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失語症は、脳の言語中枢が損傷されることにより、話す、聞いて理解する、読む、書くといった言語機能に障害が生じる状態です。脳卒中(脳梗塞、脳出血)、頭部外傷、脳腫瘍などが原因で発症します。
知能や意識は保たれているのに、言葉が出てこない、相手の言うことが理解できない、文字が読めないなど、コミュニケーションに深刻な困難が生じます。本人も家族も大きな苦痛と不安を感じます。
しかし適切なリハビリテーションにより、多くの場合改善が期待できます。早期からの言語療法が重要です。この記事では失語症の症状、原因、種類、診断、リハビリテーション、生活支援について詳しく解説します。
失語症とは
定義
失語症とは、脳の言語中枢(主に左半球)の損傷により、話す、聞いて理解する、読む、書くという言語機能が障害される状態です。後天的に言語能力を失うまたは低下する症状です。
言語機能とは
失語症で障害される可能性がある言語機能は以下の4つです。
話す(発話、表出)
言葉を声に出して話す能力。
聞いて理解する(聴覚的理解)
他人が話す言葉を聞いて意味を理解する能力。
読む(読解)
文字を読んで意味を理解する能力。
書く(書字)
文字を書く能力。
これら4つの機能すべてが障害されることもあれば、一部だけが障害されることもあります。
失語症の特徴
知能は保たれている
失語症では言語機能が障害されますが、基本的な知能や判断力は保たれています。「分かっているのに言葉にできない」「言いたいことがあるのに伝えられない」という状態です。
意識は清明
意識障害ではありません。意識ははっきりしています。
発声器官は正常
舌、口、喉などの発声器官自体に問題はありません(構音障害とは異なる)。
後天的
生まれつきではなく、それまで正常に言語を使えていた人が、脳損傷により言語機能を失います。
有病率
日本には約50万人の失語症患者がいると推定されています。脳卒中患者の約20から30パーセントに失語症が認められます。
好発年齢
脳卒中に伴うことが最も多いため、中高年以降に多く発症します。しかし若年者でも頭部外傷や脳腫瘍などで発症することがあります。
失語症の原因
脳の言語中枢の損傷
失語症は脳の言語中枢が損傷されることで起こります。
言語中枢の位置
ほとんどの人(右利きの約95パーセント、左利きの約70パーセント)では、左半球に言語中枢があります。
主な言語領域
- ブローカ野(ブローカ領域): 左前頭葉。言語の産出(話す)に関与。
- ウェルニッケ野(ウェルニッケ領域): 左側頭葉。言語の理解に関与。
- 弓状束: ブローカ野とウェルニッケ野を結ぶ神経線維。
これらの領域やその周辺、連絡路が損傷されると失語症が起こります。
主な原因疾患
1. 脳卒中(最も多い、約80パーセント)
脳梗塞
脳の血管が詰まり、脳組織が壊死する。中大脳動脈領域の梗塞で失語症が起こりやすい。
脳出血
脳内の血管が破れて出血する。
くも膜下出血
脳の表面の血管が破れて出血する。
2. 頭部外傷
交通事故、転落、暴力などによる脳損傷。若年者に多い原因。
3. 脳腫瘍
言語領域に発生した腫瘍、または腫瘍による圧迫。
4. 脳炎・脳症
ウイルスや細菌による脳の炎症。ヘルペス脳炎など。
5. 脳手術
脳腫瘍やてんかんの手術により言語領域が影響を受ける。
6. 変性疾患
原発性進行性失語症(PPA)など、徐々に進行する失語症。アルツハイマー病などの認知症でも言語障害が出るが、失語症とは区別される。
失語症の症状
失語症の症状は多様で、損傷部位や程度により異なります。
話す(発話)の障害
1. 流暢性の障害
非流暢(ブローカ失語など)
- 言葉が出にくい、つっかえる
- 一語一語区切って話す
- 発話量が少ない
- 努力して話している様子
- 文法が崩れる(助詞が抜ける、「てにをは」がおかしい)
流暢(ウェルニッケ失語など)
- 流れるように話す
- 発話量は多い
- しかし意味が通じない
- 言い間違いが多い
2. 喚語困難(語想起障害)
言いたい言葉が出てこない。物の名前が言えない。「あれ」「それ」と代名詞ばかり使う。「先が…丸くて…食べる…」のように迂回的に説明する。最も一般的な症状。
3. 錯語(言い間違い)
音韻性錯語
音の入れ替わり、置き換わり。例: 「りんご」→「りんぼ」「えんぴつ」→「えんひつ」
語性錯語(意味性錯語)
意味的に関連した別の言葉に置き換わる。例: 「りんご」→「みかん」「時計」→「カレンダー」
新造語(ジャルゴン)
存在しない言葉を作る。例: 「りんご」→「あみぼ」
4. 保続
前に言った言葉や音を繰り返してしまう。
5. 復唱の障害
他人が言った言葉を繰り返すことが困難。
6. 呼称の障害
物の名前を言うことが困難(喚語困難と関連)。
聞いて理解する(聴覚的理解)の障害
簡単な指示が理解できない
「手を挙げてください」「目を閉じてください」などの簡単な指示でも理解困難。
長い文や複雑な文が理解できない
短い単純な文は理解できても、長文や複雑な構文は理解困難。
程度の違い
軽度: 複雑な会話のみ困難
中等度: 日常会話も一部困難
重度: 簡単な単語も理解困難
聞こえている
聴力自体は正常。音は聞こえているが意味が理解できない。
読む(読解)の障害
文字が読めない
文字を見ても意味が分からない。音に出せない。
単語は読めるが文章が理解できない
一語一語は読めても、文全体の意味が把握できない。
程度の違い
軽度: 複雑な文章のみ困難
重度: 自分の名前も読めない
失読
読む能力が特に強く障害された状態。
書く(書字)の障害
文字が書けない
文字を思い出せない、形が書けない。
錯書
間違った文字を書く。
仮名と漢字
仮名は書けるが漢字が書けない、またはその逆など、障害のパターンは様々。
失書
書く能力が特に強く障害された状態。
数字の障害
計算障害
計算ができなくなる。
数の概念の障害
数字の意味が理解できない。
その他の症状
病識の欠如(一部の失語症)
自分の言葉がおかしいことに気づかない。特にウェルニッケ失語で多い。
ジェスチャーの障害
言葉だけでなく、ジェスチャーでの意思疎通も困難なことがある。
感情の変化
言葉が出ないことへの苛立ち、焦り、抑うつ、不安。感情失禁(些細なことで泣いたり笑ったり)。
失語症の分類(タイプ)
失語症にはいくつかのタイプがあります。古典的な分類を紹介します。
1. ブローカ失語(運動性失語)
損傷部位
左前頭葉のブローカ野とその周辺。
主な症状
- 非流暢な発話: 言葉が出にくい、つっかえる、努力して話す
- 電報文様の発話: 助詞が抜ける。「私、病院、行く」のような発話
- 理解は比較的保たれている: 話すことは困難だが、聞いて理解することは比較的良好
- 復唱は障害される
- 読みは比較的保たれる
- 書字は障害される
特徴
本人は言いたいことがあるのに言葉にできず、非常にもどかしい。自分の障害に気づいているため(病識あり)、苛立ちや抑うつが強い。
2. ウェルニッケ失語(感覚性失語)
損傷部位
左側頭葉のウェルニッケ野とその周辺。
主な症状
- 流暢な発話: スムーズに話す、発話量は多い
- しかし意味が通じない: 錯語、新造語が多く、何を言っているか分からない
- 理解が重度に障害: 聞いて理解することが非常に困難
- 復唱は障害される
- 読解は障害される
- 書字は障害される
特徴
自分の言葉がおかしいことに気づかないことが多い(病識欠如)。相手が理解してくれないことに苛立つことがある。
3. 全失語(全般性失語)
損傷部位
広範囲の言語領域。
主な症状
- 話す、聞く、読む、書くすべてが重度に障害
- ほとんど言葉が出ない
- 理解もほとんどできない
- コミュニケーションが非常に困難
特徴
最も重度の失語症。ただし知能は保たれている。
4. 伝導失語
損傷部位
ブローカ野とウェルニッケ野を結ぶ弓状束。
主な症状
- 発話は比較的流暢
- 理解は比較的良好
- しかし復唱が著しく困難: これが最大の特徴
- 音韻性錯語が多い
特徴
自分で話すことも、人の話を理解することもできるのに、復唱だけができない。
5. 健忘失語(失名詞失語)
損傷部位
左側頭葉後部など。
主な症状
- 喚語困難が主症状: 物の名前が言えない
- 発話は比較的流暢だが、言いたい言葉が出てこず詰まる
- 理解は良好
- 復唱は良好
- 読み書きは比較的保たれる
特徴
比較的軽度の失語症。日常会話はできるが、具体的な名詞が出てこない。
6. 超皮質性運動失語
主な症状
- 自発話が少ない、出にくい
- 理解は比較的良好
- 復唱は良好: これが特徴(ブローカ失語と異なる点)
7. 超皮質性感覚失語
主な症状
- 発話は流暢
- 理解が障害
- 復唱は良好: これが特徴(ウェルニッケ失語と異なる点)
その他
混合型
複数のタイプの特徴を併せ持つ。
分類不能型
古典的分類に当てはまらない。
実際の患者では、きれいに分類に当てはまらないことも多く、症状は個人により様々です。
失語症の診断
病歴聴取
発症の経緯、原因疾患、発症からの期間、症状の経過などを聴取します。
神経学的診察
意識状態、運動麻痺、感覚障害、視野障害など他の神経症状を確認します。
言語機能評価
標準失語症検査(SLTA: Standard Language Test of Aphasia)
日本で最も広く使われている失語症の検査バッテリー。
- 聴覚的理解(単語、短文、長文)
- 発話(自発話、復唱、音読、呼称)
- 読解
- 書字
- 計算
各項目を系統的に評価し、失語症のタイプと重症度を判定します。
その他の検査
WAB(ウエスタン失語症バッテリー)、CADL(日常生活におけるコミュニケーション能力検査)など。
画像検査
CT、MRI
脳の損傷部位と範囲を確認します。原因疾患の診断。
脳血流検査(SPECT)
脳の血流状態を評価。
鑑別診断
構音障害
舌、口、喉などの運動障害により発音が不明瞭になる状態。失語症では言語機能自体の障害であり、発声器官は正常。
認知症
認知症でも言語障害が出るが、失語症とは区別されます。認知症では言語以外の認知機能(記憶、判断力など)も広範に障害されます。
聴覚障害
聴力の問題。聴力検査で確認。
意識障害、せん妄
意識レベルの低下。失語症では意識は清明。
緘黙
心因性に話せなくなる状態。
失語症のリハビリテーション
失語症の治療の中心はリハビリテーション、特に言語療法(言語聴覚療法、ST: Speech Therapy)です。
言語療法の原則
早期開始
発症後できるだけ早く(全身状態が安定したら)開始します。急性期から回復期、維持期まで継続します。
個別性
失語症のタイプ、重症度、個人の特性に応じた訓練。
段階的
易しい課題から難しい課題へ段階的に進めます。
反復
繰り返し練習することで神経回路の再編成を促します。
実用的
日常生活で使えるコミュニケーション能力の回復を目指します。
包括的アプローチ
言語機能だけでなく、心理的サポート、家族支援、社会参加支援も含めます。
言語療法の内容
1. 聴覚的理解の訓練
- 単語の理解: 物の名前を聞いて該当する絵や物を選ぶ
- 文の理解: 簡単な指示に従う、文を聞いて該当する絵を選ぶ
- 会話の理解: 質問に答える、会話についていく
2. 発話の訓練
- 呼称訓練: 絵や物を見て名前を言う
- 復唱訓練: 言語聴覚士の言葉を繰り返す
- 音読訓練: 文字を見て声に出して読む
- 自発話の促進: 自由に話す、説明する
3. 読解の訓練
- 文字、単語、文章を読んで理解する
- 読んだ内容について質問に答える
4. 書字の訓練
- 文字を書く練習
- 単語、文を書く
- 手紙、日記を書く
5. 実用的コミュニケーション訓練
- 日常生活で必要なコミュニケーション(買い物、電話など)の練習
- 代替コミュニケーション手段の活用(ジェスチャー、絵カード、コミュニケーションボード、タブレット端末のアプリなど)
6. 集団訓練
- 複数の失語症者が集まり、グループで会話練習
- 社会性の回復、心理的サポート
訓練の場所
急性期(発症直後から)
入院中の病院で開始。短時間から。
回復期(発症後数週間から数ヶ月)
回復期リハビリテーション病棟で集中的に訓練。1日数時間。
維持期(発症後数ヶ月から)
外来でのリハビリテーション、通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション。頻度は減るが継続が重要。
訓練の頻度と期間
急性期・回復期
毎日、週5から6回、1回30分から1時間程度。
維持期
週1から2回程度。
期間
回復は個人差が大きいです。発症後数ヶ月から半年程度が最も回復が早い時期ですが、その後も長期間にわたり改善が続くことがあります。数年かけて少しずつ改善する人もいます。
薬物療法
失語症そのものを治す薬はありませんが、脳循環改善薬、脳代謝賦活薬などが補助的に使われることがあります。
その他のリハビリテーション
理学療法(PT)
運動麻痺がある場合、歩行訓練、関節可動域訓練など。
作業療法(OT)
日常生活動作の訓練、上肢機能訓練、高次脳機能訓練など。
失語症患者の多くは脳卒中後であり、運動麻痺など他の障害も併存していることが多いため、包括的なリハビリテーションが行われます。
家族や周囲のサポート
失語症患者にとって、家族や周囲の人の理解とサポートが非常に重要です。
基本的な接し方
1. ゆっくり、はっきり話す
早口にならず、ゆっくり、はっきりと話します。
2. 短く、簡潔に
長い文、複雑な文は避け、短く簡潔に話します。
3. 一度に一つのことを
複数の話題を同時に出さず、一つずつ話します。
4. 視覚的な情報を活用
ジェスチャー、絵、写真、実物を見せながら話すと理解しやすい。
5. 時間をかける
反応するまで待ちます。急かさない。
6. 確認する
理解できたか確認します。「わかりましたか?」ではなく、具体的な質問で確認。
7. 推測しすぎない
本人が何を言いたいか先回りして決めつけない。本人が伝えたいことを待ちます。
8. Yes/Noで答えられる質問
オープンな質問より、Yes/Noで答えられる質問の方が答えやすい。「何が食べたいですか?」より「ご飯が食べたいですか?」
9. 選択肢を示す
「AとBどちらが良いですか?」と選択肢を示すと答えやすい。
10. 書いてみる
話して伝わらない時は、書いてみる、描いてみる。
やってはいけないこと
子ども扱いしない
知能は保たれています。子どもに話すような口調は避けます。
大声で話さない
聴力は正常です。大声は不要で失礼です。
代わりに話してしまう
本人が言葉を探している時、すぐに代わりに言ってしまわない。時間をかけて本人に話させます。
間違いを厳しく指摘しない
間違いを指摘されると萎縮します。伝わればOKとする。
無視しない
話しかけても反応がないからといって無視しない。本人の前で本人のことを話す時も、本人を含めて話します。
諦めない
コミュニケーションが困難でも、諦めず根気強く向き合います。
心理的サポート
傾聴
本人の気持ちを聴く。言葉にならなくても、表情や態度から気持ちを汲み取ります。
励ます
少しの進歩も認め、励まします。「前よりできるようになったね」
孤立させない
家族の会話に参加させる。外出の機会を作る。
感情を受け止める
苛立ち、悲しみ、不安を否定せず受け止めます。
希望を持つ
リハビリを続ければ改善する可能性があることを伝えます。
家族の自己ケア
情報を得る
失語症について学ぶ。医師、言語聴覚士に相談。
家族会・患者会
同じ状況の家族と交流。情報交換、相互支援。
自分の時間を持つ
介護で疲弊しないよう、自分の時間も大切に。レスパイトケアの活用。
専門家のサポート
カウンセリング、家族向けの勉強会、家族療法。
社会復帰・生活支援
職場復帰
復職の可否
失語症の程度、仕事の内容により異なります。軽度の失語症であれば、適切な配慮のもとで復職できることもあります。
職場の理解
上司、同僚に失語症について説明し、理解と協力を求めます。
業務の調整
コミュニケーションが少ない業務への配置転換、勤務時間の調整、サポート体制の整備。
リハビリとの両立
復職後もリハビリを継続できるよう調整。
障害者手帳
身体障害者手帳
失語症の程度により、音声機能または言語機能の障害として身体障害者手帳(3級または4級)の交付を受けられることがあります。
メリット
税制優遇、公共交通機関の割引、障害者雇用、各種福祉サービスの利用など。
障害年金
症状が重く仕事や日常生活に著しい制限がある場合、障害年金の対象となることがあります。
介護保険
65歳以上、または40歳以上で特定疾病(脳血管疾患など)により要介護状態になった場合、介護保険サービスを利用できます。
コミュニケーション支援
会話ノート
よく使う言葉、絵、写真を載せたノート。指差しで意思疎通。
コミュニケーションカード
「トイレ」「痛い」「水」など基本的な要求を表すカード。
スマートフォン・タブレットのアプリ
失語症者向けのコミュニケーション支援アプリが多数あります。
会話パートナー
失語症者とのコミュニケーションを支援する訓練を受けたボランティア。
社会参加
失語症友の会
失語症者とその家族の会。全国各地にあります。交流、情報交換、勉強会、レクリエーション。
デイケア、通所リハビリ
外出の機会、社会とのつながり。
趣味活動
絵画、園芸、スポーツなど、言葉を使わない活動も楽しめます。
予後(回復の見通し)
回復の経過
自然回復
発症後数週間から数ヶ月は自然回復が見られます。特に最初の3から6ヶ月が最も回復が早い時期です。
リハビリによる改善
自然回復期を過ぎても、リハビリを続けることで改善が続きます。数年かけて少しずつ改善する人もいます。
個人差が大きい
回復の程度は個人により大きく異なります。
予後に影響する要因
良好な予後の要因
- 若年
- 軽症
- 損傷範囲が小さい
- 早期からのリハビリ開始
- 本人の意欲が高い
- 家族のサポートが良好
- 他の合併症が少ない
不良な予後の要因
- 高齢
- 重症(特に全失語)
- 広範囲の損傷
- リハビリ開始が遅い
- 意欲が低い、抑うつ
- 社会的孤立
完全回復は難しいことも
重度の失語症では、完全に元通りになることは難しいことが多いです。しかし適切なリハビリと支援により、生活に必要なコミュニケーション能力を取り戻し、社会復帰できる可能性があります。
長期的な見通し
失語症は慢性的な障害として残ることもありますが、長期間かけて改善し続けることもあります。「回復のゴール」は個人により異なります。完全回復だけがゴールではなく、その人なりのコミュニケーション手段を確立し、生活の質を向上させることが重要です。
まとめ
失語症は脳の言語中枢が損傷されることにより、話す、聞いて理解する、読む、書くという言語機能が障害される状態です。脳卒中が最も多い原因で、中高年以降に多く発症します。
主な症状は発話の障害(言葉が出ない、錯語)、聴覚的理解の障害、読解の障害、書字の障害です。知能や意識は保たれているため、言いたいことがあるのに伝えられないという強い苛立ちや苦痛を感じます。
失語症にはブローカ失語、ウェルニッケ失語、全失語、伝導失語、健忘失語などのタイプがあり、損傷部位や程度により症状が異なります。
診断は病歴、神経学的診察、言語機能評価(標準失語症検査など)、画像検査により行われます。構音障害、認知症などとの鑑別が重要です。
治療の中心はリハビリテーション、特に言語療法です。早期開始が重要で、聴覚的理解、発話、読解、書字の訓練を個別に、段階的に行います。代替コミュニケーション手段の活用も重要です。
家族や周囲の人は、ゆっくり短く話す、時間をかける、視覚的情報を活用する、子ども扱いしない、諦めないなどの配慮が必要です。心理的サポートも重要です。
社会復帰支援として、職場復帰の調整、身体障害者手帳の取得、障害年金、介護保険、コミュニケーション支援ツール、失語症友の会などがあります。
回復は個人差が大きく、発症後数ヶ月が最も回復が早い時期ですが、長期間かけて改善し続けることもあります。完全回復が難しくても、適切なリハビリと支援により、その人なりのコミュニケーション能力を取り戻し、生活の質を向上させることができます。
失語症は言葉の障害ですが、知能は保たれています。本人の尊厳を尊重し、根気強くコミュニケーションを続けることが大切です。早期からの言語療法と家族のサポートにより、多くの患者が改善します。希望を持ち、リハビリに取り組みましょう。

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