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1. 軽度でも適切な理解と支援が重要
「読むのが遅い」「読み間違いが多い」「文章を書くのが苦手」
でも、知的能力に問題があるわけではない。このような場合、ディスレクシア(読字障害)の可能性があります。
ディスレクシアは、限局性学習症(LD/SLD)の一つで、知的能力にかかわらず、読み書きの習得や使用に特有の困難がみられる発達障害です。軽度の場合は気づかれにくく、本人も周囲も「努力不足」「やる気の問題」と誤解してしまうことがあります。
重要なのは、軽度であっても、本人が大きな苦労を抱えていることがあるという点です。適切な理解と支援によって、読み書きの負担を減らし、持っている力を発揮しやすくなります。「努力が足りない」のではなく、脳の情報処理の特性によって読み書きに困難が生じることがあると理解することが、支援の第一歩です。
2. ディスレクシア(読字障害)とは
まず、ディスレクシアについて基本的な理解を深めましょう。
定義
ディスレクシアは、十分な教育を受けているにもかかわらず、文字を正確かつ流暢に読むことや、読み書きを習得することに持続的な困難がみられる状態です。
知的能力の低さが原因で起こるものではなく、視力や聴力の問題だけで説明できるものでもありません。読み書きの困難の程度や現れ方には個人差があります。
発生頻度
ディスレクシアの頻度については、調査方法や診断基準によって報告に幅がありますが、決して珍しいものではありません。
日本語では、ひらがな・カタカナ・漢字など、それぞれ異なる特徴を持つ文字を使うため、読み書きの困難の現れ方にも個人差があります。
原因
脳の言語処理、特に音韻処理(文字と音を結びつける処理)など、言語情報を処理する働きの違いが関係していると考えられています。遺伝的な要因も関係しており、家族にディスレクシアや読み書きの困難がある場合、本人にも同様の特徴がみられる可能性があります。
ただし、原因が一つに決まっているわけではなく、複数の要因が関係していると考えられています。
知的能力との関係
ディスレクシアは、知的能力の低さによって起こるものではありません。知的能力が平均的な人だけでなく、平均以上の人にもみられることがあります。
そのため、「読めないから理解力が低い」「書くのが苦手だから勉強ができない」と判断するのは適切ではありません。読み書きの苦手さと、その人が本来持っている知的能力は分けて考えることが大切です。
軽度ディスレクシアとは
ディスレクシアの困難の程度や現れ方には個人差があります。「軽度ディスレクシア」は、読み書きの困難が比較的軽く、周囲から気づかれにくかったり、本人が工夫して何とか対応していたりする場合に使われる表現です。
しかし、「軽度」といっても、本人にとって負担が小さいとは限りません。読むことや書くことに人より時間がかかり、疲れやすくなったり、自信を失ったりすることがあります。
3. 軽度ディスレクシアの主な症状
軽度ディスレクシアの人にみられる読み書きの特徴を見ていきましょう。
読みに関する症状
読むのが遅い
- 同年代の子どもや大人に比べて、文章を読むのに時間がかかる
- 音読に時間がかかる
- 黙読でも時間がかかる
読み間違いが多い
- 似た形の文字や、似た音の文字を読み間違えることがある
- 文字や音の順序を入れ替えて読むことがある
- 行を飛ばしたり、同じ行を繰り返し読んだりすることがある
読んでも内容が頭に入りにくい
- 文章を読み終わっても、内容を十分に理解できないことがある
- 何度も読み返すことで理解しやすくなる
- 長い文章になると、特に負担が大きくなる
音読が苦手
- つっかえながら読む
- 読み飛ばしや読み間違いが多い
- 一文字ずつ読むことに集中し、文章を滑らかに読むのが難しい
漢字を読むのが苦手
- 学年相応の漢字を読むことに時間がかかる
- 漢字を読めても、その意味を理解するのに時間がかかることがある
書きに関する症状
書くのが遅い
- ノートを取るのに時間がかかる
- 板書を写すのが間に合わない
- 書くことに集中すると、授業の内容を聞き取る余裕がなくなることがあります。
誤字・脱字が多い
- 似た形の文字を書き間違える
- 「てにをは」などを間違えることがある
- 単語や文字を抜かして書くことがある
漢字を書くのが苦手
- 学年相応の漢字を書くことが難しい
- 覚えた漢字を思い出すのに時間がかかる
- 「へん」と「つくり」の位置を間違えるなど、漢字の構成を誤ることがある
鏡文字
- 文字を左右反転させて書くことがある
- 幼児期にはみられることがありますが、学童期以降も続く場合には、読み書き全体の様子を確認することが大切です。
マス目に収まりにくい
- 文字の大きさやバランスを整えることが難しい
- マス目から文字がはみ出すことがある
文章を書くのが苦手
- 作文を書くことに時間がかかる
- 書きたいことはあっても、文章にまとめるのが難しい
- 読み書きへの負担が大きいため、文章を書くこと自体を避けるようになることもあります。
その他の症状
音の認識が苦手
- 似た音を聞き分けたり、言葉の中の音を意識したりすることが難しい場合がある
- 長い言葉や複雑な言葉を正確に聞き取ることに負担を感じることがある
暗記が苦手
- 九九、曜日、月の名前など、音と文字を結びつけて覚えることに負担を感じる場合があります。
- 覚えるまでに時間がかかったり、覚えたことを思い出すのに時間がかかったりすることがあります
左右の区別などに苦手さがみられることがある
- 左右の区別に迷うことがある
- 時計を読むことに苦手さを感じることがある
※こうした特徴は、ディスレクシアのすべての人にみられるわけではありません。左右の区別や時計の読みづらさだけで、ディスレクシアと判断することはできません。
集中力の問題
- 読み書きの課題に取り組むと、すぐに疲れる
- 長時間の読み書きで集中を続けることが難しくなる
- 読み書きそのものに大きな負担がかかるため、結果として集中しにくくなることがあります。
4. 軽度ディスレクシアが見過ごされやすい理由
軽度の場合、困難が目立ちにくいため、ディスレクシアに気づかれず、必要な支援を受けないまま成長することがあります。
知的能力が高い場合もある
知的能力が平均以上の場合、他の教科で良い成績を取ったり、口頭での説明が得意だったりするため、読み書きの困難が「個性」や「得意不得意」と見なされることがあります。
読み書き以外では問題なくできることが多いほど、本人の努力や工夫で乗り越えていると捉えられやすい点も、見過ごされる理由の一つです。
代わりの方法を身につける
本人は、読み書きの苦手さを補うために、自分なりの工夫や方法を身につけることがあります。
- 音読の宿題では、家族に読んでもらったり、先に内容を覚えたりする
- 漢字テストの前に繰り返し暗記するものの、覚えた漢字を思い出すのに時間がかかる
- 文章問題を後回しにして、計算問題から取り組む
このような工夫によって、一見すると問題なくできているように見えるため、読み書きの困難が表面化しにくくなることがあります。
「努力不足」と誤解される
「もっと練習すれば読めるようになる」「集中していない」「やる気がない」など、本人の努力不足や怠けが原因だと誤解されることがあります。
しかし、同じ練習を繰り返しても、読み書きの困難が簡単には改善しない場合があります。できないことだけを見るのではなく、どこでつまずいているのかを確認することが大切です。
本人も気づいていない
子どもの頃から読み書きが苦手なため、それが「自分にとって普通のこと」だと思い、本人自身がディスレクシアの可能性に気づいていないことがあります。
周囲と同じようにできない経験が続くと、「自分は勉強が苦手」「頭が悪い」と捉えてしまうこともあります。
他の症状が目立つ
ADHD(注意欠如・多動症)など、ほかの発達障害や学習上の困難が併存している場合、目立つ症状に注目が集まり、ディスレクシアの困難が見過ごされることがあります。
また、複数の困難が重なることで、本人が抱えている負担がより大きくなる場合もあります。
5. 軽度ディスレクシアの日常生活への影響
軽度であっても、読み書きの困難によって、学校生活や仕事、日常生活のさまざまな場面で負担を感じることがあります。
学業への影響
国語(日本語)が苦手
- 漢字テストで思うように点数が取れない
- 読解問題に時間がかかる
- 作文を書くことに時間がかかる、または苦手に感じる
他の教科でも影響
- 教科書や問題文を読むのに時間がかかる
- 問題文を読むことに時間がかかり、内容を理解する前に疲れてしまう
- ノートを取るのが遅く、授業についていくことが難しくなる
宿題に時間がかかる
- 読書の宿題や漢字の練習に時間がかかる
- 周囲より宿題に時間がかかり、勉強そのものに疲れ切ってしまうことがあります。
テストで実力を発揮しにくい
- 問題文を読むのに時間がかかり、時間内に終わらない
- 読み間違いによって、本来なら解ける問題を間違える
- 知識や理解力があっても、読み書きの負担によって本来の力を十分に発揮できないことがあります。
心理的な影響
自己肯定感の低下
- 「自分はダメだ」「頭が悪い」と思い込んでしまう
- 頑張っても周囲と同じようにできず、自信を失う
- 失敗した経験が積み重なることで、新しいことに挑戦するのを避けるようになることがあります。
不安・ストレス
- 音読で指名されることへの不安
- 漢字テストへの不安
- 勉強への強いストレスを感じる
- こうした負担が続くと、学校に行くこと自体がつらくなる場合もあります。
いじめのリスク
- 音読が遅い、漢字が書けないなどの特徴を理由に、からかわれたり、いじめにつながったりすることがあります。
- 本人の努力だけでは解決しにくいため、周囲が困難を理解し、必要に応じて学校と連携して対応することが大切です。
社会生活への影響(大人の場合)
仕事での困難
- メールや書類を読むのに時間がかかる
- 報告書や文章を作成することに時間がかかる
- 誤字脱字が多く、周囲から指摘されることがある
- 読み書きに時間がかかることで、仕事そのものよりも書類作成や情報確認に多くのエネルギーを使ってしまうことがあります。
日常生活での困難
- 長い契約書や説明書を読むことに負担を感じる
- 手紙やメールを書くことを億劫に感じる
- 必要な情報を読むだけでも時間がかかるため、手続きや予定の確認に負担を感じることがあります。
自己評価の低さ
- 学生時代からの「読む・書くのが苦手」という経験から、自分に自信を持てなくなる
- 周囲から繰り返し指摘された経験によって、「自分は仕事ができない」と思い込んでしまうことがある
ディスレクシアがあっても、読み書き以外の能力まで低いとは限りません。本人に合った方法や環境を工夫することで、得意な分野や能力を活かしやすくなる場合があります。
6. 診断方法
ディスレクシアの評価・診断は、本人の発達歴や読み書きの状態、知的能力、学習面での困難などを専門的に確認し、総合的に判断します。
相談・評価を行う専門家
- 発達を専門とする小児科医
- 児童精神科医
- 発達障害を専門とする精神科医
- 公認心理師・臨床心理士
- 言語聴覚士(ST)
医師が診断を行う一方、心理職や言語聴覚士などが、知能検査や読み書きの検査などを通して、本人の得意・不得意や困難の特徴を詳しく評価することがあります。
診断の流れ
問診
- 幼少期からの発達の様子
- 読み書きや学習の状況
- 学校生活や仕事での困りごと
- 家族歴
- これまで受けてきた支援や教育の状況
知能検査
WISC(ウェクスラー式知能検査)などを用いて、知的能力の全体的な特徴や、得意・不得意の傾向を確認します。
ただし、ディスレクシアを知能検査だけで診断することはできません。IQの数値や検査項目の「凸凹」だけでディスレクシアと判断することもできません。
読み書きの検査
- 音読の速さや正確さ
- 読んだ内容を理解する力
- ひらがな・カタカナ・漢字などの読み書き
- 文章を書く力
などを評価します。
音韻処理などの評価
言葉を音の単位として捉える力や、文字と音を結びつける力など、読み書きに関係する言語処理の特徴を確認することがあります。
視覚・聴覚などの確認
視力や聴力の問題によって読み書きの困難が生じていないかなど、ほかの要因についても確認します。
診断の考え方
ディスレクシアを含む限局性学習症(LD/SLD)の評価では、年齢や学年から期待される水準と比べて読み書きに持続的な困難があり、それが学習や日常生活に影響しているかなどを確認します。
また、知的能力だけでなく、教育環境や視聴覚の問題、ほかの発達上の特性なども含めて総合的に判断します。
「軽度ディスレクシア」という表現は、読み書きの困難が比較的軽いことを説明するために使われることがありますが、必ずしも独立した正式な診断名というわけではありません。
7. 対処法と支援
軽度ディスレクシアに対する対処法や支援は、本人が苦手なことだけを繰り返し練習するのではなく、困難を減らし、得意な方法で学べる環境を整えることが大切です。
学校での支援
合理的配慮
ディスレクシアなどによって学習に困難がある場合、本人の状況に応じて、学習や評価の方法を調整する「合理的配慮」について学校と相談できる場合があります。
配慮の例
- テスト時間の延長
- 問題文の読み上げ
- 漢字にふりがなを付ける
- パソコンやタブレットで文章を入力する
- 宿題の量や方法を調整する
- テストを落ち着いて受けられる環境を用意する
- 必要に応じて、口頭で回答する方法を検討する
配慮の内容は、本人の困難の程度や学校の状況などによって異なります。
通級による指導
通常の学級に在籍しながら、**読み書きなど特定の困難に対する指導を別の場所で受ける「通級による指導」**を利用できる場合があります。
特別支援学級など
学習上の困難が大きい場合には、本人の教育的ニーズに応じて、特別支援学級などで学ぶことも選択肢の一つです。
家庭でできること
音読の練習
- 家族と一緒に読む
- 短い文章から始める
- 本人が無理なく取り組める時間にする
- 間違いを何度も指摘するのではなく、できた部分を認めながら進める
読み書きの練習は、本人が疲れ切るまで続ける必要はありません。「できるようになるまで頑張る」よりも、負担を調整しながら継続できる方法を探すことが大切です。
読み聞かせ
自分で読むことが難しい場合でも、文章を聞くことで内容を理解したり、語彙や知識を増やしたりできます。
視覚的な工夫
- 大きめの文字や読みやすい教材を使う
- 行間が広い教材を選ぶ
- 読んでいる行以外をカードなどで隠す
- 本人が読みやすい表示方法を試す
※色付きの下敷きなどが読みやすさにつながる人もいますが、効果には個人差があります。
ICTの活用
- パソコンやタブレットを活用する
- 音声読み上げ機能を使う
- 音声入力を使う
- 漢字変換機能を活用する
- 教科書や教材をデジタルで利用する
ICTは「楽をするため」ではなく、読み書きの負担を減らし、学習内容そのものに集中しやすくするための方法として活用できます。
褒める・励ます
- できたことを認める
- 努力した過程を認める
- 本人の得意なことにも目を向ける
- 「読み書きが苦手でも、能力が低いわけではない」と伝える
専門家による支援
言語聴覚士(ST)などによる支援
- 音韻処理など、読み書きに関係する力への支援
- 読み書きの個別指導
- 本人に合った学習方法の検討
必要に応じて、学校や家庭と連携しながら、本人に合った方法を探していきます。
学習塾・家庭教師
ディスレクシアなどの学習上の困難について理解があり、本人の特性に合わせた指導ができる教育機関や家庭教師を選ぶことも一つの方法です。
本人ができること
自分の特性を理解する
自分がどのような場面で読み書きに困りやすいのかを知ることは、適切な方法を選ぶために役立ちます。
自分に合った方法を身につける
- 音声読み上げを使う
- 音声入力を使う
- 必要な情報を録音して後から聞く
- 図や箇条書きでメモを取る
- パソコンやスマートフォンで文章を作成する
得意なことを活かす
読み書きの苦手さだけで自分の能力を判断せず、話すこと、考えること、作ること、人と関わることなど、自分が得意な方法を見つけて活かすことが大切です。
助けを求める
困ったときには、一人で抱え込まず、先生や家族、専門家などに「何が難しいのか」を具体的に伝えることも大切です。
8. 軽度ディスレクシアの強み
ディスレクシアがあるからといって、すべての人に共通する特別な能力があるわけではありません。
一方で、読み書き以外の分野に得意なことを持っている人もいます。
得意な方法で考えられる
文章よりも、図や実物、会話などを使ったほうが理解しやすい人もいます。
問題を別の方法から考える
読み書きに頼らず、実際に試したり、図にしたり、人と話したりしながら問題を解決することが得意な人もいます。
空間認識が得意な人もいる
図形や立体などをイメージすることが得意な人もいます。
ただし、空間認識能力や創造性が高いことがディスレクシアの必ず備わる特徴というわけではありません。
口頭でのコミュニケーションが得意な人もいる
文章を書くより、話すことで自分の考えを表現するほうが得意な人もいます。
人の気持ちを理解しやすい場合もある
自分自身の経験から、他人の困難に関心を持つ人もいます。
ただし、共感力についても個人差があり、「ディスレクシアの人は共感力が高い」と一律に考えることはできません。
実例について
ディスレクシアの著名人として紹介される人物には、本人が公表している場合がある一方、後から「ディスレクシアだった」と推測されている人物もいます。大切なのは、本人の得意なことや能力を個別に見ることです。
実例
多くの成功者がディスレクシアを持っていました。
- アルバート・アインシュタイン(物理学者)
- トーマス・エジソン(発明家)
- スティーブ・ジョブズ(Apple創業者)
- トム・クルーズ(俳優)
- オーランド・ブルーム(俳優)
- キイラ・ナイトレイ(俳優)
9. 大人の軽度ディスレクシア
気づくきっかけ
- 自分の子どもが読み書きの困難について調べる中で、自分にも似た特徴があると気づく
- 仕事で文章を読む・書く機会が増え、困難を強く感じるようになる
- ディスレクシアについて知り、「自分にも当てはまるかもしれない」と気づく
大人の症状
- 読む速度が遅く、長い文章を読むと疲れやすい
- 読書や文章を読むことを避ける
- メールや書類を作成するのに時間がかかる
- 誤字脱字が多い
- 漢字を思い出すのに時間がかかる
- 文章を読む・書くことに大きな負担を感じる
症状の現れ方には個人差があり、子どもの頃からの工夫によって、大人になるまで困難に気づかない人もいます。
診断
大人の場合も、発達障害を専門とする精神科や心療内科などで相談できる場合があります。
ただし、すべての医療機関がディスレクシアの詳しい評価に対応しているとは限りません。受診前に、読み書きの評価や発達障害の相談に対応しているか確認すると安心です。
対処法
- ICTツール(音声読み上げ、音声入力など)を活用する
- 書類作成などで自分に合った方法を工夫する
- 必要に応じて職場に配慮を相談する
- 読み書き以外の得意な能力を仕事に活かす
職場での配慮は、仕事内容や本人の困難によって異なります。「何が苦手か」だけでなく、「どうすれば仕事をしやすくなるか」を具体的に伝えることがポイントです。
10. よくある質問(FAQ)
Q 軽度ディスレクシアは治りますか?
A ディスレクシアは、一般的な病気のように「治す・治さない」だけで考えるものではありません。読み書きの特性は長期的に続くことがありますが、適切な学習方法や支援、ICTの活用などによって、読み書きの力を伸ばしたり、困難を軽減したりすることは可能です。
Q 英語など他の言語も苦手ですか?
A 言語によって読み書きの難しさの現れ方は異なります。ディスレクシアは、英語など別の言語でも読み書きの困難がみられることがあります。
特に英語は、文字と音の対応が日本語より複雑なため、英語の読み書きで困難が目立つ人もいます。ただし、すべての人に同じように当てはまるわけではありません。
Q 親の育て方が原因ですか?
A いいえ。ディスレクシアは、親の育て方や本人の努力不足が原因で起こるものではありません。遺伝的な要因を含め、脳の発達や情報処理の特徴など、複数の要因が関係すると考えられています。
Q ディスレクシアだと、大学進学や就職は難しいですか?
A ディスレクシアがあるからといって、大学進学や就職ができないわけではありません。自分に合った学習方法や支援を取り入れることで、進学や就労を目指すことができます。
読み書きの困難があっても、学習や仕事の方法を工夫することで、自分の能力を活かせる場合があります。
Q どんな職業が向いていますか?
A ディスレクシアだけを理由に、特定の職業が「向いている」「向いていない」と決めることはできません。
大切なのは、本人の得意なことや興味、読み書きの困難の程度、職場環境などを総合的に考えることです。
例えば、口頭でのコミュニケーション、ものづくり、実際に手を動かす作業など、自分の得意な方法を活かせる仕事が向いている人もいます。
Q 診断を受けるメリットは何ですか?
A 診断や専門的な評価によって、自分がどのような場面で困りやすいのかを理解し、本人に合った支援や学習方法を検討しやすくなることがあります。
学校や職場で配慮を相談する際にも、困難の内容を具体的に説明する材料になる場合があります。
なお、障害者手帳は診断を受ければ自動的に取得できるものではありません。精神障害者保健福祉手帳などについては、一定の条件を満たす必要があります。
Q 子どもがディスレクシアかもしれません。どうすればいいですか?
A まずは、担任の先生や学校の特別支援教育担当者、スクールカウンセラー、発達を専門とする医療機関などに相談してみましょう。
「読むのに時間がかかる」「漢字を覚えにくい」「板書が間に合わない」など、具体的にどのような場面で困っているのかを伝えることが、支援につながる第一歩です。
必ずしも診断を待たなければ支援ができないわけではありません。本人の困りごとに応じて、できる工夫から始めることも大切です。
Q 「軽度」だから、支援は必要ないのでは?
A いいえ。「軽度」という言葉だけで、本人の負担の大きさを判断することはできません。
読む・書くことに時間がかかることで、勉強や仕事に人より多くの時間やエネルギーを使っている場合があります。本人がどれくらい困っているかを基準に、必要な支援を考えることが大切です。
まとめ
軽度ディスレクシアは、読み書きの困難が比較的目立ちにくく、「努力不足」「やる気の問題」と誤解されることがあります。
しかし、ディスレクシアは本人の努力不足によって起こるものではなく、読み書きに関わる情報処理の特徴によって、特有の困難が生じることがあります。
適切な理解と支援によって、読み書きの負担を軽減し、本人が持っている力を発揮しやすい環境をつくることができます。
学校では合理的配慮や学習方法の工夫、家庭では読み聞かせやICTの活用など、できる支援はさまざまです。
大人の場合も、音声読み上げや音声入力などを利用したり、職場で必要な配慮を相談したりすることで、負担を減らせる場合があります。
「軽度だから大丈夫」と考えるのではなく、本人がどのような場面で困っているのかに目を向けることが大切です。
自分や家族がディスレクシアかもしれないと感じた場合は、一人で「努力が足りない」と抱え込まず、学校や医療機関、専門家などに相談してみましょう。

