「家族の様子がおかしい」「元気がなく心配」「メンタルの不調かもしれない」
家族の精神的な健康について心配している方へ向けて、本記事ではメンタル不調のサイン、家族としてできること、してはいけないこと、専門機関への相談方法、利用できる支援制度について詳しく解説します。
早めの気づきと適切な対応が、回復への大きな助けになります。
メンタル不調のサインに気づく
まず、家族のメンタル不調に気づくための主なサインを知りましょう。
感情面のサイン
気持ちの変化
- 憂うつな様子 表情が暗い、元気がない、涙もろい
- 不安そう 落ち着きがない、心配事を繰り返し話す
- イライラしている 怒りっぽい、些細なことで怒る
- 感情の起伏が激しい 突然泣く、急に怒る
- 無感情 何にも興味を示さない、喜怒哀楽が乏しい
- 死にたいと言う 「消えたい」「死にたい」などの発言
行動面のサイン
普段と違う行動
- 引きこもり 部屋から出てこない、人と会いたがらない
- 外出しなくなった 以前は外出していたのにしなくなった
- 仕事・学校を休みがち 遅刻、早退、欠勤・欠席が増えた
- 身だしなみを気にしない 服装が乱れる、入浴しない、髪を洗わない
- 食事の変化 食べなくなった、または過食
- 睡眠の変化 眠れない、または寝すぎる、昼夜逆転
- 趣味をやめた 好きだったことに興味を失った
- お酒の量が増えた 飲酒量が明らかに増えた
- 危険な行動 リストカット、薬の大量服用など
身体面のサイン
体の不調
- 頭痛、腹痛 繰り返す頭痛や腹痛
- 倦怠感 「だるい」「疲れた」が口癖
- 体重の変化 急激な体重減少または増加
- めまい、動悸
- 原因不明の体調不良 病院に行っても異常が見つからない
思考面のサイン
考え方の変化
- 集中力の低下 本や新聞が読めない、テレビが見られない
- 決断できない 小さなことも決められない
- 自分を責める 「自分はダメだ」「価値がない」と言う
- 否定的な考え 「どうせうまくいかない」と悲観的
- 記憶力の低下 物忘れが増えた
- 妄想的な発言 「監視されている」「狙われている」など
対人関係のサイン
人との関わりの変化
- 家族と話さなくなった
- 友人と会わなくなった
- 電話に出ない、メールを返さない
- 攻撃的になった 家族に暴言、暴力
考えられる精神疾患・状態
メンタル不調には様々な疾患や状態があります。
主な精神疾患
1. うつ病
- 憂うつな気分が2週間以上続く
- 何にも興味が持てない
- 疲れやすい、気力が出ない
- 眠れない、または寝すぎる
- 食欲がない、または過食
- 自分を責める
- 死にたいと思う
2. 不安障害
- 過度な不安や心配
- パニック発作(突然の動悸、息苦しさ、めまい)
- 特定の状況への恐怖(社交不安、広場恐怖など)
- 強迫観念、強迫行為
3. 双極性障害(躁うつ病)
- うつ状態と躁状態(異常に元気、多弁、浪費など)を繰り返す
4. 統合失調症
- 幻覚(幻聴など)
- 妄想
- まとまりのない話し方
- 感情の平板化
5. 適応障害
- ストレスの原因がはっきりしている
- そのストレスに対して過剰な反応
- 抑うつ、不安、行動の問題
6. パニック障害
- 予期しないパニック発作
- また起こるのではという不安
7. 摂食障害
- 拒食症(食べない、極端な体重減少)
- 過食症(過食と嘔吐を繰り返す)
8. PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- トラウマ体験の後
- フラッシュバック、悪夢
- 回避行動、過覚醒
9. 発達障害(大人になってから気づく場合)
- ADHD、自閉スペクトラム症など
- 社会生活での困難が表面化
その他の状態
燃え尽き症候群(バーンアウト)
- 過度な仕事や責任による疲弊
- 意欲の低下、疲労感
更年期障害
- ホルモンバランスの変化
- 抑うつ、不安、イライラ
家族としてできること
家族の方ができる具体的な対応を紹介します。
1. 話を聴く
傾聴が最も大切
- 批判しない 「そんなことで」「気のせいだ」と否定しない
- アドバイスを急がない すぐに解決策を提示しようとしない
- 共感する 「辛いんだね」「大変だったね」と気持ちに寄り添う
- 遮らない 最後まで話を聴く
- 質問する 「どんな感じ?」「いつから?」と優しく聞く
2. 変化に気づいたことを優しく伝える
心配していることを伝える
「最近、元気がないみたいだけど、大丈夫?」 「心配しているんだけど、何か困っていることある?」 「最近、よく眠れてる?」
- 責めない 「なんでそんなに元気ないの」は避ける
- 優しく 攻撃的でなく、心配する気持ちを伝える
3. 無理をさせない
休息を促す
- 「無理しないで」「休んでいいよ」と伝える
- 仕事や学校を休むことを勧める
- 家事などの負担を減らす
4. 一緒に過ごす時間を持つ
孤立させない
- 食事を一緒に取る
- 散歩に誘う(無理強いはしない)
- テレビを一緒に見る
- 軽い会話をする
5. 受診を勧める
専門家につなげる
「一度、お医者さんに相談してみない?」 「心療内科に一緒に行こうか?」
- 強制しない 「絶対に行け」ではなく、提案する
- 一緒に行く 「一緒に行くから」と安心させる
- 情報提供 近くのクリニックを調べて提示
6. 危険なサインには即座に対応
緊急性が高い場合
以下のサインがあれば、すぐに専門機関に相談、または救急受診を
- 自殺をほのめかす発言
- 自傷行為
- 暴力行為
- 幻覚や妄想が激しい
- 意識がもうろうとしている
- 薬物の過剰摂取
対応
- 精神科救急(後述)
- 救急車を呼ぶ(119番)
- 警察(110番)※暴力の危険がある場合
7. 自分自身のケアも忘れずに
介護者・支援者も休む
- 一人で抱え込まない
- 自分の時間を持つ
- 他の家族や友人に相談
- 専門家に相談
家族自身が疲弊すると、本人を支えられません。
家族がしてはいけないこと
良かれと思ってやっていることが、逆効果になることもあります。
1. 否定する、軽視する
本人の気持ちを否定しない
「そんなことで悩むな」 「気のせいだ」 「甘えている」 「みんな辛いんだ」
こうした言葉は、本人をさらに追い詰めます。
2. 励ます
「頑張れ」は禁句
うつ病などの場合、「頑張れ」「元気出して」という励ましは逆効果です。本人は既に頑張っており、これ以上頑張れないからメンタル不調になっています。
3. 原因を追及する
責めない
「何が原因なの?」 「なんでそうなったの?」
原因追及は本人を責める形になりがちです。まずは気持ちに寄り添うことが大切。
4. 無理やり連れ出す
本人の意思を尊重
無理やり外出させたり、活動させたりすることは、逆効果になることが多いです。
5. 放置する
「そのうち治る」と放置しない
メンタル不調は放置すると悪化することがあります。早めに専門家に相談しましょう。
6. 自己判断で薬をやめさせる
医師の指示に従う
「薬なんか飲まなくていい」と自己判断で薬をやめさせるのは危険です。医師の指示に従いましょう。
相談できる専門機関
家族の方が相談できる機関を紹介します。
1. 心療内科・精神科クリニック
最も基本的な相談先
内容
- 診察、診断
- 薬物療法
- カウンセリング(施設による)
探し方
- 「心療内科 ○○市」で検索
- かかりつけ医に紹介してもらう
ポイント
- 本人が行きたがらない場合、家族だけでも相談可能なクリニックもある
- 初診は予約が必要なことが多い
2. 精神保健福祉センター
都道府県・政令指定都市に設置
内容
- 心の健康に関する相談
- 電話相談、来所相談
- 家族相談
- 医療機関の紹介
問い合わせ
- 「○○県 精神保健福祉センター」で検索
- 電話番号を調べて電話
3. 保健所・保健センター
市区町村の相談窓口
内容
- 心の健康相談
- 精神科医、保健師による相談
- 訪問支援
- 医療機関の紹介
問い合わせ
- 市区町村の保健所・保健センター
4. いのちの電話・こころの健康相談統一ダイヤル
電話相談
内容
- 24時間対応の電話相談(団体による)
- 専門の相談員が対応
電話番号
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間・無料)
- いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)
5. 地域包括支援センター
高齢者の場合
内容
- 65歳以上の方の総合相談
- 介護、医療、福祉の相談
- 認知症の相談
問い合わせ
- 「地域包括支援センター ○○市」で検索
6. 職場の産業医・相談窓口
職場のストレスの場合
内容
- 産業医への相談
- 人事部、健康管理部門への相談
- EAP(従業員支援プログラム)
7. 学校のカウンセラー
学生の場合
内容
- スクールカウンセラー
- 保健室の先生
- 学生相談室(大学)
8. 民間カウンセリング
カウンセリング専門機関
内容
- 臨床心理士、公認心理師によるカウンセリング
費用
- 自費(1回5,000〜10,000円程度)
9. 自助グループ・家族会
同じ悩みを持つ人同士
内容
- 経験の共有
- 情報交換
- 孤立感の軽減
探し方
- 「うつ病 家族会 ○○県」で検索
- 精神保健福祉センターで紹介
10. 救急時の相談
緊急性が高い場合
- #7119(救急相談センター) 救急車を呼ぶべきか相談
- 精神科救急医療情報センター 都道府県により異なる(「○○県 精神科救急」で検索)
- 119番 救急車
- 110番 警察(暴力の危険がある場合)
受診を促すコツ
本人が受診を嫌がる場合の対応方法です。
1. タイミングを見計らう
比較的落ち着いている時に
- 調子が悪い時ではなく、少し落ち着いている時に話す
- 焦らず、何度かに分けて話す
2. 「心配している」と伝える
責めない、批判しない
「あなたが心配なんだ」 「最近、辛そうだから、力になりたい」
3. 「体の不調」から入る
精神科への抵抗が強い場合
「眠れないって辛いよね。一度、睡眠のことで相談してみない?」 「頭痛がひどいなら、心療内科で相談できるよ」
心療内科は、体の不調も診てくれます。
4. 「一緒に行く」と提案
一人ではない安心感
「一緒に行くから」 「付き添うよ」
5. 情報を提供する
クリニックの情報
- 近くのクリニックを調べて見せる
- 口コミを一緒に見る
- 予約の電話を一緒にする
6. 本人が拒否する場合
家族だけでも相談
本人がどうしても行きたがらない場合、家族だけでも精神保健福祉センターや保健所に相談できます。対応のアドバイスをもらえます。
利用できる支援制度
メンタル不調の方が利用できる制度を紹介します。
1. 自立支援医療(精神通院医療)
医療費の軽減
- 精神疾患で通院している場合
- 医療費の自己負担が原則1割に軽減
- 所得に応じて月額上限あり
申請先 市区町村の障害福祉課
2. 精神障害者保健福祉手帳
様々な福祉サービスが受けられる
- 等級 1級、2級、3級
- 税金の控除
- 公共交通機関の割引
- 障害者雇用枠での就労
申請先 市区町村の障害福祉課
3. 障害年金
生活費の支援
- 精神疾患で働けない、または生活に支障がある場合
- 障害基礎年金、障害厚生年金
申請先 年金事務所
4. 傷病手当金
会社員の場合
- 病気で仕事を休んでいる期間の給与補償
- 健康保険から支給
- 最大1年6ヶ月
申請先 勤務先の健康保険組合
5. 生活保護
生活に困窮している場合
- 最低限の生活費を保障
- 医療費も支給
申請先 市区町村の福祉課
6. 就労継続支援(B型・A型)
働くことが難しい場合
- 障害や病気がある方の就労支援
- 自分のペースで作業
- 工賃・給与が出る
申請先 市区町村の障害福祉課
7. 休職・復職支援
職場のプログラム
- 休職制度
- リワークプログラム(復職支援)
相談先 勤務先の人事部、産業医
家族自身のケアも大切
家族を支える側も、ケアが必要です。
家族が疲弊するリスク
共倒れを防ぐ
家族のメンタル不調を支えることは、大きなストレスです。家族自身が疲弊すると、
- 本人を支えられなくなる
- 家族自身も体調を崩す
- 家庭全体が不安定になる
家族ができるセルフケア
1. 一人で抱え込まない
- 配偶者、他の家族と相談
- 友人に話す
- 専門家に相談
2. 自分の時間を持つ
- 趣味の時間
- 友人と会う
- 一人の時間
3. 休息を取る
- 十分な睡眠
- 休日を作る
- レスパイトケア(一時的な預かりサービス)
4. 家族会・自助グループに参加
- 同じ悩みを持つ人と話す
- 孤立感が減る
5. カウンセリングを受ける
- 家族自身がカウンセリング
- 自分の気持ちを整理
「家族だから」に縛られない
専門家の力を借りる
「家族だから何とかしなければ」と思いがちですが、専門家の力を借りることは決して悪いことではありません。むしろ、専門家の支援を受けることが、本人にとっても家族にとっても最善です。
よくある質問(FAQ)
Q1 本人が「何でもない」と言い張ります。どうすればいいですか?
A 無理に受診させようとせず、「心配している」という気持ちを繰り返し伝え、様子を見守りましょう。危険なサイン(自殺をほのめかすなど)があれば、家族だけでも専門機関に相談してください。
Q2 薬を飲みたがりません
A 薬への不安や抵抗感は理解できます。まずは医師に薬の必要性や効果、副作用について詳しく説明してもらいましょう。本人が納得することが大切です。
Q3 いつ治るのでしょうか?
A 回復には個人差があり、数ヶ月〜数年かかることもあります。焦らず、長期的な視点を持ちましょう。適切な治療を続ければ、多くの方が回復します。
Q4 仕事を辞めさせるべきでしょうか?
A まずは休職を検討しましょう。主治医や産業医と相談し、休職か退職かを決めます。焦って退職すると、後で後悔することもあります。
Q5 家族の接し方で治りますか?
A 家族の支えは大切ですが、家族の接し方だけで治るものではありません。専門的な治療が必要です。家族は本人を支え、専門家につなげる役割を担います。
Q6 入院が必要な場合はありますか?
A 自殺の危険が高い、日常生活が送れない、薬物調整が必要、などの場合は入院が検討されます。医師が判断します。
まとめ
家族のメンタルが心配な時、家族としてできることは
- 変化に気づく 感情、行動、身体、思考、対人関係の変化
- 話を聴く 批判せず、共感し、最後まで聴く
- 受診を勧める 優しく、強制せず、一緒に行くことを提案
- 専門機関に相談 精神科、心療内科、精神保健福祉センター、保健所など
- 危険なサインには即座に対応 自殺のほのめかし、自傷行為など
- 家族自身のケアも忘れない 一人で抱え込まず、休息を取る
家族のメンタル不調は、家族だけで解決しようとせず、早めに専門家の力を借りることが最も大切です。
「頑張れ」「気のせいだ」などの言葉は避け、「心配している」「一緒に乗り越えよう」という姿勢で寄り添いましょう。
メンタル不調は適切な治療を受ければ、多くの方が回復します。焦らず、希望を持って、一歩ずつ進んでいきましょう。
あなたと、あなたの大切な家族が、少しでも楽になれますように。

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