすもの:
- 鍵、財布、スマホ
- メガネ、リモコン
- 書類、領収書
- 傘、ペン
- 充電器、イヤホン
特徴:
- 置き場所を決めていない
- 適当な場所に置いてしまう
- 使ったら元に戻さない
- どこに置いたか記憶にない
- 毎朝、出かける前に探し物をする
約束や予定を忘れる
- 会議や打ち合わせを忘れる
- 友人との約束を忘れる
- 提出期限を忘れる
- 記念日や誕生日を忘れる
- 予約を忘れる(病院、美容院など)
持ち物を忘れる
外出時の忘れ物:
- 家の鍵
- 財布、スマホ
- 定期券、社員証
- 書類、資料
- 傘(特に置き忘れ)
- 弁当、水筒
帰宅時の置き忘れ:
- 電車やバスに荷物を置き忘れる
- レストランに忘れる
- オフィスに私物を置いたまま
やるべきことを忘れる
- 返信すべきメールを忘れる
- 依頼された仕事を忘れる
- 買い物リストのものを買い忘れる
- 人に返すべきものを忘れる
- 電気やガスを消し忘れる
「今やろうと思っていたこと」を忘れる
部屋を移動した途端に「何をしに来たんだっけ?」となる現象が頻繁に起こります。
忘れ物が多い原因:脳科学的・心理学的要因
忘れ物が多い背景には、脳の働き方や心理的な要因があります。
ワーキングメモリの容量が小さい
ワーキングメモリとは
ワーキングメモリ(作業記憶)とは、短期間だけ情報を保持し、処理する能力です。「脳のメモ帳」とも呼ばれます。
ワーキングメモリと忘れ物の関係:
- ワーキングメモリの容量が小さいと、複数のことを同時に覚えておけない
- 新しい情報が入ると、前の情報が押し出される
- 「鍵を持つ」「財布を持つ」「書類を持つ」と複数のことを覚えられない
注意力の問題
注意散漫
注意力が散りやすいと、今やっていることに集中できず、他のことに気を取られて忘れてしまいます。
選択的注意の弱さ
重要なことに注意を向け続けることが難しく、すぐに別のことに意識が移ってしまいます。
実行機能の弱さ
実行機能とは、目標を設定し、計画を立て、実行し、モニタリングする能力です。この機能が弱いと、以下の問題が生じます。
- 計画を立てられない
- 優先順位がつけられない
- 段取りが組めない
- 自己モニタリングができない(「忘れていないか」をチェックできない)
マルチタスクの困難
複数のことを同時に処理することが苦手な場合、一つのことに集中すると他のことを忘れてしまいます。
ストレスや疲労
認知機能の低下
ストレスや疲労が蓄積すると、注意力、記憶力、判断力などの認知機能が低下し、忘れ物が増えます。
脳のキャパシティオーバー
抱えている問題や心配事で頭がいっぱいになると、日常的なことに注意を向ける余裕がなくなります。
睡眠不足
睡眠不足は、記憶の定着を妨げ、注意力を低下させます。慢性的な睡眠不足は、忘れ物を増やす大きな要因です。
加齢による記憶力の低下
加齢とともに、記憶力や注意力が低下することは自然なことです。特に40代以降は、若い頃より忘れ物が増えることがあります。
情報過多・マルチタスク社会
現代社会は、情報が溢れ、常に複数のタスクを処理することを求められます。この環境自体が、脳に過度な負担をかけ、忘れ物を増やしています。
忘れ物が多い原因:発達特性(ADHD)
大人になっても忘れ物が非常に多い場合、ADHD(注意欠如多動症)の可能性があります。
ADHDとは
ADHDは、不注意、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症です。子どもだけでなく、大人にもあります。
ADHD(不注意優勢型)の特徴
忘れ物が多い人は、特に「不注意優勢型」のADHDである可能性があります。
主な特徴:
- 忘れ物・紛失物が非常に多い:日常的に物をなくす、置き忘れる
- 注意の持続が困難:すぐに気が散る、集中できない
- うっかりミスが多い:見落とし、聞き逃しが頻繁
- 整理整頓ができない:部屋やデスクが散らかっている
- 時間管理が苦手:遅刻が多い、締め切りを守れない
- 優先順位がつけられない:何から手をつけるべきか分からない
- マルチタスクができない:複数のことを同時に処理できない
- 先延ばし癖:やるべきことを後回しにする
- 指示を覚えられない:複数の指示を受けると混乱する
ADHDの脳の特徴
ADHDは、脳の前頭前野(実行機能を司る部分)の機能に特性があると考えられています。これは、怠けや性格の問題ではなく、脳の働き方の違いです。
ADHDの診断と治療
診断
精神科や心療内科で、専門的な問診や検査により診断されます。
治療・支援
- 薬物療法:注意力を改善する薬(コンサータ、ストラテラなど)
- 認知行動療法:行動パターンを変える
- ライフスキルトレーニング:生活管理のスキルを学ぶ
- 環境調整:忘れ物をしにくい環境を作る
診断のメリット
- 自分の特性を理解できる
- 適切な治療やサポートを受けられる
- 「自分のせいではない」と理解できる
- 職場での配慮を求めやすくなる
- 障害者手帳や福祉サービスを利用できる可能性
ADHDかもしれないと思ったら: 専門医の診察を受けることをお勧めします。診断がつけば、適切なサポートを受けることができます。
忘れ物が多いことの影響
忘れ物が多いことは、様々な影響をもたらします。
仕事への影響
- 重要な会議に遅れる・欠席する
- 資料や道具を忘れて業務が進まない
- 締め切りを忘れて信頼を失う
- 「だらしない」と評価される
- 昇進や評価に悪影響
人間関係への影響
- 約束を忘れて相手を怒らせる
- 借りたものを返し忘れる
- 信頼を失う
- 「大切にされていない」と思われる
- 人間関係が悪化する
経済的な影響
- 物をなくして買い直す
- 置き忘れた物が戻らない
- 罰金(遅延金、キャンセル料など)
- 時間の浪費(探し物に費やす時間)
精神的な影響
- 自己肯定感の低下
- 「自分はダメだ」という思い込み
- ストレスの増大
- 不安(「また忘れるのではないか」)
- 自己嫌悪
安全面のリスク
- 家の鍵をなくして入れない
- 重要な薬を忘れる
- ガスや電気の消し忘れ
- 車の鍵をなくす
忘れ物を減らす具体的な対策:基本編
忘れ物を減らすための基本的な対策を紹介します。
1. 定位置を決める
すべての物に「定位置」を決める
物の置き場所を固定することで、探す時間が減り、忘れ物も減ります。
定位置の例:
- 玄関:鍵、定期券、社員証を入れる小さなトレイを置く
- 充電スペース:スマホ、スマートウォッチの充電場所を固定
- デスク:財布、メガネ、ペンの置き場所
- バッグ:バッグの中も整理し、物の定位置を決める
ルール:「使ったら必ず定位置に戻す」
2. 視覚化する
目に見える場所に置く
引き出しやボックスに入れると忘れやすいため、できるだけ目に見える場所に置きます。
- 壁にフックをつけて鍵を掛ける
- トレイに入れてカウンターの上に置く
- 透明な容器を使う
カラーコーディング
重要なものは目立つ色にします。
- 赤いキーホルダー
- 派手な色のペンケース
3. チェックリストを作る
外出前のチェックリスト
玄関にチェックリストを貼り、出かける前に確認します。
□ 鍵 □ 財布 □ スマホ □ 定期券 □ 今日必要な書類 □ 傘(天気予報を確認)
アプリのチェックリスト
スマホのチェックリストアプリを活用するのも有効です。
4. リマインダー・アラームを活用する
スマホのリマインダー機能
やるべきことや約束を、スマホのリマインダーに登録し、時間になったら通知が来るように設定します。
- 会議の30分前に通知
- 出発時刻の10分前に通知
- 「〇〇を持つ」という具体的なリマインダー
複数のアラーム
重要な予定には、複数のアラームを設定します。
5. 予定を一元管理する
カレンダーアプリ
すべての予定を一つのカレンダーアプリに集約します。Googleカレンダー、Outlook、iPhoneのカレンダーなど。
紙の手帳
デジタルが苦手な場合は、紙の手帳に書き込みます。ただし、手帳を見る習慣をつけることが重要です。
6. 「今すぐやる」習慣
先延ばししない
「後でやろう」と思うと忘れます。可能な限り、今すぐやります。
- 返信すべきメールは、読んだらすぐ返信
- 思いついたことは、すぐにメモ
7. メモを取る習慣
すべてをメモする
記憶に頼らず、すべてをメモします。
- スマホのメモアプリ
- 音声メモ
- 紙のメモ帳
- LINEで自分にメッセージを送る
8. 前日準備
前夜のうちに準備する
翌日の準備を前夜のうちに済ませることで、朝のバタバタを減らし、忘れ物を防ぎます。
- 着る服を準備
- バッグに必要なものを入れる
- 玄関に必要なものを置いておく
9. ルーティン化
毎日同じ順序で行動する
朝の準備、夜の準備などをルーティン化することで、忘れ物が減ります。
例:朝のルーティン
- 起きる
- 顔を洗う
- 朝食
- 歯磨き
- 着替え
- チェックリストで確認
- 出発
10. 物を減らす(ミニマリズム)
持ち物を減らす
物が少なければ、管理しやすくなり、なくしにくくなります。
- 本当に必要なものだけを持つ
- 定期的に断捨離する
- バッグの中も最小限に
忘れ物を減らす具体的な対策:テクノロジー活用編
現代のテクノロジーを活用することで、忘れ物を劇的に減らすことができます。
スマートタグ(紛失防止タグ)
Apple AirTag、Tile、Mamorio など
物にスマートタグをつけることで、スマホから場所を探せます。
つける物の例:
- 鍵
- 財布
- バッグ
- 傘
- リモコン
機能:
- スマホから音を鳴らして探す
- 最後に検知した場所を地図で確認
- 一定距離離れたら通知(置き忘れ防止)
スマートロック
スマホで解錠できる鍵
スマートロックを導入することで、鍵を持ち歩く必要がなくなります。スマホ、暗証番号、指紋認証などで解錠できます。
位置情報共有アプリ
「iPhoneを探す」「Googleマップの位置情報」
スマホ自体をなくした場合に、別のデバイスから場所を探せます。
デジタルカレンダーの通知機能
Googleカレンダー、Outlook
予定を入力すると、自動的に通知が来ます。繰り返しの予定も設定できます。
タスク管理アプリ
Todoist、Microsoft To Do、Google Keep など
やるべきことをリスト化し、期限を設定すると通知してくれます。
スマートウォッチ
Apple Watch、Fitbit など
スマホの通知を手首で確認できるため、見逃しにくくなります。
自動化(IFTTT、Siri ショートカット)
特定の条件で自動的にリマインダー
例:
- 家を出たら「傘を持ちましたか?」と通知
- 会社に着いたら「今日のタスク」を表示
忘れ物を減らす具体的な対策:環境調整編
環境を調整することで、忘れ物をしにくくします。
玄関の整備
玄関に「発射台」を作る
玄関に小さなテーブルやトレイを置き、毎日持っていくものを集約します。
鏡を置く
玄関に全身鏡を置き、出かける前に最終チェックをする習慣をつけます。
視覚的なリマインダー
付箋やホワイトボード
目に入る場所に付箋を貼る、ホワイトボードに書くことで、忘れにくくなります。
バッグの整理
バッグの中を整理する
バッグの中も、ポーチや仕切りを使って整理し、物の定位置を決めます。
複数持つ戦略
よくなくすものは複数持つ
- 鍵のスペア
- 充電器(家用、職場用、バッグ用)
- メガネ(家用、職場用)
- ペン(複数の場所に置く)
職場のデスク整理
デスクをシンプルに保つ
職場のデスクも整理整頓し、物の定位置を決めます。
忘れ物をしてしまったときの対処法
どんなに対策しても、時には忘れ物をしてしまいます。その時の対処法も知っておきましょう。
冷静に対処する
パニックにならない
忘れ物に気づいたら、まず深呼吸して冷静になります。
代替案を考える
- 鍵を忘れた→家族や管理人に連絡
- 財布を忘れた→スマホ決済、同僚に借りる
- 資料を忘れた→メールで送ってもらう、デジタルデータを使う
早めに連絡する
忘れ物が他人に迷惑をかける場合は、早めに連絡し、謝罪と代替案を提示します。
取りに戻れるか判断する
時間的に可能なら、取りに戻ります。無理な場合は、代替案を実行します。
振り返りと改善
忘れ物をした後、なぜ忘れたのかを振り返り、次回の対策を考えます。
自分を責めすぎない考え方
忘れ物が多いことで、自分を責めすぎないことが重要です。
「悪意ではない」と理解する
忘れ物は、悪意や怠けではなく、脳の働き方や状況によるものです。
完璧を求めない
誰でも忘れ物はします。ゼロにすることは不可能です。「減らす」ことを目標にしましょう。
特性として受け入れる
発達特性がある場合、それは個性の一つです。対策をしながら、自分を受け入れることが大切です。
ユーモアを持つ
あまりに深刻に考えすぎず、「またやってしまった」と笑えるくらいの余裕を持ちましょう。
強みにも目を向ける
忘れ物が多い人は、往々にして以下のような強みを持っています。
- 創造性が高い
- 直感的
- 好きなことへの集中力
- 柔軟な思考
弱みだけでなく、強みにも目を向けることが大切です。
まとめ
大人の忘れ物が多い原因は、ワーキングメモリの問題、注意力の特性、実行機能の弱さ、ストレス、睡眠不足、そしてADHDなどの発達特性など、様々な要因があります。
重要なのは、自分を責めるのではなく、原因を理解し、具体的な対策を講じることです。定位置を決める、チェックリストを使う、リマインダーを活用する、スマートタグを使うなど、様々な工夫があります。
また、あまりに忘れ物が多く、日常生活や仕事に深刻な支障をきたしている場合は、ADHDなどの発達特性の可能性もあります。専門医の診察を受けることで、適切な治療やサポートを受けられます。
完璧を求めず、「減らす」ことを目標に、自分に合った対策を見つけていきましょう。忘れ物が多いあなたにも、素晴らしい強みがあります。それを活かしながら、工夫して生きていくことが大切です。
一人で抱え込まず、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、自分らしく生きる道を見つけていきましょう。

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