統合失調症の陽性症状とは何か…症状の特徴と治療、生活への影響

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「誰かの声が聞こえる」「周囲から監視されている気がする」「テレビやインターネットの情報が自分に向けられているように感じる」。

こうした体験は、本人にとっては決して「気のせい」ではありません。統合失調症の陽性症状では、本人には現実そのもののように感じられる幻覚や妄想が生じることがあります。

そのため、周囲から見ると理解しにくい言動であっても、本人の中では筋の通った理由がある場合があります。家族が「そんなことは起きていない」と否定し続けるだけでは、本人との関係が悪化し、治療につながりにくくなることもあります。

一方で、統合失調症は治療によって症状を安定させ、社会生活を続けていくことを目指せる病気です。 抗精神病薬には複数の種類があり、本人に合う薬や量を医師と探していくことで、症状が大きく改善する人もいます。治療は薬だけではなく、心理社会的支援や家族への支援も重要です。

この記事では、統合失調症の陽性症状とは何か、具体的な症状、治療、入院、家族ができること、さらに本人と家族が利用できる支援について詳しく解説します。

1. 統合失調症とはどういう疾患か

統合失調症は、思考、知覚、感情、行動などの精神機能に影響を及ぼす精神疾患です。10代後半から20代にかけて発症することが多く、若い時期に生活や進学、仕事などに大きな影響が出ることがあります。

症状は大きく、陽性症状、陰性症状、認知機能の障害などに分けて説明されます。

陽性症状は、幻覚や妄想など、これまでになかった体験が加わるものです。

陰性症状では、意欲や感情表現など、本来あった精神機能が低下することがあります。

認知機能の障害では、注意力や記憶力、情報を整理する力などに影響が出る場合があります。

この記事では、このなかでも特に本人や家族が戸惑いやすい「陽性症状」に焦点を当てます。

2. 統合失調症の陽性症状とは

「陽性」という言葉から「良い症状」と思うかもしれませんが、ここでいう陽性は、本来なかった体験や行動が新たに加わるという意味です。

代表的なのが幻覚と妄想です。

幻覚では、実際には存在しない声やものなどを感じることがあります。妄想では、現実とは異なる考えを強く信じ、その考えを簡単には変えられなくなることがあります。

重要なのは、本人がわざと嘘をついているわけではないということです。

例えば「誰かに監視されている」と本人が訴えたとき、周囲にはそのような事実がなくても、本人にとっては本当に監視されているように感じられていることがあります。

また、陽性症状は発症時や急性期に目立ちやすい一方、治療によって軽減できる場合があります。統合失調症では、症状が改善した後も再発を防ぐために治療を続けることが重要です。

3. 幻聴や妄想にはどのような特徴があるのか

陽性症状の代表が「幻覚」と「妄想」です。

幻覚のなかでも統合失調症で多くみられるのが幻聴です。

実際には誰も話していないのに声が聞こえたり、自分の行動についてコメントする声、批判する声、命令する声などが聞こえたりすることがあります。

本人にとっては本当に聞こえているため、「声なんて聞こえるはずがない」と否定しても簡単には納得できません。

また、幻視や幻臭、幻触などが生じる場合もあります。

妄想には、次のようなものがあります。

被害妄想
「誰かに監視されている」「盗聴されている」「毒を入れられる」など、自分が危害を加えられていると信じるものです。

関係妄想
テレビやインターネットの情報、周囲の人の会話などが「自分に向けられたメッセージだ」と感じるものです。

誇大妄想
「自分には特別な使命がある」「特別な能力を持っている」など、自分について現実とは大きく異なる確信を持つものです。

そのほか、自分の考えが他人に知られている、他人から考えを入れられている、考えを奪われている、行動を外部から操られていると感じることもあります。

4. 思考や行動がまとまりにくくなることもある

陽性症状では、幻覚や妄想だけでなく、思考や会話、行動がまとまりにくくなることもあります。

話題が突然変わったり、話のつながりが分かりにくくなったりして、周囲からは「何を言っているのか分からない」と受け取られることがあります。

本人としては一生懸命説明していても、頭の中で考えがうまく整理できず、言葉として伝えにくくなっている場合があります。

行動にも変化が現れることがあります。

例えば、突然大声を出す、状況に合わない行動をする、目的のない行動を繰り返すなどです。

また、緊張病と呼ばれる状態では、ほとんど動かなくなったり、長時間同じ姿勢を取ったり、逆に強い興奮状態になったりすることがあります。

緊張病は重症の場合、身体的な合併症を伴うことがあるため、医療的な対応が必要になる場合があります。

5. 陽性症状がある本人は、どれほど苦しいのか

周囲から見ると「現実とは違うことを言っている」と感じても、本人にとっては現実に起きていることとして受け止められている場合があります。

例えば、「誰かに殺される」と本気で感じている人にとって、自宅にいることさえ安全ではないかもしれません。

幻聴が一日中続けば、本人は常に誰かから責められているような状態になり、強い恐怖や疲労を感じることがあります。

また、命令するような声が聞こえる場合には、安全面で注意が必要です。

被害妄想が強いと、家族や医師でさえ「自分をだまそうとしている」と感じ、治療そのものを拒否することがあります。

そのため、本人が治療を拒否することを単純に「わがまま」「頑固」と考えるのは適切ではありません。

病気によって現実の捉え方が大きく変化し、自分が病気だと認識しにくくなっている可能性があります。

この状態は「病識の乏しさ」と呼ばれます。薬を飲みたがらない理由も病識だけとは限らず、副作用への不安や薬への抵抗感など、さまざまです。

6. 治療では「本人に合う薬」を探していく

統合失調症の陽性症状に対する治療の中心は、抗精神病薬による薬物療法です。

抗精神病薬には複数の種類があり、幻覚や妄想などの症状を軽減するために使用されます。

ただし、「この薬を飲めば誰でもすぐに良くなる」というものではありません。

効果の出方や副作用は人によって異なるため、医師と相談しながら、薬の種類や量を調整していきます。

例えば、症状が改善しても強い眠気や体重増加などの副作用が問題になることがあります。その場合も、「薬が効いたから我慢するしかない」と考えるのではなく、効果と副作用の両方を医師に伝え、治療方法を検討することが大切です。

統合失調症の薬物治療では、抗精神病薬を適切に使用することが標準的な治療とされています。治療ガイドラインも、患者本人と支援者が治療について考えるための資料を公開しています。

また、毎日の服薬が難しい場合には、持効性注射剤(LAI)という選択肢があります。薬によって間隔は異なりますが、一定期間ごとに注射することで薬の効果を維持します。服薬を継続することが難しく、それによる再発が問題になる場合などに選択肢となります。

「薬が合うとずいぶん安定する人がいる」というのは事実ですが、効果には個人差があります。 一つの薬だけで十分な効果が得られない場合もあり、医師と相談しながら治療を調整していきます。

7. 症状が強いときには入院治療が必要になることもある

陽性症状が強く、自宅で生活することが難しい場合や、自分や周囲の安全を確保する必要がある場合には、入院治療が検討されることがあります。

入院すると、医師や看護師などが本人の状態を継続的に確認しながら、薬の調整や生活面の支援を行います。

精神科病院への入院は「人生が終わった」という意味ではありません。

むしろ、症状が非常に強い時期に、本人と家族だけで何とかしようとせず、医療の力を借りて状態を落ち着かせるための選択肢の一つです。

症状が落ち着けば退院し、外来通院やデイケア、福祉サービスなどを利用しながら地域で生活することもできます。厚生労働省も、統合失調症は回復可能な病気であり、治療技術も進歩していると説明しています。

8. 家族はどこまで支えればいいのか

統合失調症の本人を支える家族は、大きな負担を抱えることがあります。

特に発症直後は、「なぜこんなことを言うのか」「薬を飲んでくれない」「病院に行ってくれない」と戸惑い、家族自身が疲れ切ってしまうこともあります。

ここで大切なのは、家族が一人ですべてを背負わないことです。

家族に求められるのは、24時間監視したり、本人を説得し続けたりすることではありません。

例えば、

  • 本人の話を頭ごなしに否定しない
  • 妄想の内容に無理に同意もしない
  • 本人が感じている恐怖や苦痛には耳を傾ける
  • 受診や服薬について困っていることを医療者に伝える
  • 家族だけで対応できないときは医療機関や支援機関に相談する

といった関わりが重要です。

厚生労働省も、家族が病気について学ぶこと、受診への付き添いや家庭での様子を医師に伝えること、そして家族自身が無理をしすぎないことを勧めています。

つまり、「親が覚悟を決めて全部支える」というより、「家族も病気を理解し、医療や福祉と一緒に支える」という考え方が大切です。

9. 「恥ずかしいから隠す」が治療の遅れにつながることも

統合失調症は、学歴、職業、家庭環境、社会的な地位などに関係なく起こり得る病気です。

そのため、「うちはきちんとした家庭だから精神病になるはずがない」「家族に知られたら恥ずかしい」「近所に知られたくない」と考える必要はありません。

ただし、精神疾患に対する偏見やスティグマが、本人や家族の受診・相談をためらわせることはあります。

特に、社会的な立場や家族の評判を気にして、病気を隠そうとすることがあります。

しかし、病気を隠すことと、病気を治療することは別の問題です。

周囲に病名を公表する必要はありません。本人のプライバシーを守りながら、必要な医療を受けることはできます。

反対に、「恥ずかしいから精神科には行かせない」「薬を飲んでいることを知られたくないから治療をやめる」といった対応は、本人に必要な医療につながる機会を失わせる可能性があります。

いわゆる「医療ネグレクト」と呼ばれる問題についても、単純に家族の愛情不足だけで説明することはできません。精神疾患への偏見、病気への理解不足、本人の受診拒否、家族自身の疲弊、経済的な問題など、複数の要因が重なることがあります。

だからこそ、家族だけを責めるのではなく、「どうすれば本人を医療につなげられるか」を専門職と一緒に考えることが重要です。

10. 本人だけでなく、家族にも支援がある

統合失調症の治療では、本人への支援だけでなく、家族への支援も重要です。

家族心理教育では、病気の症状や治療、再発のサイン、本人との接し方などについて学びます。

厚生労働省の事業でも、多職種による家族心理教育を中心とした家族支援によって、家族の介護負担を軽減し、患者本人の再発・再入院の予防や社会復帰を支援する取り組みが紹介されています。

また、家族会や自助グループでは、同じような経験を持つ家族と話すことができます。

相談先としては、

  • 精神科・心療内科などの医療機関
  • 精神保健福祉センター
  • 保健所
  • 病院の精神保健福祉士(PSW・精神保健福祉士)
  • 地域活動支援センター
  • 家族会・自助グループ

などがあります。厚生労働省も、こうした相談先を案内しています。

本人が安定してきた後には、デイケアや就労支援などを利用しながら、生活リズムを整えたり、社会とのつながりを取り戻したりすることもできます。

さらに、通院を続ける人は、自立支援医療(精神通院医療)によって、精神疾患の通院治療にかかる医療費の自己負担を軽減できる場合があります。統合失調症も対象疾患に含まれています。

まとめ

統合失調症の陽性症状では、幻聴や妄想など、本人にとっては非常にリアルな体験が生じることがあります。 周囲から見ると現実とは違うように思えても、本人には本当に起きていることとして感じられている場合があります。

だからこそ、「そんなことはない」「考えすぎ」と頭ごなしに否定するのではなく、まずは本人のつらさに目を向けることが大切です。本人の体験を理解しようとする姿勢が、信頼関係を守り、治療につながるきっかけになります。

一方で、統合失調症は「一生何もできなくなる病気」と決めつける必要はありません。本人に合った抗精神病薬を見つけ、治療を続けることで、症状を安定させながら生活を続けられる人もいます。 薬物療法に加えて、心理社会的支援、デイケア、就労支援など、その人の生活に合わせた支援もあります。

家族も、すべてを背負う必要はありません。「親として何とかしなければ」と一人で抱え込むのではなく、医師や看護師、精神保健福祉士、保健所、精神保健福祉センター、家族会などの力を借りながら支えていくことが大切です。

病気を恥じて隠すことよりも、必要な治療につながること。家族だけで抱えることよりも、支援者と一緒に支えること。それが、本人の回復だけでなく、家族自身の生活を守ることにもつながります。

症状が強いときには、「この先どうなるのだろう」と不安になるかもしれません。それでも、今の症状だけで、その人の未来を決める必要はありません。 治療によって症状が落ち着き、少しずつ日常を取り戻していくことはできます。

病気があっても、その人の人生がなくなるわけではありません。笑える日も、穏やかに過ごせる日も、その人らしく生きられる時間も、これからつくっていくことができます。

どうか、あきらめないでください。
まずは誰かに相談することから、最初の一歩を踏み出してみてください。
その一歩の先には、これからの人生を歩いていくための道が、きっとあります
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いろとりどり編集部

この記事の監修・運営

就労継続支援B型 いろとりどり編集部

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