はじめに:「家から近い事業所」を探す切実なニーズ
就労継続支援B型事業所を探している方の多くが重視する条件の一つが、「家から近いこと」です。「できるだけ家の近くの事業所に通いたい」「通所距離が遠いと続けられる自信がない」「体力的に遠くまで通うのは無理」「交通費がかかりすぎると困る」など、通所距離に関する切実な思いを抱えている方は少なくありません。
特に、体力が低下している方、慢性疲労症候群や線維筋痛症など疲れやすい方、精神的に外出すること自体が負担な方、経済的に交通費の負担が大きい方、高齢の方、公共交通機関の利用が困難な方にとって、「家から近い」ことは、事業所選びの最優先条件になります。「作業内容や雰囲気が良くても、遠いと通えない」「近いからこそ、何とか通い続けられている」という声もよく聞かれます。
また、「家から近い事業所を探したいけれど、どうやって探せばいいか分からない」「近くに事業所があるのか分からない」「近い事業所は定員いっぱいで入れないのではないか」「近い事業所が自分に合わないタイプだったらどうしよう」という不安や疑問を抱えている方もいます。
通所距離は、B型利用の継続に大きく影響します。どんなに素晴らしい事業所でも、通所に片道1時間以上かかると、それだけで大きな負担になり、休みがちになったり、退所につながったりします。逆に、徒歩や自転車で通える距離にあれば、体調が万全でない日でも「とりあえず行ってみよう」と思えます。
本記事では、通所距離が重要な理由、「近い」の基準、家から近い事業所を探す具体的な方法、近くに事業所がない場合の対処法、送迎サービスの活用、そして通所距離と事業所の質のバランスの取り方について、詳しく解説していきます。家から近い事業所を探している方、通所距離に不安がある方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
通所距離が重要な理由
なぜ「家から近い」ことが重要なのか、具体的に理解しましょう。
1. 体力的な負担の軽減
毎日の通所は意外と疲れる 健康な人でも、毎日の通勤は疲れるものです。ましてや、体調に波がある方、体力が低下している方にとって、通所は大きな負担です。
遠い場合の負担:
- 長時間の移動で疲れる
- 立ちっぱなし、歩きっぱなしで体力を消耗
- 事業所での作業前にすでに疲れている
- 帰宅時にはヘトヘト
- 翌日に疲れが残る
近い場合のメリット:
- 移動時間が短く、体力を温存できる
- 作業に集中できる
- 帰宅後も余力がある
- 継続しやすい
2. 精神的な負担の軽減
外出自体がストレス 精神障害のある方、社交不安のある方にとって、外出すること自体が大きなストレスです。
遠い場合の負担:
- 長時間人混みの中を移動する不安
- 電車やバスでパニックになるかもしれない恐怖
- 「遠くまで行かなければ」というプレッシャー
- 迷うかもしれない不安
近い場合のメリット:
- 移動時間が短く、不安の時間が短い
- 徒歩や自転車なら、人混みを避けられる
- 「すぐ近く」という安心感
- 迷わない
3. 経済的な負担の軽減
交通費がかかる B型の工賃は平均月額約1万6千円程度と少額です。交通費が高いと、工賃のほとんどが交通費で消えてしまいます。
遠い場合の負担:
- 往復のバス代・電車代が月額数千円〜1万円以上
- 工賃から交通費を引くと、ほとんど残らない
- 赤字になることも
近い場合のメリット:
- 徒歩・自転車なら交通費ゼロ
- 近距離のバスなら数百円/日
- 工賃がそのまま手元に残る
4. 天候の影響を受けにくい
悪天候でも通いやすい 雨、雪、猛暑、厳冬など、悪天候の日は外出が億劫になります。
遠い場合の負担:
- 雨の日の長時間移動は苦痛
- 雪の日は危険
- 猛暑・厳冬で体調を崩す
近い場合のメリット:
- 短時間で到着するので、天候の影響が少ない
- 傘をさす時間、寒さに耐える時間が短い
5. 柔軟性が高い
「ちょっと行ってみる」ができる 近い事業所なら、柔軟な通所が可能です。
遠い場合:
- 「遠いから、行くなら最初から最後まで」という気持ちになる
- 体調が微妙な日は、最初から休む判断になりやすい
近い場合:
- 「とりあえず午前だけ行ってみよう」
- 「1時間だけでも顔を出そう」
- 「体調が悪くなったら、すぐ帰れる」
- 柔軟な通所ができる
6. 緊急時の対応
何かあったらすぐ帰れる 体調が急に悪化した、家族に何かあったなど、緊急時にすぐ帰れます。
7. 地域とのつながり
地元で過ごす 家から近い事業所に通うことで、地域での生活の一部になります。
- 地元の知り合いができる
- 地域の一員という実感
- 買い物などの用事も一緒にできる
8. 継続しやすい
最も重要 通所距離が近いことは、B型利用の継続に直結します。
遠い事業所は、最初は頑張れても、徐々に負担が大きくなり、休みがちになり、最終的に退所につながることが多いです。
近い事業所は、無理なく続けられます。
「近い」の基準
「家から近い」とは、具体的にどれくらいの距離でしょうか。
理想的な距離
徒歩圏内(徒歩10〜20分以内)
最も理想的
- 距離:約1〜2km
- 時間:徒歩10〜20分
- 交通費:ゼロ
- 天候の影響:比較的少ない
- 体力的負担:最小
徒歩で通える距離が最も理想的です。
自転車圏内(自転車10〜15分以内)
次に理想的
- 距離:約2〜4km
- 時間:自転車10〜15分
- 交通費:ゼロ
- 天候の影響:雨の日は困難
- 体力的負担:少ない
自転車で通える距離も、非常に良い選択肢です。
許容範囲
バス・電車で30分以内
何とか続けられる範囲
- 時間:片道30分以内
- 交通費:往復数百円/日
- 天候の影響:ある
- 体力的負担:中程度
片道30分以内なら、何とか続けられる範囲です。
厳しい距離
バス・電車で1時間以上
継続が困難
- 時間:片道1時間以上
- 交通費:往復1,000円以上/日も
- 天候の影響:大きい
- 体力的負担:大きい
片道1時間以上かかる事業所は、よほど他に選択肢がない限り、継続が困難です。
個人差がある
体力・状況による 「近い」の基準は、個人の体力や状況によって異なります。
- 体力がある方:片道30〜40分でもOK
- 体力が低下している方:徒歩10分でも負担
- 車で通える方:車で20〜30分でもOK
- 高齢の方:徒歩5〜10分が限界
自分にとっての「近い」を考えましょう。
家から近い事業所を探す具体的な方法
家から近い事業所を見つける方法を紹介します。
1. 市区町村の窓口で地域の事業所一覧をもらう
最も基本的な方法 市区町村の障がい福祉担当窓口に行くと、管内のB型事業所一覧をもらえます。
一覧に記載されている情報:
- 事業所名
- 住所
- 電話番号
- 定員
- 作業内容(記載がある場合)
住所を見て、自宅からの距離を確認しましょう。
2. インターネットで検索
「就労継続支援B型 ○○市」 「就労継続支援B型 ○○市」「就労継続支援B型 ○○区」などで検索すると、地域の事業所が見つかります。
Google マップで検索
視覚的に分かる Google マップで「就労継続支援B型」と検索すると、地図上に事業所が表示されます。
- 自宅からの距離が視覚的に分かる
- ルート検索で所要時間が分かる
- 徒歩、自転車、バス、車のルートと時間が分かる
非常に便利です。
3. WAM NET(ワムネット)で検索
全国の事業所を検索 独立行政法人福祉医療機構が運営する「WAM NET」で、全国の障害福祉サービス事業所を検索できます。
検索方法:
- サイトにアクセス
- 「障害福祉サービス等情報検索」を選択
- 都道府県、市区町村を選択
- サービス種類で「就労継続支援B型」を選択
- 検索
住所が表示されるので、自宅からの距離を確認できます。
4. 相談支援専門員に「近い事業所」を紹介してもらう
専門家に頼る 相談支援専門員に、「家からできるだけ近い事業所を紹介してほしい」と伝えましょう。
自宅の住所を伝えれば、近くの事業所を複数紹介してくれます。
5. 実際に歩いて・自転車で探す
地域を回る 時間と体力があれば、実際に自宅周辺を歩いたり自転車で回ったりして、B型事業所を探す方法もあります。
- 看板が出ている
- 建物に「就労継続支援B型」と書かれている
意外と近くに事業所があることに気づくかもしれません。
6. 地域の掲示板・広報誌
地域情報をチェック 市区町村の広報誌、地域の掲示板などに、B型事業所の情報が掲載されていることがあります。
7. 家族・知人に聞く
口コミ 家族、知人、近所の人に「この辺にB型事業所はないか」と聞いてみる方法もあります。
8. 通所距離を優先順位の上位に
事業所選びの基準 事業所を選ぶ際、「通所距離」を優先順位の上位に置きましょう。
優先順位の例:
- 通所距離(徒歩・自転車圏内)
- 作業内容
- 雰囲気
- 工賃
- その他
近くに事業所がない場合の対処法
家の近くにB型事業所がない、または定員いっぱいで入れない場合の対処法です。
1. 隣の市区町村も検討
範囲を広げる 自分の住んでいる市区町村だけでなく、隣の市区町村の事業所も検討しましょう。
B型事業所は、基本的に住んでいる場所に関係なく利用できます(一部の事業所は地域限定の場合もある)。
2. 送迎サービスがある事業所を探す
送迎があれば遠くてもOK 送迎サービスがある事業所なら、多少遠くても負担が少なくなります。
詳しくは次のセクションで説明します。
3. オンライン・在宅型のB型を検討
自宅で作業 一部のB型事業所では、在宅での作業が可能です。
- オンラインで作業を受け取り、自宅で作業
- 週1回だけ通所、残りは在宅
通所距離の問題が解決されます。
4. 他のサービスを検討
B型以外の選択肢 B型以外のサービスも検討しましょう。
- 地域活動支援センター: 通所距離が近い場合が多い
- デイケア: 医療機関に併設されていることが多い
- 訪問看護: 自宅に来てくれる
5. 新しい事業所の開設を待つ
情報を集める 新しいB型事業所が開設される予定がないか、市区町村の窓口や相談支援専門員に聞いてみましょう。
新規開設の事業所は、定員に空きがあることが多いです。
6. 引っ越しを検討(最終手段)
現実的でないことが多いが B型事業所が多い地域に引っ越すという選択肢もありますが、現実的でないことが多いです。
7. 「近い」の基準を見直す
柔軟に考える 「徒歩圏内」にこだわりすぎず、「バスで20〜30分」まで範囲を広げると、選択肢が増えます。
送迎サービスの活用
多くのB型事業所では、送迎サービスを提供しています。
送迎サービスとは
自宅⇔事業所の送迎 事業所が車で、自宅(または近くの集合場所)と事業所の間を送迎してくれるサービスです。
送迎のメリット
通所距離の問題が解決
遠くても通える 送迎があれば、自宅から事業所が多少遠くても、通所の負担が大幅に軽減されます。
交通費がかからない
無料または低額 送迎サービスは、無料または低額(数百円/日程度)です。
安全
運転の心配なし 自分で運転する必要がなく、安全に通所できます。
天候の影響を受けにくい
雨でも雪でも 雨や雪の日でも、車で送迎してもらえるので、影響が少ないです。
送迎のデメリット
送迎ルートに自宅が含まれるとは限らない
範囲外の可能性 事業所によって送迎ルートが決まっており、自宅が範囲外の場合は利用できません。
時間が決まっている
柔軟性が低い 送迎の時間は決まっており、遅刻すると乗れません。また、早退したい場合も、送迎の時間まで待つ必要があります。
他の利用者と一緒
気を遣う 送迎車には他の利用者も乗っているので、気を遣うことがあります。
送迎サービスの確認方法
見学・問い合わせ時に聞く 見学や問い合わせの際に、以下を確認しましょう。
- 送迎サービスはあるか
- 自宅は送迎ルートに含まれるか
- 送迎の時間帯
- 送迎の費用
- 送迎車の定員(満員で乗れない可能性があるか)
送迎がある事業所を探す
検索時に確認 事業所のホームページに「送迎あり」と記載されていることが多いです。
相談支援専門員に「送迎がある事業所」を紹介してもらうこともできます。
通所距離と事業所の質のバランス
「家から近い事業所」と「自分に合った良い事業所」が一致するとは限りません。バランスの取り方を考えましょう。
パターン1:近くて良い事業所
最高のパターン 家から近く、かつ自分に合った良い事業所が見つかれば、最高です。
迷わず、そこを選びましょう。
パターン2:近いけれど合わない事業所
難しい選択 家から近いけれど、作業内容や雰囲気が自分に合わない場合、どうするか。
選択肢A:近さを優先して利用する
継続を優先 多少合わなくても、「近い」ことを優先して利用する選択です。
- 継続しやすい
- 体力的・経済的負担が少ない
- ただし、満足度は低いかもしれない
選択肢B:合わないので、遠くても他を探す
質を優先 近いけれど合わないので、多少遠くても自分に合った事業所を探す選択です。
- 満足度は高い
- ただし、継続できるかが不安
おすすめ:一度体験してから決める
実際に確かめる 「合わない」と最初から決めつけず、一度体験利用してみましょう。
実際に通ってみると、「思ったより良かった」「近いから続けられそう」と感じることもあります。
パターン3:遠いけれど良い事業所
難しい選択 遠いけれど、自分に非常に合った良い事業所が見つかった場合。
検討ポイント
- どれくらい遠いか(片道30分以内なら検討の余地あり、1時間以上なら厳しい)
- 送迎サービスはあるか
- 週何日通うか(週1〜2日なら遠くても頑張れる、週5日は厳しい)
- 自分の体力・精神状態で続けられるか
段階的アプローチ
最初は無理をして、徐々に近くへ
- 最初は遠い良い事業所で利用開始
- 生活リズムが整い、体調が安定してきたら
- 近くの事業所への転所を検討
という段階的なアプローチもあります。
パターン4:近い事業所も遠い事業所も合わない
根気よく探す 複数の事業所を見学・体験して、自分に合った事業所を根気よく探しましょう。
相談支援専門員に相談して、サポートを受けることも重要です。
最も重要なのは「継続できるか」
長く続けられることが最優先 どんなに素晴らしい事業所でも、遠すぎて続けられなければ意味がありません。
「近さ」と「質」のバランスを取りながら、「長く続けられる」事業所を選びましょう。
よくある質問
Q1: 徒歩で何分くらいなら「近い」と言えますか?
A: 徒歩10〜20分以内 個人差がありますが、一般的には徒歩10〜20分以内が「近い」と言える範囲です。
Q2: 自分の市区町村以外のB型事業所も利用できますか?
A: 基本的に利用できます 住んでいる場所に関係なく、どの市区町村の事業所も利用できます。ただし、一部の事業所は地域限定の場合もあるので、確認しましょう。
Q3: 近くに事業所がない場合、新しく作ってもらえますか?
A: 個人が要望しても難しい 個人が要望して新しい事業所を作ってもらうことは、現実的には困難です。ただし、地域に事業所が少ないことを市区町村に伝えることで、将来的な開設につながる可能性はあります。
Q4: 送迎サービスは誰でも利用できますか?
A: 事業所による 送迎サービスがある事業所でも、利用条件(送迎ルート内、定員など)があります。確認しましょう。
Q5: 車で通ってもいいですか?
A: 事業所による 駐車場がある事業所なら、車で通えます。見学時に確認しましょう。
Q6: 近い事業所が定員いっぱいでした。どうすればいいですか?
A: 空き待ちリストに登録 空き待ちリストに登録して、空きが出るのを待ちましょう。その間、一時的に他の事業所やサービスを利用することもできます。
Q7: バスや電車の定期券は割引がありますか?
A: 障害者割引があります 障害者手帳を持っている方は、バスや電車の運賃が割引になります(通常5割引)。定期券も割引対象です。
Q8: 通所距離が遠いことを理由に、利用を断られることはありますか?
A: 基本的にありません 通所距離が遠いことを理由に利用を断られることは、基本的にありません。ただし、送迎サービスが範囲外の場合、送迎は利用できません。
Q9: 「近い」を最優先にすると、他の条件を妥協することになりませんか?
A: バランスが大切 近さだけを優先しすぎると、他の条件(作業内容、雰囲気など)で妥協することになります。しかし、継続するためには近さも非常に重要です。バランスを取りましょう。
Q10: 一度遠い事業所を選んでも、後から近い事業所に変更できますか?
A: 変更できます B型事業所は、いつでも変更できます。最初は遠い事業所で利用開始し、後から近い事業所に転所することも可能です。
まとめ:近さは継続の鍵、でもバランスも大切
通所距離は、体力的負担、精神的負担、経済的負担の軽減、天候の影響を受けにくい、柔軟性が高い、緊急時の対応、地域とのつながり、そして何より継続しやすさという点で、非常に重要です。
「近い」の理想的な基準は、徒歩10〜20分以内または自転車10〜15分以内で、許容範囲はバス・電車で30分以内、片道1時間以上は継続が困難です。ただし、個人の体力や状況によって基準は異なります。
家から近い事業所を探すには、市区町村の窓口で一覧をもらう、インターネット(Google マップ、WAM NET)で検索する、相談支援専門員に紹介してもらう、実際に歩いて探す、地域情報をチェックするなどの方法があります。
近くに事業所がない場合は、隣の市区町村も検討し、送迎サービスがある事業所を探し、オンライン・在宅型を検討し、他のサービスを検討し、新規開設情報を集め、「近い」の基準を見直すことが有効です。
送迎サービスを活用すれば、遠い事業所でも通所の負担が大幅に軽減されます。送迎の有無、ルート、時間、費用を確認しましょう。
通所距離と事業所の質のバランスが重要で、最も大切なのは「長く続けられるか」です。近くて良い事業所が最高ですが、近いけれど合わない、遠いけれど良いという場合は、体験してから決め、段階的アプローチも検討し、継続できるかを最優先に考えましょう。
家から近い事業所を見つけることは、B型利用の成功に大きく貢献します。時間をかけて、自宅周辺の事業所をしっかり調べ、見学・体験し、自分に合った「近い」事業所を見つけてください。近いからこそ、無理なく、長く続けられます。応援しています。

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