はじめに
就労継続支援B型事業所を利用しているものの、「今の事業所が合わない」「他の事業所に変わりたい」「もっと良い事業所があるのではないか」と感じている方がいらっしゃいます。作業内容が合わない、人間関係のトラブル、支援員との相性、工賃の低さ、通所の負担——様々な理由で、事業所の変更を考える方は少なくありません。
結論から言うと、B型事業所は変更できます。一度契約した事業所に永久に縛られることはありません。自分に合わない事業所を無理して続ける必要はなく、より良い事業所に移ることは、むしろ推奨されます。事業所の変更は、利用者の権利です。
しかし、変更には手続きが必要です。受給者証の変更、現在の事業所との契約解除、新しい事業所との契約——これらの手続きを正しく踏む必要があります。また、変更のタイミング、理由の伝え方、引き継ぎなど、注意すべき点があります。
本記事では、事業所を変更できる理由、変更の手続き方法、変更時の注意点、スムーズな変更のコツ、そして変更すべきか悩んだ時の判断基準まで、詳しく解説していきます。
B型事業所は変更できるか
結論:変更できます
完全に可能 B型事業所は、変更できます。
利用者の権利: 自分に合った事業所を選ぶことは、利用者の権利です。
制限なし: 変更回数に制限はありません(ただし、頻繁な変更は避けるべきです)。
法律上の位置づけ
契約関係 B型事業所と利用者の関係は、契約関係です。
契約解除: 契約は、双方の合意で解除できます。
強制ではない: 事業所側は、利用者を強制的に引き留めることはできません。
変更が認められる理由
様々な理由 以下のような理由で、事業所の変更が認められます。
1. 作業内容が合わない
- 作業が難しすぎる、簡単すぎる
- 興味のない作業
- 体力的に無理
2. 人間関係のトラブル
- 他の利用者とのトラブル
- 支援員との相性が悪い
- いじめ、ハラスメント
3. 事業所の雰囲気
- 雰囲気が合わない
- 騒がしすぎる、静かすぎる
4. 通所の負担
- 遠すぎる
- 通勤が辛い
5. 工賃が低い
- もっと高い工賃の事業所に移りたい
6. サポート体制
- 支援が不十分
- 自分の障害特性を理解してもらえない
7. 引っ越し
- 転居により、通所できなくなった
8. ステップアップ
- B型からA型、就労移行支援へ移行したい
9. 事業所の問題
- 事業所の運営に問題がある
- 虐待、不正などがあった
10. その他
- 単に別の事業所を試したい
- 新しい環境で再スタートしたい
事業所変更の手続き方法
ステップ1: 相談支援専門員に相談
最初のステップ 事業所を変更したいと思ったら、まず相談支援専門員に相談しましょう。
相談内容:
- なぜ変更したいのか
- どんな事業所を探しているか
- 変更の手続き方法
サポート: 相談支援専門員が、新しい事業所の紹介、手続きのサポートをしてくれます。
ステップ2: 新しい事業所を探す
事業所探し 新しい事業所を探します。
方法:
- 相談支援専門員に紹介してもらう
- 自分で検索する(WAM NET、Googleなど)
- 市区町村の障害福祉課に聞く
複数見学: 複数の事業所を見学し、比較検討しましょう。
ステップ3: 新しい事業所の見学・体験
見学 新しい事業所を見学します。
体験利用: 可能なら、体験利用(数日間、実際に作業を体験)をしましょう。
確認:
- 作業内容
- 雰囲気
- 通所のしやすさ
- 工賃
- サポート体制
ステップ4: 新しい事業所との面談
面談 新しい事業所と面談します。
確認事項:
- 受け入れ可能か
- いつから利用開始できるか
- 必要な手続き
ステップ5: 現在の事業所に退所の意向を伝える
伝えるタイミング 新しい事業所の受け入れが確定してから、現在の事業所に伝えましょう。
伝え方: 支援員に直接伝えるか、書面で伝えます。
例: 「○月末で退所させていただきたいと思います」
理由: 詳しい理由を言う必要はありませんが、聞かれたら簡潔に伝えましょう。
例:
- 「通所が遠いので、近い事業所に移ります」
- 「自分に合った作業がある事業所を見つけました」
- 「家庭の事情で」
ステップ6: 退所手続き
退所届の提出 現在の事業所に、退所届を提出します。
書式: 事業所が用意した書式に記入します。
期限: 通常、退所希望日の1ヶ月前までに提出することが多いですが、事業所によって異なります。
ステップ7: サービス等利用計画の変更
計画変更 相談支援専門員に、サービス等利用計画を変更してもらいます。
内容:
- 利用事業所の変更
- 新しい事業所名
- 利用開始日
ステップ8: 受給者証の変更(必要な場合)
受給者証の記載変更 受給者証に事業所名が記載されている場合、変更が必要です。
手続き: 市区町村の障害福祉課で手続きします。
自治体による違い: 自治体によっては、受給者証の変更が不要な場合もあります。相談支援専門員に確認しましょう。
ステップ9: 現在の事業所を退所
最終出勤日 現在の事業所の最終出勤日に、挨拶をして退所します。
返却物: ロッカーの鍵、貸与品などがあれば、返却します。
工賃: 未払いの工賃があれば、受け取ります。
ステップ10: 新しい事業所と契約
契約手続き 新しい事業所と利用契約を結びます。
必要書類:
- 受給者証
- 印鑑
- その他、事業所が指定する書類
重要事項説明: 重要事項説明を受け、契約書にサインします。
ステップ11: 新しい事業所で利用開始
利用開始 新しい事業所での利用を開始します。
オリエンテーション: 最初に、事業所のルール、作業内容などのオリエンテーションがあります。
変更にかかる期間
標準的な期間
1〜2ヶ月 事業所の変更には、通常1〜2ヶ月程度かかります。
内訳:
- 新しい事業所探し・見学:2〜3週間
- 体験利用:1週間〜2週間
- 面談・受け入れ決定:1週間
- 現在の事業所への通知:1ヶ月前
- 手続き:1〜2週間
早める方法
同時並行 以下を同時並行で進めることで、期間を短縮できます。
方法:
- 新しい事業所を探しながら、現在の事業所にも(受け入れ先が決まったら)退所を伝える
- 相談支援専門員に早めに相談する
- 見学・体験を効率的に行う
最短: 最短で2〜3週間程度での変更も可能ですが、焦らず、じっくり選ぶことをお勧めします。
遅れる要因
以下の要因で、変更が遅れることがあります:
- 新しい事業所が満員で空き待ち
- 体験利用の日程調整が難しい
- 現在の事業所が引き留める
- 手続きに時間がかかる
変更時の注意点
注意点1: 新しい事業所を決めてから退所を伝える
順番が重要 必ず、新しい事業所の受け入れが確定してから、現在の事業所に退所を伝えましょう。
理由: 先に退所を伝えてしまうと、新しい事業所が見つからなかった場合、行き場がなくなります。
注意点2: 退所の予告期間
1ヶ月前が一般的 退所の意向は、通常1ヶ月前までに伝えることが求められます。
確認: 事業所の利用契約書を確認し、予告期間を確認しましょう。
理由: 事業所側も、人員配置などの調整が必要です。
注意点3: 理由の伝え方
詳しく言う必要はない 退所理由を詳しく言う必要はありません。
簡潔に: 「他の事業所に移ります」「家庭の事情で」程度で十分です。
避けるべき: 「この事業所が嫌だから」「支援員が悪いから」など、批判的な理由は避けましょう。
ただし: 虐待、ハラスメントなど、深刻な問題がある場合は、相談支援専門員や市区町村に相談しましょう。
注意点4: 円満退所を心がける
関係を壊さない 可能な限り、円満に退所しましょう。
理由:
- 将来、また戻る可能性もある
- 福祉の世界は狭く、悪評が広まることもある
- 支援員も人間、悪い印象を残さない方が良い
態度: 感謝の気持ちを伝え、丁寧に対応しましょう。
注意点5: 工賃の清算
未払い工賃 未払いの工賃があれば、必ず受け取りましょう。
確認: 最終出勤日に、工賃の清算を確認しましょう。
注意点6: 返却物
借りたものは返す ロッカーの鍵、作業着、貸与品などがあれば、必ず返却しましょう。
注意点7: 情報の引き継ぎ
相談支援専門員経由 必要に応じて、相談支援専門員を通じて、新しい事業所に情報を引き継いでもらいましょう。
引き継ぎ内容:
- 障害の特性
- 配慮してほしいこと
- これまでの利用状況
注意点8: 焦らない
じっくり選ぶ 新しい事業所選びを焦らないようにしましょう。
理由: 焦って選ぶと、また合わない事業所を選んでしまう可能性があります。
注意点9: 体験利用を必ずする
実際に体験 新しい事業所は、必ず体験利用をしてから決めましょう。
理由: 見学だけでは分からないことが、体験で分かります。
注意点10: 変更を繰り返さない
慎重に選ぶ 事業所の変更を何度も繰り返すのは避けましょう。
理由:
- 頻繁な変更は、安定した利用につながらない
- 事業所側からの印象も悪くなる
- 手続きの負担も大きい
目安: 少なくとも3〜6ヶ月は、一つの事業所を試してから判断しましょう。
スムーズな変更のコツ
コツ1: 相談支援専門員を活用
最重要 相談支援専門員を最大限活用しましょう。
サポート:
- 新しい事業所の紹介
- 見学のアレンジ
- 手続きのサポート
- 現在の事業所との調整
コツ2: 明確な理由を持つ
なぜ変更したいか 変更したい理由を明確にしましょう。
理由: 明確な理由があると、新しい事業所選びがスムーズになります。
例:
- 「パソコン作業がしたい」
- 「家から近い事業所がいい」
- 「静かな環境がいい」
コツ3: 複数の事業所を見学
比較検討 複数の事業所を見学し、比較検討しましょう。
目安: 最低3つ、できれば5つ程度見学することをお勧めします。
コツ4: 体験利用は必須
必ず体験 見学だけでなく、必ず体験利用をしましょう。
期間: 1週間程度の体験が理想です。
コツ5: タイミングを見計らう
区切りの良い時期 月末、年度末など、区切りの良い時期に変更すると、スムーズです。
理由: 工賃の計算、契約の区切りなどが分かりやすいです。
コツ6: 書類を整理
必要書類 受給者証、印鑑など、必要な書類を事前に整理しておきましょう。
コツ7: 感謝の気持ち
お礼を言う 現在の事業所を退所する際、支援員にお礼を言いましょう。
言葉: 「お世話になりました」「ありがとうございました」
コツ8: 新しい事業所での目標設定
前向きに 新しい事業所では、前向きな目標を設定しましょう。
例:
- 「週4日通所する」
- 「新しいスキルを身につける」
- 「人間関係を良好に保つ」
コツ9: 焦らず、段階的に
慌てない 変更を焦らず、段階的に進めましょう。
ステップ:
- 相談支援専門員に相談
- 事業所探し
- 見学
- 体験利用
- 決定
- 退所手続き
- 新しい事業所で開始
コツ10: 失敗を恐れない
やり直せる もし新しい事業所も合わなければ、また変更できます。
経験: 変更は、失敗ではなく、経験です。
変更すべきか悩んだ時の判断基準
変更すべきサイン
以下のような場合、変更を検討すべきです:
1. 心身の健康を害している
- ストレスで体調を崩している
- 不眠、食欲不振
- うつ症状の悪化
→ 最優先で変更を検討
2. いじめ、ハラスメント
- 他の利用者からのいじめ
- 支援員からのハラスメント
- 無視、嫌がらせ
→ すぐに変更すべき
3. 3ヶ月以上改善されない
- 問題を相談したが、3ヶ月以上改善されない
- 我慢し続けている
→ 変更を検討
4. 通所が苦痛
- 毎日「行きたくない」と思う
- 通所するだけで疲れ果てる
→ 変更を検討
5. 明らかなミスマッチ
- 作業内容が全く合わない
- 雰囲気が全く合わない
→ 変更を検討
もう少し続けてみるべきサイン
以下のような場合、もう少し続けてみることを検討:
1. 通い始めて間もない
- まだ1ヶ月未満
- 慣れていないだけかもしれない
→ あと2ヶ月は様子を見る
2. 小さな不満
- 致命的な問題ではない
- 我慢できる範囲
→ まず相談してみる
3. 改善の余地がある
- 支援員に相談すれば改善できそう
- 作業を変えてもらえば解決しそう
→ まず相談してみる
4. 他に選択肢がない
- 地域に他の事業所がない
- すべての事業所が満員
→ 在宅B型など、別の選択肢を探す
判断のための質問
以下の質問に答えてみましょう:
1. この事業所に通うことで、心身の健康が害されていますか? → YES:すぐに変更を検討 → NO:次の質問へ
2. いじめやハラスメントがありますか? → YES:すぐに変更すべき → NO:次の質問へ
3. 支援員に相談しましたか? → NO:まず相談してみる → YES:次の質問へ
4. 相談から3ヶ月経っても改善されませんか? → YES:変更を検討 → NO:もう少し様子を見る
5. 通い始めて何ヶ月ですか? → 1ヶ月未満:もう少し様子を見る → 3ヶ月以上:変更を検討しても良い
6. 他に良い事業所がありそうですか? → YES:変更を検討 → NO:在宅B型など、別の選択肢を探す
よくある質問(FAQ)
Q1: B型事業所は変更できますか?
A: はい、変更できます。一度契約した事業所に永久に縛られることはありません。
Q2: 変更に理由は必要ですか?
A: 詳しい理由を言う必要はありませんが、聞かれたら簡潔に伝えましょう。「通所が遠いので」「自分に合った作業がある事業所を見つけました」など。
Q3: 変更回数に制限はありますか?
A: 法律上の制限はありませんが、頻繁な変更は避けるべきです。少なくとも3〜6ヶ月は一つの事業所を試してから判断しましょう。
Q4: 変更にどれくらい時間がかかりますか?
A: 通常1〜2ヶ月程度かかります。新しい事業所探し、見学、体験、手続きなどが必要です。
Q5: 現在の事業所に何と言って辞めればいいですか?
A: 「○月末で退所させていただきたいと思います」と伝えればOKです。詳しい理由を言う必要はありません。
Q6: 退所を引き留められたら、どうすればいいですか?
A: 丁寧に断りましょう。「決めましたので」と意思を明確に伝えてください。強制的に引き留めることはできません。
Q7: 受給者証の変更手続きは必要ですか?
A: 自治体によって異なります。相談支援専門員に確認しましょう。
Q8: 新しい事業所が決まる前に、現在の事業所を辞めてもいいですか?
A: お勧めしません。新しい事業所の受け入れが確定してから、現在の事業所に退所を伝えましょう。
Q9: 変更したけど、また元の事業所に戻ることはできますか?
A: 可能性はありますが、事業所の空き状況や事業所側の判断によります。円満退所していれば、戻りやすいです。
Q10: 変更を何度も繰り返すと、問題ありますか?
A: 頻繁な変更は、安定した利用につながらず、事業所側の印象も悪くなります。慎重に選び、変更は最小限に留めましょう。
まとめ:変更は権利、でも慎重に
就労継続支援B型事業所は、変更できます。自分に合わない事業所を無理して続ける必要はありません。より良い事業所に移ることは、利用者の権利です。
大切なポイント
- 変更は可能 B型事業所は変更できます。制限はありません。
- 相談支援専門員に相談 まず相談支援専門員に相談しましょう。
- 新しい事業所を決めてから退所を伝える 順番が重要です。先に退所を伝えないように。
- 退所の予告は1ヶ月前 退所の意向は、通常1ヶ月前までに伝えましょう。
- 理由は簡潔に 詳しい理由を言う必要はありません。
- 円満退所を心がける 感謝の気持ちを伝え、丁寧に対応しましょう。
- 複数の事業所を見学 焦らず、じっくり選びましょう。
- 体験利用は必須 見学だけでなく、必ず体験利用をしましょう。
- 変更を繰り返さない 少なくとも3〜6ヶ月は試してから判断しましょう。
- 健康が最優先 心身の健康を害している場合は、すぐに変更を検討しましょう。
あなたへのメッセージ
「今の事業所が合わない」——その気持ちは、とても大切です。
無理をして、合わない事業所に通い続ける必要はありません。ストレスで体調を崩す、毎日「行きたくない」と思う、いじめやハラスメントがある——そんな状況で我慢し続けることは、あなたのためになりません。
B型事業所は、変更できます。それは、あなたの権利です。一度契約したからといって、永久に縛られることはありません。より良い事業所、自分に合った事業所を探すことは、むしろ推奨されます。
ただし、焦らないでください。「今すぐ辞めたい」という気持ちも分かりますが、まず新しい事業所を見つけてから、現在の事業所に退所を伝えましょう。順番を間違えると、行き場がなくなってしまいます。
そして、相談支援専門員を頼ってください。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら、変更を進めましょう。相談支援専門員が、新しい事業所の紹介、手続きのサポート、すべてを助けてくれます。
新しい事業所を選ぶ時は、焦らず、じっくり選んでください。複数の事業所を見学し、体験利用をして、本当に自分に合った事業所を見つけてください。「前の事業所よりマシ」ではなく、「ここなら長く続けられる」と思える事業所を選んでください。
そして、現在の事業所を退所する時は、円満に退所しましょう。たとえ合わなかったとしても、支援員にお礼を言い、丁寧に対応してください。将来、また戻る可能性もあります。悪い印象を残さない方が良いです。
変更は、失敗ではありません。自分に合った環境を探す、大切なプロセスです。もし新しい事業所も合わなければ、また変更できます。何度でもやり直せます。諦めないでください。
あなたが、自分に合った事業所を見つけ、無理なく長く通い続けられることを心から願っています。変更することを恐れないでください。あなたには、より良い環境で働く権利があります。自分を大切にしてください。そして、一歩ずつ、自分に合った道を進んでいきましょう。あなたには、その力があります。

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