B型事業所で工賃10万円は稼げる?現実と高工賃を目指す選択肢

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就労継続支援B型事業所を利用している方、利用を検討している方のなかには、「工賃で10万円稼げるのか」という疑問を持つ方がいます。B型事業所の工賃は全国平均で月額1万7000円程度と言われており、10万円という金額は平均の何倍にも相当します。「10万円稼げるB型はあるのか」「どうすればそこまで工賃を上げられるのか」「B型では無理なら他の選択肢は何か」といった関心を持つ方が多いでしょう。ここでは、B型事業所の工賃の実態、10万円稼げる事業所の特徴、工賃を上げるための選択肢、B型以外の働き方について解説していきます。

B型事業所の工賃の実態

B型事業所の工賃は、事業所によって大きな差があります。全国の平均工賃は月額1万7000円程度で、時給に換算すると200円から300円程度となる事業所が多い状況です。

この金額は、一般の最低賃金と比較すると大きく下回ります。2024年10月の全国平均最低賃金は時給1055円のため、B型事業所の工賃は最低賃金の4分の1から3分の1程度となっています。

工賃が低い理由は、B型事業所の仕組みにあります。B型事業所は雇用契約を結ばない福祉サービスで、利用者は労働者ではなく福祉サービス利用者として位置付けられています。最低賃金法の対象外となるため、事業所の生産活動の収益に応じた工賃配分となります。

工賃の分布を見ると、月額1万円未満の事業所、1万円から2万円の事業所、2万円から3万円の事業所、3万円以上の事業所という段階があります。厚生労働省の調査では、月額3万円を超える事業所は全体の一部であり、10万円を超える事業所はさらに少数派となっています。

事業所によっては、時給ではなく出来高制を採用しているところもあります。生産した商品の数、完成した作業の量に応じて工賃が支払われる仕組みで、頑張れば工賃が上がる可能性がありますが、体調によって波がある方には難しい面もあります。

工賃10万円を超える事業所の特徴

月額10万円以上の工賃を支払えるB型事業所は少数ですが、全国に存在します。それらの事業所にはいくつかの共通する特徴があります。

収益性の高い生産活動を行っていることが最大の特徴です。企業向けのBtoB業務を受注している事業所、Web制作やプログラミングなど単価の高い業務を手がける事業所、独自ブランドの商品を開発して販売する事業所などは、一般的な軽作業中心の事業所と比較して収益が高くなります。

利用者の能力を活かした業務展開をしています。利用者のスキルに応じた仕事を割り当て、専門性の高い業務に取り組める環境を整えている事業所では、それに応じた工賃を支払える収益が生まれます。

営業力と販路開拓に力を入れている事業所も、高工賃を実現する傾向があります。一般企業との取引、自治体との契約、大手企業との協業など、安定した受注先を確保することで、継続的な収益を上げられる仕組みを作っています。

事業所の経営規模と効率性も工賃に影響します。大規模な事業所、複数の事業を展開する法人、生産効率の高い作業環境を整備している事業所は、同じ生産量でも効率的に収益を上げられます。

利用者の選抜や適性重視の姿勢も、高工賃事業所の特徴の一つです。一定のスキルや生産能力を持つ利用者を受け入れることで、事業所全体の生産性を維持し、高工賃を実現している面があります。

高工賃事業所の業務内容

月額10万円程度の工賃を支払える事業所では、どのような業務が行われているかを見てみましょう。

IT関連業務を手がける事業所が、高工賃事業所の代表例です。Web制作、プログラミング、データ入力、デジタルマーケティング、動画編集、画像加工などが主な業務内容です。IT業界は人材不足が続いているため、B型事業所でも一定のスキルがあれば受注が見込める分野です。

印刷・デザイン業務を行う事業所も、比較的工賃が高い傾向にあります。名刺、チラシ、ポスター、冊子などの印刷、デザイン業務を企業から受注しています。DTPソフトの操作、デザインセンスが求められる仕事です。

縫製業務や製品製造を専門とする事業所も、高工賃を実現しているところがあります。オリジナル商品の製造、企業のノベルティ制作、ユニフォーム縫製など、一定の技術と品質が求められる業務で安定した収益を上げています。

農業や食品加工を事業の柱とする事業所もあります。有機野菜の生産と販売、6次産業化による商品開発、レストランや食品店の運営など、付加価値の高い農業ビジネスを展開する事業所では、市場価値の高い商品を生み出せます。

清掃や軽作業でも、企業向けの継続契約を多数持つ事業所は高工賃を実現できます。オフィスビルの清掃、工場の清掃業務、大手企業の社員向けサービス、マンション管理補助など、安定した受注先があれば継続的な収益が見込めます。

専門サービス業を手がける事業所もあります。翻訳、校正、経理代行、コールセンター業務など、一般企業では人件費が高いサービスをB型の工賃水準で提供することで、競争力を持つ事業所があります。

10万円達成の現実性

月額10万円の工賃を目指すことは可能なのかを、現実的な視点で考えてみましょう。

結論から言えば、全国のB型事業所のなかに月額10万円以上を支払う事業所は存在しますが、その数は限られており、すべての利用者が簡単に達成できる金額ではありません。

利用者本人の能力も重要な要素です。高工賃事業所の多くは、生産性の高い業務を行っており、利用者側にも一定のスキルや作業能力が求められます。ITスキル、デザインセンス、語学力、事務処理能力など、競争力となる能力を持っていることが前提となる場合が多くあります。

通所日数と時間も工賃に大きく影響します。週5日フルタイムで通える方と、週3日半日程度しか通えない方では、同じ事業所でも受け取る工賃が大きく異なります。月額10万円を目指すには、ある程度の通所日数と時間が確保できる必要があります。

体調との相性も現実的な課題です。高工賃事業所は生産性を重視するため、体調の波で欠勤が多い方にとっては続けにくい場合があります。自分の体調管理能力と、事業所の求める業務量のバランスを見極めることが重要です。

地域による差も大きいです。都市部では高工賃事業所の選択肢が比較的多い一方、地方では選択肢が限られる場合があります。通える範囲の事業所で月額10万円以上を実現できるかは、住んでいる地域によって可能性が変わります。

10万円稼げる事業所の探し方

月額10万円以上の工賃を支払う事業所を探す方法を見ていきましょう。

全国の平均工賃データは、厚生労働省のウェブサイトで公開されています。都道府県ごとの工賃平均が毎年公表されており、工賃の高い地域や事業所を調べる参考になります。

WAM NETという独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉情報サイトでは、全国のB型事業所の基本情報を検索できます。事業所ごとの工賃実績は必ずしも詳細には記載されていませんが、事業所の規模や業務内容を把握する材料になります。

相談支援事業所に相談することは、効率的な方法の一つです。地域の事業所の実態に詳しい相談支援専門員は、高工賃の事業所や、自分の特性に合った事業所について情報を持っています。

見学と体験利用を複数の事業所で行うことが重要です。事業所のウェブサイトや資料だけでは分からない実態が、実際に足を運ぶことで見えてきます。工賃の実績、業務内容、事業所の雰囲気、利用者の様子などを自分の目で確認しましょう。

事業所に直接工賃について質問することも重要です。「月平均の工賃はどれくらいですか」「最も高く稼いでいる利用者はどれくらいですか」「通所日数によって工賃はどう変わりますか」など、具体的な質問をすることで実態が分かります。

ハローワークや就労移行支援事業所などの支援機関も、情報源として活用できます。これらの機関は地域の福祉サービス事業所とのネットワークを持っており、工賃の高い事業所の情報を得られる場合があります。

工賃を上げるための工夫

現在利用している事業所で工賃を少しでも上げる工夫も考えられます。

通所日数を増やすことは、最も直接的な方法です。週3日から週5日に増やす、1日の滞在時間を延ばすなどの工夫で、月の作業量が増え、結果として工賃が増える可能性があります。ただし、体調との相性を考えて無理のない範囲で調整する必要があります。

スキルアップに取り組むことも有効です。事業所で提供している訓練に積極的に参加する、自主的に学習して新しい業務に挑戦する、資格取得を目指すなど、自分の生産性を高める努力が工賃向上につながる場合があります。

担当業務の拡大を申し出る方法もあります。現在の担当業務以外にもできる作業がある場合、事業所の指導員に相談してみましょう。より単価の高い業務、責任のある業務を任されることで、工賃が上がる可能性があります。

事業所側の取り組みに協力する姿勢も大切です。新規受注の獲得、生産性向上の提案、作業効率化への協力など、事業所全体の収益向上に貢献することで、結果として利用者全体の工賃が上がる場合があります。

他の事業所への移籍を検討することも、工夫の一つです。現在の事業所で工賃向上が難しい場合、より条件の良い事業所への移籍を考えることができます。ただし、環境の変化によるストレスもあるため、慎重な判断が必要です。

B型以外の働き方

月額10万円以上を目指す場合、B型事業所以外の選択肢も検討する価値があります。

就労継続支援A型事業所は、雇用契約を結んで働く福祉サービスです。最低賃金が保障されるため、月額10万円以上の収入が基本となります。週20時間以上働く場合、月額13万円から17万円程度の収入が一般的です。ただし、A型事業所は2024年以降の報酬改定で経営難に陥っている事業所も多く、選び方には注意が必要です。

一般企業での障害者雇用は、最も収入の可能性が高い働き方です。週20時間勤務から週40時間勤務まで、自分の体調に合わせた働き方が選べます。最低賃金以上での雇用が基本で、企業によっては月額15万円から25万円程度、ボーナスがある企業ではさらに高い年収が期待できます。

特例子会社での雇用も、比較的高い収入が期待できる選択肢です。大手企業の特例子会社では、障がい者雇用に特化した職場環境が整っており、月額15万円から20万円程度の収入が一般的です。

障害者向けの在宅就労も増えている選択肢です。Webデザイン、ライティング、プログラミング、データ入力などの在宅ワークを、障害者雇用枠で募集する企業があります。通勤の負担がなく、自宅で働けるメリットがあります。

フリーランスとして個別に仕事を受注する働き方もあります。スキルがあれば、クラウドソーシングサイトで仕事を受注し、自分のペースで働くことができます。収入の不安定さがあるため、生活基盤として障害年金を受給しながら併用する方も多くいます。

障害年金との併用

月額10万円の工賃だけで生活するのは難しい場合が多いため、障害年金との併用も現実的な選択肢です。

障害基礎年金は、20歳以上で一定の要件を満たす障がい者に支給される年金です。2級で月額約6万8000円、1級で約8万5000円が支給されます(令和7年度の金額)。初診日に国民年金または厚生年金に加入していた方が対象です。

障害厚生年金は、初診日に厚生年金加入中だった方が対象となる年金です。障害基礎年金に上乗せされる形で支給され、加入期間や給与に応じて金額が決まります。月額10万円以上の年金を受給できる方もいます。

年金と工賃を合わせることで、月額15万円から20万円以上の収入基盤を作れる場合があります。B型事業所で月額3万円から5万円の工賃、障害年金で月額6万8000円から8万5000円を受給することで、基本的な生活費をまかなえる金額になります。

障害年金の受給は、本人の認定等級と保険料納付状況によって決まります。まだ申請していない方は、社会保険労務士や年金事務所に相談してみる価値があります。障害の状況によっては申請できる可能性があります。

生活設計の視点

月額10万円を目指す理由を振り返ることも大切です。

経済的自立を目指している場合、月額10万円だけで生活が成り立つかは地域と生活スタイルによります。都市部の一人暮らしでは、家賃、光熱費、食費、通信費などで月額10万円はすぐに消えてしまいます。地方の実家暮らし、家族との同居などで住居費が抑えられる場合は、月額10万円でも生活基盤になり得ます。

公的支援との組み合わせを考えることも重要です。障害年金、生活保護、家賃補助、医療費助成、各種割引制度などを組み合わせることで、工賃が低くても安定した生活が可能になる場合があります。すべての制度を自分で調べることは難しいため、ソーシャルワーカーや相談支援専門員に相談することをおすすめします。

長期的なキャリア視点も大切です。今すぐに月額10万円を稼ぐことは難しくても、数年かけてスキルアップし、将来的には一般就労や専門職として高収入を得る道筋を考えることができます。B型事業所を経て就労移行支援事業所で訓練を受け、一般就労を目指すキャリアパスも選択肢の一つです。

家族のサポートも現実的な要素です。家族と同居する、家族から経済的支援を受けるなど、個人の収入だけで生活を考えない選択もあります。家族との関係性や将来の自立プランを踏まえて、現実的な収入目標を立てることが大切です。

B型事業所の本来の目的

B型事業所の工賃が低い背景には、事業所の本来の目的があることを理解しておきましょう。

B型事業所は福祉サービスであり、働く機会と居場所を提供することが主な目的です。収入を得ることは重要ですが、それ以上に、社会参加、生活リズムの維持、人との交流、達成感の獲得など、多面的な価値が提供される場となっています。

一般就労が難しい方への支援という位置付けも重要です。障がいの程度、体力、コミュニケーション能力などから、一般企業で働くことが難しい方が、自分のペースで働ける環境として機能しています。

治療やリハビリとの両立がしやすい環境でもあります。医療機関への通院、心身の休息、症状のコントロールを優先しながら、可能な範囲で社会参加する場として、B型事業所は機能しています。

これらの本来の目的を考えると、工賃だけを基準に事業所を選ぶのは適切ではない場合もあります。自分の体調や状態に合った働き方ができる事業所、長く続けられる事業所を選ぶことが、結果として安定した収入につながる場合があります。

自分に合った選択を

月額10万円という金額にとらわれず、自分に合った働き方を選ぶ視点が大切です。

自分の現在の体調と、安定して続けられる働き方を冷静に見つめましょう。無理をして高工賃の事業所に通い、体調を崩してしまっては本末転倒です。

収入だけでなく、生活の質全体を考える視点も重要です。多少収入が少なくても、ストレスが少なく、体調が安定し、長く続けられる環境の方が、長期的には幸せな生活につながる場合が多くあります。

段階的なステップアップを考える姿勢も有効です。今はB型事業所で週3日の通所から始め、体調が安定したら通所日数を増やし、さらに安定したらA型事業所や一般就労に挑戦するという段階的な成長を目指すことができます。

相談支援専門員、ソーシャルワーカー、主治医などの専門家と相談しながら、自分に合った選択を見つけていくことが、長期的な生活の安定につながります。

まとめ

B型事業所で月額10万円の工賃を稼ぐことは不可能ではありませんが、全国の事業所のなかでも一部の高工賃事業所に限られる現実があります。IT、デザイン、製造、農業など収益性の高い業務を行う事業所、営業力のある事業所、利用者の能力を活かす事業所などが高工賃を実現しています。工賃を上げるには、通所日数の増加、スキルアップ、担当業務の拡大、事業所の移籍などの方法があります。月額10万円以上を目指す場合は、A型事業所、一般企業の障害者雇用、特例子会社、在宅就労など、B型以外の選択肢も検討する価値があります。障害年金との併用で生活基盤を作ることや、長期的なキャリア視点を持つことも重要です。工賃の金額だけにとらわれず、自分の体調、生活スタイル、長期的な目標を踏まえて、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

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