気候変動・環境NPOと福祉NPOの協働について

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気候変動対策と聞くと、温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの普及など、環境分野の取り組みを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、気候変動の影響は、私たちの暮らしや健康、働き方、地域の支え合いにも深く関わっています。

猛暑のなかで冷房を十分に使えない。豪雨が迫っていても、すぐに避難することが難しい。電気代や食費の上昇が、日々の生活を圧迫する――。こうした問題は、気候変動が環境だけでなく、福祉や生活の課題でもあることを示しています。

とりわけ、経済的に困窮する人や障害のある人、高齢者、住まいや仕事に不安を抱える人などは、気候変動による影響を受けやすく、対策を利用するうえでも困難が生じる場合があります。

そこで重要になるのが、環境分野と福祉分野の連携です。

この記事では、気候正義やジャストトランジションという考え方を整理しながら、環境NPOと福祉NPOが協働する意義や具体的な取り組み、今後の課題について解説します。

1. 気候変動は、環境だけの問題ではない

気候変動は、気温の上昇や降水パターンの変化、極端な高温や大雨などを通じて、私たちの生活に影響を及ぼします。

例えば、猛暑が続けば、熱中症のリスクが高まるだけでなく、冷房の使用による電気代の負担も増えます。豪雨や台風によって住まいや交通網が被害を受ければ、通院や通勤、福祉サービスの利用が難しくなることもあります。

こうした影響は、誰にとっても無関係ではありません。ただし、同じ気象災害に直面しても、受ける被害や回復するための力には違いがあります。

十分な貯蓄があれば、被災後に一時的な住まいを確保したり、壊れた家電を買い替えたりできるかもしれません。一方、経済的な余裕がない世帯では、生活を立て直すまでに時間がかかることがあります。

また、障害や病気などによって移動に支援が必要な人、日常的な医療機器を使用している人、日本語での情報収集が難しい人などは、避難情報を受け取ることや、安全な場所へ移動することに特別な配慮が必要となる場合があります。

気候変動への対応を考えるときには、温室効果ガスをどれだけ減らすかだけでなく、誰が影響を受けやすく、どのような支援が必要なのかという視点が欠かせません。

2. 気候正義とはどのような考え方か

気候正義とは、気候変動による影響や対策の負担が、社会の中で公平に分配されているのかを問い直す考え方です。

気候変動の原因となる温室効果ガスの排出には、国や地域、産業、個人の暮らし方などが関わっています。しかし、排出への関与や責任が同じでなくても、気候変動による被害を受ける可能性はあります。

例えば、温室効果ガスの排出に大きく関わってきた国や産業がある一方で、災害への備えや生活を立て直すための資源が限られている人々もいます。

こうした不均衡に目を向け、気候変動を環境問題であると同時に、公平性や人権、社会保障に関わる問題として捉えるのが、気候正義の基本的な視点です。

気候正義を考える際には、少なくとも三つの問いが重要になります。

一つ目は、気候変動の原因にどのような責任があるのか。二つ目は、被害や対策の負担が誰に集中しているのか。そして三つ目は、対策を決める過程に、影響を受ける人々の声が反映されているのかということです。

例えば、省エネルギー政策を進める場合でも、初期費用を負担できる世帯だけが恩恵を受ける仕組みでは、生活に余裕のない人が取り残される可能性があります。

環境を守るための対策が、別の人々の生活を苦しくしていないか。 その点を確かめることも、気候正義の大切な役割です。

3. ジャストトランジションとは何か

ジャストトランジションは、日本語では「公正な移行」と訳されます。

これは、脱炭素社会への転換を進める際に、労働者や地域社会、生活に困難を抱える人々に不利益が集中しないようにしながら、社会全体で移行を進めていくという考え方です。

脱炭素化は、エネルギーのつくり方や使い方、産業のあり方、仕事の内容などを変えていきます。その過程では、新たな仕事や産業が生まれる一方、従来の産業で働いてきた人が、職場や収入を失う可能性もあります。

例えば、化石燃料に関わる産業から別の産業へ移行する場合、働く人には新しい技能を身につけるための職業訓練や、転職先を見つけるための支援が必要になることがあります。

また、特定の産業に地域経済が大きく依存している場合、事業の縮小は雇用だけでなく、商店や公共交通、地域の税収などにも影響する可能性があります。

そのため、脱炭素化を単に「環境に良い方向へ変えること」として進めるのではなく、仕事や暮らし、地域の将来を支える仕組みと一体で考えることが重要です。

ジャストトランジションは、環境政策と雇用政策、福祉政策、地域政策をつなぐ考え方でもあります。

4. 気候変動が福祉分野に及ぼす影響

気候変動は、健康や住まい、家計、福祉サービスの継続など、暮らしにさまざまな影響を及ぼします

猛暑では、高齢者や障害のある人などに熱中症への配慮が必要です。また、電気代を心配して冷房を控える人もいるため、経済状況に応じた暑さ対策も重要になります。

豪雨や台風などの災害時には、避難経路や情報提供、医療機器、介助など、一人ひとりの状況に応じた備えが欠かせません。福祉施設や訪問介護が停止すれば、日常生活にも影響が及びます。

さらに、光熱費や食費の上昇、災害後の生活再建などは、家計に余裕のない世帯ほど負担になりやすい問題です。

気候変動を環境の変化だけでなく、健康や生活を支える福祉の課題として捉えることが大切です。

5. なぜ環境NPOと福祉NPOの協働が必要なのか

環境NPOと福祉NPOは、それぞれ異なる専門性や地域とのつながりを持っています。両者が協働することで、一つの分野だけでは把握しにくい課題に対応しやすくなります。

環境NPOは、気候変動や温室効果ガス削減、省エネルギー、自然環境の保全などについて、専門知識や政策提言の経験を持っていることがあります。

一方、福祉NPOは、生活困窮者への相談支援、障害のある人の生活支援、地域の見守り、就労支援などを通じて、日々の暮らしの中で生じている困難を把握している場合があります。

例えば、環境分野の団体が省エネルギー住宅の普及を進める際、福祉分野の団体と協力すれば、住宅の断熱改修を必要としていても費用や手続きの面で利用できない人の存在に気づけるかもしれません。

また、福祉施設の災害対策を考える際に、環境NPOが気候リスクや地域の環境情報を提供することで、将来の猛暑や豪雨も見据えた備えにつなげられる可能性があります。

環境NPOが持つ「気候・環境の専門性」と、福祉NPOが持つ「暮らしの現場への理解」を組み合わせること。 それが協働の大きな意義です。

6. 具体的な協働の形① 猛暑対策と地域の見守り

環境NPOと福祉NPOの協働は、政策提言だけでなく、地域の身近な活動から始めることもできます。

その一つが、猛暑への備えと見守り活動です。

環境NPOが気温や熱中症リスクに関する情報を分かりやすく発信し、福祉NPOが地域の高齢者や障害のある人、生活に困難を抱える世帯とのつながりを生かして情報を届ける、といった連携が考えられます。

例えば、地域の支援者が訪問や電話で体調を確認する際に、室温や冷房の使用状況、水分補給などについても声をかけることができます。

ただし、見守りを担う人に過度な負担がかからないよう、活動の範囲や緊急時の連絡先をあらかじめ決めておくことが大切です。

また、地域の公共施設や福祉施設などを、暑さをしのげる場所として活用する取り組みも考えられます。利用できる時間や対象、設備、アクセス方法などを明確にし、必要な人が実際に利用できるようにすることが重要です。

情報を発信するだけで終わらせず、必要な人に届き、具体的な行動につながる仕組みをつくることが、協働のポイントになります。

7. 具体的な協働の形② 災害への備えと支援体制づくり

気候変動によって、豪雨などの極端な気象現象のリスクが高まる地域もあります。災害への備えを考える際には、地域の環境条件と、住民それぞれの生活上の事情を組み合わせて検討することが重要です。

環境NPOは、地域の気候リスクや自然環境に関する情報を整理し、福祉NPOは、避難や避難生活に支援が必要な人の状況を把握する役割を担える場合があります。

例えば、地域のハザードマップを確認するだけでなく、車いすで通れる避難経路があるか、停電時に医療機器をどう使うか、避難先で必要な介助を受けられるかなど、具体的な条件を確かめていきます。

ここで大切なのは、支援を必要とする人を一方的に「守られる側」として扱わないことです。

本人がどのような避難方法を希望しているのか、何があれば自分で判断・行動できるのかを確認し、本人の意思を尊重しながら備えを進める必要があります。

また、個人情報の取り扱いにも注意が必要です。支援に必要な情報を共有する場合は、目的や共有範囲を明確にし、本人の同意や適切な管理を大切にします。

災害に強い地域をつくるには、気象や地形の情報だけでなく、地域で暮らす一人ひとりの声を備えに反映させることが欠かせません。

8. 具体的な協働の形③ 省エネルギーと生活困窮への支援

脱炭素化に向けた取り組みの一つに、住宅や建物の省エネルギー化があります。

断熱性能を高めることや、エネルギー効率のよい設備を導入することは、冷暖房に必要なエネルギーを抑え、室内の温熱環境を改善することにつながる場合があります。

しかし、こうした改修には費用がかかることもあり、経済的に余裕のない世帯ほど、必要性を感じていても実施しにくいという課題があります。

環境NPOが省エネルギーに関する知識を提供し、福祉NPOが生活困窮世帯の相談支援や制度利用の案内を行うことで、必要な支援につながる可能性があります。

例えば、自治体の補助制度や住宅支援制度について情報を整理し、申請方法を分かりやすく伝えることが考えられます。制度によって対象者や条件、申請期間は異なるため、最新の情報を確認することも欠かせません。

また、省エネルギーの取り組みを進める際には、単に「電気を使わないようにしましょう」と呼びかけるだけでは不十分です。健康を守るために必要な冷暖房まで我慢することになれば、本来の目的から離れてしまいます。

環境負荷を減らすことと、誰もが安全で健康に暮らせることを、両立させる視点が必要です。

9. 就労支援とジャストトランジションの接点

ジャストトランジションは、福祉分野の中でも、就労支援に関わる団体にとって重要な考え方です。

脱炭素化に伴って、再生可能エネルギーや建物の省エネルギー、資源の再利用など、さまざまな分野で仕事の内容や求められる技能が変化する可能性があります。

新しい雇用が生まれる一方で、産業構造の転換によって、従来の仕事が縮小したり、働く人に新たな技能の習得が求められたりすることも考えられます。

そのような変化の中で、障害のある人や就労に困難を抱える人が、新たな仕事や職業訓練の機会から取り残されないようにすることが大切です。

例えば、環境関連の仕事や地域の資源循環に関わる活動について、仕事内容や必要な技能、職場環境を確認し、本人の希望や特性に応じた参加方法を検討することができます。

ただし、環境分野の仕事であれば誰にでも適しているわけではありません。作業内容や安全面、賃金、雇用条件、必要な配慮などを丁寧に確認する必要があります。

また、就労支援を「人手不足を補うための手段」としてだけ捉えないことも重要です。本人の希望や働く権利を尊重し、適切な報酬と働きやすい環境を確保することが基本になります。

脱炭素社会への移行によって生まれる機会を、さまざまな人が自分に合った形で選び、参加できるようにすること。 それも、公正な移行を考えるうえで大切な視点です。

10. 協働を進めるための課題と今後の展望

環境NPOと福祉NPOが協働するには、まず、互いの専門性や活動の目的を理解することが大切です。環境分野では温室効果ガスの削減など、福祉分野では生活の安定や社会参加など、それぞれ重視する成果が異なる場合があります。

共通の目標を話し合い、それぞれの強みを生かすことが協働の出発点です。

また、分野をまたぐ活動は助成制度に当てはまりにくい場合があり、資金や人材の確保も課題です。担当者に負担が集中しない体制を整え、無理なく続けられる方法を考える必要があります。

さらに、支援者だけで方針を決めず、気候変動の影響を受ける人や支援を利用する人の声を取り入れることも重要です。本人の希望や困りごとを確かめることで、実際の生活に役立つ取り組みにつながります。

協働は、地域の暑さ対策について情報を共有する、福祉施設の災害への備えを点検するなど、小さな活動から始めることもできます。そこから自治体や企業、学校、地域団体との連携へ広げていくことも考えられます。

環境を守ることと、人々の暮らしを支えることを結びつける。その積み重ねが、誰も取り残さない地域づくりにつながります。

まとめ

気候正義は、気候変動による影響や責任、対策への参加が公平であるかを問い直す考え方です。ジャストトランジションは、脱炭素社会への移行によって、労働者や地域、生活に困難を抱える人々が取り残されないようにする視点を示しています

環境NPOと福祉NPOが協働することで、気候・環境に関する専門性と、暮らしの現場で培われた知見を結びつけることができます。猛暑対策や災害への備え、省エネルギー、就労支援など、連携できる場面はさまざまです。

もちろん、協働には分野間の理解や資金、人材、当事者参加といった課題もあります。だからこそ、互いの違いを尊重し、地域の実情や本人の希望を確かめながら、一歩ずつ取り組みを進めることが大切です。

気候変動への対策を、誰かが我慢することで成り立つものにしない。

環境を守ることと、人々の暮らしを支えること。その両方を大切にする協働が、誰も取り残さない地域づくりにつながっていくでしょう。

いろとりどり編集部

この記事の監修・運営

就労継続支援B型 いろとりどり編集部

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