はじめに:外出困難という深刻な障壁
就労継続支援B型事業所の利用を検討している方、あるいはすでに利用している方の中には、「外出すること自体が困難」という深刻な問題を抱えている方が少なくありません。「家から一歩も出られない」「玄関までは行けるが、外には出られない」「外出すると強い不安やパニックに襲われる」「人目が怖くて外を歩けない」「電車やバスに乗れない」など、外出困難の症状は様々です。
外出困難は、単なる「怠け」や「甘え」ではなく、社交不安障害、広場恐怖症、パニック障害、うつ病、統合失調症、PTSD、発達障害(特に感覚過敏)、慢性疲労症候群、線維筋痛症など、様々な疾患や障害の症状として現れます。本人は「B型に通いたい」「社会復帰したい」という強い思いがあっても、外出という最初のハードルを越えられず、利用を諦めてしまうケースも多いです。
また、長期間の引きこもりによって、外出への恐怖や不安がさらに強まり、「もう一生外に出られないのではないか」という絶望感を抱いている方もいます。家族からは「外に出なさい」「働きなさい」とプレッシャーをかけられ、自分でも「外に出なければ」と焦るものの、体が動かない、足がすくむ、という状態に苦しんでいます。
しかし、外出が困難でも、B型事業所を利用する方法はあります。送迎サービスの活用、スモールステップでの段階的な外出練習、訪問型の支援、在宅型のB型事業所、他のサービスとの併用など、様々なアプローチがあります。また、外出困難であることを事業所に正直に伝えることで、個別の配慮やサポートを受けることもできます。
本記事では、外出困難の原因と種類、外出困難でもB型を利用する方法、段階的な外出練習、送迎サービスの活用、在宅型・訪問型の選択肢、事業所への伝え方、そして外出困難を改善するためのサポートについて、詳しく解説していきます。外出が困難で悩んでいる方、B型利用を諦めかけている方、ご家族や支援者の方々にとって、実践的な情報となれば幸いです。
外出困難の原因と種類
まず、なぜ外出が困難なのか、その原因と種類を理解しましょう。
1. 精神障害による外出困難
社交不安障害(対人恐怖症)
人の目が怖い
- 他人の視線が怖い
- 人に見られていると感じると、動けなくなる
- 「変に思われているのではないか」という強い不安
- 人混みが特に苦手
広場恐怖症
開けた場所、閉じた場所が怖い
- 広い場所(広場、駅前、大通りなど)で不安やパニックになる
- 閉じた場所(電車、バス、エレベーターなど)で不安やパニックになる
- 「逃げ場がない」と感じる場所が怖い
パニック障害
突然の強い不安
- 外出中に突然、動悸、息苦しさ、めまい、恐怖感に襲われる
- 「また発作が起きるのではないか」という予期不安
- 発作が起きたことがある場所を避ける
うつ病
気力がない、外出が億劫
- 何もする気力がない
- 外出する意欲がわかない
- 体が重く、動けない
- 「外に出ても意味がない」という無力感
統合失調症
被害妄想、幻覚
- 「誰かに監視されている」という被害妄想
- 「悪口を言われている」という幻聴
- 外に出ると症状が悪化する不安
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
トラウマの再体験
- 過去のトラウマ(事故、暴力、いじめなど)が起きた場所を避ける
- 外出するとフラッシュバックが起こる
- トラウマを思い出す場所に行けない
2. 発達障害による外出困難
感覚過敏(ASD、ADHD)
刺激が苦痛
- 光、音、匂い、触覚などの刺激が苦痛
- 人混みの雑音が耐えられない
- 太陽の光がまぶしすぎる
- 電車の揺れや騒音が苦痛
予測不可能への不安(ASD)
予定外が苦手
- いつもと違うルートを通ると混乱する
- 予期しない出来事(電車の遅延、道路工事など)に対応できない
- 外出は予測不可能なことが多く、不安
注意欠如(ADHD)
迷子になる、忘れ物
- 道に迷いやすい
- 目的地にたどり着けない
- 忘れ物が多く、外出が不安
3. 身体的な問題による外出困難
慢性疲労症候群
極度の疲労
- 少し動くだけで極度に疲れる
- 外出すると何日も寝込む
- 体力が全くない
線維筋痛症
全身の痛み
- 全身に痛みがあり、動けない
- 歩くことが苦痛
- 外出すると痛みが悪化する
めまい、ふらつき
転倒の恐怖
- めまいやふらつきがあり、外を歩くのが危険
- 転倒する恐怖
視覚障害、聴覚障害
移動の困難
- 一人で外出することが物理的に困難
- 介助者が必要
4. 長期間の引きこもりによる外出困難
外出習慣の喪失
体が慣れていない
- 長期間外に出ていないため、外出する体力・気力がない
- 外の刺激に慣れていない
予期不安の増大
「できない」という思い込み
- 「もう外に出られないのではないか」という不安
- 「外に出たら何か悪いことが起こる」という恐怖
5. 季節や天候による外出困難
冬季うつ
冬になると症状悪化
- 冬になると気分が落ち込み、外出できなくなる
天候への敏感さ
雨、暑さ、寒さが苦手
- 雨の日は外出できない
- 猛暑、厳冬は外出が苦痛
外出困難でもB型を利用する方法
外出が困難でも、B型事業所を利用する方法を紹介します。
1. 送迎サービスを活用する
最も有効な方法 多くのB型事業所では、送迎サービスを提供しています。
送迎のメリット
- 玄関まで来てくれる
- 自宅の玄関(または近くの集合場所)まで車が来てくれる
- 一人で外を歩く距離が最小限
- 人混みを避けられる
- 電車やバスに乗る必要がない
- 人混みの中を歩く必要がない
- 安全
- 車の中なので、外の刺激から守られる
- スタッフが運転するので、安心
- 天候の影響を受けにくい
- 雨でも雪でも、車なので影響が少ない
送迎の確認
見学や問い合わせの際に、以下を確認しましょう。
- 送迎サービスはあるか
- 自宅は送迎ルートに含まれるか
- 玄関まで来てくれるか、それとも集合場所までか
- 送迎の費用
2. 在宅型・訪問型のB型を利用する
自宅で作業できる 一部のB型事業所では、在宅での作業や訪問型の支援を提供しています。
在宅型B型
- 自宅で作業を行う
- 週1回だけ通所、残りは在宅
- オンラインで指導を受ける
訪問型支援
- スタッフが自宅に訪問して、支援を行う
- 自宅で作業の指導を受ける
ただし、在宅型・訪問型のB型は数が少ないのが現実です。
3. 段階的なアプローチ(スモールステップ)
少しずつ慣れる いきなりフルで通所するのではなく、段階的に外出の距離や時間を増やしていく方法です。
ステップの例
ステップ1:玄関まで
- まずは、玄関まで出る練習
ステップ2:家の前まで
- 玄関を出て、家の前の道路まで
ステップ3:近所を歩く
- 近所を5分、10分歩く練習
ステップ4:事業所の近くまで
- 事業所の近くまで行ってみる(中には入らない)
ステップ5:事業所の見学
- 事業所の中を見学する
ステップ6:短時間の体験
- 1時間だけ体験利用する
ステップ7:午前だけ通所
- 午前中だけ通所する
ステップ8:徐々に時間を延ばす
- 午前+昼食、半日、1日と徐々に延ばす
このように、小さなステップを積み重ねることで、外出への恐怖や不安を少しずつ減らしていきます。
4. 訪問看護との併用
自宅で外出練習 訪問看護サービスを利用して、看護師に自宅に来てもらい、外出練習のサポートを受けることができます。
- 一緒に外を歩く練習
- 外出への不安を相談
- 段階的な目標設定
訪問看護でサポートを受けながら、徐々に外出できる範囲を広げ、最終的にB型への通所につなげます。
5. 家族や支援者と一緒に通所
同行してもらう 最初は家族や相談支援専門員と一緒に通所する方法もあります。
- 家族が一緒に事業所まで付き添う
- 事業所の玄関まで一緒に行く
- 慣れてきたら、徐々に一人で
事業所によっては、家族の同行を認めているところもあります。
6. 他のサービスから始める
段階的に B型の前に、よりハードルの低いサービスから始める方法もあります。
デイケア(精神科)
- 医療機関に併設されていることが多い
- 医師や看護師がいるので安心
- 外出が困難な方への理解がある
- B型より柔軟な対応が可能
地域活動支援センター
- B型より柔軟
- 短時間、少日数からOK
- 外出困難への理解がある
訪問看護
- 自宅に来てくれる
- 外出練習のサポート
これらのサービスで外出に慣れてから、B型への移行を目指します。
7. 薬物療法
医療的サポート 外出困難の原因が精神疾患の場合、主治医に相談して、薬物療法で症状を軽減することも有効です。
- 抗不安薬(頓服として外出前に服用)
- 抗うつ薬
- 抗精神病薬
薬で症状が軽減されれば、外出のハードルが下がります。
8. カウンセリング・認知行動療法
心理的サポート カウンセリングや認知行動療法(CBT)で、外出への不安や恐怖を軽減する方法もあります。
- 不安の原因を探る
- 認知の歪みを修正する
- エクスポージャー療法(段階的に恐怖に晒される)
段階的な外出練習の具体例
外出困難を克服するための、段階的な練習方法を紹介します。
基本原則
焦らない
時間をかける 各ステップに数日、数週間、数ヶ月かかっても大丈夫です。焦らず、自分のペースで進めましょう。
無理をしない
できる範囲で 「できるかもしれない」と思える範囲で挑戦します。「絶対無理」と思うことは、まだやらなくてOKです。
小さな成功を積み重ねる
達成感が重要 小さな成功体験を積み重ねることで、自信がつきます。
失敗しても自分を責めない
後退もあり得る うまくいかない日もあります。それは失敗ではなく、プロセスの一部です。
段階的な練習の例
レベル0:部屋の外に出る
家の中で
- 自分の部屋から出る
- リビングに行く
- 玄関まで行く
レベル1:玄関のドアを開ける
外を見る
- 玄関のドアを開けて、外を見る
- 外の空気を吸う
- ドアは開けたままでOK
レベル2:玄関の外に一歩
敷地内
- 玄関を出て、家の敷地内に一歩踏み出す
- 数秒でも、数分でもOK
- すぐ家に戻ってOK
レベル3:家の前の道路まで
少しずつ遠く
- 家の門を出て、道路まで
- 道路に立つ
- 左右を見る
レベル4:近所を5分歩く
短時間の散歩
- 家の周りを5分だけ歩く
- 一周して帰ってくる
- 時間帯は人が少ない時(早朝、深夜など)でもOK
レベル5:近所を10分、15分、20分と延ばす
少しずつ長く
- 歩く時間を少しずつ延ばす
- 徐々に人がいる時間帯にも挑戦
レベル6:コンビニに行く
目的地を設定
- 近所のコンビニまで行く
- 何か買わなくてもOK、入るだけでもOK
- 買い物ができたら素晴らしい
レベル7:バスや電車に乗る(1駅だけ)
公共交通機関
- バスや電車に乗る練習
- 1駅だけ乗って降りる
- 空いている時間帯を選ぶ
レベル8:事業所の近くまで行く
下見
- 事業所の建物の前まで行ってみる
- 中には入らなくてOK
- 「ここに通うんだ」という実感を得る
レベル9:事業所の見学
短時間の訪問
- 事業所の中を見学する
- 30分〜1時間程度
- スタッフや雰囲気を確認
レベル10:短時間の体験利用
実際に作業
- 1時間だけ体験利用する
- 作業を少しやってみる
レベル11:午前だけ通所
半日通所
- 9時〜12時など、午前中だけ通所
- 週1日から始める
レベル12:徐々に時間と日数を増やす
段階的に増加
- 午前+昼食まで
- 半日
- 1日
- 週2日、週3日と増やす
練習時のコツ
ご褒美を設定
達成したら 「今日外に出られたら、好きなお菓子を食べる」など、ご褒美を設定しましょう。
記録をつける
見える化 カレンダーに、外出できた日を記録しましょう。達成感が得られます。
誰かと一緒に
サポートを受ける 家族、友人、訪問看護師などと一緒に練習すると、心強いです。
安全基地を確認
いつでも帰れる 「いつでも家に帰れる」「途中でやめてもいい」と自分に言い聞かせましょう。
事業所への伝え方
外出困難であることを、事業所にどう伝えればよいでしょうか。
正直に伝える
隠さない 「外出が困難です」「人混みが苦手です」「パニック障害があります」と正直に伝えましょう。
隠すと、後で困ります。正直に伝えることで、事業所も適切なサポートを提供できます。
具体的に伝える
どう困難か
- 何が苦手か(人混み、電車、バス、外の刺激など)
- どんな症状が出るか(パニック、動悸、過呼吸、フラッシュバックなど)
- どのような配慮が必要か(送迎、短時間から、静かな場所など)
診断書や意見書を活用
医師の見解 主治医に診断書や意見書を書いてもらい、外出困難の状態や必要な配慮を記載してもらいましょう。
事業所もより理解しやすくなります。
段階的なアプローチを提案
最初は少しずつ 「最初は週1日、1時間だけから始めたいです」 「送迎を利用したいです」 「家族と一緒に通いたいです」
など、段階的なアプローチを提案しましょう。
質問する
事業所の対応を確認
- 「外出が困難な方への配慮はありますか」
- 「送迎サービスはありますか」
- 「短時間、少日数からの利用は可能ですか」
過去の成功体験を伝える
できることもある 「以前は外出できなかったけれど、訪問看護のサポートで少しずつ外出できるようになりました」
など、過去の成功体験があれば伝えましょう。希望が見えます。
外出困難を改善するためのサポート
外出困難を改善するために、どのようなサポートが受けられるでしょうか。
1. 主治医に相談
医療的サポート
- 薬物療法(抗不安薬、抗うつ薬など)
- 薬の調整
- 診断書の作成
2. 訪問看護
自宅で支援
- 看護師が自宅に来て、外出練習をサポート
- 一緒に外を歩く
- 不安への対処法を教えてくれる
3. カウンセリング・心理療法
心理的サポート
- 認知行動療法(CBT)
- エクスポージャー療法
- マインドフルネス
4. 相談支援専門員
総合的なサポート
- B型事業所探しのサポート
- 事業所への同行
- 関係機関との調整
5. 家族のサポート
身近なサポート
- 一緒に外出する
- 応援する
- 無理にプレッシャーをかけない
6. ピアサポート
同じ経験を持つ人 当事者会などで、同じように外出困難を経験した人の話を聞くことで、希望が見えます。
7. デイケア
段階的な外出練習の場 精神科デイケアでは、外出が困難な方への支援プログラムがあることも多いです。
8. 自助グループ
オンラインでつながる 外出が困難でも、オンラインの自助グループに参加して、同じ悩みを持つ人とつながることができます。
よくある質問
Q1: 外出が困難だと、B型を利用できませんか?
A: 利用できます 送迎サービス、段階的なアプローチ、在宅型など、様々な方法があります。
Q2: 送迎サービスは、すべてのB型事業所にありますか?
A: すべてではありません 多くの事業所にはありますが、すべてではありません。見学時に確認しましょう。
Q3: 在宅型のB型事業所は、どう探せばいいですか?
A: 相談支援専門員に相談 在宅型のB型は数が少ないので、相談支援専門員に探してもらうのが確実です。
Q4: 外出困難を理由に、利用を断られることはありますか?
A: 基本的にありません B型は多様な方を受け入れることが目的なので、外出困難を理由に断られることは基本的にありません。ただし、送迎の範囲外などの理由で難しいこともあります。
Q5: 外出困難は治りますか?
A: 改善する可能性はあります 治療、訓練、サポートによって、外出困難は改善する可能性があります。ただし、完全に「治る」とは限らず、「うまく付き合う」という視点も大切です。
Q6: 家族が「外に出なさい」とプレッシャーをかけてきます
A: 家族に理解してもらう 外出困難は病気や障害の症状であり、意志の問題ではないことを家族に理解してもらいましょう。主治医や相談支援専門員に、家族への説明を依頼することもできます。
Q7: 外出練習で、失敗ばかりです
A: 失敗も前進 外に出ようとしたこと自体が、すでに成功です。失敗しても自分を責めず、次に活かしましょう。
Q8: 外出困難でも、将来的に一般就労できますか?
A: 可能性はあります 段階的に外出困難を改善し、B型で経験を積み、A型や就労移行支援を経て、一般就労に至る方もいます。焦らず、一歩ずつ進みましょう。
Q9: 外出困難があることを、事業所に伝えたら、他の利用者に知られますか?
A: プライバシーは守られます 事業所のスタッフには守秘義務があり、あなたの個人情報を他の利用者に話すことはありません。
Q10: 外出困難を「甘え」だと思ってしまいます
A: 病気や障害の症状です 外出困難は、あなたの意志の弱さや甘えではなく、病気や障害の症状です。自分を責める必要はありません。
まとめ:外出困難でも、道はある
外出困難には、社交不安障害、広場恐怖症、パニック障害、うつ病、統合失調症、PTSD、発達障害による感覚過敏、慢性疲労症候群、線維筋痛症、長期間の引きこもりなど、様々な原因があります。これらは「甘え」ではなく、病気や障害の症状です。
外出が困難でも、B型事業所を利用する方法はあります。送迎サービスの活用、在宅型・訪問型のB型、段階的なアプローチ(スモールステップ)、訪問看護との併用、家族や支援者と一緒に通所、他のサービスから始める、薬物療法、カウンセリング・認知行動療法など、様々な選択肢があります。
段階的な外出練習では、焦らず、無理せず、小さな成功を積み重ね、失敗しても自分を責めないことが大切です。玄関に出る→家の前まで→近所を歩く→事業所の近くまで→見学→体験→通所と、小さなステップを踏んでいきましょう。
事業所には、外出困難であることを正直に、具体的に伝え、診断書を活用し、段階的なアプローチを提案し、事業所の対応を確認しましょう。
外出困難を改善するためには、主治医、訪問看護、カウンセリング、相談支援専門員、家族、ピアサポート、デイケアなど、様々なサポートを活用しましょう。
外出が困難でも、諦める必要はありません。あなたに合った方法、あなたのペースで、少しずつ前に進むことができます。一歩ずつ、焦らず、自分を責めず、サポートを受けながら、進んでいきましょう。道は必ずあります。応援しています。

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