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就労継続支援B型事業所の工賃が安い理由について、「なぜこんなに安いのか」と疑問や不満を感じている方は多いと思います。
全国平均で月額約16,000円、時給換算で約230円という金額は、最低賃金(全国平均約1,000円)と比べると大きな差があります。
この工賃の低さには、制度上の理由、事業所の経営状況、作業の性質など、様々な要因が複雑に絡み合っています。単に「事業所が搾取している」というような単純な話ではなく、構造的な問題が存在します。
本記事では、B型作業所の工賃が安い理由を多角的に解説し、その背景にある制度や経済的な仕組み、そして今後の改善の可能性について詳しく説明していきます。
就労継続支援B型の工賃の現状(再確認)
全国平均
令和3年度の平均工賃は、月額約16,000円、時給換算で約230円です。
最低賃金との比較
最低賃金(全国平均約1,000円)と比べると、約4分の1程度です。
なぜこれほど低いのか
この大きな差には、明確な理由があります。
工賃が安い主な理由
1. 雇用契約ではないため最低賃金の適用がない
制度上の位置づけ
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばない福祉サービスです。利用者は「労働者」ではなく「福祉サービスの利用者」という扱いになります。
そのため、労働基準法や最低賃金法の適用を受けません。
工賃と給料の違い
給料(賃金):労働の対価として支払われるもので、最低賃金法の適用を受ける
工賃:生産活動の結果として支払われる「配分金」であり、最低賃金法の適用を受けない
なぜ雇用契約ではないのか
対象者の特性:一般企業での就労が困難な障害のある方が対象で、労働義務を課すことが難しい
柔軟性の確保:体調に合わせて出勤日数や作業時間を調整できる柔軟性が必要
就労訓練の場:「働く」だけでなく、「働く訓練をする」場という位置づけ
2. 生産性の課題
作業効率の制約
障害の特性により、作業のスピードや効率が、一般企業の労働者と比べて低い場合があります。
体調の波:体調により、作業ができない日や時間があります
障害による制約:身体的、精神的、知的な障害により、できる作業や作業速度に制限があります
集中力の持続:長時間の連続作業が難しい場合があります
スキルの習得:新しい作業の習得に時間がかかる場合があります
事業所側の配慮
事業所は、利用者の障害特性や体調に配慮しながら作業を提供するため、一般企業のような生産性を求めることができません。
無理をさせない:体調を優先し、無理な作業を強いることができません
個別対応:一人ひとりの能力や体調に合わせた作業配置が必要です
教育に時間をかける:丁寧に教え、習得するまで時間をかけます
3. 低単価の作業が多い
受注できる作業の特性
B型事業所が受注できる作業は、比較的単純で、単価の低いものが多い傾向があります。
内職系の軽作業:袋詰め、シール貼り、部品の組み立てなど、単価が非常に低い
農作業:天候に左右され、収益が不安定
清掃:単価が低く、競争が激しい
単純なデータ入力:クラウドソーシングの普及により、単価が下落傾向
高単価の仕事が取れない理由
専門性の不足:高単価の仕事は、高度なスキルや専門知識が必要
納期の厳守が難しい:利用者の体調の波により、安定した納期管理が難しい
品質の担保:クライアントが求める高品質を常に保つことが難しい
営業力の不足:高単価の仕事を獲得するための営業力が不足している事業所が多い
4. 事業所の収入構造
事業所の収入源
B型事業所の主な収入源は、以下の2つです。
生産活動の売上:作業で得た売上
障害福祉サービス報酬:国や自治体から支払われる給付費
収入の配分
事業所の収入は、以下のように使われます。
人件費:職員の給料(支援員、管理者など)
施設運営費:家賃、光熱費、設備費、材料費など
工賃:利用者への工賃
工賃に回せる金額が限られる
事業所は、職員の給料や施設の運営費を確保する必要があるため、工賃に回せる金額が限られます。
職員の人件費が高い:利用者10人に対して、常勤換算で7.5人以上の職員配置が基準となっており、人件費の負担が大きい
施設運営コスト:作業スペース、設備、材料などのコストがかかる
利益を上げにくい構造:福祉事業であるため、営利を追求しにくい
5. 生産活動の売上が少ない
売上を上げることの難しさ
多くのB型事業所は、生産活動の売上を大きく伸ばすことが難しい状況にあります。
市場競争力の不足:一般企業と比べて、価格や品質で競争することが難しい
販路の限定:販売チャネルが限られており、大量に販売できない
ブランド力の不足:知名度が低く、商品が売れにくい
営業力の不足:営業に専念できる人材が少ない
自主製品の課題
自主製品(パン、クッキー、雑貨など)を作って販売している事業所も多いですが、課題があります。
原価率の高さ:材料費が高く、利益が出にくい
販売量の限界:地域のイベントや直販に頼ることが多く、販売量が限られる
在庫リスク:売れ残りのリスクがある
価格競争:同様の商品を作る他の事業所や一般企業との競争
6. 福祉サービスとしての性格
就労訓練の場
B型事業所は、単に「働く場」ではなく、「働く訓練をする場」でもあります。
教育に時間を割く:作業の指導、生活支援、相談支援などに時間を使います
福祉的支援:作業以外にも、日常生活の相談、健康管理、人間関係の調整などの支援を行います
個別支援計画:一人ひとりの目標に合わせた支援を行います
生産性より人の成長を重視
一般企業のように、生産性や利益を最優先にするのではなく、利用者の成長や自立を重視します。
無理をさせない:体調を最優先し、無理な目標を課しません
失敗を許容する:失敗から学ぶことを重視します
個人のペース:一人ひとりのペースを尊重します
7. 制度的な制約
営利追求の制限
障害福祉サービス事業所は、営利法人が運営することもできますが、基本的には福祉事業であり、過度な営利追求は適切ではないとされています。
給付費の使途制限
国や自治体から支払われる給付費は、主に人件費や運営費に使われることが想定されており、工賃に充てることは想定されていません。
工賃控除の問題
利用者が生活保護を受給している場合、工賃が収入認定され、生活保護費が減額されることがあります(ただし、一定額は控除されます)。このため、工賃を上げすぎると、実質的な手取りが増えないケースもあります。
事業所による差
すべての事業所が同じではない
全国平均は約16,000円ですが、事業所によって大きな差があります。
低工賃事業所:月額5,000円未満
高工賃事業所:月額30,000円~50,000円、中には100,000円を超える事業所も
高工賃を実現している事業所の特徴
独自の製品・サービス:付加価値の高い商品やサービスを開発している
安定した受注:企業や自治体と継続的な取引がある
効率的な生産体制:設備投資や作業の標準化により、生産性を高めている
経営努力:工賃向上を経営目標に掲げ、積極的に取り組んでいる
スキルアップ支援:利用者のスキル向上に力を入れている
工賃向上に向けた取り組み
国の取り組み
工賃向上計画:事業所に工賃向上計画の策定を求めています
補助金:工賃向上のための設備投資などに補助金を出しています
共同受注窓口:複数の事業所が共同で受注することで、大口案件を獲得しやすくしています
優先調達推進法:国や自治体が、障害者就労施設から優先的に物品やサービスを調達することを推進しています
事業所の取り組み
高付加価値商品の開発:オリジナルブランドの確立、デザイン性の向上
販路拡大:オンライン販売、企業との提携、ふるさと納税の活用
生産性向上:設備投資、作業の標準化、効率化
職員のスキルアップ:営業力、マーケティング力の向上
利用者個人の取り組み
スキルアップ:専門スキルの習得、資格取得
作業効率の向上:慣れ、工夫、集中力の向上
出勤日数・時間の増加:体調管理により、安定して出勤する
工賃が安いことへの対処法
制度を理解する
工賃が安い理由を理解することで、不満や不信感が和らぐことがあります。
障害年金との組み合わせ
工賃だけでは生活できませんが、障害年金や各種手当と組み合わせることで、生活を成り立たせることができます。
高工賃事業所を選ぶ
事業所選びの際に、平均工賃を確認し、高工賃を実現している事業所を選ぶことも選択肢です。
スキルアップして一般就労を目指す
B型事業所をステップとして、スキルを身につけ、就労移行支援や一般就労(障害者雇用枠)を目指すことも考えられます。
工賃以外の価値を認識する
工賃だけでなく、「働く訓練の場」「居場所」「社会参加」「スキル習得」といった価値も大切にしましょう。
まとめ
B型作業所の工賃が安い理由は、単純に「事業所が悪い」というわけではなく、以下のような構造的な要因があります。
雇用契約ではないため最低賃金法の適用がない、障害特性による生産性の制約、低単価の作業が多い、事業所の収入構造上の制約、生産活動の売上が少ない、福祉サービスとしての性格、制度的な制約などです。
この現状を変えるには、国の制度改革、事業所の経営努力、そして利用者個人のスキルアップなど、多方面からの取り組みが必要です。
工賃の低さは確かに課題ですが、B型事業所には、働く訓練の場、居場所、社会参加の機会といった、お金には代えられない価値もあります。工賃向上を目指しつつ、制度を理解し、自分に合った事業所を選び、将来のステップアップも視野に入れながら、前向きに取り組んでいくことが大切です。
あなたに合った働き方が見つかり、充実した日々を過ごせることを心から願っています。
注意:この記事は一般的な情報提供を目的としています。具体的な制度や事業所の状況は、地域や事業所によって異なります。詳しくは、お住まいの市町村の障害福祉窓口や相談支援事業所にご相談ください。

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