企業でマーケティングを担当されている方の中には、「SGEについて知りたい」、「SGE対策は必要なのか?」「どのように対策すればいいのか?」といった課題をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
SGEとは、Googleが提供する検索エンジンにおける新たな機能のことです。生成AIが検索されたキーワードについてWebサイトから得た情報を要約し、回答として表示されます。
SGEの検索結果は、上位記事よりもさらに上部に表示されるため、上位記事のクリック率の低下が懸念されます。反対にSGEが参照するWebサイトとして選ばれると、クリック率アップが期待できるでしょう。
SGEについて現在公表されている概要や、SGEが普及することで今後Webマーケティングの分野でどのような影響が考えられるかを解説します。
最新のトレンドを取り入れ、マーケティングによる成果アップを目指しましょう。
SGEってなに?
SGE は、Googleが提供する生成AIを利用した新たな検索機能です。
Google ChromeブラウザやGoogleアプリで検索する際に、生成AIがさまざまなWebサイトから情報を抽出し作成された概要を、回答として表示します。
2023年5月に米国圏で英語版の試験運用を開始、日本では2023年8月から試験運用が開始されています。発表当初は米国圏で2023年12月(日本では2024年2月)に試験運用が終了と予定されていましたが、現在は終了時期については明記されていません。
SEOとどう違う?
SEO(Search Engine Optimization)は、検索エンジン最適化のことです。
Webサイトの内容を検索エンジンが理解しやすいよう整えるなど、検索エンジンでWebサイトを上位表示させるために行う施策です。
SEO施策により上位表示された記事は、クリック率が上がり、商品購入や問い合わせ数がアップするなどの効果があります。
現在試験運用されているSGEは、検索結果で上位表示される記事のさらに上部に表示されます。
SGEの回答が参照するWebサイトは、必ずしも上位記事ではありません。上位表示されなくてもSGEにリンクが表示されることで、サイトへのアクセス数アップが期待できます。
SGEが普及することで、これまでのSEO施策のやり方が変わってくるという見方もあります。
Gemini(旧Google Bard)との違い
SGEと混同されがちなGoogleのサービスのひとつが、「Google Bard」です。「Google Bard」は2023年11月にサービス名称を、「Gemini 」に変更しました。
Gemini(旧Google Bard)は、会話形式で質問への回答やタスクをこなしたり、文章や画像、コードを生成したりすることが可能です。ChatGPTに近い使い方ができ、あくまで検索エンジンであるSGEとは異なるサービスです。
SGEができること
SGEは生成AIを活用することで、自然な会話形式での検索や、検索意図を理解し関連性の高い情報の提供や、画像・動画などを含めた多様な検索結果が表示できます。
英語圏ではさらにアップデートが重ねられており、今後日本でも機能の拡張が期待できます。
詳しい内容を見ていきましょう。
会話形式で質問に回答する
SGEでは、会話形式での質問にも回答が表示されます。
例えば、「お中元を取引先へ渡すのはいつ?」と質問(検索)すると、地域ごとに適当な渡す時期、法人の場合気をつけたいポイントなど、質問への直接的な回答の他、それに関連するユーザーが知りたいであろう情報も表示されます。
また追加の質問として、お中元を贈るうえでのマナーや、渡す際の挨拶、渡す時間帯などを自然な会話をするように追加で質問することが可能です。
自分で質問を入力する欄もあり、直感的に使いやすいデザインが採用されています。
より早く効率よく情報を収集できる
SGEを利用することで、いくつもの検索結果をクリックしなくても、知りたい情報を得られます。
SGEでは生成AIが検索意図を理解し、文章だけでなく画像や動画など多様な情報を表示できるのが特徴です。表示された回答には出典元のリンクが表示され、複数のWebサイトをクリックし探す手間なく、欲しい情報に辿り着けます。
さらに文章の長いWebページの要約もしてくれるので、効率よく情報収集ができるでしょう。
ショッピングの選択肢が広がる
SGEでは商品の比較や購入のサポートまでできるので、ショッピングの幅が広がります。
購入を検討している商品を検索すると、比較・検討するべき項目などを提示し、関連する最新のレビューや評価、価格、製品画像といった製品の説明を表示することが可能です。
また、過去の購入履歴や好みを反映し欲しい商品を手早く探せるほか、自分では見つけられなかったような商品の発見が期待できます。
英語版では画像生成やコードの生成もできる
英語版のSGEでは、次のような機能が追加されました。
- 文書の下書き
- 画像生成
- SGEの解答に含まれる単語の定義を表示(科学、経済、歴史、ヘルスケア、コーディングについて)
- コーディングにおけるコードをセグメント別に色分け表示
現在SGEは試験運用の段階ですので、上記の機能が高評価を得られれば日本版でも利用できるようになる可能性があります。
SGEの使い方
SGEの回答画面の見方や、パソコン、スマートフォンでの使い方を確認していきましょう。
SGEのスナップショットの見方
SGEの検索結果画面はスナップショットと呼ばれます。スナップショットは、以下のように表示されます。
PC(デスクトップ)Googleブラウザでの使い方
- Search Labsを開く
- SGEを有効にする
- 検索する
Googleアカウントにログインした状態で、Search Labs を開きます。
「SGEを有効にすると、検索時に表示されることがあります」の項目にあるボタンをオンの状態にします。
利用規約を確認し、「同意する」を選択しましょう。するとSGEが有効になります。
Googleブラウザで検索すると、SGEの結果が表示されます。
スマートフォンGoogleアプリでの使い方
- Seach Labsを開く
- Googleアプリを開く(インストールする)
- SGEを有効にする
- Googleアプリで検索する
スマートフォンでSearch Labs を開くと、Googleアプリへの移動を促されます。
Googleアプリをインストールしていない場合、インストールページに移動するので、インストールします。
Googleアプリ上で、「SGEを有効にすると、検索時に表示されることがあります」の項目にあるボタンをオンの状態にしましょう。
利用規約を確認後、同意するを選択することで、SGEが利用可能になります。
Googleアプリのシークレットモードをオフの状態にし、検索してみましょう。
SGEの有効な活用方法
SGEは生成AIを搭載することで、ユーザーの検索意図をより正確に理解し、高度な情報が提供できることが大きな特徴です。SGEを利用することで次のようなメリットがあります。
- より正確で役立つ情報を得られる
- 効率よく情報収集できる
- 新たな知識や発見ができる
- 創作アイデアを見つけられる
SGEの活用方法を紹介します。
知りたい情報を網羅的に表示
「お中元」と検索すると、お中元がどういうものか、だけでなく「いつ贈るのか」、「相場」、「具体的な品物」などが回答として表示されます。
検索ワードからユーザーの検索意図を理解し、表面的な質問の答えだけでなく、潜在的に知りたいことも検索できます。
SGEでは網羅的に情報が表示されるので、複数のwebサイトを閲覧することなく、出典元のリンクに移ることができます。
複雑な質問の回答を得られる
SGEでは会話形式での質問(検索)にも対応しています。
長いクエリや、比較など複雑な内容を調べたい場合にも有効活用できます。例えば、「お中元とお歳暮は両方贈るものですか?」といった質問には、以下のように表示されます。
本来答えを得るまでに複回の検索し、検索結果を自分で精査しなければいけないような質問にも、手間なく一度で回答を見つけられます。
創作活動のサポート
SGEは画像・小説・詩・コードなどの創作物を生成、またはそのサポートツールとして利用できます。
SGEは創作活動において、次のような作業のサポートもできます。
- ストーリー展開
- キャラクター設定
- メロディー作成
- コード作成(試験運用中につきエラーやバグなどがないかテストが必要)
創作活動のアイデアを得られるので、煮詰まった時や新たな発想を得るためのツールとして活用されるでしょう。
SGEの注意点
SGEは検証中の機能であり、情報の正確性やユーザーの理解度について、さらに改善が必要とされています。SGEが普及することで、ユーザーが検索時にとる行動の変化についても考慮し、対策する必要があります。SGEとこれまでの検索エンジンとの違いや、注意するべき点を確認しておきましょう。
上位表示されてもSGEの回答に選ばれない可能性がある
生成AIが参照するWebサイトは、必ずしも上位記事とは限りません。
SGEで参照されるWebサイトの基準は明記されていませんが、次のような項目を評価していると考えられています。
- 信頼性
- 最新の情報であること
- 情報が正確でわかりやすいか
- 多様性
- ユーザーの検索意図
SEOでは検索結果の上位表示を目指してきましたが、SGEはその検索結果の上部に表示されます。SGEの回答の引用元としてリンクが表示されれば、クリックされる可能性が高くなります。
SGEが今後さらに普及するとなると、SGE対策は必須になるでしょう。
SGEの回答は必ずしも正確ではない
SGEはあくまでAIが生成した回答なので、正確な内容でない可能性もあります。AIが元にしている学習データに、正確でない情報が含まれている場合もあります。
またAIが理解した索意図が異なる場合、間違った情報が表示されることもあるでしょう。
Googleも情報の正確性が重視される場面では、公的な機関や専門家による情報、複数の情報源を確認することが重要としています。
情報を発信する側は、より正確で専門性のある内容にすることで高い評価を得られるでしょう。
ユーザーによってSGEへの理解度が異なる
これまでの検索エンジンと異なり、SGEはAIによる回答であることなど、SGEの仕組みや機能を十分に理解せず利用するユーザーがいる可能性もあります。
SGEへの理解が不十分な場合、誤った情報が拡散されたり、検索結果へ不満をいだいたりする可能性が考えられます。
これからのコンテンツづくりではさらに情報の正確性や、ユーザビリティを高めることがより重要になるでしょう。
生成AIによる回答が表示されない質問もある
生成AIでの回答が表示されない場合もあります。検索した際の表示には3パターンあります。
- 検索結果に生成AIの結果が自動的に表示される
- 「この検索に対してAIによる概要を生成しますか?」と確認される
- 「この検索ではAIによる概要を表示できません」と表示される
3つめの表示されないパターンとして、次のようなものがあります。
- 検索意図が明確でない
- 通常の検索結果表示で十分な場合
- 情報量が少ない
- 生命を脅かすような内容の検索
- 技術的な問題
またYMYL分野(人の財産や健康、生命に影響を与える分野)について、SGEの生成結果下部に「これは情報提供のみを目的としています。」といった注意書きが表示されます。
SGEの対策は必要か?
現在SGEは試験運用の段階で、ユーザーが自ら設定することで使用できます。そのため直ちに対策が必要という状況ではありません。
GoogleはSGEが米国でおおむね良い評価を得ている(特に18歳から25歳の若年層)と発表しました。さらにGoogleが発表した最新の生成AIであるGeminiをSGEに搭載したことをふまえると、今後SGEは普及することが考えられます。
出典:Google「Bringing generative AI in Search to more people around the world」
SGEが普及することで、検索結果の表示方法やユーザーの検索行動に大きく影響する可能性があります。Webマーケティングの担当者は、SGEの仕組みや影響などを検証し、対策を講じる必要があります。
※「Gemini」はGoogleが新たに発表した生成AIモデル、またはGeminiを搭載したサービス全般を指すブランド名です。
SGE導入に向けた対策
Googleでは情報の質、技術面、ユーザーの行動などユーザーに有用なコンテンツであることが評価されます。これまでのSEO施策に加え、SGEに選ばれるためにコンテンツの質を向上すること、わかりやすさ、オリジナリティを高めることが重要です。
充実したコンテンツの作成
SEO対策でも行ってきたように、ユーザーの検索意図やニーズに合う内容、潜在ニーズを満たすコンテンツを作成することが重要です。
キーワードに対して情報を網羅することは浸透してきましたが、これからは製品やサービスの情報だけでなく、使い方やマナーなど知りたいであろう情報も詳細にカバーすることが必須になります。
SGEの回答と追加の質問に記載されていることは、ユーザーが知りたい情報であると考え記事に含めるようにします。さらに、正確な情報をわかりやすく記載しユーザー目線でコンテンツを作成することが重要です。
検索意図をより正確に理解する
ユーザーがどのような情報を探しており、どのようなレベルの情報が必要かを理解しコンテンツを作成します。
例えば、「お中元を贈る時期を知りたい」という検索でも、次のようなユーザーの人物像が考えられます。
ユーザーの人物像 | 検索意図 |
初めてお中元を贈る人 | ● 社会人になりたて ● お中元のマナーがわからない ● 新しい付き合いが増えた人 |
毎年お中元を贈っている人 | ● 時期を逃さないよう確認したい ● 今年は誰に贈ろうか悩んでいる ● 去年贈った相手に同じ物を贈っても失礼でないか知りたい |
お中元のマナーについて知りたい人 | ● 正しい時期に贈りたい ● 相手との関係性に応じた適切な品物を選びたい ● 熨斗の書き方を知りたい |
SGEはショッピングにおいて、ユーザーの購入履歴や好みなどを反映します。
ユーザーの人物像と検索意図を把握し、ターゲットが知りたいであろう内容のコンテンツを作成することが重要です。
専門性の高さや経験による情報を提供
コンテンツづくりにおいて、E-E-A-Tがより重要になると考えられています。E-E-A-TはExperience(経験)・Expertise(専門性)・Authoritativeness(権威性)・Trustworthiness(信頼性)の頭文字をとって作られた略語です。
Google検索の品質評価ガイドラインで定められている、Webサイトやコンテンツの評価基準のひとつです。
SGEの参照元となるためには、実際に製品を使った感想や実体験を元につくられたオリジナルの内容であること、専門性の高い正確でより詳細な情報、サイト運営者やコンテンツ制作者の情報が明記されていることなどが求められます。
ブランディング・オリジナル性の強化
Webサイトやコンテンツのブランディングやオリジナル性を強化することも効果的です。Google検索の品質評価に、間接的に影響すると考えられます。
オリジナル性の高いWebサイトやコンテンツは、信頼できる情報源であると判断される可能性が高くなります。また情報が正確であることは前提ですが、そのトピックに関して専門的な知識を持っていることも示せるでしょう。
ターゲットを絞りニーズに合わせたコンテンツづくりや、SNSなど利用したプロモーションなどを行うことでブランディングやオリジナル性の強化がはかれます。
画像や動画を使ってわかりやすく
SGEでは、キーワードによっては文章だけでなく、画像や動画などを情報として表示します。
アイキャッチに情報を持たせたり、コンテンツ中の画像や動画をオリジナリティのある有益なものにすることで、SGEの引用元として採用される可能性が高まります。
さらにGoogle検索の評価を得るには、ユーザーにとってわかりやすいコンテンツづくりが重要です。図解や動画を利用し、一目で理解しやすいようなユーザー目線のコンテンツを作ることで、高品質と評価されるでしょう。
常に最新の情報に更新する
Googleによるコンテンツの評価項目には、情報が最新であることも含まれます。常に最新の情報へ計画的に更新することが重要です。
SGEの生成AIは、学習を重ね、ユーザーの評価に基づいてアップデートされ続けます。SGEの参照元になる基準は明らかになっていないため、考えられる対策を行い、検証していく必要があります。
SGEの評価項目を検証しながら、webサイトを更新し続けることで高評価を得られるでしょう。
まとめ
今後SGEがそのまま普及するか、改良された状態でも検索エンジンにAIが搭載されることが考えられます。SEOでは記事が上位表示されることが重要でしたが、これからはAIに選ばれることが求められるでしょう。
SGEの普及に備えて、さまざまな検証を行いSGEのアルゴリズムを解明し、対策していく必要があります。サイクルの早いWebマーケティングの分野において、最新の動向を追い対策することで、成果アップにつながるでしょう。