営業代行を導入したものの、「思ったような成果が出ない」。
「想定外の費用を請求された」。
「顧客からクレームが来た」。
このようなトラブルに悩まされる企業が少なくありません。
営業代行は、適切に活用すれば企業の営業活動を加速させる強力な支援ツールとなります。
しかし、契約前の準備不足や業者選定のミスによって、かえって企業の信頼を損なう結果を招いてしまうこともあります。
本記事では、営業代行で実際に起こりやすいトラブル事例を5つ厳選して紹介します。
それぞれの原因と具体的な回避策を、専門家の視点から徹底的に解説します。
さらに、失敗しない営業代行会社の選び方や、契約時に必ず確認すべきポイントを網羅したチェックリストも提供します。
これから営業代行の導入を検討している企業の担当者様、そして過去に導入で失敗した経験を持つ経営者様も、ぜひ本記事を最後までお読みいただき、貴社の営業活動を成功に導くための一助としてください。
営業代行とは?基本的な仕組みとサービス内容
営業代行とは、その名の通り、企業の営業活動の一部または全部を外部の専門会社が代行するサービスです。
自社の営業リソースが不足している場合や、特定の分野で専門的な営業ノウハウが必要な場合に活用されます。
主なサービス内容
営業代行が提供するサービスは多岐にわたりますが、主に以下のような業務を依頼できます。
サービス内容 | 具体的な業務 |
アポイント獲得支援 | ターゲットリストの作成、テレアポ、メールマーケティングによる商談機会の創出 |
商談代行 | 専門の営業担当者による製品・サービスの提案、クロージング |
インサイドセールス | 電話やWeb会議システムを活用した非対面での営業活動全般 |
営業コンサルティング | 営業戦略の立案、営業プロセスの改善提案、営業研修の実施 |
営業代行の利用が増えている背景
近年、多くの企業で営業代行の利用が広がっています。
その背景には、少子高齢化に伴う労働人口の減少や、働き方改革による営業担当者の業務効率化の必要性が高まっていることが挙げられます。
また、市場の競争が激化する中で、新規顧客開拓の難易度が上がり、専門的な営業スキルを持つ外部リソースへの需要が高まっていることも一因です。
期待できる効果とメリット
営業代行を適切に活用することで、企業は以下のようなメリットを享受できます。
即戦力となる営業リソースの確保。
自社で営業担当者を採用・育成する時間とコストを削減し、すぐに営業活動を開始できます。
売上の向上。
プロの営業スキルとノウハウを活用することで、成約率の向上や新規市場の開拓が期待できます。
営業組織の強化。
代行会社が持つ営業ノウハウを自社に蓄積し、営業組織全体のレベルアップにつなげることができます。
コア業務への集中。
営業活動を外部に委託することで、自社の社員は製品開発や顧客サポートといったコア業務に集中できます。
このように多くのメリットがある一方で、後述するようなトラブルが発生するリスクも存在します。
次の章では、実際にどのようなトラブルが起こりうるのか、具体的な事例を見ていきましょう。
営業代行でよくあるトラブル5選
営業代行の導入は、多くのメリットをもたらす可能性がある一方で、慎重に進めなければ思わぬトラブルに発展するケースも少なくありません。
ここでは、実際に多くの企業が経験する代表的なトラブルを5つ紹介し、その原因と企業に与える影響について深く掘り下げていきます。
トラブル1:進捗報告が不十分で営業活動が不透明
【具体的な事例】
A社は新規事業の立ち上げにあたり、テレアポによるアポイント獲得を営業代行会社に委託しました。
しかし、契約後に代行会社から定期的な報告が一切なく、どのようなリストに、何件電話をかけ、どのような反応があったのか全く把握できない状態が続きました。
成果であるアポイントは月に数件獲得できていましたが、活動内容がブラックボックス化しているため、今後の改善策を検討することもできず、費用対効果を正しく判断できないまま契約期間が終了してしまいました。
【発生原因】
このようなトラブルの主な原因は、契約時に報告の頻度や内容を具体的に取り決めていないことにあります。
依頼側は「報告は当然してくれるだろう」と考えていても、契約書に明記されていなければ、代行会社に報告義務は発生しません。
また、代行会社によっては、自社の営業ノウハウが外部に漏れることを懸念し、詳細な活動報告を意図的に避けるケースもあります。
【企業への影響】
営業活動の進捗が不透明であると、成果が出なかった場合にその原因を分析することができません。
ターゲットリストが適切だったのか、トークスクリプトに問題があったのか、それとも営業担当者のスキルが不足していたのか、何も分からないままでは、PDCAサイクルを回して改善を図ることが不可能です。
結果として、貴重な時間とコストを浪費し、事業の成長機会を逃すことにつながります。
トラブル2:強引なアポ獲得によって商談でクレームが発生
【具体的な事例】
B社は、成果報酬型の営業代行サービスを利用して、自社製品のオンライン商談のアポイント獲得を依頼しました。
確かにアポイントの件数は増加しましたが、実際の商談では「そんなに良い条件だとは聞いていない」「強引にアポを設定された」といった顧客からのクレームが多発。
結局、成約率はほとんど上がらず、むしろ企業の評判を落とす結果となってしまいました。
【発生原因】
このトラブルは、特に成果報酬型の料金体系を採用している場合に起こりがちです。
代行業者はアポイントを獲得しなければ売上が立たないため、質よりも量を重視する傾向が強くなります。
その結果、製品のメリットを誇張したり、顧客のニーズを無視して強引にアポを設定したりする営業担当者が出てくるのです。
営業担当者のスキル不足や、代行会社全体のコンプライアンス意識の低さも根本的な原因として挙げられます。
【企業への影響】
強引な営業によって獲得したアポイントは、成約につながる可能性が低いだけでなく、企業のブランドイメージを大きく毀損します。
一度「強引な営業をする会社」というレッテルを貼られてしまうと、その信頼を回復するのは容易ではありません。
短期的なアポイント件数の増加と引き換えに、長期的な顧客との信頼関係を失うという、非常に大きな代償を払うことになります。
トラブル3:成果物の基準が曖昧で想定外の費用を請求された
【具体的な事例】
C社は、「アポイント1件につき〇円」という成果報酬契約で営業代行を依頼しました。
しかし、月末に届いた請求書を見て愕然とします。
代行業者のミスでキャンセルになったアポイントや、明らかに成約見込みのない質の低いアポイントまで、すべて「成果」としてカウントされていたのです。
契約書を確認すると、成果物の定義が曖昧で、どのような状態のアポイントを「成果」とするのかが具体的に明記されていませんでした。
【発生原因】
契約書における成果物の定義が不十分であることが、このトラブルの直接的な原因です。
例えば、「有効アポイント」とは何を指すのか(担当者と話せただけか、商談日が確定した時点かなど)、キャンセル時の扱いはどうするのか、といった点を事前に細かくすり合わせておかなければ、後から解釈の違いが生じます。
また、「質の高いアポイント」といった主観的な表現も危険です。
依頼側と代行会社の間で認識がズレている可能性が高く、トラブルの火種となります。
【企業への影響】
成果物の定義が曖昧なまま契約すると、想定を大幅に超える費用を請求されるリスクがあります。
これでは、たとえアポイントが獲得できていたとしても、費用対効果が悪化し、予算を圧迫することになります。
金銭的なトラブルは、代行会社との信頼関係を根本から揺るがし、良好なパートナーシップを継続することを困難にします。
トラブル4:スケジュール共有ミスで商談機会を逃す
【具体的な事例】
D社では、営業代行が獲得した商談に自社の担当者が訪問する体制をとっていました。
しかし、代行会社とのスケジュール共有がうまくいかず、ダブルブッキングが頻発。
顧客に何度も日程変更をお願いすることになり、最終的には「もう結構です」と商談自体を断られてしまいました。
【発生原因】
この問題は、情報共有の仕組みが確立されていない場合に起こります。
メールやチャットだけで日程調整を行っていると、確認漏れや伝達ミスが発生しやすくなります。
特に、複数の担当者が関わる場合は、リアルタイムで全員の空き状況を確認できる共有カレンダーなどのツールを導入しなければ、スムーズな連携は困難です。
どちらの責任かが曖昧になりやすく、責任のなすりつけ合いに発展しやすいのも、このトラブルの特徴です。
【企業への影響】
商談前の度重なる日程変更や、最悪の場合のすっぽかしは、顧客からの信頼を著しく損ないます。
「この会社は顧客との約束を守れない」「社内連携が取れていない」というネガティブな印象を与え、せっかく獲得した貴重な商談機会を失うことにつながります。
一度失った信頼を取り戻すのは、非常に困難です。
トラブル5:自社製品・サービスへの理解不足
【具体的な事例】
専門的な知識が必要なIT製品を扱うE社は、営業代行に新規顧客開拓を依頼しました。
しかし、代行会社の営業担当者は製品知識が浅く、顧客からの専門的な質問に全く答えられません。
結果として、顧客に不信感を与えてしまい、商談はことごとく失注。
それどころか、「あそこの会社の営業は素人だ」という悪評が広まってしまいました。
【発生原因】
代行会社が、依頼された商材に関する十分な知識を習得しないまま営業活動を開始してしまうことが原因です。
依頼側の企業が、契約前に代行会社に対して十分な製品研修の機会を提供しなかったり、必要な資料を渡していなかったりするケースも少なくありません。
特に、専門性が高い商材や、無形サービスを扱う場合には、この問題が起こりやすくなります。
【企業への影響】
営業担当者の製品理解不足は、成約率の低下に直結します。
顧客の課題やニーズに対して的確な提案ができないため、商談が深まらず、信頼関係を構築することができません。
それだけでなく、企業の専門性や信頼性そのものが疑われ、ブランド価値を大きく毀損する恐れもあります。
営業代行トラブルの根本的な原因
これまで見てきた5つのトラブルは、それぞれ異なる事象に見えますが、その根底には共通する原因が潜んでいます。
トラブルを根本から解決し、再発を防ぐためには、これらの原因を正しく理解することが不可欠です。
原因1:営業代行会社・担当者の質の問題
トラブルの多くは、依頼した営業代行会社や、実際に営業活動を行う担当者の「質」に起因します。
例えば、以下のような問題が挙げられます。
営業スキルや経験の不足。
顧客の課題を引き出し、適切な提案を行う基本的な営業スキルが不足しているケースです。
特に、経験の浅い担当者がマニュアル通りの営業しかできない場合、顧客との信頼関係を築くことは困難です。
管理体制の不備。
代行会社内のマネジメントが機能しておらず、営業担当者の活動状況を把握・管理できていない状態です。
これにより、報告漏れや非効率な営業活動が放置されることになります。
倫理観の欠如。
自社の利益を優先するあまり、強引な営業手法を容認したり、顧客に誤解を与えるような説明をしたりする企業も存在します。
コンプライアンス意識の低さは、企業の評判を著しく損なう重大なリスクです。
これらの質の問題は、表面的な実績や料金の安さだけでは見抜けません。
契約前の段階で、代行会社の企業文化や教育体制、担当者の人柄まで見極める必要があります。
原因2:契約時の準備不足・すり合わせ不足
もう一つの大きな原因は、依頼側企業と営業代行会社との間でのコミュニケーション不足、特に契約段階での準備不足です。
「プロに任せるのだから、細かいことを言わなくても大丈夫だろう」という考えは非常に危険です。
具体的には、以下のような項目のすり合わせが不足しているケースが多く見られます。
すり合わせが不足しがちな項目 | トラブルへの発展 |
業務範囲の定義 | 「どこまでが代行業務か」が曖昧なため、追加費用の請求トラブルにつながる。 |
KPI(重要業績評価指標)の設定 | アポイントの「件数」だけを追い求め、「質」が疎かになり、クレームや低成約率を招く。 |
報告義務の明確化 | 報告の頻度や内容を決めていないため、活動がブラックボックス化し、改善ができない。 |
成果基準の定義 | 「有効アポイント」の定義が曖昧なため、成果報酬の支払いを巡るトラブルに発展する。 |
営業代行の成功は、両社が同じ目標に向かって進む「パートナー」になれるかどうかにかかっています。
契約は、そのための共通認識を形成する最も重要なプロセスです。
この段階での手間を惜しむことが、後に大きなトラブルとなって返ってくるのです。
営業代行のトラブルを未然に防ぐ5つの対策
営業代行のトラブルは、その多くが契約前の準備段階で防ぐことが可能です。
ここでは、トラブルを未然に防ぎ、営業代行を成功に導くための具体的な対策を5つ紹介します。
これらのポイントを一つひとつ確実に実行することが、信頼できるパートナーと良好な関係を築くための鍵となります。
対策1:契約前に業務範囲とKPIを明確にすり合わせる
最も重要なことは、「何を」「どこまで」依頼し、「何を」もって成功とするのかを両社で徹底的にすり合わせることです。
まず、業務範囲については、「テレアポによるアポイント獲得」といった大枠だけでなく、「ターゲットリストの作成はどちらが行うか」「トークスクリプトは誰が作成するか」「獲得したアポイントの情報をどのように共有するか」といった細部に至るまで、書面で明確に定義します。
次に、KPI(重要業績評価指標)の設定です。
例えば、アポイント獲得を目的とする場合でも、単に「アポイント件数」だけをKPIに設定するのは危険です。
「受注確度の高い商談につながったアポイントの件数(有効アポイント数)」や、「アポイントからの商談化率」、「商談からの受注率」といった、事業の最終的なゴールにつながる指標を併せて設定することが重要です。
これにより、代行業者は単なる件数稼ぎではなく、質の高いアポイントを意識するようになります。
対策2:過去の実績とクライアントの声を必ず確認する
営業代行会社のウェブサイトに掲載されている成功事例だけを鵜呑みにするのは危険です。
必ず、自社と同じ業界や、似たような商材での実績があるかを確認しましょう。
その際、単に「〇〇業界で実績あり」というだけでなく、「どのような課題を持つ企業に対して」「どのようなアプローチを行い」「どのような成果(具体的な数値)を出したのか」を詳しくヒアリングすることが重要です。
さらに、可能であれば、その代行会社を実際に利用したクライアントの声(口コミや評判)を第三者的な視点から収集することも有効です。
良い評判だけでなく、悪い評判にも耳を傾けることで、その会社の実態を多角的に把握することができます。
対策3:契約書に解約条件や追加費用の条件を明記する
契約書は、万が一のトラブルが発生した際に自社を守るための最後の砦です。
特に、以下の項目については、弁護士などの専門家にも相談しながら、内容を精査する必要があります。
解約条件。
契約期間の途中で解約したい場合に、どのような手続きが必要か、違約金は発生するのかを明確にします。
「成果が出ない」といった理由での解約が可能かどうかも確認すべき重要なポイントです。
追加費用の発生条件。
契約で定めた業務範囲を超える作業を依頼した場合に、どのような料金体系で追加費用が発生するのかを明記します。
想定外の請求を防ぐために不可欠です。
成果報酬の計算方法。
成果報酬型の場合、何を「成果」とみなし、どのようにカウントするのかを具体的に定義します。
キャンセルや日程変更時の扱いについても、細かく規定しておく必要があります。
対策4:報告頻度・報告内容を具体的に取り決める
営業活動のブラックボックス化を防ぐためには、報告体制を契約段階で明確に定めておくことが極めて重要です。
「週次」「月次」といった報告頻度はもちろんのこと、報告書のフォーマットや、報告に含めるべき項目(例:架電数、担当者接続数、アポイント獲得数、NG理由の分析など)まで、具体的に合意し、契約書に盛り込みましょう。
可能であれば、契約前に報告書のサンプルを提示してもらい、自社が求めるレベルの分析や示唆が得られる内容になっているかを確認することをお勧めします。
定期的な報告会(定例ミーティング)の開催を取り決めておくことも、コミュニケーションを円滑にし、PDCAを回していく上で非常に有効です。
対策5:スケジュール管理システムを共有する
スケジュール共有のミスは、少しの注意で防げるにもかかわらず、顧客の信頼を大きく損なう致命的なトラブルにつながります。
このような人為的ミスを防ぐためには、GoogleカレンダーやOutlookカレンダーといった、リアルタイムで双方が編集・閲覧できるスケジュール管理システムを共有するのが最も確実な方法です。
誰が、いつ、どのような情報を更新するのか、といった運用ルールを事前に明確に定めておくことも忘れてはなりません。
これにより、伝達漏れやダブルブッキングのリスクを最小限に抑え、スムーズな連携体制を構築することができます。
失敗しない営業代行会社の選び方
トラブルを回避し、営業代行を成功させるためには、自社に最適なパートナーを見極める「選定力」が求められます。
世の中には数多くの営業代行会社が存在しますが、料金や知名度だけで選ぶのは非常に危険です。
ここでは、長期的な視点で成果を共創できる、信頼性の高い営業代行会社を選ぶための5つの選定ポイントを解説します。
選定ポイント1:自社の業界・商材での実績が豊富か
最も重視すべきは、自社のビジネス領域における専門性と実績です。
IT業界と不動産業界では、有効な営業アプローチや顧客に響く言葉が全く異なります。
そのため、自社が属する業界や、扱っている商材(特に専門性が高いもの)に関する深い知見を持っている会社を選ぶことが、成功への第一歩となります。
過去の成功事例をヒアリングする際には、どのようなターゲットに対して、どのような戦略でアプローチし、最終的にどのような成果(受注件数、売上向上額など)につながったのかを、具体的な数値で確認しましょう。
選定ポイント2:営業プロセスを透明化しているか
「トラブル1:進捗報告が不十分で営業活動が不透明」でも述べた通り、活動内容がブラックボックス化している代行会社は信頼できません。
契約前に、営業活動のプロセスをどのように可視化し、共有してくれるのかを必ず確認しましょう。
定期的な報告体制(週次・月次レポート)は整っているか。
営業活動のデータ(架電リスト、活動履歴、顧客からのフィードバックなど)をリアルタイムで共有する仕組み(SFA/CRMなどのツール)はあるか。
成果だけでなく、活動のプロセスや課題についてもオープンに議論できるか。
これらの質問に対して、明確かつ誠実な回答をくれる会社は、透明性の高いパートナーシップを築ける可能性が高いと言えます。
選定ポイント3:営業担当者のスキルと経験は十分か
最終的に営業活動を行うのは、現場の「人」です。
会社の看板や実績がどれだけ立派でも、実際に自社を担当する営業担当者のスキルや経験が不足していれば、成果は期待できません。
可能であれば、契約前に担当者と面談させてもらい、その人物の経歴や得意な営業スタイル、コミュニケーション能力、そして何よりも自社のビジネスに対する情熱や理解度を見極めることが理想です。
また、代行会社全体の教育・研修制度が充実しているかどうかも、営業担当者の質を担保する上で重要な指標となります。
選定ポイント4:料金体系が明確で納得できるか
料金体系は、代行会社を選ぶ上で重要な要素ですが、単純な安さだけで選ぶのは失敗のもとです。
「固定報酬型」と「成果報酬型」、そして両者を組み合わせた「複合型」のそれぞれにメリット・デメリットがあります。
料金体系 | メリット | デメリット |
固定報酬型 | 毎月の費用が一定で予算管理がしやすい。営業の質を担保しやすい。 | 成果が出なくても費用が発生する。 |
成果報酬型 | 成果が出なければ費用が発生しないため、リスクが低い。 | 成果の定義が曖昧だとトラブルになりやすい。営業の質より量が優先されがち。 |
複合型 | 両者のメリットを享受できる。 | 料金体系が複雑になりやすい。 |
どの料金体系が最適かは、依頼する業務内容や目的によって異なります。
自社の状況に合わせて、最も費用対効果が高いと判断できる、明確で納得感のある料金体系を提示してくれる会社を選びましょう。
追加費用の有無についても、事前に必ず確認が必要です。
選定ポイント5:コミュニケーション体制が整っているか
営業代行は「丸投げ」して終わるものではありません。
成功のためには、依頼後も継続的にコミュニケーションを取り、二人三脚で改善活動を進めていく必要があります。
そのため、円滑なコミュニケーションが取れる体制が整っているかどうかも重要な選定ポイントです。
自社専任の担当窓口(ディレクター)はいるか。
質問や相談に対するレスポンスは迅速か。
定例ミーティングなど、定期的にすり合わせを行う場が設けられているか。
課題や懸念点を率直に伝えられる、風通しの良い関係性を築けそうか。
契約前の商談段階から、担当者の対応の速さや誠実さ、提案の質などを注意深く観察し、長期的に信頼できるパートナーとなりうるかを見極めましょう。
契約前に確認すべきチェックリスト
これまでの内容を踏まえ、営業代行会社との契約前に必ず確認すべき項目をチェックリストにまとめました。
契約書にサインする前に、これらの項目がすべてクリアになっているか、担当者と一緒に一つひとつ確認してください。
この一手間が、将来のトラブルを防ぐ最大の防御策となります。
チェック項目 | 確認のポイント |
□ 業務範囲の明確化 | どこからどこまでが代行業務に含まれるか、書面で定義されているか? |
□ KPIと目標数値の設定 | アポイントの「質」を担保するKPI(有効アポイント数など)が設定されているか? |
□ 成果物の定義 | 「成果」とみなす条件(例:有効アポイントの定義)が具体的に明記されているか? |
□ 報告体制の具体化 | 報告の頻度、フォーマット、報告項目が契約書に明記されているか? |
□ 解約条件の確認 | 契約期間中の解約は可能か? 違約金の有無や条件は明確か? |
□ 追加費用の発生条件 | どのような場合に、いくらの追加費用が発生するのかが明記されているか? |
□ スケジュール共有の方法 | 共有カレンダーなど、リアルタイムで連携できる仕組みが導入されるか? |
□ 営業トークの事前確認 | 営業活動に使用するトークスクリプトやメール文面を事前に確認できるか? |
□ 実績の確認 | 自社と同業界・同規模の企業での具体的な成功事例(数値)を確認したか? |
□ 担当者との面談 | 実際に自社を担当する営業担当者と面談し、スキルや人柄を確認したか? |
まとめ:営業代行は適切な準備と業者選定で成功する
本記事では、営業代行でよくある5つのトラブル事例から、その原因、そして具体的な対策までを詳しく解説してきました。
多くのトラブルは、営業代行会社そのものの問題というよりも、契約前の準備不足や、依頼側と代行会社との間のすり合わせ不足に起因します。
「プロに任せるのだから大丈夫」と丸投げするのではなく、自社の営業活動を成功させるという強い意志を持って、主体的にパートナー選びと契約プロセスに関わることが何よりも重要です。
業務範囲やKPI、報告義務などを明確に定義し、透明性の高い関係性を築くこと。
そして、料金や知名度だけでなく、自社のビジネスへの理解度や担当者の質といった観点から、長期的に信頼できるパートナーを慎重に見極めること。
これらのポイントを押さえ、本記事で紹介したチェックリストを活用して万全の準備をすれば、営業代行は貴社のビジネスを飛躍させる強力なエンジンとなり得ます。
適切な準備と最適なパートナー選定によって、営業代行の導入を成功に導きましょう。