1. 休職中の給料と経済的サポート
適応障害で休職を考えているとき、最も不安なのが「給料はどうなるのか」「生活費はどうすればいいのか」という経済的な問題です。まず知っておいてほしいのは、休職中でも経済的なサポートを受けられる制度があるということです。
休職1ヶ月の場合、会社の就業規則や雇用形態によって、給与の扱いが異なります。給与が出ない場合でも、健康保険から「傷病手当金」が支給される可能性があります。これは給与の約3分の2が最長1年6ヶ月まで受け取れる制度です。
重要なのは、経済的な不安で治療を先延ばしにしないことです。体と心の健康が第一です。適切な制度を利用すれば、経済的な心配を軽減しながら、治療に専念できます。焦らず、まずは制度を理解し、必要な手続きを進めていきましょう。
2. 休職中の給料はどうなるのか
休職中の給料の扱いは、会社の就業規則や雇用形態によって異なります。
会社から給料が出るケース
有給休暇の消化 まず有給休暇が残っている場合、それを使うことで通常の給与が支払われます。有給休暇を使い切ってから、休職に入るという流れが一般的です。
休職中も給与が出る会社 一部の大企業や公務員などでは、休職期間の一定期間(例 最初の1〜3ヶ月)は給与の全額または一部が支給されることがあります。ただし、これは会社によって大きく異なります。
確認方法 就業規則や社内規定を確認するか、人事部門に問い合わせましょう。
会社から給料が出ないケース
多くの企業では、休職期間中は「無給」となります。この場合、健康保険から傷病手当金を受け取ることになります。
雇用形態による違い
正社員 健康保険に加入していれば、傷病手当金を受給できます。
契約社員・派遣社員 健康保険に加入していれば、傷病手当金を受給できます。ただし、契約期間の問題があるため、契約更新や解雇のリスクを確認しておく必要があります。
パート・アルバイト 健康保険に加入していれば、傷病手当金を受給できます。ただし、加入条件(週20時間以上勤務など)を満たしている必要があります。
国民健康保険の加入者 残念ながら、国民健康保険には傷病手当金の制度がありません(一部の自治体を除く)。自営業者やフリーランスの方は、別の対策が必要です。
3. 傷病手当金とは
傷病手当金は、休職中の生活を支える重要な制度です。
傷病手当金の概要
健康保険に加入している会社員などが、病気やケガで働けなくなったときに、健康保険から支給される手当です。
支給条件
以下の4つの条件を満たす必要があります。
1. 業務外の病気やケガで療養中であること 適応障害、うつ病などの精神疾患も対象です。業務上の病気やケガは、労災保険の対象となります。
2. 療養のため、労務に服することができないこと 医師が「働けない」と判断していることが必要です。診断書に記載されます。
3. 連続して3日間休んだ後、4日目から支給される 最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、支給されません。4日目から支給が始まります。
4. 休業期間中、給与の支払いがないこと 給与が一部支給されている場合、傷病手当金との差額が支給されます。
支給額
標準報酬日額の3分の2が支給されます。
計算式 (標準報酬月額 ÷ 30日)× 2/3
例えば、標準報酬月額が30万円の場合、 30万円 ÷ 30日 = 10,000円(標準報酬日額) 10,000円 × 2/3 = 6,667円(1日あたりの支給額) 6,667円 × 30日 = 約20万円(1ヶ月あたり)
つまり、おおよそ給与の3分の2が支給されます。
支給期間
同一の病気やケガについて、最長1年6ヶ月まで支給されます。
ただし、途中で復職した期間があっても、1年6ヶ月のカウントは進みます(通算されます)。
休職1ヶ月の場合
休職1ヶ月であれば、最初の3日間(待期期間)を除いた約27日分が支給されます。
4. 傷病手当金の申請方法
傷病手当金を受け取るには、申請手続きが必要です。
申請の流れ
ステップ1 医師に診断書を書いてもらう まず、医師に「適応障害で就労不能」という診断書を書いてもらいます。
ステップ2 会社に休職を申し出る 診断書を提出し、休職の手続きを行います。
ステップ3 傷病手当金支給申請書を入手する 会社の人事部門、または加入している健康保険組合(協会けんぽ、組合健保など)から申請書を入手します。
ステップ4 申請書に記入する 申請書は以下の4つの部分で構成されています。
- 被保険者(本人)が記入する欄 氏名、住所、振込口座など
- 事業主(会社)が記入する欄 勤務状況、給与の支払い状況など
- 医師が記入する欄 病名、労務不能の期間など
- 添付書類 診断書など(健康保険によって異なる)
ステップ5 会社を通じて提出 記入済みの申請書を会社に提出します。会社が記入欄を埋めて、健康保険に提出します。
ステップ6 審査・振込 健康保険で審査が行われ、通常1〜2ヶ月後に、指定口座に振り込まれます。
申請のタイミング
傷病手当金は、休職期間が終わってから申請することが一般的です。ただし、1ヶ月ごとに申請することも可能です。
休職1ヶ月の場合、1ヶ月分をまとめて申請します。
必要書類
- 傷病手当金支給申請書
- 医師の意見書(診断書)
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 振込口座情報
注意点
診断書の費用 診断書の作成には、数千円の費用がかかります(自己負担)。
待期期間 最初の3日間は支給されません。有給休暇を使う、または無給で過ごすことになります。
申請から振込までの時間 審査に時間がかかるため、すぐにお金が入るわけではありません。当面の生活費は確保しておく必要があります。
5. 休職1ヶ月の生活費をどうするか
休職1ヶ月の場合、傷病手当金の振込まで時間がかかるため、当面の生活費を確保する必要があります。
有給休暇を使う
有給休暇が残っていれば、まずそれを使います。有給休暇中は通常の給与が支払われるため、生活費の心配がありません。
貯蓄を使う
傷病手当金が振り込まれるまでの間(1〜2ヶ月)、貯蓄でつなぎます。
家族に相談する
一時的に家族に援助してもらうことも検討します。傷病手当金が入ったら返済することもできます。
生活費を見直す
休職中は収入が減るため、支出を見直します。
- 不要な定期購入を解約する
- 外食を減らす
- 娯楽費を抑える
- 固定費(通信費など)を見直す
カードローンや消費者金融は避ける
利息が高く、返済が負担になるため、できるだけ避けましょう。どうしても必要な場合は、金利の低い銀行系のローンを検討します。
社会福祉協議会の生活福祉資金貸付
低所得者や障害者、高齢者などを対象とした、低金利または無利子の貸付制度があります。市区町村の社会福祉協議会に相談してください。
6. その他の経済的サポート
傷病手当金以外にも、利用できる制度があります。
医療費の軽減
自立支援医療(精神通院医療) 精神科の通院医療費の自己負担が、3割から1割に軽減されます。市区町村の障害福祉窓口で申請できます。
高額療養費制度 1ヶ月の医療費が高額になった場合、自己負担限度額を超えた分が払い戻されます。
税金の軽減
医療費控除 年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合、確定申告により税金が還付されます。
障害者控除 精神障害者保健福祉手帳を取得すれば、所得税や住民税の控除が受けられます(ただし、適応障害で手帳が取得できるかは症状の程度による)。
生活保護
収入や資産がなく、生活が困窮している場合、生活保護を申請できます。市区町村の福祉事務所に相談してください。
ただし、傷病手当金を受給できる場合は、まずそちらを利用することになります。
障害年金
適応障害で障害年金を受給することは通常難しいですが、症状が重く長期化し、日常生活や就労に著しい支障がある場合は、検討の余地があります。
7. 休職1ヶ月後の選択肢
休職1ヶ月が終わった後の選択肢を考えておきましょう。
復職する
症状が改善し、医師が就労可能と判断すれば、復職します。
段階的復職 最初は短時間勤務や軽作業から始め、徐々に通常勤務に戻します。
休職を延長する
1ヶ月で十分に回復しない場合、休職を延長します。医師の診断書を提出し、会社と相談します。
傷病手当金は最長1年6ヶ月まで受給できるため、経済的な支えがあります。
退職する
復職が難しい、または職場環境が原因で適応障害になった場合、退職も選択肢です。
失業保険 退職後、ハローワークで求職の申し込みをすれば、失業保険を受給できます。ただし、病気療養中は「就労可能」ではないため、すぐには受給できません。回復後に受給する形になります。
また、適応障害で退職した場合、「特定理由離職者」として、失業保険の給付制限期間が短縮される可能性があります。
傷病手当金の継続 退職しても、一定の条件を満たせば、傷病手当金を継続して受給できます。
条件
- 退職日まで継続して1年以上健康保険に加入していた
- 退職日に傷病手当金を受給している、または受給できる状態にあった
働き方を変える
同じ職場に戻ることが難しい場合、働き方を変えることも検討します。
- 転職する
- パートタイムやアルバイトで働く
- 在宅勤務やフリーランスになる
- 就労支援を利用する
8. 休職中の過ごし方
休職1ヶ月をどう過ごすかが、回復に大きく影響します。
十分に休む
最初の1〜2週間は、とにかく休むことを優先します。無理に何かをしようとせず、体と心を休めます。
生活リズムを整える
毎日同じ時間に起きる、寝る、食事をすることで、心身のリズムが整います。
治療に専念する
定期的に通院し、医師の指示に従います。薬が処方されている場合は、指示通りに服用します。
軽い運動を取り入れる
散歩などの軽い運動は、気分の改善に効果があります。無理のない範囲で取り入れましょう。
趣味やリラックスできることをする
少しでも楽しいと感じられることがあれば、無理のない範囲で取り組みます。
仕事のことは考えない
休職中は、できるだけ仕事のことを考えないようにします。メールやLINEも見なくてOKです。
焦らない
「1ヶ月で治さなければ」と焦ると、かえってストレスになります。「少しずつ良くなればいい」と考えましょう。
9. 会社とのコミュニケーション
休職中の会社とのやり取りも気になるところです。
休職の申し出
医師の診断書を提出し、休職を申し出ます。人事部門や上司に、いつから休職するか、期間はどれくらいかを伝えます。
定期的な報告
会社によっては、休職中も定期的に状況報告を求められることがあります。ただし、頻繁な連絡はストレスになるため、月1回程度の報告にしてもらうよう相談しましょう。
復職の相談
復職のタイミングや条件について、会社と相談します。産業医がいる場合、産業医面談を行います。
無理な連絡には応じない
休職中は治療に専念する期間です。頻繁な連絡や、業務に関する問い合わせには応じる必要はありません。
トラブルがある場合
会社が休職を認めない、不当な扱いを受けるなどのトラブルがある場合は、労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。
10. よくある質問(FAQ)
Q 休職1ヶ月だと、傷病手当金はいくらもらえますか?
A 給与の約3分の2が支給されます。ただし、最初の3日間(待期期間)は支給されないため、約27日分となります。標準報酬月額が30万円の場合、約20万円が支給されます。
Q 傷病手当金はいつ振り込まれますか?
A 申請から通常1〜2ヶ月後に振り込まれます。すぐには入らないため、当面の生活費は別途確保しておく必要があります。
Q 有給休暇を使った方がいいですか?
A 経済的には、有給休暇を使った方が給与が全額出るため有利です。ただし、有給休暇を使い切ってしまうと、今後使えなくなります。状況に応じて判断しましょう。
Q 休職中も社会保険料は払うのですか?
A はい、休職中も社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は発生します。通常、会社が立て替え、復職後に給与から天引きされるか、または休職中に自分で支払います。
Q パートやアルバイトでも傷病手当金はもらえますか?
A 健康保険に加入していれば、もらえます。ただし、国民健康保険には傷病手当金の制度がありません(一部の自治体を除く)。
Q 休職中にバイトをしてもいいですか?
A 傷病手当金は「労務に服することができない」ことが条件です。バイトができる状態であれば、支給が停止されます。また、会社の就業規則で副業が禁止されている場合、バイトはできません。
Q 1ヶ月で復職できなかった場合はどうなりますか?
A 休職を延長できます。医師の診断書を提出し、会社と相談します。傷病手当金も、最長1年6ヶ月まで受給できます。
Q 休職中に旅行に行ってもいいですか?
A 療養に専念することが目的のため、遊びの旅行は控えるべきです。ただし、医師が「転地療養」として認めた場合は問題ありません。SNSなどに投稿すると、会社に知られてトラブルになる可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
適応障害で休職1ヶ月の場合、経済的な不安は大きいですが、傷病手当金などの制度を利用すれば、給与の約3分の2を受け取ることができます。経済的な心配よりも、まずは体と心の健康を優先してください。適切な休養と治療により、多くの方が回復し、復職しています。焦らず、一歩ずつ前に進んでいきましょう。必要な手続きをしっかり行い、制度を活用しながら、回復に専念してください。

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